2019/04/16
90年代のジョシュア・レッドマンのおすすめアルバム3選‼
現代を代表するジャズ・サックス奏者ジョシュア・レッドマンのおすすめアルバム3選!
デューイ・レッドマンの息子ジョシュア・レッドマン
今回は僕の好きなジャズ・サックス奏者のジョシュア・レッドマンの作品でおすすめのアルバムをご紹介したいと思います。
今年50歳を迎えたジョシュア・レッドマンは、1993年にデビューした現代を代表するサックス奏者です。
それまでのストレート・アヘッドなジャズとは違った「新世代のリズム」を用いてジャズを演奏するミュージシャンです。
ロックやソウルだけでなくヒップホップから影響を受けたようなリズムを用いることがあります。
そのためなのか、90年代にリリースされたジョシュア・レッドマンのアルバムは今聴いても「古臭さ」を感じさせません。
そんなジョシュア・レッドマンは父親もサックス奏者でした。
オーネット・コールマンやキース・ジャレットのバンドに所属していたサックス奏者のデューイ・レッドマンがジョシュアの父にあたります。
今となっては父よりも息子のジョシュアの方が有名なぐらいです。
ライヴで熱いアドリヴ演奏を繰り広げた父のデューイとは、プレイ・スタイルは異なっています。
息子のジョシュアの音色は、父と比べると優しく感じます。
デューイの熱い演奏も悪くはありませんが、聴く方も気合を入れて聴かないといけないような気がします。
それに比べジョシュアの演奏は、毎日聴いても飽きないぐらいカジュアルな感じがします。
そういった日常的に聴けるような「聴きやすさ」が僕は好きです。
今回は、50歳を迎えた今もジャズ界の第一線で活躍するジョシュア・レッドマンの90年代にスポットライトを当てたいと思います。
ちなみに90年代には、2枚のライヴ盤を合わせて合計で7枚のリーダー作を残しています。
その中から今回は僕の好きな3作品をチョイスしました。
おすすめしたい90年代のジョシュア・レッドマンの3作品
今回ご紹介したいのは、1994年の3rdアルバム『Moodswing』、1996年の4thアルバム『Freedom in the Groove 』、そして1998年の5thアルバム『Timeless Tales (for Changing Times)』の3作品です。
どのアルバムもジャケットがオシャレなだけでなく、中身の収録曲も素晴らしいものばかりです。
なので、自身を持っておすすめしたいと思います。
それではリリース順にご紹介していきたいと思います。
Joshua Redman – 『Moodswing』
01.Sweet Sorrow
02.Chill
03.Rejoice
04.Faith
05.Alone in the Morning
06.Mischief
07.Dialogue
08.The Oneness of Two (In Three)
09.Past in the Present
10.Obsession
11.Headin’ Home
Personnel:
Joshua Redman – Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
Brad Mehldau – Piano
Christian McBride – Bass
Brian Blade – Drums
アルバムの内容
1994年にリリースされたジョシュアにとって3作目となるリーダー作です。
今となっては超豪華なメンバーがバックを固めています。
ピアノのブラッド・メルドーにベースのクリスチャン・マクブライド、そしてドラムのブライアン・ブレイドです。
みんな当時はまだ「若手」でしたが、今となってはそれぞれがリーダーを務める才能あるミュージシャンばかりですね。
そんな本作は、ジョシュアにとって初の全曲オリジナル曲で制作されています。
それまでの2作品には、オリジナル曲を中心にしつつも有名曲のカヴァーが含まれていました。
そう考えると、3作品目にしてようやく「ジョシュアの作り出した音楽」を全編に渡って聴くことが出来るんですね。
収録されている楽曲には、1曲目”Sweet Sorrow”や4曲目”Faith”のようにアンニュイな世界観が広がるスローテンポの曲もあれば、どこか懐かしさを感じさせるメロディーを持つ2曲目”Chill”や6曲目”Mischief”のような楽曲もあります。
キレのあるブライアン・ブレイドのドラミングが印象的な3曲目”Rejoice”や、ゆるいボサのリズムを持つ5曲目”Alone In The Morning”に、モーダルな10曲目”Obsession”も聴きどころです。
全曲オリジナルながらも多彩な曲調があり、飽きることなく最後まで通して聴くことが出来る名作です♪
Joshua Redman – 『Freedom in the Groove』
01.Hide and Seek
02.One Shining Soul
03.Streams of Consciousness
04.When the Sun Comes Down
05.Home Fries
06.Invocation
07.Dare I Ask?
08.Cat Battles
09.Pantomime
10.Can’t Dance
Personnel:
Joshua Redman – Tenor Saxophone, Soprano Saxophone, Alto Saxophone
Peter Bernstein – Guitar
Peter Martin – Piano
Christopher Thomas – Bass
Brian Blade – Drums
アルバムの内容
1996年にリリースされたジョシュア・レッドマンにとっての4作目のリーダー作『Freedom in the Groove 』も全編オリジナル曲のみで構成されています。
本作には、ギタリストのピーター・バーンシュタインが参加しているのがポイントです。
ジョシュア・レッドマンがジャズ・ギタリストを自身のアルバム制作に参加させるのはこれが初めてではありません。
1993年の2作目『Wish』には、人気No.1ジャズ・ギタリストのパット・メセニーが参加していました。
しかしパット・メセニーは、良くも悪くもあまりにも「個」の存在が大きすぎる感じがします。
その点、本作のピーター・バーンシュタインの方が、よりジョシュアの作り出す楽曲にマッチしていると感じられます。
1曲目”Hide And Seek”のイントロから、パーム・ミュートしたままパーカッシヴに弾くギターリフがジョシュアの吹くイントロのメロディーに絡みつきます。
サックスとピアノがユニゾンでテーマを演奏するバックで、ギターリフを静かに奏でて溶け込んでいます。
もちろん曲によっては、ピーター・バーンシュタインがアドリヴ・ソロを披露しているものもあります。
しかし本作の良さはそれだけでなく、何よりも収録された楽曲のかっこ良さが際立っています。
煌びやかなテーマ・メロディーを持つ2曲目”One Shining Soul”や、緊張感漂うモーダルな3曲目”Streams Of Consciousness”に、軽快なアップ・テンポの5曲目”Home Fries”、楽し気なメロディー・ラインがクセになりそうな8曲目”Cat Battles”や10曲目”Can’t Dance”など、特にアップ・テンポの楽曲の出来の良さが聴きどころです♪
Joshua Redman – 『Timeless Tales (for Changing Times)』
01.Summertime
02.Interlude 1
03.Visions
04.Yesterdays
05.Interlude 2
06.I Had a King
07.The Times They Are a-Changin’
08.Interlude 3
09.It Might as Well Be Spring
10.Interlude 4
11.How Deep is the Ocean
12.Interlude 5
13.Love For Sale
14.Interlude 6
15.Eleanor Rigby
16.Interlude 7
17.How Come U Don’t Call Me Anymore?
Personnel:
Joshua Redman – Tenor Saxophone
Brad Mehldau – Piano
Larry Grenadier – Bass
Brian Blade – Drums
アルバムの内容
前2作品と違い、ジョシュアにとって90年代最後の作品となる1998年の5作目『Timeless Tales (for Changing Times)』は、有名曲のカヴァーを中心に構成されています。
それも”Summertime”や”Yesterdays”のような従来のジャズ・スタンダード曲だけでなく、スティーヴィー・ワンダーの”Visions”やボブ・ディランの”The Times They Are a-Changin'”にビートルズの”Eleanor Rigby”のようなロックやポップスの楽曲もカヴァーしています。
本作の2年ほど前にハービー・ハンコックが『New Standard』として新たな時代のロックやポップスのヒット曲をジャズに置き換えた作品を発表した頃でしたが、ジョシュア曰く「そのアルバムは意識していない。」とのことです。
過去にもエリック・クラプトンの名曲”Tears in Heaven”なんかも取り上げていたので、こういった楽曲をジョシュアが選曲するのも彼にとっては自然なことなのでしょう。
ちなみに本作はカヴァー曲が中心なのですが、曲間にジョシュアの作曲による短いインタールードが次の曲へのイントロのように配置されています。
また本作では従来のジャズ・スタンダード曲のアレンジは避けて、あえてリズム面での遊びを試みたようです。
スロー・テンポで演奏されることが多い”Summertime”をあえてアップ・テンポにしたり、バラード曲の”Yesterdays”にヒップホップ風のリズムを取り入れてみたりしています。
本作に収録されているジャズ・スタンダード曲は全てそれまでのジャズマンの演奏とは異なるアレンジが施されています。
そういった所にジョシュア・レッドマンというミュージシャンの特異な才能を感じさせますね。
しかし本作の聴きどころは、やはり何と言ってもロックやポップスのカヴァー曲の方だと感じます。
ジョシュア・レッドマンは、過去にもスティーヴィー・ワンダーの90年代の楽曲”Make Sure You’re Sure”を取り上げていたのですが、本作では70年代に遡って”Visions”を取り上げています。
ジョニ・ミッチェルの1969年の曲”I Had A King(私の王様)”は、ジョシュアが妻からおすすめされて知った曲だそうです。
そして本作収録曲でも一番の出来の良さを誇るのがボブ・ディランの”The Times They Are A-Changin’(時代は変わる)”のカヴァーです。
本作の副題にも『for changing times』と似たようなタイトルが付けられているだけあって、ジョシュアもこの曲の出来に自信を持っていたのかもしれませんね。
まぁそもそものボブ・ディランの原曲が歴史に残る名曲ですからね。
しかし歌詞が大切なフォーク・ソングをあえてジャズのインストで演奏することがこんなにもマッチするとは!と驚くばかりです。
ディランの”The Times They Are A-Changin'”の凄さは、歌詞だけでなくメロディー・ラインの美しさにも魅力があるんだな~と感じさせてくれます。
本作一番の聴きどころは間違いなくこの曲です♪
ポール・マッカートニーの名曲”Elenor Rigby”は、70年代ジャズ・ファンクの時代から既にジャズマン達に人気の曲でした。
なので、ジョシュア・レッドマンがここで取り上げても何ら驚きはありませんでしたが、しかし アイディアが次々と降って湧き出るかのようなアドリヴ・ソロは圧巻です!
最後のカヴァー曲”How Come U Don’t Call Me Anymore?(つめたい素振り)”は、後にアリシア・キーズもデビュー作でカヴァーしたプリンスの曲です。
MVも制作されたアリシア・キーズのバージョンの方が有名ではありますが……このマニアックな名曲を先にカヴァーしたのはジョシュアの方でした。
ちなみにプリンスの歌うオリジナルは、1993年にリリースされた『The Hits/The B-Sides 』のB面曲集の16曲目に収録されていました。
こんな名曲でもマニアックな未発表曲にしてしまうという…プリンスの圧倒的才能を感じさせますね!
その楽曲の質の高さに気づいたジョシュアやアリシア・キーズのセンスも素晴らしいと思います。
プリンスの弾く聖歌のようなピアノのイントロをあえてブラッド・メルドーが弾くのではなく、ジョシュアがサックスで吹いて演奏しています。
やはり本作は、ジャズのスタンダード曲を「現代風」にアレンジしたカヴァー演奏よりも、ジョシュアならではの選曲が楽しめるロックやポップスのカヴァー曲の方が聴きどころが多いと思います。
何なら全てそういったロックやポップスのカヴァー曲で固めても良かったんじゃないかな~?とさえ思わせてくれます。
以上、【90年代のジョシュア・レッドマンのおすすめアルバム3選‼】でした。
しかしこれを書きながらもこれらの作品を聴いていたのですが、全く「古臭さ」を感じさせませんね。
それは、3作品ともリズムが「今風」だからなんですよね。
やはり音楽のかっこよさは「リズム」で決まると思います。
ジョシュア・レッドマンをこれまで聴いたことがなかったというジャズ・ファンの方は、ぜひこれを機にこの3作品から聴き始めてみてはいかがでしょうか。
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