2019/03/06
【あれから18年…】2001年3月6日にリリースされたエアロスミスの『Just Push Play』を聴こう♪
18年前の2001年3月6日にリリースされたエアロスミスのアルバム『Just Push Play』をご紹介します。
ヴィンテージ・アナログ・サウンドから新しいデジタル・サウンドへ…
本日2019年3月6日でエアロスミスのアルバム『Just Push Play』が発売されてからちょうど18年が経ちました。
オリジナル・アルバムとしては通算13作目となったこの『Just Push Play』には、今でもライヴで定番のように演奏されている大ヒット・シングル”Jaded”が含まれています。
前作、1997年の『Nine Lives』から古巣のコロンビア・レコードに移籍をしたエアロスミスでしたが、80年代に復活してからの外部ソングライターを起用した派手で豪華なサウンドは維持されています。
むしろ今まで以上に豪華なサウンドになったのがこの『Just Push Play』でした。
当時のエアロスミスは、1993年の『Get a Grip』からあえてレコーディングにヴィンテージの機材を使用するようになりました。
特にギター機材マニアのジョー・ペリーが、ヴィンテージのギターやアンプを使って音作りをしていました。
そのため『Get a Grip』と『Nine Lives』の2作品は、90年代の新しい曲調でありながらも、どことなく70年代風のハード・ロック・サウンドに仕上がっていました。
僕もこの2作品に関しては、曲の良さだけでなく、アナログ・サウンドの温かみのあった音作りが好きでした。
しかし新しいミレニアムを迎えた2001年になりエアロスミスも「新しいサウンド」に変化する時がやってきました!
この『Just Push Play』からレコーディングにプロ・ツールスを利用したデジタル録音が使用されるようになったのです。
それに伴って、エアロスミスの曲作りにも変化が見られました!
ポップなイラスト・デザインのアルバム・ジャケット
それだけでなく、ジャケットのデザインもこれまでのエアロスミスにはないポップな仕上がりになっています!
このジャケットのイラストは、日本人アーティスト空山基氏の作品「Sexy Robot #22」です。
当時初めてこのデザインを見た時は、エアロスミスらしさを感じつつも…どこか違和感もありました。
他のエアロスミスの作品と並べてみても、この作品だけ浮いています。
しかし浮いているのは、ジャケットのデザインだけでもないんですよね。
収録されている曲もこれまでのエアロスミスにはない感じでした。
当時は”I Don’t Want To Miss A Thing”の全米No.1ヒットに続く曲をレコーディング会社から求められていたようです。
そのプレッシャーもあってか?”Jaded”のようなポップ過ぎる楽曲が多く収録されることになりました。
良くも悪くもエアロスミスらしさを残しつつも、「ポップ過ぎる」作品に仕上がっています。
とにかく聴け!Aerosmith – 『Just Push Play』
01.Beyond Beautiful
02.Just Push Play
03.Jaded
04.Fly Away From Here
05.Trip Hoppin’
06.Sunshine
07.Under My Skin
08.Luv Lies
09.Outta Your Head
10.Drop Dead Gorgeous
11.Light Inside
12.Avant Garden
– Bonus Track –
13.Won’t Let You Down
14.I Don’t Want To Miss A Thing
アルバムの内容
1曲目のイントロからデジタルなサウンドが始まります!
当時のライヴのオープニングでも演奏されていたライヴ向けの楽曲”Beyond Beautiful”は、まるで本作のイラスト・デザインを現しているかのような内容の歌詞です。
「彼女は美しさなんてものを超えている!」というサビ部分の歌詞は、本作のアンドロイドのイラストにピッタリですね♪
しかしあまりにもコンテンポラリーに寄りすぎたデジタル・サウンドは違和感もあります。
ジョー・ペリーのギターソロこそ『Get A Grip』や『Nine Lives』期のヴィンテージ・サウンドを彷彿させますが、ブラッドの弾くバックのギターのディストーションは、当時流行っていたリンプ・ビズキットなんかのヘヴィー・ロック風のサウンドです。
時代に合った音作りではありますが、その分エアロスミスらしさが薄れている感も否めません。
タイトル・トラックにもなった『とにかく聴け!』がテーマとなる2曲目”Just Push Play”もこれまでのエアロスミスにはない曲作りが施されています。
まるでニュー・ウェーブなコード・リフは、これまでのエアロスミス流ロックとは一味も二味も違っています!
スティーヴンの歌に関しては、”Walk This Way”を思い起こさせるようなラップ調です。
当時はちょうどリンプ・ビズキットやリンキン・パークにキッド・ロックなどが流行っていたというのもありますが、しかしそもそもラップ・ロックの元となったのはエアロスミスの”Walk This Way”が最初だったので本家本元が本気を出した!といったところでしょうか。
サビ部分で”Just Push Pl~~ay♪”と連呼する際に、途中でスティーヴンが”Walk This Wa~~y♪”とアドリヴで歌っています。
その瞬間にジョー・ペリーのギターも”Walk This Way”のギターリフで応えています。
こういったコンビネーションは、さすが長い期間一緒にやっているバンドですね♪
ちなみにスティーヴンが英語以外に使っている言語はパトワ語(正式名称:ジャマイカ・クレオール語)です。
この辺の言語使いに違和感を感じさせないのは、スティーヴンのさすがのボーカル・スキルですね♪
そして3曲目の”Jaded”は、本作の目玉曲です!
アルバムからのリード・シングルとして発売されたこの曲は、全米チャート7位を記録する大ヒット・シングルとなりました!
本作収録曲の中で唯一、今でもライヴで演奏されている曲です!
これまでのエアロスミスの楽曲と比べると、明らかにヒット狙いのポップ過ぎる曲ではありますが、それでもエアロスミスらしさを損なっていない点はさすがですね。
MVも気合を入れて制作されていました。
“Jaded”のMVにある『眠れる森の美女』のようなメルヘンチックなシーンは、本作収録の”Sunshine”のMVにも繋がっています。
ところでこの”Jaded”のシングル盤には、キャメロン・ディアス主演の映画『チャーリーズ・エンジェル』に提供されていた新曲”Angel’s Eye”も収録されていますので要チェックです!
アルバム未収録のB面曲扱いですが、かなりかっこいいエアロ流ハード・ロックですので必聴ですよ♪
次の4曲目”Fly Away From Here”は、まるで”I Don’t Want To Miss A Thing”の二番煎じとも言えそうな派手なパワー・バラード曲です。
2ndシングルとして発売もされています。
このシングル盤の『Fly Away From Here』には、アルバム未収録のB面曲”Face”と、なんと”I Don’t Want To Miss A Thing”のライヴ音源まで収録されています!
こちらのシングルも必聴ですね♪
ライヴではあまり演奏されなかった曲ですが、この”Fly Away From Here”は、近未来なイメージのMVも制作されました。
スティーヴンらしいパワー・バラードの曲ではありますが、エアロスミスらしさはあまり感じられません。
エアロスミス名義ではなく、スティーヴンのソロ名義でリリースすべき曲だったんじゃないかな?とも感じます。
次の5曲目”Trip Hoppin'”は、エアロスミスらしさが戻ってきたようなファンキーな楽曲です♪
なんとこの曲のホーン隊は、ベイエリア・ファンクを代表するタワー・オブ・パワーがゲスト参加しています!
ところどころでワウを使ったギターも登場したり、サイケデリックなブリッジ部分が存在していたりと…なかなか練られた曲作りがされています。
曲の終わりにはフランジャーを使ったジェット・サウンドで「シュワゥワゥワァ~~」と締めくくられています。
やはりエアロスミスには、こういったファンキーなロックを演奏してもらいたいものです。
ただ…残念ながらライヴで演奏されることは、ほとんどなかった曲です。
僕も当時の2002年の大阪ドーム公演を観に行ったのですが、期待していた”Trip Hoppin'”を演奏してくれなくってガッカリした思い出が…。
ライヴでやって欲しかった曲です。
6曲目”Sunshine”は、「ビートルズ?」と感じさせるようなサイケデリックなソフト・ロックです。
一応MVも制作されていました。
先の”Jaded”のMVにも登場していた『眠れる森の美女』のようなメルヘンチックなイメージのMVですね。
旧来のエアロスミスらしさが失われつつありますが、曲の良さは否定できません。
しかしこの曲もエアロスミス名義ではなく、スティーヴンのソロ名義の方があっている気がします。
7曲目”Under My Skin”は、まるでナイン・インチ・ネイルズ風のインダストリアル・ロックのようなデジタル・サウンドのイントロで始まる曲です。
ジョー・ペリーのギターソロ前に少し練られたブリッジ部分があったり、これまでのエアロスミスにはない新しいアレンジが施されています。
8曲目”Luv Lies”は、以前僕が【エアロスミスの埋もれてしまった!?名バラード6曲を選んでみました。】というブログ記事でも選んでいたバラード曲です。
エアロスミスの埋もれてしまった!?名バラード6曲を選んでみました。
やはりスティーブンは、こういったバラード曲を歌うと天下一品ですね!
9曲目”Outta Your Head”は、これまたスティーブンのラップ・ボーカルが聴ける曲です。
どことなく前作『Nine Lives』に収録されていた”Something’s Gotta Give”を彷彿させる軽快な曲です。
10曲目”Drop Dead Gorgeous”は、ジョー・ペリーがメインで歌う曲です。
…が、しかし結局サビでコーラスを歌うスティーヴンに負けてしまって「結局スティーヴンが目立つ曲」になってしまっています。
“drop-dead”とは「(美しさなどが)ハッとする、目を奪う」の意味です。
この曲もジャケットのアンドロイドのイメージですね。
2002年のライヴでもこの曲をやっていたのですが、個人的には「違うんだよ!この曲じゃないんだよ…聴きたいのは”Trip Hoppin'”なんだよ!」と感じたのを思い出します。
11曲目の”Light Inside”もインダストリアル・ロックのようなデジタル・サウンドのイントロで始まります。
過去のエアロスミスの楽曲は、ジョー・ペリーの弾くロックなリフで始まるのが定番だったのですが、本作の収録曲のほとんどはこういったデジタルなイントロで始まります。
そういった部分も過去のエアロスミスの作品とは違った部分です。
速いテンポのロック・ソングのこの”Light Inside”は、当時のライヴでもよく演奏されていました。
僕が観に行った2002年の大阪公演でもこの曲を序盤に演奏していました。
「”Light Inside”をやったんだから次は”Trip Hoppin'”をやるかな?」と思っていたのですがね…。
アルバム本編最後の収録曲、12曲目の”Avant Garden”は爽やかなバラード曲です。
ただこの曲もスティーヴンのソロ名義で良かったのでは?と感じさせる曲です。
日本盤のボーナストラックには、11曲目に未発表曲の”Won’t Let You Down”と12曲目に全米No.1ソングとなった”I Don’t Want To Miss A Thing”がオマケで追加収録されています。
“I Don’t Want To Miss A Thing”の最後には、”Under My Skin (Reprise)”という隠しトラックも収録されています。
以上が本日で発売から18年が経ったエアロスミスの『Just Push Play』でした。
ちなみに日本盤の発売日は、1日遅れの2001年3月7日でした。
また当時の日本ツアー用にライヴ音源や”Just Push Play (Radio Remix)”などのオマケ音源が収録されたCDがもう1枚追加された『ジャスト・プッシュ・プレイ+ライヴ&レア』というCD2枚組も発売されています。
今となってはこの作品もエアロスミスの長い歴史の中で「新しいことに挑戦したアルバム!」として捉えることが出来ましたが、発売当時の僕はなかなか新しいサウンドに馴染めず「こんなのエアロスミスじゃない!」と頑なに拒否していました。
当時の各メンバーのインタビューが掲載されていた雑誌を読んだことがあったのですが、もともとこういったキャッチーな楽曲が好きだったスティーヴンは「これまでで最高のアルバム♪」と語っていました。
それに合わせて、ジョー・ペリーも同じようなことを語っていて、若かった当時の僕はビックリしました!
ジョー・ペリーってもっと硬派なロックを追求する人物だと思ってたので…。
しかし後になって『ジョー・ペリー自伝~エアロスミスと俺の人生~ 』を読んでみると…ジョーはポップな”I Don’t Want To Miss A Thing”を気に入っていたりしてイメージが違う人物なんだな~と感じたことがあります。
しかしそれは何も悪いことではなくって、客観的にバンドの存続をビジネスの観点からも考えれる冷静な人物だと感じられました。
他のトムやジョーイに関してもこの時期のポップなエアロスミスに関しては当り障りないコメントをしていたのですが、問題はブラッド・ウィットフォードです!
メンバーの中で見た目的にも少し老けて見えて一番年上に見えなくもないのですが、実は最年少で、これまでにもインタビューでのコメントが少なかった地味な人物でした。
しかしこの時のインタビューではビックリすることを発言していました!
それまで寡黙な人物で多くを語らないと思っていたブラッドが「あんなポップなサウンドなんてク●食らえだよ!」「”Girls Of Summer”なんてファッ●ン駄作さ!」と過激発言ばかりでした!
まるでオアシスのギャラガー兄弟のように”fu●kin'”を形容詞として挟みまくっていました。
こんな口が悪い人だったのか⁉とびっくりしたと共に、ブラッドの中でフラストレーションが溜まっていたんだな~というのが感じられました。
やはりブラッドの言うようにエアロスミスは「ロック・バンド」です!
それもギター・サウンドが特徴的なハード・ロックです!
なのに”I Don’t Want To Miss A Thing”以降は、本来のエアロスミスらしさを欠いたようなポップな曲ばかり続きました。
これには僕も不満を感じていたので、ブラッドの言い分には共感できました。
この時期から僕もジョーだけでなくブラッドギタープレイに注目するようになりました。
実はブラッドの方がしっかり弾いているんですよね。
エアロスミスのメインのギターリフやバックのサウンドを支えるような楽曲にとって重要な部分をライヴで弾いているのはブラッドの方です。
ジョーは派手なギターソロを弾きますが、バンドの骨子を支えているのはブラッドの方でした。
ブラッドがしっかり弾いてくれているからこそ、ジョーも安心して自由奔放にギターソロを弾くことに集中できていたんです。
逆にブラッドもギターソロを弾くことがあるのですが、その際にジョーがバッキングに回ると…ジョーのリズム感がイマイチな場合があります。
ジョーはちょくちょくハシります。
それにブラッドは、過去にも “Round and Round”や”Nobody’s Fault”のようなヘヴィーな曲を書いていましたが、本当に「ロックが好き」なんでしょうね。
この辺は、『Pandora’s Box 』のボックスセットに収録されているブラッド主導のハード・ロックなインスト・ナンバーからも聴くことが出来ます。
また後に発売されることになる2012年の『Music From Another Dimension!』に収録されていた”Out Go The Lights”のように、過去のジャム・セッションから作られた曲なんかもブラッドのギターリフが中心で曲作りが始まっているようでした。
という風に、『Just Push Play』の時期のインタビューから、エアロスミスのメンバーそれぞれの考え方の違いを感じ取ることが出来ました。
しかし僕も年を取った今になってみると…この18年前のエアロスミスの挑戦も「あの時代には必要なことだったんだな!」と納得できるようになりました。
今ではこの『Just Push Play』も好きな作品です♪
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