2019/03/06
ウェス・モンゴメリーがオルガン・トリオで制作した3枚のおすすめアルバム♪
歴史に残るジャズ・ギタリストのウェス・モンゴメリーがオルガン奏者のメルヴィン・ラインと組んだ3枚のアルバムをご紹介します。
ウェスのギターとメルヴィンのオルガンの相性は抜群♪
僕はブルースやファンクだけでなくジャズのギター演奏も好きなのですが、その中でも特にグラント・グリーンとケニー・バレルとウェス・モンゴメリーの3人の演奏が好きです。
その理由として……ピアノ系の優雅なジャズ作品よりもブルージーな演奏になることが多いオルガンとギターのコンビが好きだからです。
どうしても一つの楽器で全てが揃ってしまうようなピアノ作品だと「これってもしかしてギターなくっても良いのかも?」と感じることがあったりします。
しかしオルガン作品だと、どちらも同じブルースやゴスペルにルーツを持つ楽器ですのでギターとの相性が良いと感じます。
特にギターが参加していないオルガン作品なんかを聴いた時に「バックの音がスカスカでなんか物足りない……ここにギタリストが参加していたらもっと良い作品になったのに……。」と感じることが多々あります。
オルガン・ジャズ好きの僕としては、やはりギターとのコンビネーションは不可欠な存在だと感じます。
そんな訳もあって、オルガン奏者と特に相性の良い上記の3人のジャズ・ギタリストの作品が好きなんです。
それで、このブログでもグラント・グリーンはしょっちゅう登場しているのですが、これまでにウェスに関してはほとんど扱っていなかったんですよね……。
よく考えたら“Wes Montgomery”というブログ用のタグを設置しているにも関わらず、ウェスの単独作品を一度もご紹介していなかったことに気づきました……。
グラント・グリーンやケニー・バレルだけでなく、これからはウェスの作品もご紹介していければ……と思います。
それで、今回は先にも書きました通り、オルガン・ジャズ好きの僕が選ぶウェス・モンゴメリーのオルガン作品をご紹介したいと思います。
どの作品もウェスがリーダーで制作されたアルバムです。
そして3作品とも全てにオルガン奏者のメルヴィン・ラインが参加しています。
ドラムだけは3作品とも、それぞれ別の人物が叩いていますが、どれもギターが主役のオルガン・トリオで録音されています。
ギターとオルガンの相性の良さをたっぷりと味わえる良作ばかりです♪
The Wes Montgomery Trio – 『The Wes Montgomery Trio』
01.’Round Midnight
02.Yesterdays
03.The End Of A Love Affair
04.Whisper Not
05.Ecaroh
06.Satin Doll (Take 7)
07.Missile Blues (Take 6)
08.Too Late Now
09.Jingles
1959年に制作されたウェスの初リーダー作です。
本作はオルガン奏者のメルヴィン・ラインとドラムのポール・パーカーのトリオで録音されています。
もちろん本作でもさっそくウェスの代名詞である「オクターヴ奏法」が登場します!
オクターヴ奏法は、オクターヴ違いの同じ音を同時に弾くギターならではの奏法です。
ギターという楽器の構造上、オクターヴ違いの同音を弾くのはとても簡単なのです。
しかし理論や運指的には簡単であっても、ノイズがならないように綺麗な音で弾くのと、ギターの指板上を滑らかに動き回るのはかなりのテクニックが必要です!
そのオクターヴ奏法をまるでシンガーが歌うかのようにメロディアスに弾くことが出来たのが、このウェス・モンゴメリーです。
さて、本作にはセロニアス・モンクの”‘Round Midnight”やジェローム・カーンの”Yesterdays”にデューク・エリントンの”Satin Doll”などのジャズ・スタンダード曲や、ビリー・ホリデイが歌った”The End Of A Love Affair”にベニー・ゴルソンの”Whisper Not”やホレス・シルヴァーの”Ecaroh”なんかのカヴァー曲が多く収録されています。
そんな中で7曲目のジャズ・ブルース曲”Missile Blues”と、その後ウェスの代表曲のひとつとなる9曲目の”Jingles”の2曲がウェスの自作曲です。
やはり一番の目玉曲は、そのウェス作の”Jingles”です♪
本作ではオルガンがイントロからテーマまでを弾いていますが、その後のライヴなどではこの部分もウェスが弾いています。
実はウェスが「楽譜を読めない」ということと「音符がちんぷんかんぷんだった」ということは、割と知られた話ではありますが……こんな素晴らしい曲が書けるのに本当なのかな?と疑ってしまいそうになります。
“Jingles”のメロディーは、ジャズ・ギター界でも屈指の名曲だと感じます。
個人的には1曲目に収録されたウェス・バージョンの”‘Round Midnight”がとても好きです♪
セロニアス・モンク作のこの曲は、ジョー・パスやジム・ホールを始め、グラント・グリーンやケニー・バレルなど数多くのジャズ・ギタリストが演奏してきた名曲です。
特にソロ・ギターで演奏したジョー・パスと、ギター・トリオでライヴ演奏したジム・ホールのバージョンは、ジャズ・ギター史に残る屈指の名演です!
その2人の演奏の次に僕が好きな”‘Round Midnight”のバージョンが、本作に収録されているウェスの演奏です。
ウェスはその後も何度かこの曲を演奏しているのですが、本作に収録されている”‘Round Midnight”のイントロをいつも弾いています。
このイントロがとてもかっこいいんです♪
もし僕が自分も”‘Round Midnight”をギターで演奏することがあるのなら、このウェスのイントロをありで弾きたいと思います♪
もちろんギターソロではウェスお得意のオクターブ奏法もバリバリと登場します!
初リーダー作ながらも既に30歳を超えていたウェスの円熟した演奏が聴ける名作がこの『The Wes Montgomery Trio』です。
ウェスのデビュー作がギターの音を一番活かせるオルガン・トリオだったのは、なんとも憎い演出だと感じます。
これがピアノだと、たとえウェスといえどもギターの音が負けてしまいそうですからね……。
ギターにそっと寄り添うようなメルヴィン・ラインのオルガンが最高です♪
ちなみに本作に収録されているホレス・シルヴァーの”Ecaroh”のオルガンソロのバックでコンピングをしているウェスのフレーズが『ギターバッキングの技』というギター教則本に収録されていたりしますので、ジャズ・ギター弾きの方は要チェックです!
『ギターバッキングの技』ジャンル別でギターバッキングのパターンを学べるおすすめの教則本
Wes Montgomery – 『Boss Guitar』
01.Besame Mucho
02.Dearly Beloved
03.Days Of Wine And Roses
04.The Trick Bag
05.Canadian Sunset
06.Fried Pies
07.The Breeze And I
08.For Heaven’s Sake
名作ライヴ盤の『Full House』収録後の1963年に制作されたウェスにとっての2作目のオルガン・トリオ作品です。
本作にもオルガン奏者のメルヴィン・ラインが参加しています。
ドラムはマイルス・デイヴィスのバンドに参加していたジミー・コブに代わっています。
これ以外にもジミー・コブは、ウェスのライヴ作品にも参加しています。
本作に収録されているウェスのオリジナル曲は、速いテンポの”The Trick Bag”と渋いジャズ・ブルース曲の”Fried Pies”の2曲です。
特に”Fried Pies”の後半のギターソロは聴きものです!
あえて音の隙間を楽しむかのように、しっくりとオクターブ奏法でメロディーを組み立てていく辺りが非常にスリリングです!
さて、本作の1曲目はメキシコの女性ピアニストのコンスエロ・ベラスケスが書いた名曲”Besame Mucho”から始まります。
グラント・グリーンも同じ1963年に『The Latin Bit』で取り上げていたラテン風味の曲です。
4分22秒辺りから聴ける高速3連のオクターブ奏法連打フレーズは、ウェスの十八番です!
スリリングなこのフレージングは、ウェスのアドリヴ演奏の際によく登場します。
また3曲目に収録された「酒とバラの日々」の邦題で有名なヘンリー・マンシーニの”Days Of Wine And Roses”は、海外のジャズ・ギターのサイトで「ウェス・モンゴメリーの素晴らしいギターソロ10選」の10位に選ばれていました。
僕もこのウェスの”Days Of Wine And Roses”のスコアを持っていたので、コピーしてみたのですが……これがなかなかの難易度でした!
ソロの始まりの方は、ゆったりとシンプルなフレージングで始まるのですが……8小節を超えるあたりから親指から小指までをガッツリと開かないと弾けないような運指が登場します。
ウェスは手が大きいのでこういったフレーズも簡単に弾けたんでしょうね。
ちなみに1位は、1965年のライヴ・アルバム『Smokin’ at the Half Note』の1曲目でマイルス・デイヴィスのカヴァー曲”No Blues”でした。
この”No Blues”でもウェスの3連オクターブ奏法が聴けますので、納得の選曲だと思いました。
他には「カナダの夕陽」の邦題で知られるアンディ・ウィリアムズが歌った当時のヒット曲”Canadian Sunset”も収録されています。
ウェスはこの曲をボサノバ・アレンジで演奏しています。
ウェスは本作の翌年の1964年以降に、ヴァーヴ・レコードに移籍してポップスの曲を取り上げてヒットするのですが、その片鱗がこの曲からも感じられます。
デビューから4年目にして7枚目のリーダー作のタイトルが『Boss Guitar』と、既にジャズ・ギター界を牽引する存在であったことが伺えるアルバム名ですが、もちろん中身の演奏の方も名前負けしない充実の内容です!
最初のオルガン・トリオ作品だった『The Wes Montgomery Trio』から比べると、ラテンの曲やボサノバの曲調など多彩なリズムの曲が増えた名作です♪
ところで、アルバム・タイトルの『ボス・ギター』とは……オルガン・バンドでフィーチャーされるサックス奏者のことを『ボス・テナー』と呼ぶことから引っかけられた言葉です。
花形のサックス奏者からジャズ・ギタリストがお株を奪うことを示唆しているんでしょうね。
ちなみにジーン・アモンズの1964年のリーダー作に『Boss Tenor』というアルバムもありますが、あの作品ではオルガン奏者ではなくピアニストのトミー・フラナガンが参加していました。
The Wes Montgomery Trio – 『Portrait Of Wes』
01.Freddie The Freeloader
02.Lolita
03.Blues Riff
04.Dangerous
05.Yesterday’s Child
06.Moanin’
『Boss Guitar』から約半年後に録音されたオルガン・トリオ作品の『Portrait Of Wes』です。
ドラムはジミー・コブからジョージ・ブラウンに代わっています。
本作は、マイルス・デイヴィスの歴史的名盤『Kind Of Blue』の収録曲だった”Freddie The Freeloader”から始まります。
『Kind Of Blue』に収録されていたこの曲は、唯一ビル・エヴァンスではなくウィントン・ケリーがピアノを弾いた曲でした。
静謐な演奏をするビル・エヴァンスに対して、軽快にスウィングするウィントン・ケリーとの対比が上手い演出でした。
これはわざとマイルスが狙ったもので、嫉妬深いウィントン・ケリーがスタジオに入る前にあえてビル・エヴァンスの録音風景を見せたりしていたようです。
そのためかウィントン・ケリーは、いつも以上に”Freddie The Freeloader”の演奏に力を入れていたように感じれます。
……と、危うくマイルスのご紹介になってしまいそうでしたが(笑)ウェスに戻りますと……これまた”‘Round Midnight”の時のようにギター用にアレンジしたイントロを弾いています。
さすがにウェスはギターで演奏するのに適したイントロを作る名人ですね!そのセンスの良さに脱帽です!
2曲目は、ジャズ・ピアニストのバリー・ハリスが1960年に書いた曲”Lolita”です。
先の”Freddie The Freeloader”といい、ピアノが活躍する曲をあえてギターで取り上げているように感じられます。
この曲もバリー・ハリスの弾くピアノのイントロを、そのままギターのコード弾きに置き換えて弾いています。
次の3曲目”Blues Riff”と、ゆったりとしたバラード曲の4曲目”Dangerous”は、共にウェスの自作曲になります。
特に”Blues Riff”が聴きどころです。
曲名通りに細かいギターリフを何度か重ね合わせてメロディーラインを構成しています。
2分13秒辺りから始まるウェスのギターソロが最高です♪
コードソロから徐々にオクターヴ奏法に変わっていく展開がスリリングです!
チャールズ・ディフォレストのバラード曲”Yesterday’s Child”を挟んで、アルバム最後はジャズ・ピアニストのボビー・ティモンズ作のアート・ブレイキーでお馴染みのスタンダード曲”Moanin'”で締めくくられています。
アルバムの序盤に少し地味なカヴァー曲が目立ったためか、最後に有名曲を持ってきているのでしょうか⁉
ちなみにCD盤では、この”Moanin'”と自作曲の”Blues Riff”の別テイクが2トラックずつ収録されています。
最初の録音に満足がいかなかったのか?本作録音後の約1ヵ月後に再録したようです。
ちなみに……再録バージョンのMoanin’ (Take 10)の方が勢いがあってかっこよかったりします!
こちらをマスター・テイクにすべきだったのでは?とも感じます。
以上、オルガン・ジャズ好きの僕がおすすめしたい【ウェス・モンゴメリーがオルガン・トリオで制作した3枚のおすすめアルバム♪】のご紹介でした。
それでは今後もまたウェスの作品をこのブログでもご紹介していきたいと思いますので、ぜひまた読みに来てください♪
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