2018/12/02
アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズ渾身の一作『Black Whip』を聴こう♪
アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズ渾身の一作『Black Whip』
サンプリング・ソースにもなった表題曲やポール・マッカートニーにエルトン・ジョンのカヴァー曲など盛りだくさん♪
2018年度最後の月の一発目にご紹介するのは、僕の好きなジャズファンク系ギタリストのアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズ(以下:ブーガルー・ジョー)の8枚目のリーダー作になります。
現在行方不明のブーガルー・ジョーなのですが、1975年にリリースした最後のリーダー作『Sweetback』までに合計で9枚のリーダー作を残しています。
今回ご紹介する『Black Whip』は、その『Sweetback』よりも1作前の8枚目のリーダー作となります。
アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズの最終作『Sweetback』を聴こう♪
先月こちらのブログでご紹介していた1970年にリリースされた4枚目のリーダー作『Right On Brother』から他に3枚のリーダー作を間に挟んでいます。
アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズの代表作『Right On Brother』を聴こう♪
その他の3枚のアルバムについてもいずれこのブログで取り上げていきたいと思います。
その前に先にこの名作『Black Whip』をご紹介したいと思います。
Ivan ‘Boogaloo Joe’ Jones – 『Black Whip』
01.Black Whip
02.My Love
03.Freak Off
04.Daniel
05.Ballad Of Mad Dogs And Englishmen
06.Crank Me Up
Personnel:
Ivan ‘Boogaloo’ Joe Jones – Guitar
Dave Hubbard – Tenor Saxophone, Soprano Saxophone, Percussion
Bobby Knowles – Organ
Sonny Phillips – Electric Piano
Ron Carter – Bass, Electric Bass
Bud Kelly – Drums, Percussion
Jimmy Johnson – Percussion
Recorded:July 25, 1973 in NY.
アルバムの内容
全6曲と少なめの収録曲数なのですが、そこはアドリヴ演奏満載のジャズファンク・アルバムですので、ほとんどの曲が5分を超える長尺曲ばかりが収録されています。
特に本作の聴き所となるブーガルー・ジョー自身のオリジナル曲の3曲は、6分~8分の長尺曲ばかりです。
もちろんいつものワンコード系もしくはブルース調の曲でゴリ押しペンタトニックで弾きまくっています!
その3曲は、1曲目の”Black Whip”と3曲目の”Freak Off”と6曲目の”Crank Me Up”です。
どの曲もブーガルー・ジョー節と言えるジャズファンク・ナンバーになっています。
まず1曲目の”Black Whip”は、ヒップホップのサンプリング・ソースとしても人気の曲です。
ソウライヴもカヴァーしたブーガルー・ジョーの名曲”Right On”と似た感じの楽曲になります。
ギターがイナタくってかっこいいテーマメロディーを弾き終わると、まずはサックスのソロが始まります。
短いソロですが楽曲の雰囲気に合った悪ないソロです。
しかしその後始まるギターの長尺ソロの前では影が薄くなってしまうのも仕方ありません。
ギターソロが始まると、まずは手探りに低音弦でちょっとしたフレーズを弾き、ギターの指板上を下降していきます。
まずは少しずつオクターブ違いで同じようなフレーズを重ねていきます。
3分を超えた辺りからだんだんとダブルストップの交えて音の厚みを増していきます。
4分を超える頃には、グラント・グリーン以上に繰り返しまくるシーケンスフレーズが登場し出します。
怒濤のギターソロの終盤にはオクターヴ奏法も登場して盛り上がっていきます!
まるで「ギターが踊っているかのよう!」にバックのリズム隊とピッタリと息を合わせてソロを弾いています。
これこそがブーガルー・ジョーの真骨頂だと言えます!
オルタードスケールがどうのこうの…とか
コードトーンがどうのこうの…とか
ツー・ファイヴの時はこういったフレーズを…とか
ぶっちゃけ音楽を聴く人に取っては関係ないことなんですよね!
こういったジャズファンク系の音楽を聴いて楽しみたい人にとって、一番大事なのはバンドの「グルーヴ」なんです。
演奏を聴いて気分良くなりたいのに、しかめっ面で理論講座を開講する必要なんて一切ありません!
ただ聴くだけでいいんです!
後はグルーヴに身を任せて音楽にノったらいいんですよ♪
この曲ではブーガルー・ジョーのギターがほぼマイナーペンタトニック一辺倒で弾き倒しています!
人間の歌う音階に一番近いマイナーペンタトニックでメロディーをシンプルに構成した方が返って聴く人の耳に残ります。
なぜなら、難しいアウトフレーズなんかのギターソロを鼻歌で口ずさむことは困難です。
しかしシンプルなメロディーラインにならざるを得ないマイナーペンタトニック・スケールのフレージングは鼻歌で口ずさめたりします。
わかりやすいメロディーラインを聴いている方が実際は楽しいですからね♪
そういったわけで、シンプルなギターソロをグルーヴィーに演奏することで聴く人が踊り出したくなるような曲に仕上がっています。
だからこそブーガルー・ジョーが作曲した音楽は、ヒップホップやクラブ・ジャズ系にも人気なんでしょうね♪
「リズム」が一番大事なんだと感じるような素晴らしい楽曲です。
続く2曲目の”My Love”は、もちろんポール・マッカートニーの有名曲のカヴァーです。
そもそもの楽曲が名曲なので、悪くなりようもないのですが、やはりブーガルー・ジョーのこのカヴァーバージョンも最高の出来です♪
ポールが歌う歌メロをブーガルー・ジョーがギターで優しく奏でます。
ブーガルー・ジョーは、「ギターを踊らせる」だけでなく「ギターを歌わせる」ことも得意なんです。
これは僕の個人的な考えかも知れないのですが、ブルースを基調としたマイナーペンタトニックを弾くのが得意なギタリストは、歌メロをインストで弾くのに長けた人が多いような気がします。
グラント・グリーンしかり、メルヴィン・スパークスしかり、コーネル・デュプリーやデイヴィッド・T・ウォーカーなんかもそうです。
彼らと同じようにブーガルー・ジョーも、こういったバラード曲を弾かせると抜群に上手いです!
この”My Love”は、本作収録曲の中でも屈指の出来だと思います。
どちらかって言うとノリの良いジャズファンク曲が好きな僕でも、この”My Love”の心を込めて弾いたインストカヴァーは何度聴いても感動的だと思います。
そして3曲目の”Freak Off”は、ブーガルー・ジョーの自作ジャズファンク曲です。
本作収録曲の中で最もかっこいい曲です。
なんとなくザ・ニュー・マスターサウンズが演奏しそうな曲調なのですが、こちらの方が元祖です!
ブーガルー・ジョーがザ・ニュー・マスターサウンズのエディー・ロバーツに影響を与えています。
なので、この曲で聴けるブーガルー・ジョーのギターソロもエディー・ロバーツにそっくりなのですが、もちろんエディー・ロバーツの方が影響を受けています。
それにぶっちゃけエディー・ロバーツよりもブーガルー・ジョーの方が上手いです!
リズムの正確さや、ピッキングの正確さや、キレの良さなど全てブーガルー・ジョーの方が上手です。
どうしてもエディー・ロバーツは、ピッキングのミストーンが目立ちますからね。
(まぁ僕はそれも含めて勢いあるエディーのギターソロが好きではありますが。)
ブーガルー・ジョーの長いギターソロの後は、サックスソロが続きます。
なんだか酔っ払ってるようなヘロヘロのサックスソロです。
このサックスソロいる?…と思った後に、ジャズファンク系お馴染みのオルガン奏者ソニー・フィリップスの登場です!
今回はオルガンではなくって、エレピでソロを弾いています。
サックスソロはイマイチでしたが、ソニー・フィリップスのエレピはさすがのメロディーセンスで弾ききっています。
でも実はサックスソロとエレピソロのバックでコンピングをしているブーガルー・ジョーのグルーヴ感が半端なかったりもします!
この人、本当にリズム感の良いギタリストだと思います。
ギターソロだけでなく、バッキングでもキレッキレなんです!
ぜひギターソロだけでなくバッキングにも耳を向けてみて下さい。
「ギターが踊って」いますから♪
4曲目の”Daniel”は、エルトン・ジョンのカヴァー曲です。
あのポップな曲を少しカリプソ風の陽気なリズムで演奏しています。
なんだかソニー・ロリンズが登場してきそうな感じですね。
この次のアルバム『Sweetback』に収録されていた”Jamaica Farewell”も似た感じのリズムでした。
ブーガルー・ジョーは、こういった陽気な曲調が好きなんでしょうね。
“My Love”では曲のメロディーを崩さないようにほぼテーマを弾いていた感じでしたが、この”Daniel”ではアドリヴソロも弾いています。
この曲では、ギターが終始テーマにソロに前面に出て弾いているのでサックスはお休みです。
5曲目の”Ballad Of Mad Dogs And Englishmen”は、レオン・ラッセルが1971年に歌った曲のカヴァーです。
こちらも”My Love”と同じぐらい美しいバラード曲ですね。
男の哀愁溢れるようなこの名曲をジャズバラッド風に演奏しています。
レオン・ラッセルのオリジナルバージョンでは、感動的なストリングスがバックで流れていますが、ブーガルー・ジョーのバージョンではオルガンのロングトーンが静かに鳴っているアレンジです。
これまた素晴らしいバラード演奏です。
最後の6曲目”Crank Me Up”もブーガルー・ジョーの自作曲です。
速いテンポでスウィンギー・ブルース調の楽しい楽曲です♪
ギターのテーマの後は、サックスソロ→エレピソロが短めに続きます。
そして3番手でブーガルー・ジョーのアドリヴソロが始まります。
もう止められません!
この最後の曲もブーガルー・ジョー節全開でギターソロを弾きまくって終わります!
以上、【アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズ渾身の一作『Black Whip』】のご紹介でした。
たまに適当な音楽系雑誌で「ヘタウマギタリスト!」なんていう不当な評価をされているブーガルー・ジョーなのですが、フレージングがシンプルなだけで、決してヘタではないです!
難しいスケールを使って難解なフレージングが出来なければヘタだと言うのは、はっきり言ってあまりにも安易な考えだと僕は反論したいところです。
例えば、良い大学に行けなかった人間は社会人としてダメな人間ですか?
違いますよね!
ある程度学歴も大事な場合はありますが、大学に行けなかった人でも社会的に優秀な方々は数え切れないほどたくさんいらっしゃいます!
ブーガルー・ジョーは、難しい音楽理論こそ使ってはいませんが、抜群のメロディーセンスとリズム感で聴く者を楽しませてくれます!
「ヘタウマギタリスト!」なんて言う人に、僕はこう言いたいです。
「あなたはブーガルー・ジョーのようなグルーヴ感を演奏して表現できるのですか?」…と。
ヘタなギタリストが、ここまで正確なリズム感で演奏できないと思いますよ。
同じギター弾きの僕からしたら、ブーガルー・ジョーは「上手い」ギタリストですよ。
僕も出来ることならブーガルー・ジョーのような「リズム感」を身につけたいぐらいですよ。
フレーズがシンプルだとか、そういった目先のことで短絡的に決めつけるのは良くないと僕は思います。
といったわけで、そんなブーガルー・ジョーの抜群のリズム感を味わえるこの作品を、ぜひギタリスト以外の音楽好きの方々にも聴いてもらえたらな~と思います。
どうしても僕がギター弾きなので、ギターの感想が多くなってしまうのですが、ジャズファンク作品の名盤としてこの『Black Whip』を聴いてみて下さい。
3曲の有名バラード曲のカヴァーも本当に素晴らしいのですが、やはりブーガルー・ジョーの自作曲”Black Whip”、”Freak Off”、”Crank Me Up”が聴き所です。
これこそがまさにブーガルー・ジョーがギターを使って表現したかった音楽なのでしょうね。
作曲能力も素晴らしいブーガルー・ジョーに、もっと多くのジャズファンク曲を作ってもらいたかったな~と思います。
彼の作った曲のほとんどはジャズファンクのスタンダード曲になってもおかしくないようなかっこいい曲ばかりですからね!
捨て曲一切なしのジャズファンク名盤『Black Whip』おすすめですよ!
2018年最後の月の最初の音楽作品のご紹介に、僕の好きなアルバムを選べて良かったです。
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