2018/09/10
【絶対に聴くべきソウルジャズのおすすめ盤】ルー・ドナルドソンのソウルジャズ作品『Hot Dog』を聴こう!
ブルーノートレーベルにおけるルー・ドナルドソンのオルガン系ソウルジャズシリーズ
ポップでちょい下ネタジャケもお手の物⁉
今回ご紹介するのは前回取り上げていたジャズファンクギタリストのメルヴィン・スパークスが参加しているルー・ドナルドソンの1969年のオルガン系ソウルジャズ作品『Hot Dog』です。
メルヴィン・スパークスの最期のアルバム『Groove On Up』を聴こう♪
この時期のルー・ドナルドソンはR&B調の曲を多く取り上げているのでソウルファンも聴きやすい作品です♪
ブルーノートレーベル在籍時のルー・ドナルドソンは、初期の頃はアート・ブレイキーの作品に参加していたり、自身のリーダー作でもストレートなハードバップ系の作品を多く制作していました。
ハードバップ誕生の夜を記録した名盤、アート・ブレイキー『バードランドの夜』Vol.1
そのどれもが『正統派ジャズサックス』と言いたくなるような、アルトサックスのお手本のような作品ばかりでした。
しかし1960年代も半ば頃になってくると、R&Bなどの歌ものブラックミュージックの台頭でジャズが売れなくなってきました。
そこでジャズ系の作品を手掛けていた音楽プロデューサーは、ジャズマンに当時の流行りのR&Bの曲を演奏させることでアルバムを売ろうと考えました。
そういった経緯もあって、この時代のジャズマンはR&B系の曲を自身の作品でカヴァーするようになります。
今回ご紹介する『Hot Dog』の収録曲全5曲のうち2曲は当時流行っていたR&Bの曲のカヴァーです。
当然これらの曲は、ルー・ドナルドソン自身が好んでカヴァーしたわけではなく、あくまでも売り上げを考えたプロデューサーの意向に従っただけのようです。
しかしながらルー・ドナルドソンの、どこか酔っぱらったようなヘロヘロですっとぼけた演奏は、こういったR&Bのわかりやすくて少しマヌケな(褒めてます!笑)メロディーラインにピッタリなんです!
それではアルバムのご紹介です。
Lou Donaldson – 『Hot Dog』
01.Who’s Making Love
02.Turtle Walk
03.Bonnie
04.Hot Dog
05.It’s Your Thing
Lou Donaldson (as)
Ed Wiliams (tp)
Melvin Sparks (g)
Charles Earland (org)
Leo Morris (ds)
BN:4318
Recorded on April 25, 1969
セクシーな黒人女性が、そそり立つような大きな ウィンナー入りのホットドッグを笑顔で握っている……なんともお下劣な下ネタジャケットではありますが、もしかしたらそういった意味には気づかないで、単なるポップなデザインと思われる方もいるかもね?って感じのジャケットです。
実際は、本当にそういった意味の下ネタデザインだと思いますよ。(笑)
参加メンバーと収録曲について
さて、こちらのアルバムは、当時R&Bチャートを賑わせていたジョニー・テイラーの”Who’s Making Love”とグラント・グリーンもカヴァーしたアイズレー・ブラザーズの有名ファンク曲”It’s Your Thing”が収録されています。
この2曲のカヴァー曲以外は、”Turtle Walk”と”Hot Dog”がルー・ドナルドソンが書いた曲で、”Bonnie”はスタンリー・タレンタインの兄でトランぺッターのトミー・タレンタインの書いた曲です。
ルー・ドナルドソンは、トミー・タレンタインとは過去に何度か共演しています。
先ほど上記で、この時期のルー・ドナルドソンがR&Bの曲を多く取り上げていたのはプロデューサーの意向だったと書きましたが、このアルバムに収録されている”Turtle Walk”と”Hot Dog”の2曲の自作曲はソウル調の曲です。
ルー・ドナルドソン自身は自分から好んでR&Bの曲を聴くことはない!と過去にインタビューに答えてはいますが、どう考えてもこの時期の彼の自作曲はR&Bからの影響を受けていますよね。(笑)
まぁこういった天才ミュージシャンの人らは気分屋の人が多そうなのでその辺は気にせずに作品を楽しみましょう♪(笑)
ところでこのアルバムには、ジャズファンク系のギタリストのメルヴィン・スパークス以外にも、後にアイドリス・ムハマッドというイスラム名に変更する前のレオ・モリスがドラムで参加しています。
レオ・モリスは、グラント・グリーンの作品以外にもオルガン奏者のロニー・スミス、リューベン・ウィルソン、レオン・スペンサー、本作にも参加しているチャールズ・アーランドやサックス奏者のラスティ・ブライアントなど数多くのソウルジャズ/ジャズファンク系の作品に参加した名ドラマーです。
ニューオーリンズ出身のレオ・モリスは、まるで同地の名物ファンクバンドのミーターズのように、弾むようなドラミングで聴く人をソウルの渦に巻き込んでいくかのようです。
このメルヴィン・スパークスとレオ・モリスの2人は、オルガン奏者チャールズ・アーランドのジャズファンク系の作品にも参加しています。
といったわけでルー・ドナルドソンとトランぺッターのエド・ウィリアムス以外のバックの演奏を支える3人のコンビネーションは最高なんです♪
この3人の演奏が本作のソウルジャズ系の曲にどす黒いフィーリングを与えています。
それでは1曲ずつ聴いていきましょう。
アルバムの内容は?
まず1曲目のジョニー・テイラーの曲”Who’s Making Love”は、イントロのメルヴィンの弾くポップなギターリフから始まり、あのどこか少しマヌケな(褒めてます!笑)メロディーラインをチャールズ・アーランドがオルガンで奏でます。
そしてルー・ドナルドソンとエド・ウィリアムスの管楽器2人がバックを盛り上げて、また少しクールダウンしてオルガンのテーマに戻ります。
それが1分経った頃には、メンバー全員で原曲のサビ部分を歌っています。
このコーラスがどこかマヌケで(褒めてます!笑)何度聴いても楽しくって面白おかしくなります♪(笑)
そして2コーラス後にメルヴィンの歌心あふれるギターソロが始まります。
歌メロを基調にメジャーペンタトニックを中心にしたフレージングはお見事です!
僕の大好きな感じのシンプルで無駄のないギターソロなんです!
この短いギターソロだけでも、メルヴィンが本当に素晴らしいギタリストだとわかります。
その後、エド・ウィリアムスのゆる~~いトランペットソロが続き、さらにゆる~~~~いルー・ドナルドソンのサックスソロが始まります。
少しエフェクティブに聴こえるこの音色はエレクトリック・サックスを使用していますね。
ソロ回しの最後はチャールズ・アーランドのオルガンソロです。
このオルガンソロのバックでメルヴィンがリズムを刻んでいるのですが、このリズム感が最高です♪
ソロ後は、またサビに戻って、もう一度オルガンソロを挟んで終わります。
ちなみにこのルー・ドナルドソンのバージョンの”Who’s Making Love”をニュー・マスターサウンズがライブでカヴァーすることもあります。
もちろんニュー・マスターサウンズのメンバー4人がサビ部分を歌っています。(笑)
僕の知る限りではニュー・マスターサウンズが”Who’s Making Love”をカヴァーしだしたのは2013年頃からです。
ソウルジャズ/ジャズファンク好きにとっては、もはやオリジナルのジョニー・テイラーのバージョンよりもこのアルバムのルー・ドナルドソンのバージョンの”Who’s Making Love”の方が有名なぐらいではないでしょうか?
さて次の2曲目の”Turtle Walk”は上記にも書きました通りルー・ドナルドソンのオリジナル曲です。
しかしとってもマヌケな(褒めてます!笑)メロディー・ラインが前曲の”Who’s Making Love”の曲調とも合うソウルジャズです。
おかしなメインテーマの後は、どこか酔っ払ったようなルー・ドナルドソンのサックスソロで始まり、次に続くのは同じく千鳥足気味のエド・ウィリアムスのトランペットソロです。
その後に2人の管楽器隊に「目を覚ませ!」と言わんばかりにファンキーなメルヴィン・スパークスとチャールズ・アーランドのオルガンソロが続きます。
ブルースギタリストのTボーン・ウォーカーが得意としたような3連チョーキングのシーケンスフレーズをこれでもか!と弾くメルヴィン・スパークスのギターソロの勢いに2人の酔っ払いは目が覚めたことでしょう!(笑)
そして3曲目のトミー・タレンタイン作の”Bonnie”は一転してこのアルバム唯一のバラード曲です。
いつも酔っ払ったような吹き方をするルー・ドナルドソンなのですが、こういったバラードソングを吹かせると不思議と優雅に聴こえます!?
この曲ではソロを吹くのもルー・ドナルドソンだけで、この曲に参加していないエド・ウィリアムスを省く3人はバッキングに徹しています。
4曲目もルー・ドナルドソン作のマヌケなテーマメロディーを持つ曲”Hot Dog”です。
この曲は2000年代に入ってからの晩年のメルヴィン・スパークスがライブでよく取り上げていた曲でもあります。
わかりやすいテーマメロディにソウルフルな曲調……やはりソウルジャズの名曲だと思います。
好んでR&Bを聴かない人がこんなにもソウルフルな曲が書けるもんなんでしょうか?と疑いたくもなります。(笑)
ソロ回しは、相変わらずゆる~~い管楽器2人から始まります。
その後、メルヴィン・スパークスのギターソロが始まります。
晩年は息継ぎの暇もないような連続フレーズでギターを弾きまくるようになるメルヴィンなのですが、この時期は無駄のないシンプルな演奏に徹底しています。
ソウルジャズ系のお手本のようなギター演奏です!
そしてチャールズ・アーランドのファンキーなオルガンソロが続きます。
ぶっちゃけこの作品ではこの2人のコード楽器隊の方が素晴らしいソロを弾いていたりします。(笑)
ルー・ドナルドソンがリーダーではありますが、ソウルジャズ好きのギタリストやオルガン奏者によりおすすめの作品でもあります。
そして5曲目のアイズレー・ブラザーズの超有名曲”It’s Your Thing”のカヴァーでアルバムは終わります。
オリジナル曲よりも勢いをなくして、ゆったりとしたテンポでカヴァーしています。
歌メロ部分は、リーダーのルー・ドナルドソンによるサックスではなくチャールズ・アーランドがオルガンで弾いています。
ルー・ドナルドソンは、エド・ウィリアムスと共に原曲と同じような管楽器のオブリガード部分を吹くことに徹しています。
なんかまるで本作のリーダーはチャールズ・アーランドだと言ってもおかしくないような気もします!?
この曲ではソロの1番手もそのままチャールズ・アーランドがオルガンで始めます。
そしてルー・ドナルドソンがゆる~~く続きます。
この曲でもそうなんですが……本作ではソロのバッキングを弾くメルヴィンは、オルガンソロの時は全体のアンサンブルを盛り上げるためにちょくちょくオブリガードを弾くのに、ルー・ドナルドソンのゆる~~いソロの時はオブリガードを弾かないんですね。(笑)
サックスソロの後は、メルヴィン・スパークスの2分近くある長めのギターソロが始まります。
ちょくちょく本作のリーダーがルー・ドナルドソンだってことを忘れそうになります。(笑)
しかしソウルジャズ/ジャズファンク好きの人は、絶対に聴いておいた方が良いオルガン系ソウルジャズの名盤ですのでおすすめです♪
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