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カテゴリー:Music

2019/04/04

ジム・ホールとの魔法の会合‼2004年のトリオ・ライヴ盤『Magic Meeting』を聴こう♪

ジム・ホールの2004年のトリオ・ライヴ盤『Magic Meeting』をご紹介します。

コンテンポラリー・ジャズ・ギターの始祖ジム・ホール!

ジャズ・ギターには、通常のハーモニーに対して音を外さないように的確なメロディーを弾くジャズと違い、あえてホールトーン・スケールなんかを上手く利用して「まるで音が外れている」かのような不協和音ともいえるアウト・フレーズを弾くギター・スタイルがあります。

 

今ではこういったジャズ・ギタリストはもはや珍しくなく、カート・ローゼンウィンケルやジョナサン・クライスバーグにアダム・ロジャースやマイク・モレノなど数多くの有名なコンテンポラリー・ジャズ・ギタリストと呼ばれる名手がいます。

 

彼らよりも少し年代が遡ると、パット・メセニーやジョン・スコフィールドにマイク・スターンなど彼らも同じように、それまでのストレート・アヘッドなジャズ・ギターとは違った感覚のギタリストが活躍していました。

 

こうやって名前を並べてみてみると豪華な面子なんですが、そんな彼らにも「始まり」を代表する人物がいました。

 

それがジム・ホールなんです!

 

以前『NEW YORKジャズギター・スタイルブック』というジャズ・ギター教則本が発売されていたのですが、そこで今を時めくコンテンポラリー・ジャズ・ギタリストたちは、もれなくジム・ホールの影響下に置かれていると書かれていました。

 

 

僕もその通りだと思います。

 

ジム・ホールは当然として…僕が少し意外に感じたのが、こういったコンテンポラリー系のジャズ・ギタリストに影響を受けたギタリストを尋ねてみるとアラン・ホールズワースの名前が必ず挙がるらしいです。

 

と言ったわけで、コンテンポラリー・ジャズ・ギタリストの始祖は、ジム・ホールとアラン・ホールズワースの2人ということなんですね。

 

 

 

 

想い出に残るジム・ホールのライヴ演奏!

 

残念ながらジム・ホールは2013年に、アラン・ホールズワースは2017年に他界しています。

 

しかし、そんなコンテンポラリー・ジャズ・ギタリストの始祖であるジム・ホールは、僕もとても尊敬していて1度だけ生でライヴを体験することが出来ました。

 

亡くなる1年前ということもあってだいぶ衰えは感じられましたが、それでも若手に負けないような「奇抜なアウト・フレーズ」を聴くことが出来ました。

 

そのライヴで印象に残る面白いことがありました。

 

既に腰の曲がっていたジム・ホールは、ライヴ中もずっと椅子に腰かけていました。

 

その横にテーブルがあって、そこに飲み水や楽譜が置かれていました。

 

そのテーブルに何やら小型の長方形の青い筐体が置かれていました。

 

ステージが少し暗くてよく見えなかったのですが、おそらくBOSSのギター・エフェクターだったと思います。

 

通常は、こういったギター・エフェクターは地面に設置して足で踏んでスイッチをONにします。

 

しかし椅子に座って演奏するジム・ホールは、足元には置かずに横のテーブルに置かれたエフェクターを手で叩いてONにしていました。

 

これがなんともシュールでした。

 

コーラスをONにするたびに、一瞬ギターから手を放して「ポンッ!」と手で叩いているジム・ホールが、なんとなく可愛らしかったです。

 

さて、このライヴは僕にとっての忘れられない一生の想い出になったのですが、残念ながらその翌年にジム・ホールは他界してしまいました。

 

出来ればもう一度ジム・ホールの素晴らしいライヴ演奏を生で観たかったのですが、その思いはかないません。

 

しかしその時のライヴの想い出を思い出すことが出来る作品があります。

 

それが今回ご紹介する2004年のトリオ・ライヴ盤『Magic Meeting』です。

 

 

Jim Hall – 『Magic Meeting』

01.Bent Blue
02.Blackwell’s Message
03.Skylark
04.Canto Neruda
05.Furnished Flats
06.Body And Soul
07.St. Thomas

 

Personnel:
Jim Hall – Guitar
Scott Colley – Bass
Lewis Nash – Drums

 

Recorded: Live at the Village Vanguard, New York, NY, April 30 through May 2, 2004.

 

アルバムについて

本作はNYにある名門ライヴ・ハウスの『ヴィレッジ・バンガード』で2004年4月~5月行われたライヴ演奏の中から厳選して7曲が収録されています。

 

『ヴィレッジ・バンガード』と言えば、僕はジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズを思い浮かべるのですが、本作もその名作群の仲間ですね。

 

ギター+ベース+ドラムのトリオ作品としては、ジム・ホールにとっておよそ18年振りとなります。

 

もちろん楽曲のテーマを弾いたりリードを取るのは、主役のジム・ホール自身です。

 

バックを支えるのは、ウッド・ベース奏者のスコット・コリーとドラム奏者のルイス・ナッシュの2人です。

 

ジム・ホールは、音が反響するようなコーラス・エフェクターこそ使いますが、歪み系のエフェクターは使っていないので、ギターとリズム隊のみのとても静かな演奏が繰り広げられています。

 

ちなみにアルバム・ジャケットの内側に当時のジム・ホールの演奏中の写真が掲載されています。

 

その写真では椅子にこそ座っていますが、まだ2004年と…僕が観た2012年の頃よりもジム・ホールも若かったのでエフェクターは足元に設置していますね。

 

写真を見るに、ツマミが4つあるのでおそらくBOSSの『SUPER Chorus CH-1』なのかな?と思います。

 

 

コーラスは、まるでお風呂の中で話している時のような揺れた反響音を醸し出すことが出来るギター・エフェクターです。

 

わかりやすいところで言えばニルヴァーナの代表曲のひとつ”Come As You Are”で聴けるギターの音がコーラスの音です。

 

ちなみにこのコーラス・エフェクターの”RATE”ツマミを低めに設定すると、まるで12弦ギターを弾いているようなアコースティックなサウンドを疑似的に作り出すことも出来ます。

 

このコーラス・エフェクターは、マイク・スターンやジョン・コルトレーンなんかもよく使っています。

 

今となってはコンテンポラリー・ジャズ・ギタリストの必須アイテムでもありますね♪

 

僕も好きなエフェクターなのですが、ジャズ系でコーラスを使おうとすると…「コーラスを使うからにはアウト・フレーズを上手く弾きこなせて当たり前!」的なプレッシャーに駆られるような気がして使いこなせずにいます。

 

なんか勝手にハードルが上がってしまう気がするんです。

 

しかし本当に上手くコーラスを活かしてアウト・フレーズを弾きこなせると、これほどかっこいいことはないと思います!

 

そういった点でも、ジム・ホールは僕の憧れの存在でもあります。

 

さて、本作は以前このブログでご紹介していたジム・ホールの名作『Live!』のコンプリート音源がリリースされたArtistShareというレーベルから発売されています。

 

ジム・ホールの名作『Live!』の音源をコンプリートしよう!

 

このArtistShareは、僕も詳しいことはわかりませんが、Fan-Funded(ファンの融資によって成り立っているソーシャルファンディング的なことかな?)のレーベルのようです。

 

基本はインターネットでの販売が主のようで、Amazonなんかで購入することができます。

 

僕は本作『Magic Meeting』がリリースされた2004年は、まだAmazonを利用し始めたばかりの頃でした。

 

2004年の11月にロック・バンドのリトル・フィートのCDを買ったのが初めてでした。

 

ちょうど2004年からAmazonを利用し始めたのですが、本作はたまたまタワレコで売っていたのを発見して購入しました。

 

その時は運が良かったと思うのですが、もしかしたら今だとAmazonが一番購入しやすいんじゃないかな?と思いますので、みなさんもぜひそちらを利用してみて下さい。

 

アルバムの内容

それでは演奏の内容を見ていきましょう。

 

1曲目”Bent Blue”は、ジム・ホールのオリジナル曲です。

 

アルバム冒頭からさっそくアウト・フレーズ満載のアヴァンギャルドな演奏が繰り広げられます!

 

アコースティックな音色に近いサドウスキーのフルアコ・ギターにコーラス・エフェクターを利用した浮遊感漂うサウンドが奇抜です!

 

イントロから5分40秒までずっとジム・ホールのアヴァンギャルドなアドリヴ演奏が続きます。

 

その後、ドラム・ソロを挟み再びテーマに戻って8分50秒ある1曲目が終わります。

 

これぞ「コンテンポラリー・ジャズ・ギタリストの始祖!」と言える名演です♪

 

2曲目”Blackwell’s Message”は、ジム・ホールともよく共演していたサックス奏者のジョー・ラバーノの楽曲です。

 

2分近くに及ぶドラムのアドリヴ演奏が終わってようやく小さな音でジム・ホールのギターが入ってきます。

 

ギター・ソロ時に少し音量が上がりますが、13分に及ぶ長い演奏時間のほとんどは「瞑想」するかのような静かな音色で繰り広げられています。

 

こちらの曲でもコーラス・エフェクターをONにしています。

 

次の3曲目” Skylark”は、古き良き時代のピアニストで作曲家だったホーギー・カーマイケルが書いた曲です。

 

ジム・ホールのお気に入り曲だったのか?ライヴでしょっちゅう演奏されていた曲です。

 

アルバムの冒頭2曲のアヴァンギャルドな演奏に比べて、3曲目のこのバラード曲では美しいメロディーをシンプルに奏でています。

 

あまりにも革新的な演奏で一般的には聴き辛いと感じられる前2曲と比べると、この曲はかなりキャッチーで耳馴染みが良い演奏だと思います。

 

ほとんどアンプの歪みを利用していないような、アコースティック・ギターの生音に近いフルアコの音色がとても静寂で美しいです。

 

4曲目”Canto Neruda”は、ジム・ホールのオリジナル曲です。

 

この曲では終始コード弾きをしていて、シングル・ノートでのギター・ソロは一切ありません。

 

ジム・ホールの醸し出すグルーヴに身を任せて聴くための楽曲ですね♪

 

5曲目”Furnished Flats”も、ジム・ホールのお馴染みのオリジナル曲です。

 

再びアヴァンギャルド路線のこの楽曲は、晩年のジム・ホールがよく演奏していた曲です。

 

続いて6曲目”Body And Soul”は、コールマン・ホーキンスでお馴染みのジャズ・スタンダード曲です。

 

本作では、相変わらずのアヴァンギャルドなフレージングと共に、音量小さめで静謐な演奏です。

 

最後の7曲目”St. Thomas”は、ソニー・ロリンズのカリプソ調の代表曲です。

 

ジム・ホールは、60年代にソニー・ロリンズと何度か共演していました。

 

その作品群については、以前このブログでも取り上げていましたので、ぜひそちらも併せてご覧になってください。

 

ジム・ホールが参加した60年代のソニー・ロリンズの作品3選‼

ソニー・ロリンズとの共演後にも、ロン・カーターとのデュエットでも”St. Thomas”を演奏していましたね。

 

 

あのデュオ演奏も素晴らしいのですが、テンポを上げてコーラス・エフェクターを使ったアヴァンギャルドなトリオ演奏が聴ける本作のバージョンも最高です♪

 

最後にこの名曲で締めくくられるのが憎い演出ですね♪

 

 

 

以上全7曲、【ジム・ホールとの魔法の会合‼2004年のトリオ・ライヴ盤『Magic Meeting』を聴こう♪】のご紹介でした。

 

本作の収録時点でも既に74歳だったジム・ホールの、衰えを感じさせない『革新的』な演奏は必聴です!

 

アルバム・ジャケットのデザインも渋くてかっこいいので、デジタル音源ではなく手元に置いておきたくなりますね♪

 

僕が人生で唯一観に行くことが出来たジム・ホールの素晴らしい生演奏を思い出すことが出来る素晴らしいアルバムがこの『Magic Meeting』です。

 

アルバムのタイトル通りに、この作品を聴くことで、いつでもジム・ホールとの『魔法の会合』を体験することが出来るんですよ♪

 

 

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