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カテゴリー:Music

2019/04/03

プリンスの宝物⁉未発表音源で構成された『The Vault: Old Friends 4 Sale』を聴こう♪

ワーナー・ブラザースとの契約消化として1999年にリリースされたプリンスの『The Vault: Old Friends 4 Sale』をご紹介します。

1985年~1996年の間に録音された未発表音源で構成されたアルバム

この作品は、本来であれば1996年にリリースされる予定だったアルバムです。

 

90年代に入ってからプリンスは、それまで所属していたレーベルのワーナー・ブラザースと著作物を巡る契約の内容で上手くいっていませんでした。

 

結局、ワーナー・ブラザースから離れることを決意したプリンスは、しかし残りの契約内容を消化するためにいくつかの作品をワーナー・ブラザースからリリースしなければいけませんでした。

 

その契約消化のために制作されたのが、1985年~1996年の間に録音された未発表音源で構成されたこの『The Vault: Old Friends 4 Sale』という作品でした。

 

約11年間に及ぶ期間の音源が収録されているため、作品全体の統一感こそありませんが、しかしそこは天才プリンスです!

 

1つ1つの楽曲の質はとても高いんです♪

 

むしろいつもの作品の様に「完璧に作り上げられた楽曲」ではなく、「多少の粗さも見え隠れする生のプリンス!」を聴ける作品だと思います。

 

ちなみにプリンスのブートレッグに同じく”Vault”(=金庫室、貴重品保管室)と名付けられたシリーズもありますが、こちらの『The Vault: Old Friends 4 Sale』は公式盤ですので、ちゃんと日本盤の帯付でも発売されています。

 

未発表音源の寄せ集めですが、ジャジーな曲やソウルフルな曲など多彩な楽曲が収録されたアルバムですのでご紹介したいと思います。

 

 

Prince – 『The Vault: Old Friends 4 Sale』

01.The Rest Of My Life
02.It’s About That Walk
03.She Spoke 2 Me (Extended Remix)
04.5 Women
05.When The Lights Go Down
06.My Little Pill
07.There Is Lonely
08.Old Friends 4 Sale
09.Sarah
10.Extraordinary

 

アルバムに関して

本作は1985年~1996年にかけてプリンスが制作したマテリアルをまとめたアルバムです。

 

本作の選曲に関してプリンス本人は「本作の選曲にはタッチしていない。ワーナーが勝手に選んで出した。」とコメントしています。

 

そのためなのか1996年にリリースが決定していたものの、寸前で発売延期となりました。

 

それから1999年になってようやくリリースされることに至りました。

 

そのためこのブログでも以前ご紹介していたプリンスが世紀末にリリースしたアルバム『Rave Un2 The Joy Fantastic』と同時期に発売されることになりました。

 

プリンスが世紀末にリリースした幸福に満ち溢れた作品『Rave Un2 The Joy Fantastic』を聴こう♪

当時、まだ10代だった僕はCDショップで『The Vault: Old Friends 4 Sale』と『Rave Un2 The Joy Fantastic』がニューアルバムとして展示されているのを見かけて、「2枚同時期に新作の発売?」と混乱をしました。

 

しかし両方購入して聴いてみると、10代の子供にもすぐにその違いが感じ取れました。

 

アルバム全曲を通して聴いた際に統一感のある『Rave Un2 The Joy Fantastic』に対して、まるでコンピレーション・アルバムのような統一感のない様々な楽曲が収録された『The Vault: Old Friends 4 Sale』と、同じプリンスの作品でもこうも違うものなのかと感じました。

 

しかしその分、プリンスの色んな一面を聴くことが出来る『The Vault: Old Friends 4 Sale』を聴くと「この人は天才過ぎて力を持て余している人なんだ!」と感じました。

 

本当に「何でもできる」プリンスの才能を色んな角度から聴くことが出来る作品です。

 

 

 

 

アルバムの内容

アルバムの1曲目”The Rest Of My Life”は、プロフェッサー・ロングヘアー風のニューオーリンズ・スタイルのピアノで始まります。

 

この曲がいつ頃制作されたものなのかわかりかねますが、歌詞がどことなくワーナーとの契約問題での確執について引喩しているかのようです。

 

「その競争がフェアだと誰も言わなかったけど、ひたすら同じように走り続けるつもりさ」と歌うプリンスは、まるで自身の楽曲についてのクリェイティヴ・コントロール権をワーナーに握られていて不満に感じていても、ひたすら制作に没頭することで忘れようとしているかのようです。

 

たった1分20秒しかない短い楽曲ですが、軽快なグルーヴに明るい楽曲はアルバムのオープニングにぴったりの曲です。

 

2曲目”It’s About That Walk”は、プリンスが華やかなホーン隊をバックにファルセットで歌うファンキーな楽曲です。

 

この楽曲も、もし他のR&Bシンガーなんかの作品に収録されていたとしたらそれなりに聴きどころとなるはずなのですが、そこは天才プリンスです!

 

プリンスのこれまでの作品に収録されてきた「完璧な楽曲」と、比べるとあまりにラフでシンプルすぎる曲に聴こえます。

 

その分「生のプリンス」を聴くことが出来ますが、やはりプリンスという天才ミュージシャンに対しては僕らリスナーも「常に高次元の楽曲」を贅沢にも求めてしまいますね。

 

“It’s About That Walk”は、楽曲としては素晴らしい曲ですが、プリンスという天才の中では「単なる凡曲」になってしまうところがプリンスの才能の恐ろしいところです。

 

3曲目”She Spoke 2 Me”は、同じくプリンスがファルセットで歌うジャジーでオシャレな楽曲です。

 

楽曲の途中でジャジーなギター・ソロがありますが、これはプリンスではなさそうですね。

 

多分、ニュー・パワー・ジェネレーションのギタリストだったマイク・スコット(レヴ・スコット)によるものだと思います。

 

あの青いセミアコ・ギターで弾いたのでは?と感じられます。

 

サックス・ソロのバックで聴けるドラムの乱れ打ちも必聴です!

 

しかしプリンスにしては「シンプルすぎるアレンジ」の楽曲ですね。

 

才能がありすぎるのもリスナーが求めるレベルも比例して上がってしまうので大変なんだな~と感じます。

 

4曲目”5 Women”は、なんとなくカーティス・メイフィールドやダニー・ハサウェイを彷彿させるマイナー調のR&Bソングです。

 

ストリングスのアレンジに、これまたジャジーなギター・ソロも聴くことが出来ます。

 

これもおそらくマイク・スコットのギターだと思います。

 

ちなみにこの楽曲は、ジョー・コッカーに提供された曲です。

 

1991年の名作『Diamonds and Pearls』制作時に東京でベーシック音源を録音しています。

 

その際に録音された他の楽曲もあって、それが『Diamonds and Pearls』に収録された”Strollin’”と”Willing And Able”と”Money Don’t Matter 2 Night”の3曲です。

 

5曲目”When The Lights Go Down”は、コンガのイントロから始まる少しラテン風の楽曲です。

 

ピアノの長い伴奏からプリンスのボーカルが始まるのは2分34秒を超えてからです。

 

ここまで5曲は、統一感はあまりないものの基本的にジャジーでソウルフルな楽曲が収録されています。

 

次の6曲目”My Little Pill”から少し感触が変わってきます。

 

映画用に書かれたこの摩訶不思議な楽曲は、サイケデリックのような単なる語りのような、なんとも言い難い1分程度の小曲です。

 

そして7曲目”There Is Lonely”は、歌詞もヘヴィでとても暗い楽曲です。

 

まるで「独りでスタジオにこもって何もかも制作する」プリンス自身の孤独との闘いを曲にしたような憂鬱さです。

 

個人的にはこの曲はちょっと、暗すぎます。

 

8曲目”Old Friends 4 Sale”は、アルバムのタイトルにもなったこの中で最も古い録音曲です。

 

1985年のプリンスと言えば、ちょうど『Around the World in a Day』をリリースしたところで”Raspberry Beret”のようなキャッチーなポップ・ソングを発表していた頃でした。

 

しかしその裏で、このようなヘヴィな歌詞を持つ暗い楽曲も制作していたのですね。

 

「旧友売ります。」という曲名や歌詞は、まるでこの後長年連れ添った自身のバンド「ザ・レヴォリューション」を解体することを予言しているかのようです。

 

その場合は、プリンスが自身のバンドを売る立場になるのですが…

 

これがもし本作発売時期のプリンスの立場に置き換えるとワーナーに自身の権利を売り飛ばされたとを訴えるようでもありますね。

 

9曲目”Sarah”は、急に60年代風の愉快なホーンのイントロで始まる明るくファンキーな楽曲です。

 

3曲も暗い曲が続いたので、やっと本来のファンキーなプリンスを聴くことが出来て安心します♪

 

最後の10曲目”Extraordinary”は、プリンスがマーヴィン・ゲイやアル・グリーンのようにファルセットで歌うジャジーなバラード曲です。

 

後にプリンス初の公式ライヴ盤『One Nite Alone Live』にも収録されていた美しい楽曲です。

 

 

ラフな楽曲が多い本作の中では、特に出来の良い曲だと思います。

 

だからライヴでも演奏されたんでしょうね♪

 

 

 

 

以上、【プリンスの宝物⁉未発表音源で構成された『The Vault: Old Friends 4 Sale』を聴こう♪】でした。

 

完璧主義の天才プリンスの装飾を取り払ったラフな音源が聴ける貴重な作品です。

 

もしかしたらワーナーとの確執がなければ、このような形で発表されていなかった音源ばかりなのかもしれませんね。

 

そう思うと「災い転じて福となす」なのかもしれません。

 

まぁ僕らファンにとっての福なのですがね。

 

プリンス本人はこういった形でのリリースを望んでいなかったのかもしれませんね…。

 

プリンスは、天才故に凡人には理解できない様な大きな悩みを抱えていたのでしょう。

 

しかし彼の残した数多くの名作は、いつまでも輝き続けています!

 

このような未発表だった楽曲ですら質が低くないのがプリンスの凄いところです!

 

 

 

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