2019/01/24
コーネル・デュプリーも参加したアーチー・シェップのおすすめの2枚のスピリチュアル・ジャズ作品をご紹介!
“闘うテナーマン”アーチー・シェップが1972年に制作した2枚のスピリチュアル・ジャズ作品を聴こう♪
コルトレーン一派のテナー奏者
今回は僕が一番尊敬する人間にして偉大なるミュージシャンのジョン・コルトレーンの愛弟子であったアーチー・シェップです。
ファラオ・サンダースやマリオン・ブラウンと共に、「コルトレーン一派」ともいうべきテナー・サックス奏者です。
“闘うテナーマン”とも形容されるアーチー・シェップの基本スタイルは、フリー・ジャズ系のアブストラクトな演奏をするミュージシャンです。
しかし70年代初期の頃は、R&Bやファンクの要素が色濃いジャズ・ファンク系の作品も多く制作していました。
中にはバーナード・パーディが参加して、モロにファンクを演奏した楽曲もあったりするほどです!
もちろんジャズ・ファンク大好きな僕は、この時期のアーチー・シェップの作品が一番のお気に入りです。
そこで今回は、このブログでも登場回数の多い、僕の好きな名セッション・ギタリストのコーネル・デュプリーが参加した2作品をご紹介したいと思います。
1972年の2枚のスピリチュアル・ジャズ作品『Attica Blues』と『The Cry Of My People』
その2作品とは、1972年の1月に吹き込まれた『Attica Blues』と、同年9月に吹き込まれた『The Cry Of My People』です。
どちらの作品にも数曲でコーネル・デュプリーが参加してギターを弾いています。
特に今となっては珍しいワウギターを「ワカチョコ♪」と弾くコーネル・デュプリーが聴けるもが最大のポイントとなっております!
ちなみにジョン・コルトレーンの遺志を継いだこれらのフリージャズやファンクにゴスペルの要素が混じった音楽性を俗に『スピリチュアル・ジャズ』と呼ぶことがあります。
『スピリチュアル』と聞くと、なんとなく怪しい気がしたりもしますが、中身の音楽はいたって真面目な音楽です!
フリージャズやファンクのようなアブストラクトなメロディーと激しいビートを用いて、ブラック・フィーリング溢れる音楽によって人種差別と闘う米国黒人たちの心を揺さぶり彼ら自身に誇りを持たせたという、米国の歴史を考えても実は重要な音楽性だったりします。
僕自身は、純粋な日本人なので彼ら米国黒人たちの熱き思いははかり知れませんが、それでもこういった『スピリチュアル・ジャズ』の作品を聴いていると、何か「熱い気持ち」が沸き立ってくるようで、とても好きな音楽性です。
何か自分自身に気合を入れたいときに聴くことが多いです。
といったわけで、今回のこの2作品もコーネル・デュプリー好きはもちろん、『スピリチュアル・ジャズ』の熱い作品を聴きたい人におすすめとなっております♪
それでは、各アルバムをご紹介したいと思います。
Archie Shepp – 『Attica Blues』
1972年の1月24~26日の3日間を使って録音された名盤『Attica Blues』です。
アルバムタイトルと1曲目の曲名に使われた”Attica”とは、1971年にニューヨーク州のアッティカ刑務所で起こった黒人囚たちの暴動にインスパイアされて書かれた曲のことです。
さっそくこの曲のイントロからコーネル・デュプリーのワウギターのカッティングが「ワカチョコ♪ワカチョコ♪」と始まります。
イントロが終わるとアレサ・フランクリンを彷彿させるソウルフルな女性ボーカルが歌い始め、ゴスペル風の女性バック・ボーカルが盛り上げます。
ベースを弾くのはモータウンでもお馴染みのジェリー・ジェモットです。コーネルとジェモットとくればキング・カーティスを思い浮かべますね!
しかしこのアルバムのリーダーは、フリー・ジャズの権化アーチー・シェップです。
そのリーダーのシェップは、あくまで豪華なホーン隊の一部として参加している形です。
自身がサックスをバリバリと吹きまくるのではなく、伝えたい楽曲の一部として役割を果たしています。
しかしそれぐらいにこの楽曲は力強く、そして熱い演奏となっております。コーネルのワウギターに、緊張感漂うストリングス、闘いを鼓舞するかのような攻撃的なゴスペル・コーラスにソウルフルなリード・ボーカル、そして派手に決める豪華なホーン隊…完璧です!
この1曲だけのために買っても良い名盤です。
他にも聴きどころはありますが、とにかくこの1曲目が強烈です!
ちなみにコーネルが参加した曲は、1曲目の他に3曲目の”Steam (Part 1)”と5曲目の”Steam (Part 2)”と8曲目の”Ballad For A Child”の4曲になります。
3曲目の”Steam (Part 1)”と5曲目の”Steam (Part 2)”はバージョン違いの同じ曲です。
この浮遊感漂うバラード曲でボーカルを務めるのは、自身もスピリチュアル・ジャズ作品を多くリリースしているジョー・リー・ウィルソンになります。
彼のリーダー作品にもコーネル・デュプリーやジミー・ポンダーにケニー・バレルなど錚々たるギタリストが参加していたりもします。
8曲目の”Ballad For A Child”は、1曲目でリード・ボーカルで歌っていたヘンリー・ハルが歌うバラード曲です。
これらの3曲ではコーネルは、小さめの音量でバッキングを弾いているのみです。
どの曲もストリングスの方が大きな音で鳴っているので、残念ながらコーネルの影は薄いです。
しかしこれらの楽曲ではリーダーのアーチー・シェップの優しい音色のサックス・ソロが聴けるのがポイントです。
フリーな演奏だけでなく、こういったハートウォーミングなサックスソロを吹けるのがアーチー・シェップのもうひとつの魅力ですね♪
他にも獄死した政治囚人に捧げられた鎮魂歌のようなホーン隊がかっこいい8曲目の”Blues For Brother George Jackson”や、壮大なストリングスの音色が印象的な9曲目”Good Bye Sweet Pops”や、盟友カル・マッセイによる名曲10曲目”Quiet Dawn”なども聴きどころです。
“Quiet Dawn”で歌っているのは、カル・マッセイの娘のワヒーダ・マッセイです。
熱く激しい1曲目以降は、実はほとんどの曲がゆったりとしたバラード曲ではありますが、しかしコーネルの弾くどす黒いグルーヴ感溢れるワウギターを聴くためだけに1曲目”Attica Blues”目当てで聴いてみるのも大いにありだと言える名作です。
ちなみに僕も最初はコーネル・デュプリー目当てで購入しています。
もちろん1曲目以外もスピリチュアル・ジャズの名曲と言える楽曲ばかりですので、おすすめです♪
ちなみに1979年に『Attica Blues』をパリにて総勢30名弱のビッグ・バンドで再演した『Attica Blues Big Band』や…
2012年になって「アッティカ・ブルース・オーケストラ」名義で再演ライヴを行った『Attica Blues Orchestra Live』という作品も存在しています。
しかし残念ながらそのどちらにもコーネル・デュプリーは参加していません。
もし後数年、コーネル・デュプリーが長生きしていたのなら…『Attica Blues Orchestra Live』に参加していたかもしれませんよね⁉
Archie Shepp – 『The Cry Of My People』
こちらの作品は、『Attica Blues』と同じ1972年に制作されています。
リリースされたのは翌年の1973年になってからですが、録音自体は『Attica Blues』から約8ヵ月後の9月25~27日の3日間にほぼ同じメンバーで録音されています。
コーネル・デュプリーが参加しているのは1曲目と3曲目のわずか2曲のみです。
『Attica Blues』の1曲目はワウギターがグルーヴィーな熱い楽曲でしたが、本作の1曲目”Rest Enough (Song To Mother)”は、ゴスペル調のR&B系の曲です。そのためコーネルのギターもバッキングに徹しているのみではあります。
しかし一聴してすぐに「あ、コーネルのギターだ!」とわかるあの特徴的なギターのトーンがちゃんと聴こえてきます。
3曲目の”All God’s Children Got A Home In The Universe”は、バラード調の1曲目とは打って変わって、ノリのよいゴスペル・ナンバーです。
まるでシスター・ロゼッタ・サープでも登場しそうなファンキーなグルーヴが最高です♪
コーネルのいつものダブルチョークダウンの音色も聴くことができます。と、この2曲のみがコーネル参加曲になります。
しかしR&B調のこの2曲以外の他の曲こそ、よりスピリチュアル・ジャズ系の楽曲が楽しめたりします。
前作でも”Quiet Dawn”を提供したカル・マッセイが書いた、2曲目の祈りを捧げるような壮大な楽曲”A Prayer”や、タイトルトラックにもなった鎮魂歌のような物悲しい5曲目の”The Cry Of My People”も聴きどころです。
この作品を吹き込んだ直後にカル・マッセイは亡くなっています。本作は彼への追悼盤のようにも感じられます。
4曲目の”The Lady”は、前作でも登場したジョー・リー・ウィルソンが歌う曲で、彼の代表曲とも言えるメロウな楽曲です♪
また6曲目と7曲目の”African Drum Suite”は、本作でドラムを務めるビーバー・ハリスが書いたアフリカンなコーラスが光るアフロ・ジャズです。
最後の8曲目”Come Sunday”は、御大デューク・エリントンの楽曲で、ジョー・リー・ウィルソンがメロウに歌い上げています。
ちなみに本作の1曲目と2曲目でドラムを叩いているのは、バーナード・パーディだったりします。
『Attica Blues』よりも更にメロウな楽曲が増えた本作は、コーネル・デュプリーの参加も2曲のみですが、スピリチュアル・ジャズという視点から見ると、この『The Cry Of My People』の方がよりそのジャンルを代表するような楽曲が多く収録された作品だと言えそうですね。
以上、【コーネル・デュプリーも参加したアーチー・シェップのおすすめの2枚のスピリアル・ジャズ作品】のご紹介でした。
やはり何と言っても一番の聴きどころは、コーネル・デュプリーのワウギターが聴ける『Attica Blues』ではありますが、しかしどちらの作品もそれだけではなく『スピリチュアル・ジャズ』というジャンルを代表するような熱い作品だと言えます。
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