2020/01/29
ザ・ニュー・マスターサウンズの11枚目のスタジオ盤『Renewable Energy』 を聴こう♪
ザ・ニュー・マスターサウンズの作品を1枚ずつご紹介するシリーズ
2018年の11枚目のスタジオ盤『Renewable Energy』をご紹介します。
ザ・ニュー・マスターサウンズ(以下:ニューマスター)のアルバムを1枚ずつ順にご紹介しているブログ記事シリーズです。
前回は昨年の11月で、10枚目となるスタジオ作品『Made For Pleasure』をご紹介していました。
ザ・ニュー・マスターサウンズの10枚目のスタジオ盤『Made For Pleasure』を聴こう♪
あれから2ヶ月が過ぎたのですが、今年は3年ぶりとなる来日公演が行われます。
今回はボーカルにラマー・ウィリアムズJr.を迎えた新作『Shake It』を中心としたライヴとなりそうなのですが、その前に前作の『Renewable Energy』をご紹介したいと思います。
グラント・グリーンに捧げられた楽曲を収録!
思えば、3年前の来日公演は『Renewable Energy』発売前だったので、本作からの楽曲を日本では披露していなかったのですが……実は当時から既にアメリカのライヴでは『Renewable Energy』に収録されている楽曲はいくつか演奏されていました。
特にエディー・ロバーツが多大なる影響を受けた偉大なるジャズ・ギタリストのグラント・グリーンに捧げられた”Green Was Beautiful”は、かなり早い時期から演奏していました。
僕の知る限りでは、2018年に『Renewable Energy』がリリースされるよりも1年も前から演奏していったはずです。
というのも、2017年はグラント・グリーンの伝記映画『The Grant Green Story 』(日本未発表⁉)が公開された年でした。
そのタイミングでエディー・ロバーツがグラント・グリーンを追悼したライヴ企画『Green Is Beautiful』を、2017年の4月と12月にアメリカで行いました。
この『Green Is Beautiful』というライヴ企画は、ジャズファンク期のグラント・グリーンの曲を、エディー・ロバーツが中心となって演奏したイベントです。
例えば”Upshot”や”Iron City”に”Walk in the Night”といった、ジャズファンク期のグラント・グリーン好きには堪らない選曲でセットリストが組まれていました。
もちろんニューマスターでもしょっちゅうカヴァーしていた”Jan Jan”や”Windjammer”に”Flood in Franklin Park”なんかも含まれています。
面白いところでは、エディー・ロバーツが『Eddie Roberts & The Fire Eaters』名義で2011年にリリースしたアルバム『Burn!』にも収録されていた”ビッグ”・ジョン・パットンの楽曲”Latona”なんかも取り上げていました。
“Latona”が収録されていた”ビッグ”・ジョン・パットンの1966年のアルバム『Let ‘Em Roll』には、サイド・ギタリストにグラント・グリーンが参加しています。
前にエディー・ロバーツは、何かのインタビューでこの”Latona”で聴けるグラント・グリーンのギタープレイが大好きだと語っていたはずです。
そんなこともあってか、このイベントはグラント・グリーン好きだけでなくエディー・ロバーツ本人も存分に楽しんだライヴだったのでしょう。
そこから派生して本作『Renewable Energy』に収録されることとなったグラント・グリーンへのオマージュを込めた名ジャズファンク曲”Green Was Beautiful”が完成したのかもしれません。
ちなみにそのライヴ企画『Green Is Beautiful』でドラムを叩いていたのが、ソウライヴのアラン・エヴァンスでした。
ここで共演したことが後に『マタドール!ソウルサウンズ』誕生へと繋がったのでしょう。
【ソウライヴとニュー・マスターサウンズが合体⁉おすすめの新アルバム】マタドール!ソウルサウンズのご紹介!
それでは今回は、3年ぶりの来日公演前にニューマスターの11枚目の名作『Renewable Energy』をご紹介したいと思います。
The New Mastersounds – 『Renewable Energy』
01.Chicago Girl
02.Tantalus
03.Gonna Be Just Me
04.Pudding & Pie
05.Green Was Beautiful
06.Funk 49
07.Yokacoka
08.Living That Jazz Life
09.Stash
10.Groovin’ On The Groomers
11.Hip City
12.Swimming With My Fishes
Personnel:
Eddie Roberts – Guitar, on Vocal 06.
Simon Allen – Drums
Pete Shand – Bass
Joe Tatton – Organ & Keyboards
Special Guest:
Sam Bell – Percussion
Mike Olmos – Trumpet
Joe Cohen – Tenor Saxphone
Adryon De Leon – Vocals
Released : 2018
アルバムの内容
2015年にリリースされたニューマスターにとっての10作目のスタジオアルバムとなった『Made For Pleasure』以来、約3年ぶりにリリースされた11枚目のスタジオ盤は、『Renewable Energy(再生可能エネルギー)』と名付けられています。
デビュー以来、毎年のようにスタジオアルバムをリリースしていたニューマスターにしては珍しく長いスパンが空きました。
その間にエディー・ロバーツがグラント・グリーンのトリビュート・イベントをしていたことは上記にも書いた通りでしたが、ここに来てニューマスターじたいも「再生」したかのようなフレッシュさを感じられるアルバムが完成しました。
アルバムジャケットのデザインにもなっている各楽器のピクトグラムが表しているように、本作はそれぞれの楽器が持つ「自然のエネルギー」を用いて生み出された音楽が詰まっています。
『再生可能エネルギー』とは、何も「地球物理学的」や「生物学的」を基とする自然エネルギーからだけ生み出されるものではありません。
ニューマスターの4人による「人の手による楽器の生演奏」から生み出されるパワーも『再生可能エネルギー』のひとつなのです。
そういったこともあってか、まるでニューマスターというバンドをそのまま音楽という形で表現したかのような楽曲が並んでいます。
1曲目の”Chicago Girl”は、曲名こそ「シカゴ」というアメリカの都市名が付けられていますが、曲調はこれまで通りにミーターズを彷彿させるゆったりとしたニューオーリンズ風のグルーヴを持っています。
ホーン隊も参加していますが、派手に吹くのではなくあくまでもゆる~く吹いてオルガンのテーマを盛り上げる程度です。
エディー・ロバーツのギターに関しても、初期のレオ・ノセンテリのような緩い単音カッティングを中心に弾いています。
あくまでもこの曲の主役はオルガンであって、ギターはベースと同じようにリズムを支える楽器の一つとなっています。
注目すべきは、ジョー・タットンによるアート・ネヴィル風の緩やかなオルガンソロです。
この曲でゆったりとグルーヴした後は、2曲目”Tantalus”にてニューマスターの新機軸を味わうことが出来ます。
今までになかった少しラテン風のダンサンブルなグルーヴに乗ったピアノ演奏をフィーチャーした楽曲です。
ここであえてオルガンではなくピアノを弾いているのが特徴です。
これまでのニューマスターになかったような曲調ですが、本作のハイライトのひとつといえる曲ですね♪
本作発売後のライヴでも定番のように演奏されている楽曲です。
次の3曲目の”Gonna Be Just Me”は、女性ボーカリストのアドリアン・デ・レオンが参加した歌ものファンク曲です。
この曲もギターソロはなく、ソロを演奏するのはジョー・タットンのエレピになります。
4曲目”Pudding & Pie”は、どことなくミーターズの”Soul Machine”を思わせるようなゆったりとしたグルーヴのジャズファンク曲です。
幻想的なエレピを主体とした楽曲です。
ここまでエディー・ロバーツのギターというよりも、ジョー・タットンのキーボード演奏が目立つ楽曲が続きましたが、ここでついにあの曲がやってきます!
そうです、本作リリースの1年前からやっていたジャズファンク期のグラント・グリーンをオマージュしたような楽曲”Green Was Beautiful”です。
もちろんグラント・グリーンの1970年のアルバム『Green Is Beautiful』を意識したタイトルだと思うのですが、曲調は”Jan Jan”のようでもあります。
レア・グルーヴ系のバンド、ファビュラス・カウンツがオリジナルの”Jan Jan”は、グラント・グリーンがカヴァーすることで、緊張感が増したジャズファンク曲へと進化しました。
この曲でエディー・ロバーツは、まるで『Live at The Lighthouse』の頃のグラント・グリーンを思わせるような気迫あるアドリヴ演奏を披露しています。
これまでの4曲で物足りなさを感じてしまったギターファンも、この曲で満足できることでしょう♪
ちなみにイントロのコード弾きのフレージングは、これまたエディー・ロバーツが大きな影響を受けていたジャズファンク系のギタリストのアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズの最終作『Sweetback』に収録されていた”Confusion”に似ていたりします。
この”Confusion”という曲も過去にニューマスターがカヴァーしていたりします。
その演奏は『Return Of Jazz Funk Special: Jazz Funk Never Dies』というコンピレーション・アルバムで聴くことが出来ます。
また”Green Was Beautiful”のテーマメロディーはどことなく”Jan Jan”とパターンが似ているためか?
ある時のライヴではジョー・タットンがソロの合間にわざと”Jan Jan”のテーマを弾いたりもしていました。
僕も2017年からこの”Green Was Beautiful”を未発表の新曲として聴いていたので、本作がリリースされることを知った時は「あの曲は入っていないのかな?」と真っ先に探しました。
すると5曲目に収録されていたので、リリース前からワクワクした思い出です。
さて、本作の目玉曲の次には驚きのカヴァー曲が収録されています。
イーグルスのギタリストでもあったジョー・ウォルシュの別グループのジェイムス・ギャングの代表曲”Funk 49″です。
珍しく強めに歪ませたギターでイントロが始まった後、もっと驚くのはエディー・ロバーツ本人がリードボーカルを取っていることです!
お世辞にも歌は上手くありませんが……気合は感じます。(笑)
驚きのカヴァー曲の次は、これまた”Green Was Beautiful”風のジャズファンク曲”Yokacoka”が7曲目に収録されています。
似たようなギターリフのテーマを持った曲ではありますが、”Green Was Beautiful”と同じようにギターを弾きまくっています!
グラント・グリーンやブーガルー・ジョーからの影響を感じさせつつも、オリジナリティーも持ったアドリヴ演奏は何度聞いても飽きることがありません。
エディー・ロバーツだけでなく、ジョー・タットンもオシャレなエレピソロを弾いています。
この曲も最近のライヴでもよく演奏されている定番曲のひとつです。
次の8曲目”Living That Jazz Life”は、曲名通りなのかサックスやトランペットが活躍するゆったりとしたグルーヴのジャズファンク曲です。
9曲目には、これまでにもニューマスターがちょくちょくアルバムに収録していた怪しい雰囲気の楽曲”Stash”が収録されています。
過去の楽興で言うところの”Six Underground”や”La Cova”のような感じです。
10曲目”Groovin’ On The Groomers”は、ニューマスターが牽引してきたディープファンク・ムーヴメントを復権させるかのような曲調です。
まるでスピードメーターやソウル・インヴェスティゲィターズなんかが活躍していたあの時代を思い起こさせるような懐かしさです。
2014年のアルバム『Therapy』に収録されていた”Whistle Song”のような口笛も登場する愉快な楽曲です。
11曲目”Hip City”は、2006年のアルバム『102%』に収録されていた”Hey Fela!”を緩くしたような楽曲です。
どうしてもニューマスターのアルバムは後半に行くにつれ、あまり目立たないような過去の楽曲と似た感じの曲が収録されていることがありますね……。
アルバム最後の12曲目”Swimming With My Fishies”は、ゆったりとしたトランペットがクロスオーバー時代のフレディー・ハバードを思わせるフュージョン系の楽曲です。
良い意味でニューマスターらしくない曲でアルバムは締めくくられています。

以上、【ザ・ニュー・マスターサウンズの11枚目のスタジオ盤『Renewable Energy』 を聴こう♪】でした。
ニューマスターにしては珍しく前作から3年ぶりにリリースされたこの『Renewable Energy』は、新機軸の”Tantalus”やグラント・グリーンをオマージュした”Green Was Beautiful”に、ライヴ映えするジャズファンク曲”Yokacoka”といった名曲を含んでいます。
これらの3曲は、アルバムリリース後に新たな定番曲といった感じで演奏されています。
そういった意味でも近々行われる3年ぶりの来日公演前に復習しておきたいアルバムですね♪
それでは今後もニューマスターの作品ご紹介は続きますので、ぜひまたこのブログを読みに来てください。
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