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カテゴリー:Music

2020/02/01

ドナルド・バードおすすめのジャズファンク作品8選!

ドナルド・バードが1970年代に制作したジャズファンク作品を8枚ご紹介します。

ハード・バップ系トランぺッターがファンクに変化!

このブログでも過去に何度か登場しているジャズ・トランぺッターのドナルド・バード(以下:バード)は、25歳の若さで亡くなった不世出の天才クリフォード・ブラウンの後を継ぐ者のように当初は扱われていました。

 

その期待に答えるかのように1955年から始まったバードのキャリアは、正統派ハード・バップ・トランぺッターといった作品ばかりでした。

 

特に名門ブルーノート・レコードからリリースされた『Fuego』なんかは、ハード・バップというジャズのスタイルを代表するかのような歴史的名盤として今も語り継がれています。

 

そんなドナルド・バードも時代の変化には耐えることが出来ず、1960年代からは流行りのジャズ・ロックにいち早く取り組んでいました。

 

以前このブログでもご紹介していたソニー・レッドと共演した3作品なんかはその最もたる例といったところです。

 

知られざるアルトの名手ソニー・レッドと共演したドナルド・バードの3部作+α

そして1960年代が終わり、時代はファンク・ミュージックが猛威を振るう1970年代へと突入します。

 

この頃にはストレート・アヘッドなジャズはもはや時代遅れの遺物でした。

 

マイルス・デイヴィスもいち早くそのことに気づき、バンドをエレクトリック化して時代の流れに沿った名作をいくつも残してくことになります。

 

そんな中で、マイルスと同じく時代の流れを読み取ることが出来たバードも1970年の異色作『Electric Byrd』から、それまでのジャズロック路線とは違ったアルバムを制作するようになっています。

 

ドナルド・バード版『ビッチェズ・ブリュー』⁉1970年の斬新な作品『Electric Byrd』を聴こう♪

このアルバムを皮切りに、もはや『ジャズ』とは呼べないようなファンク・アルバムを制作するようになります。

 

どうしてもストレートな『ジャズ』しか好きになれない!とう方には、今回ご紹介するような8作品は「邪道」と感じられるのかもしれませんが、僕からしたら『ジャズ』も『ファンク』も同じ『ブラック・ミュージック』です。

 

そもそも『ファンク』も『ジャズ』から派生して生まれた音楽スタイルです。

 

全くの別物ではありません。

 

そういった偏見を持たずに、単純に『素晴らしいブラック・ミュージック』として聴いてもらえたらいいな~と思い、今回はドナルド・バードが1970年代に残したジャズファンク・アルバムを8作品ご紹介したいと思います。

 

それでは『Electric Byrd』の次の作品となる1972年のアルバム『Ethiopian Knights』から順にご紹介したいと思います。

 

Donald Byrd – 『Ethiopian Knights』

1972年にリリースされた『Ethiopian Knights』から、バードのジャズファンク路線は始まったと僕は思っています。

 

収録曲はたった3曲ながらも濃い内容です!

 

15分もある1曲目の”The Emperor”は、イントロからそれまでのジャズ作品とは一線を画したようなファンキーなギターリフで始まっています。

 

数多くのセッションに参加した名ギタリストのドン・ピークとグレッグ・ポリーがギターで参加しています。

 

4ビートでも8ビートでもなく16ビートのリズムはまさに『ファンク』そのものです!

 

テンポこそゆったりめのミディアムですが、このグルーヴはそれまでの『ジャズ』とは違っています。

 

マイルスの『In A Silent Way』を彷彿させるエレピを弾いているのはビル・ヘンダーソン3世です。

 

その他にも本作にはクルセイダーズ組が参加していて、オルガンを弾いているのはジョー・サンプルです。

 

ベースを弾くのは、ジミー・スミスの『Root Down』やグラント・グリーンの『Live at The Lighthouse』等でウネる演奏を聴かせてくれていたウィルトン・フェルダーです。

 

ファットバックなドラムを叩くのはエド・グリーンになります。

 

フュージョン/クロスオーバー好きの人であればこれだけのメンバーの名前を見たら、本作の演奏レベルが高いことはすぐにわかることでしょう。

 

もちろんメインでテーマメロディーを吹くのはバード自身で、その周りをサーマン・グリーンのトロンボーンとハロルド・ランドのテナー・サックスが支えます。

 

ビル・ヘンダーソン3世とジョー・サンプルの2つの鍵盤以外にもハーモニー楽器が参加していて、それが新主流派のヴィブラフォン奏者ボビー・ハッチャーソンです。

 

ここに女性パーカッショニストのボビー・ジャン・ホールも加えた総勢11名によってドナルド・バードのジャズファンク時代が幕を開けることとなります。

 

狂乱の『Electric Byrd』の続きのような楽曲が終わると一転してバラード曲の”Jamie”へと移ります。

 

どこかで聴いたことがあるようなハープ奏法のコード弾きや複音トレモロ・ピッキングのオブリガードを弾いているのはデイヴィッド・T・ウォーカー(以下:デビT)です。

 

ジョー・サンプルやウィルトン・フェルダーと同じくクルセイダーズ組としての参加でしょう。

 

次の3曲目”The Little Rasti”にもデビTが参加していて、ドラムの長いイントロが終わると真っ先にギターソロを弾いています。

 

あの特徴的な「歌っているかのようなギター演奏」を聴くことが出来ます。

 

またこの時期のデビTの特徴でもあるワウギターもソロ演奏で披露しています。

実はデビTファンにこそ聴いてほしいアルバムだったりします!

17分41秒もあるこの長尺曲は本作の一番の聴きどころでしょう。

 

こうしてバードのジャズファンク時代が本格的に始まっていくこととなります!

 

 

Donald Byrd – 『Black Byrd』

以前このブログでもご紹介していた『ブラックバーズ』へと続く1973年の名盤『Black Byrd』です。

 

ここからマイゼル兄弟とのトロイカ体制が始まるのですが、その辺については詳しくは下記のブログ記事も参照して下さい。

 

ドナルド・バードのバックバンドとして始まったジャズファンク・バンドのブラックバーズを聴こう♪

さて、L.A.シリーズのブルーノート作品として大ヒットを記録した本作は、ソウル/ファンク・ファンの人でも聴いているかもしれないぐらい知名度のあるアルバムだと思います。

 

今回ご紹介する8作品の中にあっても、その知名度の高さは群を抜いていると思います。

 

このアルバムを聴いたことがなかったとしても、『ブラック・ミュージック』好きであれば、そういったジャンルの雑誌や本などで一度は目にしているんじゃないのかな?といえるほど有名なアルバムでもあります。

 

マイゼル兄弟が深く関わったスカイハイ・サウンドの初期のアルバムとしても本作は重要な作品でもあります。

 

全ての『ブラック・ミュージック』が一度は耳を通しておくべき名作だと僕も思っています。

 

そんな本作にもデイヴィッド・T・ウォーカーが参加しています。

 

1曲目の”Flight Time”や2曲目の”Black Byrd”でデビTの特徴的なワウギターを聴くことが出来ます。

 

またそれだけでなく、本作からバードのダミ声ボーカルも登場するようになります。

 

トランペット演奏だけでは飽き足らず、ついには歌い始めるようになったのです!

 

同じダミ声で、もっとドスの利いた声を持つマイルスは歌うことはありませんでしたが、バードの歌は彼のジャズファンク路線には「なくてはならない必要品」でもありました。

 

といっても、決して歌は上手くないのですが、なんていうか味はあります。

 

実はギター好きにこそおすすめしたいのが本作でもあります。

 

デビTのオブリガードの特徴ある入れ方やワウギターの弾き方なども参考になりますが、前作から引き続き参加しているディーン・パークスのキレのあるファンク・カッティングも聞き逃せません!

 

どの曲もフュージョンに近いジャズファンクといった感触の楽曲ばかりですが、やはり5曲目に収録されている”Sky High”が必聴曲となります。

 

「スカイハイ・サウンドとは?」という問いに、曲名からしてそのまま答えを出したような楽曲です。

 

広い青空を自由に飛び交うような広がりのあるトランペットやフルートの演奏に、ボーカル陣の浮揚感のあるコーラスがこの路線の特徴とも言えます。

 

もはや『ブラック・ミュージック』が好きなら聴いていて当たり前!と言いたくなるような名盤なので、まだ未聴だった人はもちろん、これから色んなソウル・ミュージックを聴いてみたいなって人にもおすすめのアルバムです♪

 

正統派の『ジャズ』ではありませんが、これも『ジャズ』から派生した結果に出来た同じ音楽なのです。

 

Donald Byrd – 『Street Lady』

どちらかっていうと、僕はディスコ系の軽いノリのファンクよりも、ミーターズや初期のクール&ザ・ギャングのようなイナタいファンクが好きなのですが、このアルバムは別口です。

 

ミーターズ好きの僕のファンクの好みを知っている人に言うと驚かれるか、もしくは「お前こういうの嫌いって言ってなかったっけ?」と言われちゃいそうなのですが、白状しますと、実はこのアルバムが大好きでしょっちゅう聴いています。

 

理由は…デビTのファンキーなワウギターとチャック・レイニーのベースが聴けるからです。

 

モロにディスコシーンを意識したかのようなアルバム・ジャケットに、今聞くと時代遅れなシンセサイザーの音色は、本来であれば僕の好みとは反しているのですが、やはりデビTのワウギターにはそういったことを忘れさせてくれるような魅力があります♪

 

とにかく1曲目の”Lansana’s Priestess”からデビTのギター・カッティングや飛び道具のようなダブルストップのオブリガードが冴え渡っています!

 

またハーヴィー・メイソンのドラムとチャック・レイニーのベースというデビTのギターに最も適しているリズム隊との化学反応も最高です♪

 

そこにバードのファンキーなトランペットとロジャー・グレンのオシャレなフルートが乗っかると、聴いてる方が小っ恥ずかしい気分になるダサいコーラスも気にならなくなります。

 

はっきり言って曲調は「ダサい」です。

 

でもリズム隊の演奏力の高さは半端ありません!

 

やはりデビT、チャック・レイニー、ハーヴィー・メイソンを聴くためのアルバムだと言えます!

 

ちなみに本作のタイトルトラックでもある純ファンク曲”Street Lady”は、後年にマイルス・デイヴイスが『Doo-Bop』に収録されている”High Speed Chase”でサンプリング・ソースとして使っていました。

 

マイルスもバードのジャズファンク路線については当時から気になっていたようです。

 

ディスコ・ファンク好きの人ならすんなりと好きになれるアルバムだと思いますが、僕のようなデビTマニアにとっても外せない作品の一つです!

 

もう一度書きますが、僕はこのアルバムが大好きです♪

 

Donald Byrd – 『Stepping into Tomorrow』

ぼやけた模様のアルバム・ジャケットのイメージに合ったような幻想的な1曲目”Stepping into Tomorrow”から始まる本作『Stepping into Tomorrow』は、1975年にリリースされた「スカイハイ・サウンドの到達点」とでも言うべき完成された作品です。

 

引き続きデビT、チャック・レイニー、ハーヴィー・メイソンがバックを固め、その上をバードのトランぺットに、元マイルス組だったスピリチュアル・ジャズ系のサックス奏者ゲイリー・バーツがフロントを張っています。

 

前作のようなディスコ・ファンクぽさではなく、当時のフュージョン・シーンを感じさせるようなジャズファンク・アルバムとなっています。

 

偏にジャズファンクと言っても、ハービー・ハンコックのヘッドハンターズとは別物ですし、ジミー・マクグリフやリチャード・”グルーヴ2・ホームズのようなオルガン系とも、ロニー・”リストン”・スミスやウェルドン・アーヴィンのようなコズミック系スピリチュアル路線とも違っています。

 

こちらは広い青空を駆け巡るかのような「スカイハイ・サウンド」です。

 

独特の浮揚感が一番の特徴だと言えます。

 

Donald Byrd – 『Places And Spaces』

1976年にリリースされた『Places And Spaces』は、残念ながらセッション・ギタリストとして忙しくなったデビTの参加がありませんが……その代わりにカーティス・メイフィールドの『Curtis/Live!』でワウギターを聴かせていたクレイグ・マクマレンが参加しています。

 

といっても大した活躍はなく、もはやこの時代のギタリストは爽やかな音色で楽曲を彩るピアノや伸びやかなストリングスの影に隠れるような存在でしかありません。

 

前作以上にボーカルのコーラスがフィーチャーされた楽曲に華やかなストリングスのアレンジは、もはや『ジャズ』を感じさせる部分がないように感じます、これも『ジャズ』の進化の一つだと思って聴きましょう。

 

近年のロバート・グラスパーやフライング・ロータスに似た感じだったのかもしれませんね。

 

「こんなのジャズじゃない!」と言いつつも、「これもジャズの進化なのかな?」といったところです。

 

Donald Byrd – 『Caricatures』

カリカチュア(風刺画)と題された1976年の本作『Caricatures』は、ドナルド・バードにとって最後のブルーノート作品となりました。

 

まるでモーニング娘の”LOVEマシーン”に登場しそうな「ファファ♪フーゥ♪」という女性コーラスがなんともユニークな1曲目”Dance Band”からして、もはやハード・バッパーだった頃の面影は微塵も感じられません。

 

しかし『ファンク』がやりたくって仕方なかったという思いは伝わってきます。

 

全編、完全なディスコ系ファンクに仕上がっています。

 

1作品ぶりにデビTが参加していますが、『Street Lady』の頃のような活躍はしていません。

 

バードが当時の時代に沿ったアルバムを制作したといったところですが、「これってドナルド・バードが作る必要があったのかな…⁉」と思わせるブレも何となく感じます。

 

Donald Byrd – 『Thank You…For F.U.M.L. (Funking Up My Life)』

ブルーノート・レコードから離れて、バードがエレクトラ・レコードで吹き込んだ1978年の作品『Thank You…For F.U.M.L. (Funking Up My Life)』です。

 

まずは1曲目の”Thank You For Funking Up My Life”は、エド・ワトキンスのブリブリ・ベースのイントロから始まります。

 

その後すぐに登場するリヴァーヴの効いた深いサウンドのワウギターを弾いているのはワー・ワー・ワトソンです。

 

ハービー・ハンコックのジャズファンク・アルバムでも活躍したワー・ワー・ワトソンがドナルド・バードのアルバムにもついに姿を現しました。

 

その効果は絶大で、いつもの急降下するようなオブリガードや「クイッ!ギュワァァァンギュワァァァン」と飛び道具のようないつもの小技も大活躍します。

 

1曲目を聴いてわかるのが、それまでのブルーノート時代のスカイハイ・サウンドからの脱却が感じられるサウンド作りがなされています。

 

後年のマイルスのリヴァーヴの効いたミュート・トランペットを思わせるプレイを先にこおkでバードが披露しています。

 

更にドスの利いたダミ声は、無理しすぎて喉が潰れてしまったのか?とすら感じさせますが、もはやトランペットよりも歌が主役といった趣です。

 

バードの歌がない7曲目の”Cristo Redentor”にしても終盤に女性コーラスが登場します。

 

アルバム・ジャケットのイラストこそ従来の『ジャズ』作品を思わせるようなデザインですが、中身は『ジャズ』の欠片を探す必要があるほどにAOR化されています。

 

しかしここ数年流行りのシティ・ソウル好きの人なら本作は気に入ってもらえると思います。

 

というのも、本作で爽やかなギター・カッティングを弾いているのは、マイケル・ジャクソンのアルバム『Thriller』や『Bad』なんかでお馴染みのポール・ジャクソン・ジュニアだからです。

 

彼のカッティングこそ、シティ・ソウルを代表するようなサウンドですからね。

 

実はシティ・ソウル好きにこそ聴いて欲しい作品だったりします♪

 

Donald Byrd – 『Donald Byrd and 125th Street, N.Y.C.』

『ニューヨーク125番街の凱旋』という邦題が付けられた70年代最後となる1979年にリリースされたアルバム『Donald Byrd and 125th Street, N.Y.C.』も、前作の『Thank You…For F.U.M.L. (Funking Up My Life)と同じくエレクトラ・レコードからリリースされています。

 

マーヴィン・ゲイの1976年の作品『I Want You』を思わせるアルバム・ジャケットに収録されているのは、シティ・ソウル+ディスコ・ファンクといったアルバムで、タイトなリズムにメロウなメロディーが乗っかる楽曲ばかりです。

 

ディスコで踊る人々を描いた『I Want You』と違って、こちらの『Donald Byrd and 125th Street, N.Y.C.』の方には一応ジャズ・バンドらしきカルテットが描かれていますが、中身の楽曲との繋がりは感じられません。

 

むしろシティ・ソウル系の定番である「青い空にヤシの木」の描かれたポップアートのジャケットにした方が良さそうな作品です。

 

『ジャズ』として聴くと「良くない作品」ではありますが、シティ・ソウルとして聴くと「悪くない作品」となる、聴き手の考え方次第で評価が変わるアルバムだと言えます。

 

ちなみに僕は…まぁまぁ好きです♪

 

でも『Street Lady』の方がもっと好きです♪

 

 

以上、【ドナルド・バードおすすめのジャズファンク作品8選!】でした。

 

ぜひ今回ご紹介した8作品を順番に聴いてみて下さい。

 

ジャズファンク期のドナルド・バードもおすすめです。

 

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