
2018/10/10
ソウライヴの最高傑作!?トリオライヴ盤『Soulive』を聴こう♪
ソウライヴの2003年発売の初の公式ライヴ盤『Soulive』をご紹介します。
ソウライヴの作品を1つずつ取り上げてご紹介しているブログ記事シリーズです。
今回はソウライヴの最高傑作と言っても過言ではない2003年リリースのトリオライヴ盤『Soulive』を1曲ずつ解説する形でご紹介します。
ジャズファンク好きは要チェックです!
もちろんライヴ盤好きの僕は、ニュー・マスターサウンズの初の公式ライヴ盤『Live at La Cova』と同じくソウライヴの作品では今回ご紹介する作品が一番好きです。
ザ・ニュー・マスターサウンズの初の公式ライヴ盤『Live at La Cova』
さて、前回ご紹介していたソウライヴの2002年発売の4枚目のスタジオアルバム『NEXT』の次の作品に当たるのが今回ご紹介するライヴ盤の『Souklive』です。
ソウライヴの2002年発売の4枚目のスタジオアルバム『NEXT』を聴こう♪
結局『NEXT』から参加していたサックス奏者のサム・キニンジャーは、あのアルバムを発表してから約1年ほどソウライヴのライヴに参加していましたが、それ以降は自身のソロ活動の方に専念する形でソウライヴの元を離れました。
ソウライヴのドラマーでリーダーのアラン・エヴァンスが言うには、「サムは脱退したわけではなく、いま一時的に離れているだけ。多分3人であと何枚かアルバムをつくり、サムが戻ってくると思う。」とのことでしたが、今現在に至っても正式メンバーとしてサム・キニンジャーが戻ってくることはありません。
その代わりゲストとしてはソウライヴのライヴにちょくちょく参加しているようです。
さて、今回はサックス抜きのソウライヴのオリジナルメンバーだけで行った初の公式ライヴ盤のご紹介したいと思います。
Soulive – 『Soulive』
1. Aladdin
2. El Ron
3. Solid
4. First Street
5. Shaheed
6. Dig
7. One in Seven
8. Lenny
9. Turn it Out
– Bonus Track –
10. Cash’s Dream
Eric Krasno (gt)
Neil Evans (org)
Alan Evans (dr)
ソウライヴの5作目は初の公式ライヴ盤!
2003年リリースのこの作品は、ソウライヴの作品としては5作品目になります。
インディーズレーベルから自主制作のような1st『Get Down!』と2nd『Turn It Out』を1999年に発表した後は、大手のブルーノートレコードと契約してメジャーデビューを飾りました。
そのメジャー第一弾が日本でソウライヴの人気が出るきっかけとなった2001年リリースの名盤『Doin’ Something』でした。
そしてメジャー第二弾として先ほどもご紹介していた『NEXT』を2002年にリリースしています。
それまでの4作品は、ライヴ音源が数曲収録されることはあっても、基本はスタジオ録音の音源を収録したアルバムでした。
しかしこの2003年リリースの『Soulive』は初めて全曲ライヴ音源を収録した作品になりました。
兼ねてからソウライヴのメンバーも当時のメディア向けのインタビューで「次の作品はライヴアルバムになる!」と言っていたようなのですが、5枚目にしてようやくのリリースのようです。
しかもゲスト奏者が参加して豪華で派手な作りになった『Doin’ Something』や『NEXT』と違って、原点に戻ったかのようなシンプルなオルガントリオでのライヴ盤になります。
実は僕が初めて聴いたソウライヴのアルバムがこの作品でした。
だから個人的にもすごく思い入れがあり、今でもしょっちゅう聴く作品です。
ニュー・マスターサウンズも初めて聴いた作品が初の公式ライヴ盤『Live at La Cova』だったのですが、やはりこういったバンドは「ライヴ演奏を聴いてこそ!」だと感じています。
もしどちらとの出会いが「ライヴ盤」でなかったら、僕のソウライヴやニュー・マスターサウンズに対する想いも少し変わっていたかもしれません⁉
そもそもソウライヴのバンド名も「ソウル+ライヴ」から来ています。
ソウルフルな楽曲をライヴで演奏してこそ、このバンドの真の姿だと思います。
ライヴの凄さが口コミで広がって有名になっていったバンドですからね!
初の公式ライヴ盤のアルバムタイトルがバンド名そのままの『Soulive』と言うのも彼らの自身の表れのような気がします。(日本盤は『ライヴ!』という邦題がついています。)
この作品はサム・キニンジャーが抜けて再びトリオの演奏だけで収録されたアルバムなのですが、これまでのサウンドとは変化しています。
同じようなトリオの作品は1stの『Get Down!』のような70年代ジャズファンクのサウンドではありません。
あの作品の時もリズム自体は新世代のヒプホップ風でしたが、ギターの音色はシンプルなセミアコのクリーントーンでジャズライクでした。
しかし本作はオルガンもギターもエフェクターを多用して派手に変化しています。
よりロックの要素が強調されている感じがします。
これに関してギタリストのエリック・クラズノーは、「僕にとって新作はジミ・ヘンドリックス、スティーヴィー・レイ・ヴォーンなどのロックの影響が大きい。エフェクターやワウを多用している。ソウライヴは過去に戻ったわけではなく、先に進んでいるんだ。同じことはやっていないよ。」と答えています。
この作品からワウペダルやトレモロ、フェイザー、ディレイ、オクターヴァーなど様々なギター用エフェクターを使用しています。
またオルガンのニール・エヴァンスもクラヴィネットを使用したりよりクラブ系のサウンドに変化して音楽の幅が広がっています。
これに関しては僕は大賛成です!
僕自身もギターを弾くしギターエフェクターが大好きなので、エフェクターの多用は上手ければ問題ないと思います。
エフェクターを使用することでサウンドの幅が広がってより色んな音楽性を表現できるようになりますからね。
これまでの変化を全くなかったことにして、単なる原点回帰の作品に退化したんじゃなくって、これまでの変化を昇華して更なるバンドの成長に繋げています。
これはなんとなくU2が1991年の『Achtung Baby』でダンサンブルに変化して1997年の『Pop』でテクノサウンドまで変化したけれども、2000年の名盤『All That You Can’t Leave Behind』でこれまでのようなシンプルなロックバンドに原点回帰したことに似ている気がしないでもないです。
それ以降のU2も2009年の『No Line on the Horizon』からのリードトラックとなった”Get On Your Boots”なんかでは、『Achtung Baby』や『Pop』で培ったダンサンブルなリズムを使用して曲作りをしていました。
そういう変化からの原点回帰して進化するということは、バンドの成長に繋がっていると感じます。
ぜひU2も聴いてみてください。
U2のシングルにならなっかた名曲を10曲選んでみました!
それでは1曲ずつ見ていきましょう。
アルバムの内容
ソウライヴは単なるスタジオ盤を制作するだけのミュージシャンではありません。
バンド名にあるようにライヴで本領を発揮する素晴らしいバンドです。
そんなわけで、初の公式ライヴ盤がこれまでの曲の再演だけではないところにこのバンドの良さがにじみ出ています。
日本盤のボーナストラックである”Cash’s Dream”を含んで全10曲中、初出の曲は5曲と半分以上です!
既出曲は、先に挙げた”Cash’s Dream”と”Solid”、”Shaheed”、”One in Seven”、”Turn it Out”の5曲です。
“Cash’s Dream”は1stの『Get Down!』に、”Turn it Out”は2ndの『Turn it Out』にそれぞれ収録されていた曲です。
それ以外の”Solid”、”Shaheed”、”One in Seven”の3曲は2001年のメジャーデビュー作の『Doin’ Something』に収録されています。
ソウライヴ初の公式ライヴ盤は、なんといきなり新曲で幕開けをします!
1曲目の”Aladdin”がその新曲です。
クラヴィネットの派手なワウサウンドで始まるこの曲は、今までになかったよりロックなリズム感を取り入れて演奏されています。
このワウサウンドは、もしかしたらギターの音?と一見感じてしまいますが、クラヴィネットのサウンドです。
この曲ではギターは、終始クリーントーンでコンピングをしています。
テーマメロディーもソロを弾くのもニール・エヴァンスになります。
そもそもこの曲の作曲者は、そのニール・エヴァンスなんです。
自分で書いた曲は自分でソロを取る!って感じでしょうか?
ちなみにこれについてエリック・クラズノーは、「いかにオーディエンスを惹き付け続けるか考えた。ギターがソロを取るだけではみんな飽きてしまうだろう?だからニールのソロをフィーチャーする曲もあれば、僕がソロを取る曲もある。サウンドに変化をつけることも大事だ。」と言ってます。
続く2曲目の”El Ron”は、アラン・エヴァンス作の新曲です。
この曲はギターが中心の曲になります。
僕がソウライヴで一番好きな曲です♪
この作品のリリースの後に、今でもソウライヴのライヴでしょっちゅう演奏される定番曲となりました!
エリックがテーマもソロも弾いています。
この作品を発表後は、ホーン隊がゲストで入るバージョンなど色々と変化を付けてこの曲を演奏していますが、初出のバージョンはシンプルなオルガントリオで演奏しています。
しかもエリック・クラズノーのギターは、これまでにはないオートワウを使ったサウンドです!
もはや単なる新世代のジャズファンク・バンドではなく、本当に新しいソウライヴ・サウンドがここで確立されたと言ってもいい気がします。
ギターソロもオートワウを使って弾きまくっています!
ライヴでも毎回盛り上がる名曲です♪
3曲目の”Solid”は『Doin’ Something』に収録されていた曲です。
アルバムバージョンもシンプルなトリオで演奏さていました。
スタジオ盤ではギターにコーラスエフェクターが使われていました。
今回のライヴ盤ではコーラスは掛けていませんが、クリーントーンでもなくって少しトレモロやフェイザーが薄く掛かって多少揺れているように聞えます。
こういったサウンドの変化もソウライヴの進化に繋がっていますね。
4曲目の”First Street”は、エリック・クラズノー作の新曲です。
ギターが主役のテンポが少し速いジャズファンク曲です。
これまでのソウライヴの良さを一番感じさせてくれる曲ですね。
とにかくギターが凄い曲でもあります!
僕が始めてソウライヴを聴いたとき、”El Ron”でこのバンドを好きになって、この”First Street”のギターソロの凄さに度肝を抜かれました!
あまりにギターが上手くって一気に好きなバンドになりました!
それもそのはず!?
その後何年か経ってから知ったことなんですが、エリック・クラズノーは僕の尊敬する日本人ギタリストのトモ藤田さんの教え子だったんですね!
ジョン・メイヤーといい、エリック・クラズノーといい、トモ藤田さんの教え子のレベルの高さに驚かされます!
このライヴ盤の”First Street”のギターソロは神懸かっています!
シンプルにメロディーラインを変化させていって、3分26秒辺りからオクターヴ奏法でギターのフレット上を上昇していき徐々に盛り上がっていきます。
様々なシーケンスフレーズを多用した後に、ダブルストップのトレモロピッキングで盛り上げた後、ここからが凄いです!
4分8秒辺りからトリッキーな高速3連フレーズの連打です!
始めて聴いたとき「この人のリズム感ってどうなってんの!?」とビックリしました。
ものすごいグルーヴです!
さすがトモ藤田さんの教え子です!(笑)
ギタリスト的にはこの”First Street”が一番おすすめの曲です♪
さて、5曲目の”Shaheed”も『Doin’ Something』に収録されていた曲です。
スタジオバージョンではシンプルなクリーントーンでギターソロを弾いていましたが、本作収録のライヴバージョンではソロの後半にディレイを使って幻想的な音を演出しています。
更にエスニックなスケールの使用で独特の世界観が演出されています。
6曲目”Dig”はニール・エヴァンス作の新曲です。
この曲も”El Ron”と同じように今ではソウライヴの定番曲になっています。
面白いですよね、本作収録の新曲は全てスタジオ録音バージョンは発表されていません。
“El Ron”もこの”Dig”もソウライヴを代表するような名曲なんですが、どちらもスタジオバージョンなしでライヴバージョンのみなんです。
さすがライヴで本領を発揮するバンドと言ったところでしょうか。
ダンサンブルなリズムとオルガンのリフレイン、そしてトレモロエフェクターで揺れた音を演出するギターといい最高にかっこいい曲です♪
ギターはバッキング時は、トレモロの揺れサウンドですが、オルガンとユニゾンで弾くテーマメロディーの時はオクターヴァーを使用して1オクターヴしたの音を足しています。
これ以降、エリック・クラズノーはオクターヴァーを使用する機会が増えていきます。
後の名曲”Outrage”なんかをライヴで演奏する際は、ギターソロ時にオクターヴァーをONにして派手なロックサウンドで演奏していたりします。
僕もこの辺のギターエフェクターが大好きなので、これは嬉しい変化だと思います。
いくら「ジャズ」ファンクだからって、いつまでも懐古主義な「ジャズギターはクリーントーン!」を押してばかりもどうかと僕は思っています。
せっかく時代の流れと共に様々なギターエフェクターが開発されてきたんだから、それを上手く利用するのはギタリストとしてもバンドとしても幅が広がりプラスになると感じています。
下手隠しでエフェクターに頼るのはかっこ悪いけど……よりサウンドに色を付けるために上手くエフェクターを利用するのってかっこいいって僕は思います。
エフェクターの音作りもセンスが必要で難しいですからね……。
さて7曲目の”One in Seven”も『Doin’ Something』に収録されていた曲でエリック・クラズノーの見せ場とも言うべき曲です。
イントロはニールの派手なキーボードで始まります。
初出のスタジオバージョンではヒップなリズムで演奏されていましたが、このライヴバージョンでは少しボトムがズッシリとした骨太なリズムで演奏されています。
演奏時間も倍ぐらいの長さになっています!
これ以降も”One in Seven”はソウライヴのライヴで定番曲になっているのですが、毎回長いギターソロが特長となっています!
トレモロとフェイザーを混ぜているのでしょうか?揺れのあるサウンドでギターソロを弾いています。
8曲目の”Lenny”はスティーヴィー・レイ・ヴォーンが奥さんに捧げた名バラード曲です。
どうやらエリック・クラズノーがレイ・ヴォーン好きのようでして、これ以降もこの”Lenny”はよく取り上げられています。
トモ藤田さんもレイ・ヴォーン好きなので、そこも似ているんですね。(笑)
レイ・ヴォーンのオリジナルもインストの曲なので、同じようにギターに感情を込めて弾ききっています。
本編最後の9曲目”Turn it Out”は、2nd収録の懐かしの曲です。
確かニール・エヴァンスがあまり初期の曲を気に入ってないとかで、最近ではあまり演奏されなくなったもったいない曲です……。
僕はこの曲凄く好きなので、またライヴで演奏して欲しいんですけどもね……。
本作収録バージョンは、約13分と長尺バージョンです。
ファンキーなノリのドラムにクリーントーンのオシャレなギターカッティングにオルガンの音色……原点回帰のようでいて途中で派手なエフェクターを使用したり曲後半でテンポアップしたりもする進化した演奏が繰り広げられています。
エリック・クラズノーも後半には、リヴァーヴの掛かったワウギターでファンキーにギターソロを弾いています。
そして日本盤のボーナストラック10曲目の”Cash’s Dream”も上記の”El Ron”や”Lenny”、”Turn it Out”と同日にトリオ演奏で録音されたライヴバージョンになります。
よりファンキーに、より派手になった演奏に変化しています。
というよりも、この作品以前のソウライヴよりも本作以降のソウライヴが本来のこのバンドのあるべき姿なのかもしれませんね。
これ以降は、ずっとこの路線なので、やはりソウライヴを初めて聴く作品としてはこの『Soulive』からがおすすめだと僕は思います。
ちなみになぜか”First Street”はこれ以降はライヴで演奏されることがなくなりましたが、他の曲は新曲も交えてライヴで演奏されています。
“Turn it Out”もあまり演奏されることはありませんが、”First Street”よりは登場回数が多いです。
“First Street”は、なぜか2004年のライヴ以降は一切演奏されなくなりました……。
ギターがかっこいい曲なので、僕は好きだったんですが残念です……。
しかし名曲”El Ron”や”Dig”に派手な”Aladdin”は今でもライヴで演奏されている定番曲となりました。
“Solid”に”One in Seven”も定番曲です!
なのでこのライヴ盤を聴くことで、「ソウライヴってどんなバンドなの!?」という疑問が解決できると思います。
本当におすすめの名盤ですのでぜひこのアルバムを聴いて、今からでもソウライヴの音楽に夢中になりましょう♪
以上、初の公式ライヴ盤『Soulive』のご紹介でした。
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