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カテゴリー:Music

2019/09/22

スタッフのメンバー達が詩の朗読に音楽を加えた⁉黒人詩人バマの『Ghettos of the Mind』を聴こう♪

黒人詩人バマの1972年のポエトリーリーディング作品『Ghettos of the Mind』をご紹介します。

コーネル・デュプリーやリチャード・ティーを含むミュージシャンがバックの演奏を付け加えた異色のアルバム!

今回は一風変わったレア・グルーヴ系の作品をご紹介したいと思います。

 

それは黒人詩人のバマという人物が1972年に吹き込んだ『Ghettos of the Mind』という作品です。

 

Bama : The Village Poet – 『Ghettos of the Mind』

01.I Got Soul
02.Welfare Slave
03.Nothingness
04.Thanksgiving
05.Ghettos of the Mind
06.The Right to Be Wrong
07.Blessed Marie
08.Justice Isn’t Blind
09.Social Narcotics
10.Blackman, My Brother
11.Drunken Sister

 

Personnel:
Bama – Poetry
Richard Tee – Keyboards
Cornell Dupree – Guitar
Gordon Edwards – Bass
Bernard Purdie – Drums

 

どんなアルバムなの?

本作のアルバム・タイトルにある『Ghettos of the Mind』というと、ブロンクス出身のヒップホップ・グループのピート・ロック&CLスムースが1992年にリリースした1stアルバム『Mecca & The Soul Brother』の3曲目に収録されていた同名曲を思い起こします。

 

実はあの曲のイントロ部分で使用されていたサイケデリックな”Ghettos of the mind….”の繰り返し部分はこのアルバム『Ghettos of the Mind』からサンプリングされているんです。

 

といっても、今回ご紹介するバマのアルバムはポエトリーリーディングという手法で誌を語るスタイルではありますが、ラッパーのようなスタイルとは異なっています。

 

楽曲のリズムに合わせてリズミカルに言葉を発するラップとは違い、バマはまるでビート詩人のように淡々と語るスタイルです。

 

そもそも本作録音時の1972年には、まだヒップホップが誕生していなかったですからね。(※ヒップホップの誕生は1973年8月11日クライヴ・キャンベルのホームパーティーが始まりとされています。)

 

バマのスタイルは、そのまま「ポエトリーリーディング=詩の朗読」といった感じですね。

 

ちなみにビートニクを代表するジャック・ケルアックは、ジャズ・ミュージシャンとのセッションを記録していたり、ウィリアム・S・バロウズの詩の朗読にニルヴァーナのカート・コバーンがギター伴奏を付け加えたシングル盤をリリースしていたりもします。

 

 

ヒップホップのように「ひとつの音楽ジャンル」として形成されているわけではありませんが、本作のようにポエトリーリーディングに伴奏を付けた作品は他にもいくつか存在しています。

 

それともうひとつ、ヒップホップ と本作との違いは、ヒップホップの基本スタイルは既存の楽曲をサンプリングして作られているのに対して、本作ではスタジオ・ミュージシャンの生演奏が起用されている点です。

 

そういった点では、1970年の同年代から活躍しているギル・スコット・ヘロンのようでもあります。

 

それとギル・スコット・ヘロンと似ている点に本作の参加ミュージシャンの共通点があります。

 

本作にはギル・スコット・ヘロンの初期の作品にも参加していたバーナード・”プリティ”・パーディがドラムで参加しています。

 

そこにコーネル・デュプリーのギターとリチャード・ティーのキーボード、そしてゴードン・エドワーズのベースという後に人気フュージョン・グループのスタッフのメンバーになる3人が加わっています。

 

この4人の演奏陣の名前を目にしただけで、僕と同じようなブラック・ミュージック好きの人はワクワクすると思うのですが、しかしここでフロントに立つのはサリナ・ジョーンズやマリーナ・ショウでもなければ、エスター・フィリップスでもダコタ・ステイトンでもありません。

 

歌メロほぼ無視の渋い声のおじさんが眠くなるような詩の朗読をしてくれています。

 

はっきり言いますと、聴く人を選ぶような作品です。

 

多分、ほとんどの人が本作のバマの詩の朗読にはそこまで興味はないと思われます。

 

少なくとも僕はこの詩の朗読には興味がありません。

 

一応日本盤には対訳こそ付いていないものの、全ての収録曲の歌詞が掲載されています。

 

しかし当時のブラック・カルチャーを体験した米国黒人でもない限り、その歌詞に隠された本当の意味なんて理解できないと思います。

 

それは仕方のないことですし、でもだからといって歌詞の意味が分からなければ音楽を聴いてはいけない?とは僕は思いません。

 

だって日本語で歌われた邦楽歌手の音楽でも、はっきり言って「何を言ってるのか聴き取れない?」「何を伝えたいのか支離滅裂?」なんてことあると思います。

 

でも歌詞の意味が分からないからその音楽は駄作!というのは極論のような気がします。

 

歌も含めて楽器陣のアンサンブルのひとつと捉えて聴けばいいんじゃないかな~というのが僕の考えです。

 

そもそも僕はブルースが大好きですが、「じゃ~このB.B.キングのこの曲の歌詞の意味を詳細に答えて?」と言われると…出来ません!

 

でも音楽的にどうすごいのか?を説明することは出来ます。

 

何が言いたいかっていうと、「歌詞の意味」なんて気にせず、その楽曲のグルーヴに酔いしれましょう♪ってことです。

 

音楽は「歌詞だけ」とか「歌メロだけ」に限定して聴くのではなく、その楽曲全体のハーモニーやメロディーの流れ、リズムの揺れなんかを楽しみましょう。

 

そういったわけで本作も、スタッフ好きの人やコーネル・デュプリーのギターやパーディのドラム好きの人におすすめ出来る作品です♪

 

それでは今回は詩の朗読部分は省いて、各曲のイメージだけでも簡単にですがご紹介いたしたいと思います。

 

 

アルバムの内容

挨拶代わりの1曲目”I Got Soul”は、バマの詩の朗読からさっそく始まる楽曲です。

 

ここで覚悟を決めましょう!「あ~この作品はこのパターンで続くんだな…」

 

しかしフロントが自由に朗読しているバックで、「どこかで聴いたことがあるな~?」といった感じのR&B系のバッキングを4人のミュージシャンが提供しています。

 

スタッフの半分のメンバーにパーティが合わさっているので、バックの演奏は文句なしにグルーヴしています♪

 

バマもある程度は自由に朗読していますが、全く起伏がないわけでもなく一定のメロディーは維持しています。

 

また小節ごとの区切りもしっかりと意識して朗読しているようですので、ただただ垂れ流しの無茶苦茶さはありません。

 

よほどソウルフルな歌メロを意識して聴くのでなければ、気にならずに聴くことが出来ると思います。

 

違いはありますが、ルー・リードやニール・ヤングのように「ちょっと歌のヘタなシンガー」ぐらいの気持ちで聴いてみて下さい。(※僕はルー・リードとニール・ヤング大好きです。批判しているわけではないので、そこは勘違いしないでください。)

 

2曲目”Welfare Slave”は、コーネル・デュプリーの独断場です!

 

コーネルの得意なT-ボーン・ウォーカーの名曲”Stormy Monday”風の楽曲です。

 

コーネルは自身の最期の作品『Doin’ Alright』でも”CL Blues”という曲名でこういった「ストマン進行」の楽曲を残していました。

 

名セッション・ギタリスト、コーネル・デュプリー最期の作品『Doin’ Alright』を聴こう♪

コーネル本人の模範演奏も収録したギター教則本『Rhytmn & Blues Guitar』に於いても「ストマン進行」の課題曲を掲載していました。

 

コーネル・デュプリー本人の模範演奏も収録したギター教則本『Rhytmn & Blues Guitar』をご紹介します。

どうやらコーネルはこういったスロー・ブルースが何よりも好きだったんでしょうね。

 

この”Welfare Slave”という曲は、「ストマン進行」の楽曲にバマの詩の朗読が乗っかる感じです。

 

3曲目”Nothingness”は、リチャード・ティーの弾く幻想的なエレピだけをバックにバマが朗読をしています。

 

4曲目”Thanksgiving”は、今度はパーディのドラムだけをバックに朗読が始まります。

 

ラッパーのコモンも2014年のアルバム『Nobody’s Smiling』の”Speak My Piece”でドラムのビートのみでラップしていたのを思い起こします。

 

5曲目の”Ghettos Of The Mind”は、先ほど上の方で書いていたようにピート・ロック&CLスムースがサンプリングしていたものです。

 

35秒間”Ghettos of the mind….ghettos of the mind….ghettos of the mind….”と、まるでファンカデリックの初期の作品のようにサイケデリックに繰り返されるものですので、「曲」とは言えないかもしれないですね。

 

次の6曲目”The Right to Be Wrong”は、バックの演奏がなくバマが詩の朗読だけをしています。

 

米国黒人文化の歴史研究家でもない限り、これは飛ばしましょう!

 

7曲目”Blessed Marie”も1分近くバマの朗読だけが続き、ようやくリチャード・ティーのメランコリックなエレピが登場します。

 

この辺2曲が退屈なのですが、曲目”Justice Isn’t Blind”からはパーディのグルーヴィーなドラムとコーネルのファンキーなギター・カッティングが登場します。

 

特定の楽曲をカヴァーするのではなく、「どこかで聴いたことがあるな~?」といったよくあるソウル/ファンク系の楽曲パターンを演奏している感じです。

 

9曲目”Social Narcotics”は、冒頭25秒はバマが一人で朗読しているので「飛ばそうかな?」と思いますが、もう少し我慢を!

 

演奏陣が参加すると飛びっきりファンキーな楽曲に変わります!

 

バックの演奏が良いだけに、歌詞の内容は別にそのままでも良いので、誰か他の歌の上手いシンガーにメロディーを付けて歌ってもらいたかったかな~といった少しもったいない楽曲です。

 

10曲目”Blackman, My Brother”も再びパーディのドラムのみをバックに朗読する曲です。

 

そして最後の11曲目”Drunken Sister”は、パーディのドラムのイントロからギター+エレピ+ベースが最初から参加してほっとさせてくれるソウル・バラード風の曲調です。

 

バマの朗読だけのトラックは、なかなか聴きづらいものばかりではありますが、4人のスタジオ・ミュージシャンの卓越した演奏が聴ける楽曲だけは安心してきことが出来る作品です。

 

 

 

 

 

以上、【スタッフのメンバー達が詩の朗読に音楽を加えた⁉黒人詩人バマの『Ghettos of the Mind』を聴こう♪】でした。

 

はっきり言ってバマの詩の朗読は退屈です。

 

バマが本作のリーダーではありますが、本作に参加している4人のスタジオ・ミュージシャンを中心に聴いた方が楽しめると思います。

 

コーネル・デュプリーやバーナード・パーディの他の参加作品を色々と聴いてきたけれども、このアルバムは知らなかったな~といった僕のような彼らの演奏のマニアの人におすすめします。

 

いきなりこの作品から聴くのはやめておきましょう。

 

まずはコーネルやパーディの有名作品を全て聴いた後に、最後の最後、もしくは興味本位で聴いてみる感じが良いかと思います。

 

 

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