2018/09/29
アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズの最終作『Sweetback』を聴こう♪
アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズの最終作『Sweetback』
何か物足りなかったブログ記事の原因はジャズファンクギター不足⁉
さて、前回はオドネル・リーヴィの最高傑作『SIMBA』のご紹介でした。
オドネル・リーヴィ 最高傑作『SIMBA』を聴こう♪
それに今月は、僕が一番好きなメルヴィン・スパークスの作品『Groove On Up』についても書きました。
メルヴィン・スパークスの最期のアルバム『Groove On Up』を聴こう♪
僕の中でのジャズファンク・ギタリスト四天王は、グラント・グリーン、メルヴィン・スパークス、オドネル・リーヴィ、そして今回ご紹介するアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズです。
それでは今回はアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズのご登場です!
どこで何をしている?名ジャズファンク・ギタリスト
というわけで、今回はグラント・グリーンの影響をモロに受けたジャズファンク系ギタリストのアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズが1975年にリリースした最終作『Sweetback』のをご紹介します。
アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズは、本名はアイヴァン・ジョセフ・ジョーンズと言います。
”ブーガルー”というのは、1969年の3枚目のリーダー作『Boogaloo Joe』からつけられた芸名です。
なので今後はこのブログではブーガルー・ジョーと呼びたいと思います。
さすがに毎回アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズと書くと長すぎますので…。
ちなみに僕の好きなジャズファンク・ギタリスト四天王のグラント・グリーン、メルヴィン・スパークス、オドネル・リーヴィのうち今現在もおそらく生存しているのはブーガルー・ジョーだけだと思われます。
…と、「おそらく」や「思われます」と言った不確かな言い方をしたのは訳があります。
ブーガルー・ジョーは、消息不明なんです。
グラント・グリーンは、 1979年に最終作『Easy』をリリースして亡くなっています。
メルヴィン・スパークスは2010年まで現役でライブ活動は行っていましたが、惜しくも2011年に亡くなっています。
ただこの4名の中では唯一ザ・ニュー・マスターサウンズのエディ・ロバーツと共演をしたギタリストです。
オドネル・リーヴィは、2006年に脳梗塞で倒れて以来、左半身が不随となり2016年に亡くなるまで闘病生活を続けていました。
そして今回ご紹介するブーガルー・ジョーは、自身のリーダー最終作となる1975年リリースの『Sweetback』以降は、1982年にソウルフルなサックス奏者のウィリス・ジャクソンのアルバムに客演したのを最後に音楽業界から身を引いたようです。
その後の様子は、「運転手をしている。」や2001年のカール・デンソンの話では「彼は今ゴスペルをやっているよ!」といったうわさ話だけで実際に本人は出てきません。
グラント・グリーンよりも5歳年下で、今も現役バリバリのジョージ・ベンソンよりも3歳年下なので今年で77歳です。
まだ今も生きていて元気なのであれば、表舞台に出てきてギターを弾いてほしいところですよね。
40年以上ぶりにリーダー作を制作してもらいたい…もしくはせっかくのYouTube時代なので動画でギターを演奏している現在の姿を見せてほしいところです。
ブーガルー・ジョーのギタースタイル
そんなブーガルー・ジョーは、ザ・ニュー・マスターサウンズのエディ・ロバーツに大いなる影響を与えたジャズファンク界きっての熱いギタリストです!
グラント・グリーンよりも更にシンプルなシングルノート中心で弾きまくるギタリストでもあります。
僕が先に挙げたジャズファンク・ギタリスト四天王の中でも最もシンプルなフレージングで弾くギタリストです。
またブーガルー・ジョーは、ブルースやR&Bからの影響も垣間見えるフレージングが実に力強いです。
ほとんどの曲をブルーススケール一発で弾き倒す一本気なところもあります。
そのためか「ヘタウマ」呼ばわりされることも多いかと思いますが、ギターの上手さって「難解なフレージングだけが全てですか?」と僕は感じます。
例えば、テクニックだけならクリフォード・ブラウンやフレディ・ハバードの方が遥かにマイルス・デイヴィスよりも上手いですよね。
でもマイルスの吹く感情表現豊かなトランペットの方が僕は好きです。
ブラウニーもハブも上手いけども……マイルス以上とは言えません!
僕にとってはマイルスの方が上です!
それと同じように、テクニックで弾き倒す系のブルースギタリストよりも、シンプルなペンタトニックとトライアド中心で感情を込めて弾くB.B.キングの方が僕は遥かに上手いと感じます。
B.B.キングの絶対に聴くべきライヴ名盤3選!!
ブーガルー・ジョーも上記の2人の偉人と同じだと僕は思っています。
テクニック系の演奏は最初こそビックリしますが、何回も聴いていると飽きてしまいます。
しかしこういったマイルスやB.B.のように感情を込めて歌心を表現できるミュージシャンの演奏は何回聴いても、何年経っても聴き飽きません!
それはテクニック以上の音楽表現の手法が彼らの独特のリズム感にあるからなんだと思います。
上っ面のテクニックだけで簡単に真似して弾けるものではありません!
エディ・ロバーツもかなりの部分をブーガルー・ジョーから影響を受けてアドリヴを弾いています。
しかし本家のブーガルー・ジョーよりもピッキングのミスも多く、リズムのズレも大きいです。
やはりブーガルー・ジョーの方がピッキングも正確で、よりグルーヴした演奏が出来ています。
この辺がシンプルでも上手いジャズギタリストの底力なんだと感じます!
以前、とあるジャズギターの名手のフレーズを紹介している海外サイトを見つけたのですが、そのサイトの最初の方はウェス・モンゴメリー、ジム・ホール、バーニー・ケッセル、ハーブ・エリス、タル・ファーロウ、ケニー・バレルなど錚々たる面子でした!
その中にグラント・グリーンも入っていたので僕も気になってフレーズをコピーしていました。
さすがにウェスやジム・ホールは、弾くことはできても難しくって、そんな簡単にモノに出来るフレーズではありませんでした。
グラント・グリーンのフレーズもシンプルですがクセがあり、急なアドリヴで使えるようには出来ません。
そんな中、こういったジャズギタリストのフレーズ集には珍しくブーガルー・ジョーのフレーズも載ってました。
タブ譜が載っているのですが、他の誰よりも音数が少なかったです。
すぐに真似して弾けました!
ジム・ホールのフレーズを練習した時間の半分も掛かっていません!
しかしブーガルー・ジョーのフレーズは最も役に立ちました!
それから1週間後にセッションにいったのですが、さっそく”Jan Jan”を演奏する際にブーガルー・ジョーのフレーズを使ってみました。
すぐにハマりました!
それ以降、僕はブーガルー・ジョーのフレーズを今もずっと使っています。
といった風に、実際に自分もギターを演奏するって人には、そのシンプルだけど説得力のあるフレーズの実用性の高さもB.B.キング並みにすごいと思います。
それでは、そんなブーガルー・ジョーの最終作にして名作『Sweetback』のご紹介です。
Ivan ‘Boogaloo Joe’ Jones – 『Sweetback』
01.Confusion
02.Trouble In Mind
03.Sweetback
04.Have You Ever Been Mellow
05.Jamaica Farewell
06.You’ve Got It Bad, Girl
いかにも70年代ファンクなエロジャケ仕様です。
まるでオハイオプレイヤーズのようでもありますね♪
【ファンクおすすめの名盤シリーズ①】オハイオプレイヤーズの名盤3選+α
ギターのトーンについてのお話
内ジャケに写るブーガルー・ジョーの写真ではギブソンのジャズギターでL-5と並んで最高機種になるスーパー400を手にしていますね。
このスーパー400は、ケニー・バレルや初期のベンソンが使っていたことで有名な名機です。
変わったところではエリック・ゲイルもスーパー400を使っていたりします。
写真で観るとリア・ピックアップで使用していたのでしょうか?
あのブーガルー・ジョーの攻撃的な勢いのあるトーンはフルアコのリア・ピックアップによるものなのかな?
でも1970年の代表作『Right On Brother』では、バーニー・ケッセル・モデルのセミアコをフロント・ピックアップにして写真に写っています。
この辺はギタリストにとっては気になる部分ですね。
ちなみにグラント・グリーンは、やはり元はジャズギタリストなのでフルアコをフロント・ピックアップで弾いています。
メルヴィン・スパークスはフルアコをセンター・ピックアップで弾いていました。
オドネル・リーヴィもフルアコをフロント・ピックアップで弾くタイプですが、少し硬質なトーンで鳴っています。
ギタリスト以外には「何のこっちゃ?どれも一緒じゃね?」って感じですが、ピックアップの位置で音はすごく変わるんですよ。
しかもピッキングの弾く場所によってもトーンが変わってきます。
基本的にはフロント・ピックアップはまろやかな音で、リア・ピックアップは硬質な音が鳴ります。
でもオドネルのようにフルアコでフロント・ピックアップなのに少し硬質な音が鳴るのは、ピッキングする位置がブリッジ寄りだからなんです。
残念ながらブーガルー・ジョーは、ギターを弾く映像が残されていないのでどの位置でピッキングをしているのか?どのピックアップを使っているのか?が確認できませんが、この『Sweetback』では写真のようにスーパー400をリア・ピックアップで弾いているのかな?と思いました。
スーパー400は、音がまろやかに鳴りやすい大きいサイズのフルアコなのですが、リア・ピックアップで弾いているからジャズファンク向けの少し硬質なトーンになっているのかな?という印象です。
ちなみに僕自身は、晩年のB.B.キングじゃないですがセミアコのES-335をセンター・ピックアップで弾くのが好みです。
これは単なる自分の好みの音がセンター・ピックアップってだけで深い理由はありません。
それではアルバムの中身の方をみていきましょう。
アルバムの内容
いきなり1曲目の”Confusion”でエンジン全開!ブーガルー・ジョー節です!
もちろんブーガルー・ジョー作のジャズファンク曲です。
基本はギターが主役でオルガンとベースとドラムがバックを務めるカルテット編成の曲です。
そこに途中でサックスソロが入ります。
イントロのフレーズが後にザ・ニュー・マスターサウンズの新曲“Green Was Beautiful”に影響を与えているんじゃないかな?と僕は思ってます。
というのは、ザ・ニュー・マスターサウンズがこの曲を、2011年リリースのジャズファンク系のコンピレーションアルバムの『Return Of Jazz Funk Special: Jazz Funk Never Dies』でカヴァーしていたので影響は受けていると思います。
ちなみにその後もザ・ニュー・マスターサウンズのライヴでは度々”Confusion”が演奏されていたりもします。
さて、オリジナルのブーガルー・ジョーのバージョンは、「これでもか!これでもか!」って程しつこい位にラン奏法によるシーケンスフレーズの繰り返しが登場します。
しかし同じようなフレージングの中にも様々なバリエーションがあり、ブーガルー・ジョーのアイデアの多さにビックリします。
まるでエディ・ロバーツのギターソロと同じようなフレージングですが、こちらが本家本元です!
僕もザ・ニュー・マスターサウンズ大好きなんですが……はっきりいってブーガルー・ジョーの方がピッキングの正確さやキレもあり上手いです!
やはりなんでもオリジナルに勝るコピー商品は存在しないもんなんですね。
この1曲だけでもこのアルバムがジャズファンクの名盤である!と言えるぐらいなのですが、ブーガルー・ジョーの最終作にして最高傑作はそれだけではない!!!!
2曲目の”Trouble In Mind”は、憂歌団の「嫌んなった」の原曲でもあるジャズピアニストのリチャード・M・ジョーンズが書いた古いブルースの名曲です。
1926年にチャールストン出身のバーサ・”チッピー”・ヒルという女性シンガーが歌った古き良き時代の名曲です。
ちなみにこのチッピー・ヒルのバージョンでトランペットを吹いているのはルイ・アームストロングです。
ブーガルー・ジョーもブルースから大きな影響を受けているんですね。
まぁだから僕が好きになるギタリストでもあるんですが。
もちろんこういった正統派のスローブルースはブーガルー・ジョーも得意中の得意のようです。
知らずにこの曲だけを聴いたらブルースギタリストかと思ってしまいます。
途中、5分26秒辺りから急にブーガルー・ジョーのギターの音にリヴァーヴが掛かったように聞えるのですが、録音中のミスなのでしょうか!?
続く3曲目のタイトルトラックの”Sweetback”も1曲目と同じくブーガルー・ジョー作の自作曲です。
本盤ではこの2曲だけがブーガルー・ジョーのオリジナル曲になります。
“Sweetback”は、今までのブーガルー・ジョーにはなかったような曲調です。
テンポが違いますが、どこか西城秀樹の曲「ギャランドゥ」の「くやしいけれどお前に夢中~♪」の歌メロを思い出すような曲調だったりもします。
それはそうとブーガルー・ジョーのこの曲は、これまでよりも更にモダンになったギターソロのフレージングが素晴らしいです!
モロにエディ・ロバーツがこのギターソロから影響を受けてる感じがします。
それぐらいエディ・ロバーツがアドリヴソロで弾くフレーズ満載なんです!
いかにブーガルー・ジョーの影響を受けているのかがわかります。
ちなみにエディ・ロバーツ本人も、グラント・グリーンやメルヴィン・スパークス以上にブーガルー・ジョーから大きな影響を受けていると雑誌のインタビューに答えていました。
逆に言うと、1975年に弾いたブーガルー・ジョーのアドリヴソロのフレーズは、43年以上経った今でも通じるフレージングなんだな~と感じます。
古いブルースの曲や有名なポップス曲なんかをよくカヴァーするブーガルー・ジョーですが、なんだかんだで自作曲では熱が入るんですね!
4曲目の”Have You Ever Been Mellow”は、いきなり超有名ポップス曲の登場です!
もちろん1975年のオリビア・ニュートン=ジョンの大ヒット曲です。
本作『Sweetback』の1作前の1973年の8枚目のリーダーアルバム『Black Whip』でもポール・マッカートニーの名曲”My Love”を取り上げていました。
他にも1968年のリーダーアルバム2作目の『My Fire!』でもドアーズの”Light My Fire(ハートに火をつけて)“をカヴァーしています。
どうやらブーガルー・ジョーは当時のポップスのヒット曲をアルバムでカヴァーすることが好きだったんですね。
しかしこの”Have You Ever Been Mellow”や”My Love”でもそうなのですが、ブーガルー・ジョーの弾く歌モノのテーマはボーカル以上に歌っています!
歌モノのテーマを弾くのが上手いギタリストでもあります。
ギターソロもテーマメロディから発展させたメロディを軸にアドリヴを構築しています。
5曲目の”Jamaica Farewell”は、1957年のハリー・ベラフォンテの陽気なヒット曲のカヴァーです。
ブーガルー・ジョーは、オリジナルの陽気なカリプソ調をそのままにギターを弾き倒しています!
ジャズファンクだけでなく、古いブルースだろうが大ヒットしたポップスの曲だろうがカリプソだろうがジャンルに関係なくブーガルー・ジョーのギターは歌を歌います!
どんなジャンルにも適用できるところが、先に挙げていたマイルスやB.B.キングと似たところだと感じます。
バックの音楽性がジャズだろうがファンクだろうがロックだろうが、まさかのヒップホップだろうがマイルスはマイルスであり続けましたからね!
B.B.も同じようにブルースだけでなく、ロックやファンクやフュージョン系の音楽性にも適用していました。
テクニックだけではない歌心やグルーヴで勝負をするミュージシャンは、どんなジャンルにも適用できるってことなのではないでしょうか!?
アルバムの最後7曲目は、これまた有名な曲のカヴァー”You’ve Got It Bad, Girl”です。
もちろんスティーヴィー・ワンダーの1972年の『Talking Book』に収録されていた名曲です。
ブーガルー・ジョーは、テーマメロディーはサックスとのユニゾンでオリジナルに忠実ながらもオブリフレーズを入れたりして弾いているのですが、ソロから全く別人のように弾きまくります!
このアルバムの最後だからか……もしかしてこれが自身の最後のリーダー作になると予見していたからなのか?
ギターソロが始まると、「めちゃくちゃギター弾きまくってるけど…これって何の曲だったっけ?」と忘れてしまいそうになるぐらい「これでもか!これでもか!」としつこいぐらいにアドリヴソロを弾いています!
しかしこれが熱い!
お客さんを目の前に演奏しているライヴ演奏ならわからないでもないのですが、スタジオで録音しているのにこの勢い!
今のところブーガルー・ジョーのライヴ音源が1枚もリリースされていないのが、あまりにもったいなく感じるぐらいの熱いアドリヴソロです!
スティーヴィーの名曲が、とか忘れてしまいそうなぐらい熱い!この曲のブーガルー・ジョーのソロをぜひ聴いてください!
もしこの勢いでブーガルー・ジョーが弾きまくっているライヴ音源が今後発掘されてリリースされたとしたら、確実にジャズファンクの歴史が変わります!
本当にライヴを聴きたくなるような熱いギターソロですので、この『Sweetback』をおすすめします♪
ちなみに”You’ve Got It Bad, Girl”のエンディングはちょっとビックリです!
それは聴いてみてのお楽しみ…ということであえてここでは書きません。
以上、アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズが1975年にリリースした最終作『Sweetback』のご紹介でした。
やっとこのブログで僕の好きなジャズファンク・ギタリストの四天王を全員ご紹介することが出来ました!
もちろん今後もこの4人は、このブログに登場予定ですのでお楽しみに~♪
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