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カテゴリー:Music

2018/12/02

グローバー・ワシントンJr.のデビュー作にしてジャズファンク名作『Inner City Blues』を聴こう♪

フュージョン/クロスオーヴァー系サックス奏者のグローバー・ワシントンJr.のデビュー作

実はジャズファンク作品でデビューしていた!

今回ご紹介するのは、フュージョン/クロスオーヴァー系サックス奏者のグローバー・ワシントンJr.の作品になります。

 

グローバー・ワシントンJr.と言えば、セッションでも定番曲”Just The Two Of Us”を収録した名盤『Winelight』で有名ですよね。

 

僕もあの作品は大好きなのです。

 

しかし今回僕がご紹介したいグローバー・ワシントンJr.の作品は、彼のデビュー作になります。

 

1971年にリリースされたグローバー・ワシントンJr.の初リーダー作は、実はソウルフルなカヴァー曲で構成されたソウルジャズ/ジャズファンク系の名作でした。

 

一応僕のこのブログではソウルジャズ/ジャズファンク系の作品はまとめて”Jazz Funk”としてタグ付けしています。

 

なのでこの作品も「ジャズファンク」として扱いたいと思います。

 

それではグローバー・ワシントンJr.のデビュー作にしてジャズファンク名作『Inner City Blues』をご紹介したいと思います。

 

 

 

Grover Washington Jr. – 『Inner City Blues』

01.Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)
02.Georgia On My Mind
03.Mercy Mercy Me (The Ecology)
04.Ain’t No Sunshine
05.Until It’s Time For You To Go
06.I Loves You Porgy

 

Personnel:
Grover Washington Jr. – Tenor Saxophone, Alto Saxophone
Eugene Young, Thad Jones – Trumpet, Flugelhorn
Wayne Andre – Trombone
Don Ashworth – Baritone Saxophone
Bob James – Electric Piano
Richard Tee – Organ
Eric Gale – Guitar
Ron Carter – Bass, Electric Bass
Idris Muhammad – Drums
Airto Moreira – Percussion
Hilda Harris, Marilyn Jackson, Maretha Stewart, Tasha Thomas – Vocals

 

Recorded: September, 1971.

 

『Inner City Blues』を制作するきっかけ

この作品を制作する当時は、まだグローバー・ワシントンJr.はレコード店で棚卸のアルバイトをしながら音楽活動を行っていたようです。

 

その傍らでオルガン奏者のジョニー・ハモンドやレオン・スペンサーのレコーディングなどでサイドマンとして参加していました。

 

どことなくクールなジャズファンク盤レオン・スペンサーの『ルイジアナ・スリム』を聴こう♪

レコーディングにサイドマンで参加しているうちに、音楽プロデューサーのクリード・テイラーの目に留まるようになります。

 

そしてクリード・テイラーの手によってKUDUレーベルの第三弾作品としてグローバー・ワシントンJr.のデビュー作を制作することが決定しました。

 

それがこの『Inner City Blues』です。

 

アルバム参加メンバーもエレピにボブ・ジェームス、オルガンにリチャード・ティー、ベースにロン・カーター、ギターにエリック・ゲイル、ドラムにアイドリス・ムハマッド、パーカッションにアイアート・モレイラと…当時のクロスオーヴァー系の最高峰のミュージシャンが集められています。

今考えると豪華すぎる面子ですよね!
しかし彼らも当時はまだまだ駆け出しの若手でしたからね。

 

エリック・ゲイルにリチャード・ティーと言えば、どうしてもStuffを思い出してしましますが、この作品ではリチャード・ティーはオルガンに専念しています。

 

いつものフェイザーを聴かせたフェンダーローズの音色は聴けません。

 

それでは曲紹介にいきたいと思います。

 

 

 

 

アルバムの内容

本作に収録された全6曲は全てカヴァー曲になります。

 

グローバー・ワシントンJr.のオリジナル曲は1曲も収録されていません。

 

当時のヒット曲やソウル系の有名曲を取り上げた作品です。

 

しかしこういったジャズやR&B系のブラック・ミュージックが好きな人にとっては、誰もが知るような人気曲ばかりですので聴きやすい作品だと思います。

 

特に1曲目と3曲目は、マーヴィン・ゲイの歴史的名盤『What’s Goin’ On』に収録されてシングルヒットした2曲ですね。

 

この時期のマーヴィン・ゲイの楽曲は名曲ばかりです♪
おそらくこのアルバムが制作されていた当時は最新のブラック・ミュージックのヒット曲という感じでしたでしょうが、今の時代になってもバンドやセッションなんかでもよく演奏される定番曲です。

 

それでもあえて”What’s Going On”を取り上げないのが面白かったりもしますね。

 

その1曲目の”Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)”は、もはやR&Bスタンダード曲となったマーヴィン・ゲイの名曲です。

 

本作のアルバムタイトルになっているぐらいなので、おそらくグローバー・ワシントンJr.もこの曲が好きなのでしょう。

 

演奏の方も納得の出来です!

間違いなくこの曲が本作のベストトラックです!
歌メロを全てグローバー・ワシントンJr.がサックスで吹いています。

 

最初にソロを弾くのはギタリストのエリック・ゲイルになります。

 

ブルージーなクォーター・チョーキングを駆使したイナタいフレージングでソロを組み立てています。

 

この時代はまだフェイザーは使っていません。

 

ストレートなクリーントーンでギターソロを弾き切っています。

 

バックのキレのあるカッティングもエリック・ゲイルによるもでしょう。

 

本作にはギタリストはエリック・ゲイルしかクレジットされていません。

 

あのカッティングのキレはエリック・ゲイルの弾き方なので多重録音しているようですね。

 

カッティングに絡むワウギターもエリック・ゲイルのようです。

 

多重録音を駆使して豪華な音作りを演出しているようです。

 

ギターソロの後は、グローバー・ワシントンJr.がサックスソロを長めに吹いています。

 

オルガン系のジャズファンク作品だと、アーネット・コブやラスティ・ブライアントやジーン・アモンズみたいに豪快に吹くサックス奏者が多い気がしますが、グローバー・ワシントンJr.はどこまでも上品に演奏しています。

 

その辺がマーヴィン・ゲイの楽曲ともマッチしています。

 

後にフュージョン系サックス奏者として人気が出るグローバー・ワシントンJr.なのですが、その片鱗はこの頃から見せ始めています。

 

次の2曲目”Georgia On My Mind”は、レイ・チャールズの名唱で有名なホーギー・カーマイケル作のスタンダード曲です。

この曲も、今でもセッションでよく演奏される定番曲ですね。
イントロはエリック・ゲイルの渋いギターから始まります。

 

ロン・カーターのベースが絡み、アイアートのパーカッションが鳴り、ボブ・ジェームスのエレピの音を合図にサックスの歌メロが始まります。

 

グローバー・ワシントンJr.のサックスの音は、とてもブライトな音なのでこの哀しい名曲も、どこか希望に満ちたような演奏に聴こえてしまいます。

 

ブルージーなエリック・ゲイルのギターソロに対して、ブライトな音色でオシャレなフレーズを吹くグローバー・ワシントンJr.の違いを楽しむのもひとつの聴き方のような気がします。

 

3曲目の”Mercy Mercy Me (The Ecology)”もマーヴィン・ゲイの『What’s Goin’ On』に収録されていた人気曲です。

この曲もボーカルなしでインストでよく演奏されていますね。
もちろん本作収録のバージョンもグローバー・ワシントンJr.のサックスが歌メロを吹くインストです。

 

これまたグローバー・ワシントンJr.が煌びやかな音色でアドリヴソロを吹く名演です。

 

そもそもの曲が名曲すぎるので、逆にこれだけの面子が集まって悪い演奏になるわけないですからね。

 

バックのストリングスの音色がより一層楽曲を盛り上げてくれています♪

 

4曲目の”Ain’t No Sunshine”は、「消えゆく太陽」の邦題で有名なビル・ウィザースのヒット曲です。

 

このアルバムが制作された当時は、最新のヒット曲だったと思います。

 

基本はサックスが主役のインスト作品なのですが、この曲ではボーカルのコーラスが曲を盛り上げてくれています。

 

コーラスが盛り上がってきたところで、一瞬ブレイクが入ってエリック・ゲイルのギターソロに移る瞬間がなんとも熱い演出です!

 

ギターソロの後半あたりからホーン隊も盛り上がっていき、最高潮に達したところでまた一瞬ブレイクが入ってサックスソロに移ったりと…緩急の憎い演出がさすがのアレンジですね!

 

最初はアルトサックスでソロを吹いているようですが、途中からテナーサックスに変わっています。

 

どちらも吹きこなせる器用さがグローバー・ワシントンJr.の才能のひとつでもありますね。

 

5曲目”Until It’s Time For You To Go”は、シンガーソングライターのバフィー・セントメリーの曲で、エルヴィス・プレスリーが歌ったりニール・ダイアモンドが歌ってヒットさせています。

 

このフォーク調の優しい曲を、グローバー・ワシントンJr.は優雅なストリングスを交えてジャズバラードに仕上げています。

 

この曲に関してはジャズファンクと言うよりも、後のフュージョン系の楽曲に通じるものがありますね。

 

個人的にはイナタいアレンジの先のマーヴィンの2曲が好きだったりもしますが、この美しバラードも素晴らしい出来なので否定は出来ません。

 

少し甘すぎる演奏だとは思うのですが、それも含めてグローバー・ワシントンJr.の魅力ですからね♪

 

最後の”I Loves You Porgy”は、マイルス・デイヴィスも取り上げたガーシュイン兄弟作のスタンダード曲です。

 

この曲はフリューゲルホルンがメインテーマを吹いています。

 

おそらくサド・ジョーンズでしょうか?

 

他にもトロンボーンやバリトン・サックスが複雑に絡み合いながら楽曲を構築しています。

 

アルバムの序盤はソウルフルでイナタい曲ばかりだったのですが、最後に優雅なオペラ調の曲でこのデビュー作を締め括っています。

 

そういったとこが、同時代の他のジャズファンク系のミュージシャンの作品とは一線を画していますね。

 

アルバム全体をソウルフルな曲で統一するのではなくって、ストリングスやホーンセクションとのアンサンブルを基調にした優雅な楽曲を収録する辺りが、グローバー・ワシントンJr.が単なるソウル系のサックス奏者で終わらなかった部分だと思います。

 

デビュー作の頃から既に後のフュージョン時代を見据えているような名作です!

おしゃれなだけじゃない!

グローバー・ワシントンJr.初期の名作ですね♪

 

 

 

以上、全6曲のカヴァー曲で構成された【グローバー・ワシントンJr.のデビュー作『Inner City Blues』】のご紹介でした。

 

フュージョン/クロスオーヴァー系サックス奏者としての才能を垣間見せながらも、2曲のマーヴィン・ゲイのイナタいカヴァー曲も含むグローバー・ワシントンJr.のデビュー作をおすすめします!

 

 

ジャズファンク好きの方はもちろん、フュージョン好きの方もきっと気に入るんじゃないかな?…といった作品です。

 

 

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