2018/09/08
【名ジャズファンク・ギタリスト】メルヴィン・スパークスの最期のアルバム『Groove On Up』を聴こう♪
テキサス生まれの名ジャズファンク・ギタリスト!
メルヴィン・スパークスというギタリスト
今回はグラント・グリーンやアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョ-ンズと並んで歴史に残るような名ジャズファンク・ギタリストのメルヴィン・スパークスが生前最期にリリースした2006年のスタジオアルバムの『Groove On Up』をご紹介します。
メルヴィン・スパークスは、1960年代の後半頃から当時ドラッグ問題で体調を崩していたグラント・グリーンに取って代わるかのように登場したギタリストでした。
60年代半ば頃からそれまでのグラント・グリーンのようにルー・ドナルドソンのオルガン系ソウルジャズ作品や、当時メルヴィンと同じように新人だったオルガン奏者のロニー・スミスやリューベン・ウィルソンにチャールズ・アーランドなどの作品に参加していました。
ジャズだけでなくブルースやR&Bからも影響を受けたようなアーシーなギタープレイは、そういったオルガンが主役のソウルジャズ/ジャズファンク系の音楽にぴったりでした。
メルヴィンはジャズギタリストとしてウェス・モンゴメリーやパット・マルティーノの影響も受けているようですが、ところどころで聴けるメジャー・ペンタトニックスケールの使い方なんかはB.B.キングを彷彿させます。
メルヴィンの晩年のライブではB.B.キングのお得意曲でもある”Rock Me Baby”なんかを取り上げていたので、やはりB.B.からも影響を受けているのでしょう。
そんなメルヴィン・スパークスは、もちろん僕もお気に入りのギタリストです。
今回ご紹介するアルバム『Groove On Up』について
今回ご紹介するアルバム『Groove On Up』は、僕が最も好きなメルヴィン・スパークスのリーダー作品になります。
というのも、この作品がリリースされた年の2006年頃は僕がジャズファンク系の作品を買い漁り始めた頃でした。
それまでは自分がブルースバンドをやっていたためか、どちらかっていうとジャズよりもブルース中心で音楽を聴いていたのですが、2005年辺りからニューマスター・サウンズを聴くようになりこういったオルガン系のソウルジャズ/ジャズファンクの作品を多く聴くようになりました。
そして2006年にこのアルバムがリリースされリアルタイムでCDを購入しました。
もちろん初めてこのアルバムを聴いたときから、すぐに好きになりました!
もろに僕の好きな感じのソウルジャズ/ジャズファンク系の曲ばかりが収録されているからなんです♪
当時の僕は、勤め先まで電車で15分…その後、徒歩で20分掛かっていました。
その間にいつもグラント・グリーンの『Live at The Lighthouse』と、このアルバムを交互にiPod(懐かしい!)で聴きまくってました。
だからこのアルバムに対しての思い入れがすごくあります!
このアルバムの収録曲をバンドやセッションで自分でも演奏したいな~ともずっと思っています。(今のところ実現はしていませんが…)
発売されてから12年以上経ちますが、今も飽きずに聴いていられる作品です。
それでは僕の一番好きなメルヴィン・スパークスのアルバム『Groove On Up』のご紹介です。
Melvin Sparks – 『Groove On Up』
01. Mykia’s Dance
02. Cranberry Sunshine
03. Groove On Up
04. Hump
05. Ooh Girl
06. I Want To Say Thanks
07. She’s A Bad Mama Jama
08. Onion Patch
09. If It Don’t Fit (Don’t Force It)
10. U Got Mel
Guitar – Melvin Sparks
Organ [Hammond], Keyboards [Keyboard Bass] – Jerry Z* (tracks: 1, 2, 4, 7 to 10), Paul Wolstencroft (tracks: 3, 5, 6)
Drums – Eric Bolivar (tracks: 1, 2, 4, 7, 9), Eric Kalb (tracks: 3, 5, 6), Jun Saito (3) (tracks: 8)
Tabla – Tom E. Ted (tracks: 2)
Vocals – Nikki Armstrong (tracks: 9), Oscar Wright (3) (tracks: 5)
Released : 2006
2006年にリリースされたこのアルバムは、メルヴィン・スパークスの遺作となりました。
メルヴィンは惜しくも2011年に亡くなっています。
しかし亡くなる前年の2010年まで現役でライブ活動は行っていました。
後にその時期のライブ盤がニュー・マスターサウンズのレーベルから公式リリースされるのですが、そちらについてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
さて、この『Groove On Up』は、メルヴィン・スパークスの長いキャリアの集大成と言っても良いほど充実した作品となっています。
メルヴィンは、70年代頃からリーダー作を5~6枚ほど制作していましたが、80年代に入ってから音楽シーン全体のオルガン系のソウルジャズ/ジャズファンクの低迷からか?リーダー作を制作しなくなっていきました。
しかし1997年になって、当時のアシッドジャズ・ムーヴメントに後押しされるかのように突如16年ぶりにリーダー作を発表しました。
その作品に手応えを感じたのか?2006年の本作までの約10年間で5枚のリーダー作を制作しています。
そのどれもがクォリティーの高い名作ですので、いずれこのブログでも1枚ずつ取り上げていきたいと思います。
リリース順では逆順にはなりますが、こちらのブログではまずは僕が一番好きなこの『Groove On Up』からのご紹介になります。
アルバムの内容は?
では中身の曲のご紹介の方をしていきたいと思います。
まず1曲目の”MyKia’s Dance”から、いかにもメルヴィン・スパークス印な爽快なジャズファンク曲で始まります♪
ギターは、メルヴィン自身によるリードとリズムを重ね録りしてはいますが、基本はオルガンとドラムとのトリオ演奏になります。
それまでのメルヴィンのリーダー作品にはサックスが参加していることがほとんどだったのですが、本作ではギターとオルガンとドラムというシンプルな3つの楽器だけで演奏された曲ばかりです。
サックスがいなくてもメルヴィンのフルアコギターから奏でられる太く甘いトーンのメロディーが素晴らしいです♪
またそれだけでなく、ファンキーな16分のカッティングも得意なメルヴィンのキレッキレのリズムギターも聴き所です!
ギターソロは、ところどころメロディーをアウトさせながらも、ジョージ・ベンソンもびっくりなぐらいに連続フレーズが続きます!
どこで息継ぎしてるんだろう⁉と不思議になるぐらい切れ目のない流麗なフレージングです。
ジャズギターの世界でこういう弾き方は、マシンガン・ピッキングがお得意のパット・マルティーノやジョージ・ベンソンがよくしています。
その2人のギタリストに憧れて影響も受けていたというメルヴィンも負けず劣らずに弾きまくります!
ちなみにこの曲”MyKia’s Dance”は、実は1997年に復活作としてリリースされた『I’m A ‘Gittar’ Player』の3曲目に収録されていた”Jiggy”という曲の改良版なんです。
それだけでなく……このアルバムの2曲目の”Cranberry Sunshine”は、1971年の『Spark Plug』の3曲目に収録されていた”Conjunction Mars”という曲と、『I’m Funky Now』の3曲目の”Make It Good”と似たような曲進行なんです。
また3曲目の”Groove On Up”も『I’m A ‘Gittar’ Player』の1曲目に収録されていた”Mr. Texan”という曲の改良版です。
こういったことからも、この作品がメルヴィンにとってキャリアを総括するような集大成のアルバムなんじゃないかな?と感じる点です。
しかし単純に再演しているのではなくって、更に曲をブラッシュアップして収録しているので過去のバージョンよりもこのアルバムのバージョンの方がより洗練されていてかっこいいんです♪
先ほども少し触れましたが2曲目の”Cranberry Sunshine”は、過去に2度似た曲調がありましたが、この曲こそメルヴィン・スパークスというギタリストを表している曲なんじゃないかな?というほどに、メルヴィンのギタープレイにぴったりの曲調です。
冒頭のオクターブ奏法のリズムカッティングから始まり、クールなテーマメロディーが始まります。
そして「ジャッ♪ジャッ♪ジャー」と半音ずつコードが上がっていき、今度は「ジャッ♪ジャッ♪ジャー」と半音ずつコードが下がっていくブレイク部分はまさにメルヴィン印の曲調です。
ギターソロも絶好調です!
同じギター弾きとして、よくここまでフレーズを止めずに弾ききれるな~と感心してしまいます。
ちなみにこの曲は、2017年辺りからニュ-・マスターサウンズもライブで演奏していたりします。
エディー・ロバーツもメルヴィンから影響を受けているので、彼のギタースタイルにもぴったりの曲調です♪
そして3曲目のタイトルトラックの”Groove On Up”も過去の曲のブラッシュアップしたバージョンなのですが、より爽快で、どこかスムースジャズっぽい曲調になっています。
テーマのメロディーがとても爽やかなんですよね♪
2006年頃に通勤途中、満員電車なんかでこの曲をよく聴いていました。
この曲を聴いていると、仕事や私生活での悩み事なんかの辛いことがあっても、そんなことが吹っ飛びそうなぐらい気分の上がる曲なんです。
4曲目の”Hump”は歌のコーラスから始まります。
冒頭3曲とは打って変わって、少し渋くシリアスな感じのする曲調です。
そして5曲目の”Ooh Girl”と9曲目の”If It Don’t Fit (Don’t Force It)”は、それぞれゲストボーカリストが参加した曲です。
5曲目のメロディーラインが特徴的な曲ではオスカー・ライトという男性ボーカリストがリードボーカルを歌っています。
9曲目の楽しげなR&B調の曲では、ニッキー・アームストロングという女性ボーカリストがリードボーカルを歌っています。
どちらの曲でもメルヴィンは、バッキングでファンキーな歌伴をこなしています。
9曲目のソロの出だしに、チャック・ベリー風のロックンロール3連フレーズが出てくるのはご愛敬。
そもそもメルヴィンのギタリストとしてのキャリアは、あの伝説のロックンローラーのリトル・リチャードのサポートギタリストとして始まっているので、チャック・ベリーから影響を受けていてもおかしくないんですよね。
さて、6曲目に戻りまして…”I Want To Say Thanks”は幻想的なバラード調の曲です。
イントロは、メルヴィンのギターによるトリルフレーズから始まります。
このアルバム唯一のバラード曲なのですが、ゆったりとしていて心地よく聴けます♪
メルヴィンがバラードの名手であることが、この1曲だけでもわかります。
続く7曲目は、ジャズファンク好きには絶対におすすめなかっこいい曲”She’s A Bad Mama Jama”です!
オルガンのファットなリフで始まり、メルヴィンのお得意のキレッキレの16分カッティングで軽快に曲が始まります!
時代が時代だったら、「ジャズファンクの名曲/定番曲」にもなれたんじゃないかな?と思えるような、とてもかっこいい曲です!
ギターソロは、ハーモニーに沿って丁寧に弾いている感じがします。
そして次の8曲目の”Onion Patch”は60年代後半の雰囲気がするオルガン系ソウルジャズな曲調です。
そのためか?ファーストソロはメルヴィンではなくってオルガン奏者が弾いています。
そのオルガンソロの後に2番手でメルヴィンのギターソロが始まります。
グラント・グリーン直径のシーケンスフレーズも楽しめるギターソロです。
9曲目は先にご紹介していたので、飛ばして…最後の10曲目”U Got Mel”は、まるで1998年のトム・ハンクスとメグ・ライアンの映画『ユー・ガット・メール』に引っ掛けたような曲名ですね。
しかし曲自体はメルヴィン作曲の渋めのジャズファンク曲です。
4分間の曲でギターソロをひたすら弾ききって、最後はドラムのカットアウトでメルヴィン・スパークスのキャリアを総括するような最期のスタジオアルバムは締め括られます。
全10曲、各楽器の録音のバランスも良く、曲も外れなしなのでジャズファンク好きには絶対におすすめのアルバムです!
それでは今後もメルヴィン・スパークスの他の作品についてもこのブログで取り上げていく予定ですので、ぜひまた読みに来てください。
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