2018/12/04
【ファンクおすすめの名盤シリーズ③】ザ・ミーターズ初期の名盤3選+α
【ファンクおすすめの名盤シリーズ③】
シリーズ第三回はニューオーリンズ・ファンクを代表するバンドのザ・ミーターズ!
今年の9月から新たに始めたブログ記事シリーズの【ファンクおすすめの名盤シリーズ】第三回目です。
少し更新のペースは遅いかも知れませんが、ブログ内検索用に「Funk名盤シリーズ」のタグも作りましたので、今後も続けていきたいと思います。
まだまだご紹介したいファンクバンドは山ほどありますので、ぜひ今後もこのシリーズを読んで頂けたら嬉しいです。
ひとりでも多くの人に、素晴らしいファンクバンドを知ってもらって、聴く人が増えてくれたら…と願っています。
さて第一回、第二回と、どちらかというと歌モノのファンクバンドのご紹介でしたが今回はインスト・ファンク・バンドの定番「ザ・ミーターズ」のご紹介をしたいと思います。
ミーターズは、アメリカ南部のジャズ発祥の地として知られているルイジアナ州のニューオーリンズにて結成された4人組のインストバンドです。
オリジナルメンバーは、オルガン奏者のアート・ネヴィルにギターのレオ・ノセンテリ、ベースのジョージ・ポーターJr.とドラムのジョー“シガブー”モデリスト(以下:ジガブー)になります。
オルガンが主体のインスト・バンドとしては、先にデビューしていたブッカー・T&ザ・MG’sと同じ4人編成なのですが、ミーターズの方が彼らに影響を受けた形になります。
しかしMG’sよりも、ドラムのシンコペーションを利かせたビートを従えてよりディープなグルーヴが醸し出されたバンドとなっています。
ニューオーリンズの「セカンド・ライン・リズム」
それはニューオーリンズという地に根付く「セカンド・ライン・リズム」というビートによるものです。
「セカンド・ライン・リズム」とは、ニューオーリンズのブラスバンドを伴った伝統的なパレードの名称で、2列に揃ってパレードをすることから「セカンド・ライン」と呼ばれています。
この独特のネチっこいビートがニューオーリンズ系のバンド…特に同地出身のドラム奏者の特徴となっています。
例に挙げると、僕のブログでよく登場するジャズファンク系のドラマーのアイドリス・ムハマッドや…
ルー・ドナルドソンのソウルジャズ作品『Hot Dog』を聴こう!
ジャズ系ドラマーだと、フリージャズまでこなしちゃうエド・ブラックウェルなんかもそうです。
Fire Waltzの衝撃!エリック・ドルフィー怒涛のファイヴ・スポットでのライヴ録音!
彼らのドラム演奏から、シンコペーションを利かせた独特のビートを感じることができます。
そういったわけで、このミーターズもやはりドラムが重要なバンドだと思います。
ていうか、ミーターズ好きの方は僕も含め多くの人がジガブーのドラム目当てで聴いているんじゃないかな?…と。
コード楽器がギターのみで音がスカスカにはなっていますが、そこはギターを歪ませて派手な演奏でカヴァーしていました。
オルガンが特徴のバンドではあるのですが…最悪の場合オルガンなしでもなり立っちゃうのがミーターズの楽曲でもあります。
僕もバンドやセッションで自分がミーターズの曲を演奏することがしょっちゅうあるのですが、オルガンありでミーターズの曲を演奏した経験ってほとんどないぐらいです。
それぐらいギター+ベース+ドラムの3つの楽器が重要な役割をしていると言えるバンドです。
そんなわけで、ミーターズを聴く際はベースとドラムのリズム隊が醸し出すグルーヴと、その上でメロディアスなリフを弾くギターとのアンサンブルを楽しむのが良いかと思います。
それでは、今回はインスト・バンドだった初期のミーターズの3枚のアルバムと1枚のコンピレーションアルバムをご紹介したいと思います!
初期のミーターズを聴こう♪
今回ご紹介したいのは、『The Meters』、『Look-Ka Py Py』、『Struttin’』、『Zony Mashの4枚のアルバムです。
ミーターズは、初期の3枚のアルバムの頃はインスト・バンドでした。
しかし時代の流れに合わせて4枚目のアルバムから歌モノ・バンドに変化していきました。
もちろん僕は歌モノ・ミーターズも大好きなのですが、しかし歌モノ・ファンク・バンドというカテゴリーで考えたら、以前ご紹介していたオハイオ・プレイヤーズやクール&ザ・ギャングにアース、ウィンド&ファイアーの方がミーターズよりもレベルが高いと思います。
そう考えると、このインストをやっていた初期の頃こそがミーターズの本来の姿なのでは?と思います。
なので、このインスト・バンド時代のミーターズを多くの人に聴いてもらいたいと思います。
ちなみに4枚目以降のレオ・ノセンテリは、ジミ・ヘンドリックスの登場に衝撃を受けてジミヘン風のギター演奏をするようになっていきます。
しかし皮肉なことに、アマチュア時代のジミヘンが「こういう風なギター演奏を弾けるようになりたい!」と憧れたギタリストが実はR&Bバンドでセッションマンとして働いていた頃のレオ・ノセンテリだったりします。
初期のミーターズ時代のレオ・ノセンテリは、派手なギターソロを弾くことがなかったので、どうしても評価が高くないようにも感じますが…
その独特のリズム感、「間」を活かした休符の使い方、メロディアスなリフの組み立て方、ソウルマナーのバッキングなどギタリストにとってソロ演奏以上に必要な要素を学べる格好の教材だと思います。
そんなレオ・ノセンテリのギター演奏が一番個性的だったのがこの時代のアルバムになります。
これ以降は、少しだけジミヘン風になっていたりしますので…。
やはりその人にしかないオリジナルな個性を聴きたいですよね!
それでは今回は、ザ・ミーターズのインスト・ファンク期の名盤3枚をご紹介したいと思います!
※「ファンク曲」を中心にご紹介してます。バラード曲に関しては感想を省います。
1枚目のおすすめファンクアルバム – 『The Meters』
1枚目にご紹介するのは、1969年にリリースされたミーターズのデビュー作です。掛け声(?)が曲の始まりや曲間にあったりしますが、基本は歌なしのインスト曲ばかりです。特に1曲目”Cissy Strut”は、今ではファンク/ジャズファンク系のセッションでは定番のスタンダード曲になりました。もとはと言えばこの曲は、ライヴの休憩中にBGM代わりに演奏していた曲らしいです。それがいつの間にかスタンダード曲にまで上り詰めたのが凄いですよね!それもこの曲のシンプルさに魅力があるお陰なんじゃないかな?と感じます。キーはC(ドの音)で、Bパートのテーマの途中でB♭とFが出てきますが、そこ以外はずっとC7コード一発です。楽器初心者にもわかりやすいシンプルな楽曲構成に、一度聴いたら耳から離れないような印象的なテーマメロディー、そしてどの楽器でも演奏しやすいCを中心にしたスケールで延々とアドリヴが出来てしまう…という魅力があります。それでいてベースやドラムはファンキーなので、上手くグルーヴするのはそんな簡単ではなかったりします。よく「ずっとC7だけなんでつまらない曲…」という声をセションなんかで耳にすることがあるのですが、それってその人にアイデアがないだけなんじゃないのかな?と感じることがあります。シンプルなが曲だからこそ、自由度は高いのだから色んな事が試せる曲だと思います。ギターにしても、ソロはペンタトニックだけじゃなくって、ミクソリディアンにリディアン7thにホールトーンにオルタードなど色んなスケールを使えます。バッキングもギターの指板の構造を利用してオクターヴ違いで様々なトーンのC7を弾けると思います。6、5弦ルートだけでなく4、3弦ルートのスモールコードにダブルストップでも良いと思います。それかベースと似たラインをリフで弾くとか、アイデア次第でいくらでも自分だけのオリジナルな”Cissy Strut”って弾けますからね。…ってギターの話になってしまいましたがこの曲の素晴らしさは、そのシンプルさと印象的なメロディーにあると思います。そんなシンプルな曲でもジガブーのドラムはバカスカ♪やってますからね。さて2曲目の”Here Comes The Meter Man”もかっこいいファンク曲です。曲名通り「ミーターズがやって来た!ヤァヤァヤァ!」な感じなのですが、なぜこの曲がアルバムの1曲目じゃないんだろう?と言うのがずっと僕の中での疑問です。”Cissy Strut”の方が2曲目にあってる気がするのですが…。”Here Comes The Meter Man”は、ワウペダルを使ったギターソロも聴けます。この頃のシンプルなギターソロの方がかっこいいですよね。最近のレオは、なぜか速弾きばかりなのがいただけない。そんなワウギターもかっこいいのですが、この曲の一番の聴き所はなんといってもジガブーのドラムです!曲の終盤でオルガンとギターがテーマを弾き終わった後に、他の楽器陣がストップしてドラムのみが叩いている箇所があるのですが、そこが凄いです!他にもザ・ニュー・マスターサウンズがカヴァーした”Live Wire”やグラント・グリーンがカヴァーした”Ease Back”もオルガンとギターのゆったりしたテーマとは裏腹に叩きまくるドラムがかっこいいファンク曲です♪そしてアルバム最後に収録されたスライ&ザ・ファミリーストーンのヒット曲”Sing A Simple Song”のインスト・カヴァーもオリジナル以上にかっこいい演奏に仕上がっています。ミーターズのデビュー作でにして、僕個人としてはこれが最高傑作だと思う、おすすめのインスト・ファンク作品です。
2枚目のおすすめファンクアルバム – 『Look-Ka Py Py』
故障した車のエンジン音を真似た(らいい?)ユーモラスなコーラスが特徴的な代表曲”Look-Ka Py Py”を収録した1969年リリースの2作目『Look-Ka Py Py』です。1曲目からミーターズ・ワールドが展開されていますが、この作品も聴き所の多い名盤だと思います。3曲目の”Pungee”や4曲目の”Thinking”に5曲目の”This Is My Last Affair”や8曲目の”Little Old Money Maker”など、ゆったりとした楽曲が1stの頃よりも更にポップで聴きやすい印象です。そのどれもがゆったりしたシンプルなオルガンメロディーに反してドラムが叩きすぎている!っていう。ところでこの作品は、タイトルトラックの”Look-Ka Py Py”と肩を並べる看板曲がもう1曲収録されています!それはザ・ニュー・マスターサウンズもカヴァーした”Funky Miracle”です。もう曲名からしてファンキーなのですが、これこそまさに初期ミーターズの最高傑作だと僕は思っています。ギターのリフがミーターズの楽曲の中でもトップクラスにかっこいいんです♪またそんなかっこいいギターリフと上手く絡み合うオルガンとベース、そして暴れまくるドラム!異常にかっこいいファンク曲ですので、ぜひファンク好きだけどまだ聴いたことないって方は、急いでこの曲を聴きましょう!特にファンク曲を練習している楽器演奏者は必須の曲です!カヴァーしましょう!ギターとベースは学ぶこと凄く多い曲だと思います!ドラムの方は…ちょっとジガブーをそのまま真似するのはさすがに難しすぎるので、無理せず出来ることから頑張りましょう!とにかく名曲多数収録の名盤2ndアルバムですが、その中でも”Funky Miracle”は飛び抜けてかっこいい曲ですのでおすすめです!!!!
3枚目のおすすめファンクアルバム – 『Struttin’』
オリジナルアルバムとしては、インスト期最後の作品になる1970年リリースの3作目『Struttin’』です。このアルバム以降、歌モノ・ファンク・バンドへと変化していきます。しかしこの3作目の時から既に歌モノへの変化が聴くことが出来ます。アート・ネヴィルが歌う3曲目の”Witchita Lineman”や、メンバー全員がコーラスする6曲目の”Same Old Thing”に、クラブなんかでも人気の7曲目の”Hand Clapping Song”に8曲目のバラード曲”Darling Darling Darling”や12曲目の”Ride Your Pony”なんかが歌モノです。ちなみに”Witchita Lineman”は、ジミー・ウェッブが作曲しグレン・キャンベルが1968年にヒットさせた曲で、”Ride Your Pony”はニューオーリンズを代表するミュージシャンのアラン・トゥーサンが作曲しリー・ドーシーが歌った曲です。”Ride Your Pony”の作曲者クレジットに”Naomi Neville”と記載があるのは、当時アラン・ドゥーサンがよく使っていた母親の旧姓を利用したペンネームです。この頃の歌モノは、まだR&B曲を元にした感じです。4枚目のアルバム以降は、ミーターズのオリジナルな歌モノ楽曲が増えていくのですが、ロックからの影響が強くなっていきます。なので、こういったR&B系の歌モノ楽曲が聴けるのはこのアルバムが最初で最後になります。インスト・ファンクが聴けるのもこの作品が最後となるのですが、しかし1曲目の”Chicken Strut”に2曲目の”Liver Splash”や9曲目のファンキーなチキン・スクラッチ・ギターが面白い”Tippi-Toes”などインスト曲も素晴らしい出来です♪特に1曲目の”Chicken Strut”は、インスト・ミーターズの集大成のような楽曲です。ジガブーが鶏の声真似をしながらドラムをバカスカ叩く様はなんともユーモラスです。コミカルな鳴き声物真似しながらもの凄いファンキーなドラムを叩いているっていうこのギャップがね。どうしても先の2作と比べると印象が薄くなりがちなのですが、これもインスト期の名盤のひとつですので、忘れずに聴いて欲しい作品です!
以上が今回僕がご紹介したかった【ザ・ミーターズ初期の名盤3選】でした。
やはりミーターズと言えば、この初期の3作だと思います!
ぜひインスト・ファンクの名盤3作品を聴いてみて下さい♪
オマケ
ブログタイトルにある【ザ・ミーターズ初期の名盤3選+α】の「+α」の部分のご紹介です。
当時のミーターズには、アルバム未収録のシングル盤が多く存在しています。
先にご紹介していた3枚のオリジナルアルバムだけでも十分なぐらい素晴らしい出来なのですが、しかしアルバム未収録のシングル曲にも素晴らし名曲がたくさん存在しているのもミーターズというバンドの困ったところです。
そんな悩みを解決してくれる素晴らしコンピレーション・アルバムが2003年にリリースされました!
それが『Zony Mash』というアルバムです。
アルバムジャケットの謎の組体操系の写真こそ「もっと他の写真はなかったの…?」という感じではありますが、中身の楽曲は本当に最高です♪
この中のいくつかの曲は、先の3作品がライノ・レーベルからリマスターで再発される際に、ボーナストラックとして収録されているので、楽曲の被りもいくつかあります。
それでは、『Zony Mash』の収録曲の中で僕の好きなおすすめの楽曲のご紹介をしたいと思います。
1曲目の”Zony Mash”は、レア・グルーヴ系のワウギターがかっこいいファンク曲です。
2ndアルバムに収録されていても良かったんじゃないかな?と思える良曲です。
レオ・ノセンテリってワウギターを滅多に弾かないんですが、かなりの上手さだと思います!
4曲目の”A Message From The Meters”もレオのワウギターがかっこいい曲です。
この曲はインストではなく全員がコーラスを歌う歌モノです。
ちなみにオルガン奏者のレオン・スペンサーもこの曲をカヴァーしていたりします。
6曲目の”Soul Machine”は、1stアルバムがリマスター再発された際にボーナス・トラックとして収録されていたソウルジャズ系の曲です。
ゲストでサックスがソロを吹いているのですが、「これ本当にミーターズなの?」と思うようなオシャレな楽曲です♪
7曲目の”(The World Is A Bit Under The Weather) Doodle-Oop”は、最近の再結成されたミーターズのライヴでも定番の歌モノ・ファンク曲です。
ギターのリフがすごくかっこいい曲ですね♪
8曲目の”Good Old Funky Music”と11曲目の”Groovy Lady”は、個人的にすごく思い出深い曲なんです。
20代の頃僕がやっていたバンドでこの2曲をカヴァーしていたからです。
どちらの曲も僕の好きなワウギターが大活躍するレア・グルーヴ系の楽曲です。
特にワウギターのリフがかっこいい”Groovy Lady”の方は、ライヴでの受けもよかったので、ライヴの1曲目によく演奏していました。
以上、アルバム未収録のシングル曲を集めたコンピレーション・アルバムなのですが、インスト期のミーターズを知るためには外せないような名曲が多数収録されていますので、先の3作を聴いた後はぜひこのアルバムも聴いてみて下さい♪
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