2019/10/22
ブルース初心者に聴いて欲しいおすすめの名盤20選をご紹介します。
ブルース初心者がまずは聴くべき⁉おすすめの名盤20選をご紹介します。
脱初心者に向けてブルース大好きマンがお送りするガイドブック⁉
今回は僕が音楽を聴く/演奏する上で最も影響を受けた『ブルース』という音楽ジャンルについてのおすすめ作品を20枚ご紹介したいと思います。
その前に、まず「なぜこういったブログ記事を書こうと思ったのか?」ということなのですが
僕がブルースを聴き始めた10代の頃は、まだ今のようにネット環境が発展していなくって、気軽に調べることが出来ませんでした。
それに周りの音楽好きの中で「真剣にブルースを聴いている人」なんていなかったので、誰か詳しい人に教えてもらうことも出来ませんでした。
そこでブルース系の音楽雑誌を買っていくつも読んでみたのですが、どれもしっくり来ませんでした。
というのは、紹介されているおすすめ作品が全てベスト盤で固められていたり、その時レコード会社が売りたい再発アルバムをやけに推していたり、モダン・ブルースとカントリー・ブルースがごちゃ混ぜに紹介されていたりしたからです。
テーマ性が感じられないのと、ごちゃ混ぜな感じがしたので「結局どれを聴いたらいいの?」と迷いました。
それに紹介されているアルバム数が、紙面の関係上やたら多かったり少なかったりしました。
僕としてはサクッと20枚程度にまとめて書いてもらって、その中から自分の好きな順に聴いていきたいと思いました。
そういった僕の過去の願望も含めて、今回は20枚のブルース・アルバムをご紹介したいと思います。
ちなみに僕自身は高校生の時にたまたまエルモア・ジェームスを聴いてブルースにハマりました。
その後20年近くで一応色んなブルースを聴いています。
また20代の頃にはブルースバンドでギターを弾いていたこともあります。
そういった自分の体験も含めて、「もし自分がブルースを聴き始めた頃にこういったおすすめガイドがあったらよかったのにな~」といった思いから書いてみます。
そして「これからブルースを聴いてみたいけど、何から聴いたらいいの?」という初心者の人の手助けになれば…と思います。
紹介するにあたってのちょっとしたテーマ
さて、今回20枚のおすすめアルバムをご紹介するにあたり、自分の中でちょっとしたテーマも作ってみました。
まず初心者の人に多くのブルースマンをご紹介出来るように20名を選びました。
その20名は「ブルースが好きなら知っていて当たり前!」といった歴史に残る重要人物ばかりです。
なので、知っていて損は一切ありません。
また1ブルースマン辺り1枚の作品に絞りました。
同じブルースマンの作品を2~3枚選ぶことはしていません。
そしてベスト盤や企画盤にライヴ盤は選んでいません。
後にシングル曲をアルバムとしてまとめたような作品はあったりもしますが、基本はスタジオ録音のオリジナル・アルバムを中心にご紹介しています。
そのため代表曲が収録されていない場合もありますが、その辺はベスト盤なんかで補充するしかありません。
しかしベスト盤でシングル曲や各年代の代表曲を集めて聴くよりも、僕としてはまずはサウンドに統一感のあるオリジナル作品を聴いてそのブルースマンのイメージを掴んで欲しいなって思いました。
それとカントリー・ブルースは選んでいません。
全てモダン・ブルースになります。
というのは、やはりいきなりカントリー・ブルースを聴くよりも、バンドサウンドが聴きやすいモダン・ブルースの方がロックやポップスから聴き始めブルースに移ろうと思う人にも最適だと思うからです。
僕自身がバンドサウンドが好きだってのもあります。(特にファンキーなブルース系多めです!)
そのためギターが目立つアルバムが多いのはご了承を。
もちろん今回ご紹介する20作品は、僕が若い頃に聴いて特に好きになったアルバムばかりです!
それでは20作品をご紹介したいと思います。
(※ご紹介順はアーティスト名のアルファベット順です。)
おすすめブルースアルバム①
Albert King – 『Born Under a Bad Sign』
B.B.キングにフレディ・キングにアルバート・キングは、俗にいう「ブルース3大キング」です。
さすがにこの3人を聴かずしてブルースを語るなんてありえない!と僕も思いますので、今回は3名とも登場します。
まずはABC順でアルバート・キングの登場です!
アルバート・キングならまずはこれ『Born Under a Bad Sign』を聴きましょう!
代表曲”Born Under a Bad Sign”や”Crosscut Saw”を含む必聴のアルバムです。
1966年にオーティス・レディングやサム&デイヴが所属していたスタックス・レコードと契約を結んだアルバート・キングが、1967年に同レーベルに所属するアイザック・ヘイズやブッカー・T&ザ・MG’sの力を借りて制作した名作です。
まずは何と言っても1曲目の”Born Under a Bad Sign”のかっこよさでしょう!
後にエリック・クラプトンの当時のバンド、クリームが取り上げたりもしたロック界でも人気のこの曲は、ブルースのバンドやセッションでも定番の曲です。
僕もブルースバンド時代に目玉曲として演奏していました♪
何度聞いてもかっこいいゴージャスなホーン隊にアルバート・キングの力強いチョーキング!
ブルースファンだけでなく、R&B/ソウルやロック好きの人にも受け入れられるようなキャッチーな名曲ですね。
この曲の作曲は、ルーファス・トーマスのバック・バンドで下積みを経験したソウルシンガーのウィリアム・ベルとブッカー・T&ザ・MG’sのリーダーでオルガン奏者のブッカー・T・ジョーンズによるものです。
ブルースから影響を受けた世代の2人が、ブルース界の大御所に楽曲を提供したら、ものの見事にドブルースに仕立て上げてくれた!という好例ですね♪
また2曲目に収録された”Crosscut Saw”は、元はガラ声のカントリー・ブルースマン、トミー・マクレナンが1941年に歌った曲でしたが、ここでアルバート・キングが取り上げたことでモダン・ブルースの定番曲となりました。
オーティス・ラッシュがアルバート・キングのバージョンを元にカヴァーしていたのも有名です。
その後、アルバート・キング自身も1974年の『I Wanna Get Funky』でこの曲を再演しているのですが、その際には更にファンキーなアレンジが施されているのでそちらもご興味ある方はぜひ聴いてみて下さい。
さて、その他にもジェリー・リーバーとマイク・ストーラーが書いた”Kansas City”も取り上げています。
この曲はウィルバート・ハリスンが歌い、その後リトル・リチャードやビートルズも歌ったロックの定番曲です。
それ以外にも、スティーヴ・クロッパーの弾くギターリフがかっこいい”Oh, Pretty Woman”やアルバート・キングのチョーキングが冴える”Laundromat Blues”に、サックスの音色がイナタいスローブルースの名曲”As the Years Go Passing By”なんかも聴きどころです。
アルバート・キングと言えば、マイナー・スロー・ブルースこそが真骨頂と言えるのですが……この辺の渋い演奏はスティーヴィー・レイ・ヴォーンに影響を与えています。
これだけでも外すことが出来ない名曲ばかりなのですが、もう1曲注目して欲しいのが6曲目の”The Hunter”です。
この曲は、英国ロック界随一の歌唱力を誇るポール・ロジャース率いるフリーがカヴァーしたことで有名ですが、本作のアルバート・キングが歌ったこの演奏を基にしています。
ポール・コゾフの燃え尽きるかのようなギター演奏とはまた違った、アルバート・キングの貫禄のギターソロをぜひ聴いてみて下さい♪
ちなみに本作のアルバート・キング以外のリズムギターはスティーヴ・クロッパーが全て弾いています。
おすすめブルースアルバム②
B.B. King – 『The Jungle』
ABC順だとちょうどアルバート・キングの次にB.B.キングが来ましたね。
B.B.キングと言えば、ライヴ盤の『Live at the Regal』が一番の名盤として誉れ高いのですが、今回はスタジオ盤をチョイスしたかったのでこちらの『The Jungle』を選びました。
67年にリリースされていますが、実際には61~62年のシングル曲などを集めて編集されたアルバムです。
しかしB.B.のスタジオ作品の名盤となるとやはりこの『The Jungle』が一番だと思います。
ただ色々と曰く付きの1曲目”The Jungle”から始まる作品なのですが…。
後から演奏を差し替えていたりするので、バックのホーン隊のリズムとB.B.の歌との間にズレがあり気持ち悪い箇所があったりします。
まぁでも今となってはそれも含めて作品として聴きましょう。
他にもバディ・ガイの得意曲にもなったエディ・ボイド作の”5 Long Years”や、ザ・フーが取り上げたサニー・ボーイ・ウィリアムソン二世の曲”Eyesight to the Blind”に、フレディ・キングも歌った1922年の古き良き時代の名曲”Ain’t Nobody’s Business”(原曲のタイトルは”Tain’t Nobody’s Biz-ness if I Do”)等のB.B.キングのバージョンを聴くことが出来ます。
“5 Long Years”のイントロで弾いているギターフレーズはB.B.のお得意のフレーズで、これ以降もあらゆる曲でキーを変えて登場するシグネチャーフレーズのひとつです。
面白いのは、古き良き時代のカントリーミュージックのパイオニアであるデルモア・ブラザーズが歌った”Blues Stay Away”のカヴァーを歌っていることです。
B.B.は、あらゆるジャンルのカヴァー曲を自身のブルースに昇華して歌うのが得意なブルースマンでした。
それはB.B.自身が尊敬するミュージシャンの曲においても同じことでした。
本作に収録されている”Blue Shadows”と”It’s a Mean World”は、それぞれB.B.が影響を受けたローウェル・フルソンとT-ボーン・ウォーカーの歌った曲です。
(※”Blue Shadows”の方はブルースピアニストのロイド・グレンが書いた曲でローウェル・フルソンが歌いました。)
特にローウェル・フルソンについてはB.B.の代表曲にもなった”Everyday I Have The Blues”もフルソンを基にしていますからね。
(※作曲者はメンフィス・スリムです。)
ローウェル・フルソン自体も素晴らしいブルースマンなのですが、しかしB.B.のゴスペルから影響を受けた歌唱法と咽び泣くようなスクィーズギターの方がより熱い演奏だと言えます。
ライヴ盤やベスト盤を抜きにすると、スタジオ録音盤としてはこの『The Jungle』が一番最初に聴くべきブルース・アルバムです。
「これこそがブルース!」と言えるお手本のような楽曲が収録されていますので、「ブルース最初の1枚」としても最適です♪
ちなみにジャケットでハンモックに乗ってギターを弾いているのはB.B.ではありません。
本作のプロデューサーでサックス奏者でもあったマックスウェル・デイビスなる人物です。
ブルース初心者の方は要注意です!
「あのB.B.がハンモック乗ってるアルバム」と言ってしまうと「にわか」だと思われてしまいますよ。
「ブルース好き」ならみんな知っているような小ネタですので、ここでぜひ覚えておいてください。
逆にブルース好きを公言している身近な人が本当に好きで「ちゃんと知っているのかどうか?」を試してみるのにもいいかもしれませんね。
『Live at the Regal』がB.B.のライヴ盤の代表作であるなら、この『The Jungle』はスタジオ盤の代表作ですね♪
おすすめブルースアルバム③
Buddy Guy – 『I Was Walking Through the Woods』
このブログでもB.B.キングに次いで登場回数が多く、何度か取り上げていたブルースマンのバディ・ガイがここで登場です。
本作『I Was Walking Through the Woods』は、バディ・ガイがチェス時代に残した初期録音集です。
英国ロックミュージシャン達のリスペクトによって60年代半ばに見直されたブルースマン達の楽曲は、70年代になってから過去のシングル盤などをまとめてアルバム化することがありました。
本国アメリカよりも英国ロックミュージシャンのお蔭でこういったブルースマンの良さが評価されるようになったのは皮肉なものですが、そういった経緯でもちゃんと評価されたお蔭で今僕たちがブルースを聴けるようになったのも事実ですよね。
さて、本作もそういった感じで60~64年に録音された過去のシングル曲をまとめた作品ではあります。
しかし全体の統一感が感じられるので、ベスト盤や企画盤と違ったオリジナル・アルバムと考えても良いんじゃないかな?と僕は思っています。
本作はバディ・ガイ本人が書いたファンキーなブルース曲が数多く収録されています。
1曲目の”Watch Yourself”にしても、それまでの良い意味でアーシーだったブルースとは違って、R&B調のモダンな曲作りやアレンジが施されています。
ノリこそR&B調でキャッチーなのですが、バディ・ガイの弾くB.B.キング直系のスクィーズギターは、誰が考えても『本物のブルース』です!
他にも7分以上に及ぶ長尺ブルース曲”Stone Crazy”やハーモナイズドチョーキングのイントロがかっこいい”Let Me Love You Baby”にスローブルース曲”My Time After a While”や”Ten Years Ago”等、聴きどころ満載です♪
その中でも特に印象に残るのが4曲目”First Time I Met the Blues”でしょう。
この曲の基は、1906年生まれの古い時代のブギウギ/ブルース・ピアニストのリトル・ブラザー・モントゴメリーが”The First Time I Met You”と歌った曲です。
この曲の”You”を”Blues”に代えて、バディがブルースとの出会いを熱く歌っています。
これを読んでいるあなたもぜひこのブログでバディ・ガイを知って、この曲のようにブルースとの出会いを体験してください♪
いつの日にか「そういえば昔なんかやたらブルースについて熱いこと書いてるブログあったよな~。思えばあのブログがきっかけでブルース聴くようになったよな~」と思い出してもらえたら幸いです。
バディ・ガイの”First Time I Met the Blues”はブルース史に残る名演ですので絶対に聴いておきましょう!
おすすめブルースアルバ④
Elmore James – 『The Sky Is Crying』
上記でも書いていたのですが、僕がブルースを聴き始めるきっかけとなったのがエルモア・ジェームスでした。
たまたま聴いた”Dust My Broom”のイントロの3連フレーズに一瞬で魅せられました。
そのフレーズは、今ではブルースギターの定番となり、その楽曲名から「ブルーム調」と呼ばれています。
ちなみに”Dust My Broom”のオリジナルは、伝説のロバート・ジョンソンなのですが、モダンブルース化したのがエルモア・ジェームスです。
エルモアは年の近かったロバジョン本人からこの曲の歌い方を学んだという伝説があるぐらいです。
さて、エルモア・ジェームスに関しては、僕も「人生で初めて好きになったブルースマン」ということでかなり思い入れがあるため、昨年このブログでも大々的に取り上げていました。
ぜひそちらのブログ記事にも目を通して頂ければ…と思います。
今年で生誕100年を迎えたブルースマン、エルモア・ジェームスの必聴盤3選!
上記のブログ先でも今回ご紹介する『The Sky Is Crying』をご紹介していたのですが、やはりまずはこのアルバムから聴いて欲しいと思いました。
スライドギターの名手ライ・クーダーをして「どうやってこんな音を出しているのかさっぱりわからない⁉」と言わしめた名演中の名演”The Sky Is Crying”は、ブルースが好きなら絶対に聴いておきましょう!
エリック・クラプトンやスティーヴィー・レイ・ヴォーン等、数多くのブルースロック系のミュージシャンも取り上げた名曲ですが、本作収録のエルモアの名演に勝るものはありません!
また本作には、僕が初めて聴いた”Dust My Broom”とはバージョンが違いますが同曲が収録されています。(”Dust My Broom”は何度か再録音されています。)
他にもオールマン・ブラザーズがカヴァーした”I Done Somebody Wrong”や”One Way Out”に、ジミ・ヘンドリックスが何度も取り上げた”My Bleeding Heart”等、ロック好きの人にも馴染みのある曲が多く収録されています。
そして何と言っても”Rollin’ and Tumblin’”のダンサンブルなバージョンです。
この曲は1929年にハンボーン・ウィリー・ニューバーンが作ったトラディショナルな名曲で、マディ・ウォーターズがカヴァーしたバージョンがブルース界では一番有名なのですが、敢えてお得意のスライドギターを弾かないエルモアのこのアレンジもとても面白いですね♪
ちなみにクラプトンもクリーム時代にハイテンションでカヴァーした曲です。
そのクラプトン繋がりではありませんが、本作の最後には「クロスロード」で有名なロバジョンの名曲”Standing at the Crossroads”のカヴァーで締めくくられています。
本当に心臓を患っていたの?と不思議に思うぐらいパワフルなブルースを思う存分味わえる名盤です!
ぜひあなたもエルモアからブルースを始めてみてはいかがでしょうか?
おすすめブルースアルバ⑤
Freddie King – 『Freddie King Is a Blues Master』
ここで3大キングの最後のフレディ・キングのご登場です!
といってもアルバート・キングは、B.B.にあやかって「キング」を名乗っていたので、本来ならB.B.とフレディの2大キングなのかもしれません⁉(アール・キングも本名はアール・ジョンソンです。)
1969年にリリースされた本作『Freddie King Is a Blues Master』には、なんとモータウンのベーシストとして有名なジェリー・ジェモットが参加しています。
その繋がりでキング・カーティスやデイヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンなんかのサックス奏者も参加しています。
そういったR&B系のミュージシャンの参加にも関わらず、ここには『本物のブルース』ばかりが収録されています。
フレディの自作曲の1曲目”Play It Cool”のイントロからブルース魂が溢れ出しているぐらいの濃さです!
本作にもB.B.の『The Jungle』と同じようにロイド・グレン作ローウェル・フルソンで有名な”Blue Shadows”が収録されています。
フレディはB.B.より若い世代のブルースマンなので、よりモダンで洗練された演奏に仕上がっています。
また本作にはフレディのインスト・ブルースの代表曲でもある”Hide Away”と”Hot Tomato”も収録されていますが、”Hideaway”に関してはご注意を!
(※”Hide Away”はハウンドドッグ・テイラーの曲をフレディがオリジナルに仕上げたもので、”Hot Tomato”はキング・カーティスの書いた曲です。)
『Blues Guitar Hero』というアルバムに収録されている1961年のバージョンとは違います。
本作に収録されているバージョンの方がホーン隊も参加したよりグルーヴィーなアレンジが施されているのですが、普通バンドやセッションで取り上げる場合やフレディのギタースコアに掲載されている”Hide Away”は『Blues Guitar Hero』に収録されている1961年のバージョンです。
そちらの方がリズム隊がシンプルなアレンジなので演奏しやすかったりします。
それに中盤に当時の流行りだったサーフロックっぽい「あのリズムパターン」が登場するのですが、バンドやセッションで取り上げる際に「あの部分やる?」と迷うんですよね。
それならいっそ本作収録のファンキーなバージョンだと「あのリズムパターン」が登場しないので演奏しやすいと僕は思うのですが、こちらを聴いてる人はあまりいなかったりします。
でも今の時代に「あのリズムパターン」を聴くと、正直時代遅れに感じちゃいますからね。
そもそも当時の流行りに乗って無理やり楽曲に差し込んだパターンだと思うので、本作で再録音の際に外されたんだと思います。
僕としては本作のファンキーなバージョンの”Hide Away”の方がよりスタンダードになって欲しいところなのですが、大体のバンドマンは1961年の方を思いつくでしょう。
ぜひこのブログから本作『Freddie King Is a Blues Master』に収録されているファンキーな”Hide Away”を聴いてみて下さい。
ちなみに”Gett Out Of My Live, Woman”は、アラン・トゥーサンの曲です。
その繋がりからか本作にはニューオーリンズのピアニストのジェイムズ・ブッカーも参加しています。
おすすめブルースアルバ⑥
Howlin’ Wolf – 『The Real Folk Blues』
今回ご紹介する20作品の中でも、一番僕が影響を受けたアルバムがこのハウリン・ウルフの『The Real Folk Blues』です。
というのは、本作収録の1~5曲目までを僕が20代の頃にやっていたブルースバンドで演奏していたからです。
特に2曲目の”Louise”は、僕が人生で初めてアドリヴでギターソロを弾いた曲だということもあって思い入れも深いです。
もちろんハウリン・ウルフの右腕だったギタリストのヒューバート・サムリンからは大きな影響を受けました。
他にもジミ・ヘンドリックスがカヴァーしたり、レッド・ツェッペリンの”The Lemon Song”の基となった”Killing Floor”や、ミシシッピ・シークスの曲をウルフ流にアレンジした”Sitting on Top of the World”に、その後ウルフに憧れるブルースマンのテイルドラッガーの芸名にもなった”Tail Dragger”等、カントリー・ブルースの良さを残したままモダン・ブルースに昇華したアルバムタイトルに偽りなしの名作に仕上がっています。
ちなみに『The Real Folk Blues』自体はシングル曲をまとめた企画盤で、他にもマディ・ウォーターズやサニー・ボーイ・ウィリアムソン二世にジョン・リー・フッカー等も同名のアルバムが残されています。
その続編の『More Real Folk Blues』とセットになった2in1のお得なCDもありますので、ぜひセットで聴いてみて下さい。
もちろんウルフのアルバムだけでなく『The Real Folk Blues』と題名が付けられたブルース・アルバムは「外れなし」の名盤ばかりですので、ウルフを聴いた後はマディやジョン・リーなんかも聴いてみましょう♪
ちなみに本作にはバディ・ガイがベースで参加していたりもします。
おすすめブルースアルバ⑦
James Cotton Blues Band – 『100% Cotton』
自分でも忘れてしまいそうになるのですが、ジェームス・コットンのこのアルバムも以前個別で取り上げていました。
ブルース・ハープ奏者ジェイムズ・コットンのファンキー・ブルース名盤『100% Cotton』を聴こう♪
詳しくはそちらのブログ記事を読んで頂きたいのですが、やはり「ロック好きも聴きやすいバンドサウンドがかっこいいブルース」ということでこのアルバムも外せませんね!
マディ・ウォーターズのバンドで成らした生粋のブルースハーピストのジェイムズ・コットンなのですが、本作では今の時代に聴いてもかっこいいファンキー・ブルースを演奏しています。
これがかっこいい楽曲ばかりで、ファンク好きの人にも「ブルースはちょっと嫌だな…」と聞かず嫌いしないでぜひ聴いて欲しい名盤です。
それに僕のようなギター好きには、ブルース界きっての職人ギタリストのマット・マーフィーが参加しているのも見逃せません!
ギターの上手さってアドリヴソロをバリバリ弾けることだけではありません!
バンドのアンサンブルを支えるようなリズムギターをしっかりと弾けることこそ、本物の上手さです。
マット・マーフィーはそういったことが完璧にこなせる名手でした。
ギターのバッキングにも注目して聴いてみて下さい。
本作のバンドサウンドを作り上げているのがマット・マーフィーであることがよくわかるかと思います。
おすすめブルースアルバ⑧
Jimmy Rogers – 『Chicago Bound』
御大マディ・ウォーターズがご登場する前に…先ほどのジェイムズ・コットンと同じくマディ・ウォーターズのバンドで成らしたギタリストのジミー・ロジャースの登場です!
“ジミー・ロジャーズ(Jimmie Rodgers)”と言えば「カントリー音楽の父」の方になりますが、こちらは味のあるブルースギタリストの方です。
特に本作の1曲目”You’re the One”は、その後幾つかのカヴァーを生んだ名曲です。
以前このブログでもご紹介していたシカゴ・ブルース界最強のリズム・セクション!ジ・エイシズの『黄金のシカゴ・ライヴ1975』でも取り上げられていましたね。
シカゴ・ブルース界最強のリズム・セクション!ジ・エイシズの『黄金のシカゴ・ライヴ1975』を聴こう♪
この曲だけでなく全体的にレイドバックしたような緩いブルース曲が魅力の作品です。
シカゴ・ブルースのお手本と言える名盤、それがこの『Chicago Bound』です♪
おすすめブルースアルバ⑨
John Lee Hooker – 『It Serves You Right to Suffer』
ブルースと言えばジョン・リー・フッカーは絶対に外せません!
ジョン・リーの名曲と言えば、”Boogie Chillen'”や”Boom Boom”に”Dimples”といった曲なのですが、本作にはそのどれもが収録されていません。
そういった代表曲に関してはベスト盤で聴くのが一番便利なのですが…
しかし1965年にリリースされた本作『It Serves You Right to Suffer』は、しっかりとしたバンドサウンドの下に作られたアルバムなので、ロックファンの初めての1枚としても聴きやすいと思います。
“Boogie Chillen'”や”Dimples”こそ収録されてはいませんが、1曲目の”Shake It Baby”からジョン・リーお得意のブギが炸裂します!
それ以外にも、ビートルズもカヴァーしたバレット・ストロングのロックン・ロール・ソング”Money (That’s What I Want)”をジョン・リー風のブギ仕立てで取り上げているのは聴きものです。
またジョン・リーが得意としたのはノリの良いブギ曲だけでなく、アルバム・タイトル曲の”It Serves You Right to Suffer”のような静かなスローブルースも得意でした。
底なし沼のような深いブルースにズブズブとハマっていきそうな感覚に陥ります。
ジョン・リーの歌もギターも絶頂期だった1965年の『It Serves You Right to Suffer』からブルースを始めてみてはいかがでしょうか?
おすすめブルースアルバ⑩
Junior Wells’ Chicago Blues Band – 『Hoodoo Man Blues』
先ほどご紹介していたジェイムズ・コットンと同じく、このジュニア・ウェルズもマディ・ウォーターズのバンドで研鑽を積んだファンキーなブルースハープ奏者です。
ジュニア・ウェルズを聴いて多くの人が思い起こすのは、ファンクのゴッドファーザーことジェームス・ブラウンでしょう。
しかし実はジェームス・ブラウンに影響を与えたのがジュニア・ウェルズの方なのです。
その辺は勘違いしない様に!
ジュニア・ウェルズの方が先です。
また本作にはジュニア・ウェルズの弟分でもあったバディ・ガイがギターで参加しています。
この2人は「リアル・ブルース・ブラザーズ」として何度も共演しているのですが、その中でも一番素晴らしいのが1965年に制作されたこの『Hoodoo Man Blues』です。
ジェームス・ブラウンっぽい1曲目の”Snatch It Back and Hold It”も、もともとはジュニア・ウェルズ自身のスタイルです。
むしろここでバディ・ガイが弾いている16ビートの単音カッティングが、JBバンドのジミー・ノーランやチーズ・マーティンに影響を与えたのでしょう。
他にもグレイトフル・デッドも取り上げていたサニー・ボーイ・ウィリアムソン一世の”Good Morning Little Schoolgirl”や、エルヴィス・プレスリーも取り上げていたブルースウーマンのビッグ・ママ・ソーントンの代表曲”Hound Dog”、オールマン・ブラザーズ・バンドも取り上げた”You Don’t Love Me, Baby”なんかもファンキー・ブルースにアレンジして取り上げています。
その中でも面白いのが、ジャズギタリストのケニー・バレルが書いた名曲”Chitlins Con Carne”をカヴァーしていることです。
原曲からジャズらしさを排して、更にイナタいブルース仕立てにアレンジしています。
オーティス・ラッシュやスティーヴィー・レイ・ヴォーンも取り上げたブルースマンに人気のナンバーですが、本作収録のバージョンがブルース・ミュージシャンのカヴァーでは一番だと思います♪
ファンキー・ブルースの一番の名盤と言えば、やはりこの『Hoodoo Man Blues』です!
もちろんファンキーな曲以外のスローブルースでも感情の籠ったバディ・ガイのギターが聴きどころです!
おすすめブルースアルバ⑪
Lightnin’ Hopkins – 『Mojo Hand』
『モジョ』とは、ブードゥー教における呪術のことで女性運を向上させる効能もあります。
いわゆる絶倫になる御呪いのようなもので、マディ・ウォーターズの名曲”Got My Mojo Working”も性的な意味合いを持つ曲です。
もちろんライトニン・ホプキンスの1962年の本作『Mojo Hand』もそういった意味合いです。
ドストレート!な下ネタのアルバム・ジャケットも凄いですがね。
さて、本作の収録曲の方は、歌とアコースティックギターが主役のシンプルなブルースで構成されています。
ライトニン・ホプキンス自体は独りで弾き語りをするカントリー・ブルースマンなのですが、本作に関してはベースやドラムも参加しているのでバンドサウンドとして聴くことが出来ます。
アコギだけでなく”Have You Ever Loved A Woman”なんかでは、ライトニン・ホプキンス自らピアノを弾き語ったりもしています。
この曲はビリー・マイルズが書いた曲で、フレディ・キングのお得意曲でもあります。
その後フレディから影響を受けたクラプトンの十八番にもなったブルースの定番曲です。
最近ではこの『Mojo Hand』の完全盤もリリースされました。
オリジナルの9曲が倍の曲数になり、全18曲収録されています。
その中にはフレディ・キングの”Hideaway”風の”Walk A Long Time”といったインスト・ナンバーも収録されていたりしますので、ぜひ完全盤で聴いてみて下さい。
おすすめブルースアルバ⑫
Little Milton – 『Grits Ain’t Groceries』
B.B.キングから直に影響を受けたようなゴスペル風の歌唱法に唸るようなスクィーズギターを演奏するのがリトル・ミルトンというブルースマンです。
あまりにも歌が上手いためギタリストであることを忘れてしまいそうなのですが、ギターの腕前も一流です。
1969年の作品『Grits Ain’t Groceries』が一番のおすすめ作品なのですが、ブルースというよりもかなりファンキーなR&B系のアルバムに聴こえます。
リトル・ミルトンはソウルシンガーばりに歌が上手すぎるため、ギターを差し置いてボーカルを主体に制作されたような曲が多かったりします。
そのため本作でも最初の2曲ではギターソロすら登場しません。
3曲目の”I Can’t Quit You Baby”でようやく咽び泣くようなスクィーズギターを聴くことが出来ます。
その後レッド・ツェッペリンが取り上げることになるこの曲は、ブルースベーシストにして作曲家のウィリー・ディクソンが書いた楽曲です。
オーティス・ラッシュの演奏がブルースマンの中では一番有名なのですが、本作のリトル・ミルトンも負けてはいません!
洗練されたギターソロは相当な腕前です!
ちなみに本作収録曲の”Did You Ever Love A Woman”は、ビリー・マイルズ作のフレディ・キングのお得意曲”Have You Ever Loved a Woman”のことですが、このタイトルにしたのはB.B.キングの影響でしょうか。
B.B.キングも50年代に”Did You Ever Love A Woman”というタイトルで歌っています。
ブルース色よりもR&B色が濃いので、ソウル好きの人も聴きやすいアルバムだと思います。
リトル・ミルトンの歌だけでなくギターにも注目して欲しい作品です♪
おすすめブルースアルバ⑬
Little Walter – 『Confessin’ the Blues』
ジェイムズ・コットンやジュニア・ウェルズの前にマディ・ウォーターズのバンドでブルースハーピストを務めていたのがこのリトル・ウォルターです。
シカゴ・ブルースの3大ボスと言えば、マディ・ウォーターズとハウリン・ウルフとこのリトル・ウォルターのことです。
代表曲”Juke”が収録されていないのが難ですが、アルバムとしてはこの『Confessin’ the Blues』が良いかと思います。
1953~1963年の音源をまとめて70年代にリリースされた編集版ではありますが、オリジナル・アルバムといって良いでしょう。
収録曲の録音時期が様々なので参加しているミュージシャンも色んなブルースマンが登場するのですが、それでも全体の統一感があるので聴きづらくはないと思います。
もともと15曲収録と、ただでも多かった収録曲に、CD化の際に6曲ものボーナストラックが追加され21曲にまで拡張されています。
その中でもロックンロールなノリが良い”Rocker”やエアロスミスもカヴァーした”Temperature”やエリック・クラプトンも取り上げたアーサー・”ビッグ・ボーイ”・クルーダップがオリジナルの”Mean Old Frisco”等が聴きどころです。
本作もシカゴブルースのお手本のようなバンドサウンドを聴くことが出来るおすすめ作品です♪
おすすめブルースアルバ⑭
Lowell Fulson – 『Tramp』
B.B.キングにも影響を与えたローウェル・フルソンがここで登場です!
1967年の『Tramp』は、やはりフルソンを代表するアルバムですね。
フルソンがピアニストのジミー・マクラクリンと共作したタイトル曲の”Tramp”もバンドやセッションで人気の曲です。
僕自身は演奏したことがないのですが、対バン相手でこの曲を演奏する人らもちょくちょくいました。
ロックファンにも聴きやすいキャッチーな楽曲ですが、ギターソロはブルースそのものだったりします!
他にもゴージャスなホーンに導かれイナタいフルソンのギターで始まる”Black Nights”や、”Tramp”と似た”No Hard Feeling”なんかがかっこいい曲です。
どうしても”Tramp”が名曲過ぎて目立ちますが、モダンブルースの名作としてアルバムを通して聴いてみて下さい♪
おすすめブルースアルバ⑮
Magic Sam Blues Band – 『West Side Soul』
バディ・ガイやオーティス・ラッシュと並ぶモダン・ブルース・ギタリストの新御三家のひとりマジック・サムの1作目にして歴史的名盤『West Side Soul』は絶対に外せません!
アルバムの1曲目がいきなりソウル調の”That’s All I Need”で始まるですが、最初聴いた時は驚きました!
しかし長く聴いているとむしろこの1曲目がないと聴けなくなってしまうぐらい愛着が沸いてきます。
本作の真骨頂は2曲目の”I Need You So Bad”から始まるマジック・サムのギターのレベルの高さです!
もちろんゴスペル調の歌唱力の高さも魅力的なのですが、しかしそれよりもマジック・サムはギターの上手さもピカイチなのでそちらに注目して聴いてみて下さい!
それは5曲目”I Don’t Want No Woman”で聴けるB.B.キング風の弾き方や、「ブルーム調」を上手く使った”Sweet Home Chicago”なんかで聴くことが出来ます。
なんともオリジナリティー溢れる個性的な演奏が収録されたアルバムなのですが、なんと本作にマジック・サムの自作曲は”That’s All I Need”と”I Feel So Good (I Wanna Boogie)” に”All Of Your Love” 、”Lookin’ Good” のたったの4曲しかありません。
それでいてこのオリジナリティー!
個性が強すぎます!
ブルース好き、特にモダン・ブルース・ギター好きは絶対に聴きましょう!
おすすめブルースアルバ⑯
Muddy Waters – 『Folk Singer』
ここでようやくマディ・ウォーターズのご登場です!
マディの代表曲を聴くのであれば、やはり『Best Of Muddy Waters』が最適だと思うのですが…
今回は敢えてベスト盤抜きでご紹介したいと思いました。
ロバート・ジョンソンの代わりにアラン・ローマックスによる国会図書館のフィールド・レコーディングで見いだされたマディだけに、今回はアコースティック・ギターが中心となったバンドサウンドを聴くことが出来る1964年の『Folk Singer 』を選びました。
アコースティックによる静かな演奏ばかりなのですが…
ギターにバディ・ガイ、ピアノにオーティス・スパン、ベースにウィリー・ディクソン、ドラムにフランシス・クレイといったシカゴブルース最強のメンバーが揃っているので、ブルース界最高峰のバンドによるアンサンブルを楽しむことが出来ます。
マディの代表曲の”Long Distance Call”や”Country Boy”に”Feel Like Going Home”なんかも収録されています。
またサニー・ボーイ・ウィリアムソン一世の”Good Morning Little Schoolgirl” もアコースティック・バンドで演奏しています。
さて、本作には1993年と1999年の再発の際にいくつかのボーナストラックが追加されています。
その中でも10曲目のThe Same Thing”と11曲目の”You Can’t Lose What You Never Had”は必聴です!
この2曲は2003年のブルース生誕100年(正確には録音されてから100年)を祝った一連のブルースプロジェクト映画のテーマ曲に選ばれていました。
この曲ではエレキギターを弾いているのですが、マディのスライドギターが心に染み渡る名ブルース曲です♪
『Best Of Muddy Waters』には収録されていませんが、名曲ですのでぜひ聴いてみて下さい♪
おすすめブルースアルバ⑰
Otis Rush – 『Right Place, Wrong Time』
オーティス・ラッシュと言えば、コブラ録音を集めた編集盤が一番有名なのですが、今回はバンドサウンドを楽しめるブルースということで『Right Place, Wrong Time』を選びました。
本作の録音は1971年に済ませていたのですが、その後なぜか5年間お蔵入りとなっていた不遇のアルバムです。
1976年に正式にリリースされて以来、その出来の良さにコブラ録音に次ぐスタジオ・アルバムの代表作となっています。
むしろコブラ録音は濃い過ぎるので、ブルース初心者にはこちらの方が聴きやすくおすすめです。
アイク・ターナーの書いた1曲目”Tore Up”から勢いよく始まります!
その後アルバムは3曲のオーティス・ラッシュのオリジナル曲を挟んでトニー・ジョー・ホワイトの名バラード曲”Rainy Night in Georgia”へと移ります。
ブルック・ベンントンの歌った”Rainy Night in Georgia”のイントロのギターはコーネル・デュプリーが弾いていましたが、本作ではフレッド・バートンというギタリストがコーネルを意識したかのようなフレージングで弾いています。
ただこの曲に関しては、ブルースというよりもR&Bやロックに近いですね。
聴きやすい曲ですが、もはやブルースではないような気がします⁉
次にアルバート・キングの”Natural Ball”を挟み、本作最大の聴きどころ”I Wonder Why”が始まります。
晩年までラッシュのライヴで定番だったこの曲はメル・ロンドンの手によって書かれています。
ジョン・リー・フッカーの従兄のアール・フッカーが名演を残しているのですが、ラッシュはおそらくアール・フッカーの影響でこの曲を取り上げたのでしょう。
一時期ラッシュがストラトキャスターを使っていたのも、アール・フッカーが使っているのを見て影響受けているぐらいですからね。
ちなみにジミ・ヘンドリックスがストラトキャスターを使い始めたのはバディ・ガイに憧れてなのですが、そのバディ・ガイがストラトキャスターを使うきっかけもアール・フッカーでした。
ということは、今日のロック界におけるストラトキャスター人気を築いたのは、元を辿ればアール・フッカーだったと言えなくもないですね。
“I Wonder Why”はインスト曲ですが、他の楽曲ではラッシュの高い歌唱力を堪能できます。
オーティス・ラッシュを聴くならまずはこの『Right Place, Wrong Time』から聴き始めてみてはいかがでしょうか?
おすすめブルースアルバム⑱
Robert Jr. Lockwood – 『Steady Rollin’ Man』
伝説のロバート・ジョンソンが母親と付き合っていたためロバート・Jr.・ロックウッドと呼ばれていますが、血の繋がりはありません。
それどころかロバジョンともたったの4歳しか離れていません。
ロバジョンは自分を世話してくれる年上の女性が好きだったようです。
しかしギターに関しては直接ロバジョンから伝授されたようで、ロックウッドはブルース界でも随一のテクニックを誇る名手でした。
残念ながら2006年に亡くなってしまいましたが、僕がブルースを聴き始めた頃はB.B.キングよりも遥かに年上で現存する有名なブルースマンでは一番の年長者でした。
ロックウッドが90歳を超えてもなお現役でブルースを歌っていたのは「長生きするもんだな~」と若い僕に希望を与えてくれました。
そんなロックウッドの名作と言えばこの『Steady Rollin’ Man』が一番です!
シカゴ・ブルース界最強のリズム・セクション!ジ・エイシズがバックを固めた鉄壁のバンドサウンドが魅力です♪
ロックウッドの代表曲”Take A Walk with Me”や、ロバジョン直伝の”Steady Rollin’ Man”に”Ramblin’ on My Mind”と”Kindhearted Woman Blues”等、職人ミュージシャン達による最高峰のブルースを楽しむことが出来ます♪
また”Steady Groove”や”Lockwood’s Boogie”に”Tanya”の3曲のインストも聴きもので、ロックウッドとジ・エイシズの相性の良さが伺えます。
とにかく「演奏が上手いブルースを聴きたい!」といった人におすすめの作品です。
レベルの高い完璧なアンサンブルを堪能できるブルース・アルバムですよ♪
本作を聴いた後にはぜひとも伝説の来日公演を収録したライヴ盤『Blues Live In Japan』も聴いてみて下さい♪
70年代の来日公演で聴くおすすめブルース・ライブ名盤3選
おすすめブルースアルバム⑲
Sonny Boy Williamson II – 『Down and Out Blues』
上記でも何度か名前だけ登場していたサニー・ボーイ・ウィリアムソン二世は、本名をアレック・”ライス”・ミラーと言いブルース界を代表するハープの名手でした。
しかしその芸名は、先に人気だったサニー・ボーイ・ウィリアムソン一世にあやかって勝手に二世を名乗ったというインチキ臭いモノでした。
ハウリン・ウルフには「今度会ったらブン殴ってやる!」と怒りを買ったりと、性格に難があったようですが、ブルースの腕前は一流です!
なんなら本家サニー・ボーイ・ウィリアムソン一世にも勝るほどの実力を持っています。
むしろ「サニー・ボーイ・ウィリアムソン」と言えば通常は二世のライス・ミラーを指す場合が多いです。
一世の方には”Good Morning Little Schoolgirl”という名曲がありましたが、二世の方も負けていません!
“Don’t Start Me To Talkin'”や”Keep It To Yourself”に”Cross My Heart”やLet Me Explain” 等、ブルース界を代表するような名曲が数多く存在しています。
そういった楽曲が収録されているのがこの『Down and Out Blues』というアルバムです。
ブルースの名盤を紹介した本があれば必ずのように掲載されている程の「これを聴かずしてブルース語るなかれ!」といった有名な作品でもあります。
またバックを支えるバンドメンバーも豪華で、”Don’t Start Me To Talkin'”には、オーティス・スパンにジミー・ロジャースやウィリー・ディクソンなどマディ・ウォーターズ・バンドのメンバーが参加しています。
インチキ臭い芸名に怪しい顔つきではありますが、『本物のブルース』を歌えるブルースマンであることは間違いありません!
ブルースが好きなら必ずこの『Down and Out Blues』は聴いておきましょう。
おすすめブルースアルバム⑳
T-Bone Walker – 『T-Bone Blues』
「モダン・ブルース・ギター」の父ことT-ボーン・ウォーカーも数多くの名曲を残したブルースマンです。
ペンタトニック・スケールのみを使ってブルースギターを弾くスタイルを一番最初に有名にした人物です。
(※一番最初にこのスタイルを発見したのが誰かはわかっていません。T-ボーンは自分が発見したと言っていますが…怪しいところです。)
B.B.キングを始め、エリック・クラプトンにジョニー・ウィンターにスティーヴィー・レイ・ヴォーンに至るまで…それ以降のブルース系のギタリスト全員に影響を与えたと言っても過言ではありません。
もちろん僕自身も間接的にT-ボーン・ウォーカーから影響を受けたといって良いでしょう。
面白いことにモダン・ブルース・ギターの基を作ったと言えるT-ボーン・ウォーカーと、モダン・ジャズ・ギターの基を作ったと言えるチャーリー・クリスチャンは仲が良かったようです。
そんなT-ボーン・ウォーカーのアルバムで僕がおすすめしたいのは、1959年の『T-Bone Blues』です。
代表曲の”Mean Old World”と”Stormy Monday”の決定版がこのアルバムには収録されています。
ちなみに僕がブルースバンドやっていた時にこのバージョンの”Mean Old World”をカヴァーしていたこともあります。
チャーリー・クリスチャンと仲が良かったためなのか?ジャズとブルースの垣根がそこまでなかった時代のブルースマンだったためなのか?
ちょっとしたジャジーなセンスが感じられる楽曲は、他のモダン・ブルースマンの作品と比べるとかなり洗練されて聞こえます。
しかも本作にはジャズギタリストのバーニー・ケッセルが”Evenin'”と”Two Bones and a Pick”や”Blues Rock”の3曲に参加してギターを弾いています。
ジャズギタリストのバーニー・ケッセルが参加してるの?と思いますが、バーニー・ケッセル自体もブルース風のチョーキングを用いた奏法で弾いていたりしますからね。
それに面白いことにギブソン社がバーニー・ケッセルのためにシグネチャーモデルのギターを作ったのですが、本人はあまり使うことがなく、なぜかT-ボーン・ウォーカーがメインギターで使うようになりました。
バーニー・ケッセル・モデルのギターは、本人よりもT-ボーン・ウォーカーやジャズファンク・ギタリストのアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズやフレディ・ロビンソン等が使ったことで有名です。
洗練されたモダンブルース・ギターを聴きたい人は、まずはこのT-ボーン・ウォーカーの『T-Bone Blues』から聴き始めて下さい。
アーティスト名のアルファベット順なのでたまたまではありますが、今回最後にご紹介するアルバムが「モダン・ブルース・ギター」の父T-ボーン・ウォーカーで終われたのはとても良かったと思います。
以上、【ブルース初心者に聴いて欲しいおすすめの名盤20選をご紹介します。】でした。
20作品と、いつもより多めにご紹介しましたがどれもブルースの歴史に残る名盤ばかりです。
でもいきなり20作品全てを揃えて一気に聴いていくのはかなり大変だと思います。
そこでまずはどれか1~3作品を自分の好きなアルバム/気になるアルバムから購入して聴いてみてください。
最初の1枚を選ぶ時の判断は、好きなロック・ミュージシャンがカヴァーしていた曲の原曲が収録されているからとか、ジャケ買いとか何でも良いと思います。
まずは1つずつ聴いてみて、最終的にはここに載っている20作品だけでなく他の作品やブルースマンも聴いてみましょう。
もし今回僕が書いたこのブログ記事の文章を参考にブルースを好きになってもらえたら一番嬉しいことです。
僕は自分がブルースを聴き始めた10代の頃に、誰ともブルースについて話すことが出来ずに孤独な思いを経験しました。
でもその孤独を嘆くのではなく、むしろこれからブルースを聴き始める人たちが僕と同じような体験をしないで欲しいと思うので、こうやってブログ記事でブルースをご紹介することで1人でも多くの人が「当たり前」のようにブルースを聴くようになってもらいたいと思いました。
「音楽が好きならみんな共通でブルースの話を出来る!」といった世の中になれば最高だな~と思います。
このブログ記事をブックマークとかしてもらって、いつでも読める『ブルース初心者のためのガイドブック』として使ってもらえたら幸いです。
ちなみに今回は『これからブルースを聴いてみたいと思うブルース初心者の方向け』に書きましたが、これまでにもいくつかのブルース作品についてこのブログでも取り上げていますので、ぜひ“Blues”のタグから過去記事も読んでみて下さい。
それと今も続けているシリーズなのですが、僕がiPadで描く『iPadで描くブルースの偉人シリーズ』というイラストを描いたブログ記事もありますので、ぜひ読んでみて下さい。
伝説のデルタ・ブルースマン『ロバート・ジョンソン』の絵をiPadで描いてみました
それでは「良いブルース人生」を!
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