カテゴリー:Music

2019/04/17

【ドイツからやってきた女流ジャズ・ピアニスト】ユタ・ヒップの代表作『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ』を聴こう♪

ドイツ出身女性ジャズ・ピアニストのユタ・ヒップの『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ Vol. & vol.2』をご紹介します。

ジャズ・ピアニストを聴くならトリオ編成!

今回は珍しくジャズ・ピアニストの作品をご紹介します。

 

どうしても僕自身がギターを弾くために、このブログではギタリスト中心でミュージシャンを取り上げることが多くなっています。

 

またギター以外だと……サックスやトランペット、そしてオルガンが好きなのでそういった楽器を演奏するミュージシャンのリーダー作ばかりになりがちです。

 

しかし僕もジャズ・ピアノ作品が嫌いなわけではありません。

 

以前にも【ジャズピアノの名曲を多数含む聴きやすいピアノトリオのおすすめアルバム4選】というブログ記事を書いていました。

 

ジャズピアノの名曲を多数含む聴きやすいピアノトリオのおすすめアルバム4選

もちろんそこに掲載したジャズ・ピアトの作品も好きですし、他にも聴くことがあります。

 

例えば、元マイルス・バンド組のハービー・ハンコックにチック・コリアにキース・ジャレットは当たり前のように好きです。

 

残念ながらハービーのみ観に行ったことがないのですが……チック・コリアにキース・ジャレットのコンサートは観に行ったことがあります。

 

また他にもマッコイ・タイナーやビル・エヴァンスにデューク・ピアソンやデューク・ジョーダン、ケニー・ドリューにアーマッド・ジャマルなんかの作品も好きでよく聴いたりします。

 

なので、決してジャズ・ピアノが嫌いなわけではありません。

 

たまたま取り上げる機会がなかっただけです。

 

でも、どちらかというとジャズ・ピアニストの作品はトリオ作品が好きです。

 

どうしてもメンバーに派手なリード楽器や自分の好きなギターが混じっていると、ピアノよりもそちらの楽器の方に耳がいってしまいます。

 

しかしピアノとウッド・ベースとドラムというシンプルな編成だと、メインでメロディーを弾くのは必ずピアノになります。

 

やはりトリオ編成が一番ジャズ・ピアニストの本来の持ち味を楽しむことが出来るんだと感じます。

 

そこで今回はトリオ編成で思う存分ジャズ・ピアノが味わえるライヴ盤でご紹介したいと思います。

 

 

当時はまだ珍しかった女性ジャズ・ピアニスト

今回取り上げるのは、ドイツ出身の女性ジャズ・ピアニストのユタ・ヒップです。

 

1925年に生まれた彼女は、1950年代からジャズ・ピアニストとして活動を始めています。

 

ドイツの年ミュンヘンでジャズ・ピアニストとして活動していた頃に評論家のレナード・フェザーに見初められてニューヨークへ移ることになります。

 

そして1956年4月5日にニューヨークのジャズクラブ「ヒッコリー・ハウス」にて行ったコンサートを収録したのが今回ご紹介するヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ Vol. & vol.2』の2枚のアルバムになります。

 

彼女はピアノの腕前はもちろん一流なのですが、しかし極度のあがり症だったらしいです。

 

また10代の頃からグラフィック・デザインを勉強していたこともあって、音楽よりも絵画やアートの方に興味があったようです。

 

そのため1957年にズート・シムズとの共演作を録音後は、レコーディング活動から引退したようです。

 

その後も細々と演奏活動は続けていたようですが、録音は残されておらず実質、音楽業界から身を引いた形となっています。

 

そして2003年に78歳でこの世を去りました。

 

ざっとユタ・ヒップの経歴をご紹介したのですが、ジャズ・ピアニストとして活動していた時期は1950年代になります。

 

当時としては女性ジャズ・ピアニストは珍しい方でした。

 

今でこそ数えきれないほどの女性ジャズ・ピアニストが存在していますが、当時だとメアリー・ルー・ウィリアムスや秋吉敏子さんなど数少ない女性ジャズ・ピアニストの中のひとりだったと思います。

 

なので、そういった意味では貴重な女性ジャズ・ピアニストの歴史的録音作品ではありますね。

 

ただ割と彼女の演奏は「淡々」としているように感じられます。

 

もちろん彼女の演奏力の高さは本物ですが……しかしどこか「冷たさ」を感じさせます。

 

女性ミュージシャンのひとつの特長としてよく上げられる「温かみのある柔らかい演奏」をそこまで感じることができません。

 

まるで「男の助けなんか不要!」と突き放されるかのような冷たさも感じられます。

 

それは彼女が生涯独身だったことと関係するかどうかはわかりませんが、しかし彼女の演奏からは「男に媚びない!」強い女性像を思い浮かべます。

 

それか単に「あがり症」なので緊張していただけなのかもしれませんが……。(笑)

 

ユタ・ヒップはステージでとても緊張するタイプの人だったようです。

 

どちらにしても「女性らしさ」だけを武器にしないピアノ演奏は、興味深いものがあります。

 

またオリジナル曲は1曲のみで、後は全てカヴァー曲なのも本作の特長のひとつです。

 

ブルーノート・レコードは若手ミュージシャンのオリジナル曲を積極的に取り上げていたレーベルなのですが、彼女は有名曲のカヴァー中心でコンサートを行っています。

 

その辺からも、今後音楽家として活動していく意思があまり感じられないというか……そこまで興味がなかったんでしょうかね。

 

せっかくピアノも弾けるし、お金になるから生活のために演奏した?といった雰囲気も、その淡々とした演奏から感じられなくもないです。(笑)

 

まぁ単純に音楽よりも絵画やデザインの方に興味があっただけなのでしょうが……。

 

それでは『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ Vol. & vol.2』をご紹介したいと思います。

 

 

 

Jutta Hipp – 『At The Hickory House Volume 1 & 2』

 

[Volume 1]

 

01.Introduction By Leonard Feather
02.Take Me in Your Arms
03.Dear Old Stockholm
04.Billie’s Bounce
05.I’ll Remember April
06.Lady Bird
07.Mad About the Boy
08.Ain’t Misbehavin’
09.These Foolish Things
10.Jeepers Creepers
11.The Moon Was Yellow

 

BN:1515

[Volume 2]

 

01.Gone With the Wind
02.After Hours
03.The Squirrel
04.We’ll Be Together Again
05.Horacio
06.I Married an Angel
07.Moonlight in Vermont
08.Star Eyes
09.If I Had You
10.My Heart Stood Still

 

BN:1516

 

Personnel:
Jutta Hipp – Piano
Peter Ind – Bass
Ed Thigpen – Drums

 

Recorded : at the Hickory House in New York City on April 5, 1956

 

アルバムの内容

[Volume 1]の1曲目は、レナード・フェザーによるヒッコリー・ハウスのステージ上から彼女の紹介したアナウンスから始まります。

 

ユタ・ヒップをミュンヘンからニューヨークに連れてきたのは、レナード・フェザーでした。

 

アメリカで発売された彼女の作品の全てのプロデュースを手掛ける程のほれ込みようです。

 

多分、下心があったんでしょうね。(笑)

 

しかしそんなレネードによる熱い(いやらしい?笑)紹介も終わるや否や「レナード、ご紹介ありがとう。」と言うだけ言って”Take Me in Your Arms”の曲紹介だけしてすぐに演奏を始めます。

 

ユタ・ヒップと同じドイツ系の女性シンガーのドリス・デイが歌ったことで有名なこのバラード曲を、アップ・テンポでいそいそと演奏し始めます。

 

しかしバラード演奏で感動させるのではなく、あえてこの緊張感漂うテンポで演奏することで1曲目からスリリングなライヴを聴くことが出来ます。

 

曲が終わると客のお愛想程度の拍手の後に、トラディショナルの”Dear Old Stockholm” 、チャーリー・パーカーの曲”Billie’s Bounce” 、ジーン・デ・ポールの曲”I’ll Remember April” と立て続けにジャズではお馴染みのスタンダード曲が続きます。

 

会場のお客もユタ・ヒップの技量は認めているけれども、あまりサービス精神が感じられない淡々とした演奏に突き放された感じがしたのでしょうか?微妙な拍手が続きます。

 

しかしこの何とも言えない距離感が聴く方には面白く感じます。(笑)

 

その後も、ピアニストのタッド・ダメロンの曲”Lady Bird”やノエル・カワードが歌ったMad About the Boy”、ジャズ・ピアニストのファッツ・ウォーラーの曲”Ain’t Misbehavin'”と有名曲のカヴァー曲が続きます。

 

面白いのがハリー・ウォーレンの書いたユニークな曲”Jeepers Creepers”を、スウィングするジャズに変えて演奏している10曲目です。

 

原曲の愉快なテーマ・メロディーもこうやってアップ・テンポのジャズにすることで、かっこよく聴こえるのが不思議ですね。(笑)

 

[Volume 1]は、フランク・シナトラの歌唱で知られる”The Moon Was Yellow”で締めくくられています。

 

この壮大な曲を、どこか「チュニジアの夜」を思わせるアレンジで演奏しています。

 

[Volume 2]は、アーブ・マジッドソンが書いた”Gone With the Wind”から始まります。

 

ジャズ・ピアニストのデイヴ・ブルーベックやジャズ・ギタリストのウェス・モンゴメリーの名演でも有名な楽曲です。

 

この曲も「あがり症」のユタ・ヒップならではなのか?アップ・テンポで淡々と演奏されています。

 

緊張のため早くステージから降りたかったのかな?と思わせる演奏です。

 

次の2曲目は、エイブリー・パリッシュの書いたジャズ・ブルース曲”After Hours”です。

 

この曲は他にもジャズ・ドラマーのロイ・ヘインズのアルバムでフィニアス・ニューボーンJr.がブルージーなピアノを披露していました。

 

曲名通りにダウンホームな雰囲気漂うこの曲を、ユタ・ヒップも珍しくブルージーに演奏しています。

 

3曲目”The Squirrel”も”Lady Bird”と同じくタッド・ダメロンの楽曲です。

 

ユタ・ヒップはもしかしたら、同じジャズ・ピアニストとしてタッド・ダメロンの書く楽曲が好きだったのかも知れませんね。

 

これまたフランク・シナトラで知られる4曲目のバラード曲”We’ll Be Together Again”を挟んで、5曲目”Horacio”は唯一のタンゴ風自作曲です。

 

“Horacio”とは、おそらくアルゼンチン出身のタンゴ作曲家オラシオ・サルガンのことを書いた曲でしょう。

 

6曲目”I Married an Angel”は、リチャード・ロジャースが作曲したミュージカル・ナンバーです。

 

チェット・ベイカーも演奏したこの楽曲を、ユタ・ヒップならではの淡々とスウィングするアレンジで演奏されています。

 

そして7曲目は、これまたフランク・シナトラが歌った”Moonlight In Vermont”です。

 

ジャズ・ギター好きには、ジョニー・スミスの名演が有名ですね。

 

この曲はそもそもの原曲のメロディーが美しいので、よっぽど腕の悪いミュージシャンが演奏しない限り悪くはならないでしょう。

 

続く8曲目は、[Volume 1」に収録されていた”I’ll Remember April” と同じくジーン・デ・ポールの書いた曲で”Star Eyes”です。

 

マイルス好きの僕は、チャーリー・パーカーが若かりし頃のマイルス・デイヴィスを伴って録音したバージョンを思いつきます。

 

1929年に書かれた古い曲”If I Had You”を挟み、最後はリチャード・ロジャースの書いた”My Heart Stood Still”で締めくくられます。

 

この曲は後にビル・エヴァンスがカヴァーしたことで更に有名になった曲ですね。

 

 

 

 

以上、【ユタ・ヒップの代表作『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ』を聴こう♪】でした。

 

当時としては珍しい女流ジャズ・ピアニストの歴史的ライヴ録音です。

 

女性ミュージシャンの演奏を表現する際によく言われる「温かみのある柔らかい演奏」を感じさせない淡々とした演奏が逆に新鮮に感じられる作品です。

 

またカヴァー曲ばかりですが、選曲の良さやユニークな曲をジャズ化した”Jeepers Creepers”など聴きどころも満載です。

 

ジャズ・ピアノ好きはもちろん、僕のようなジャズ・ギター好きの方にも聴いて欲しい作品です。

 

 

 

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