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2019/03/28

ジム・ホールが参加した60年代のソニー・ロリンズの作品3選‼

ジャズ・ギタリストのジム・ホールが参加した60年代のソニー・ロリンズの作品を3作品ご紹介します。

ピアノよりもギターと相性の良いソニー・ロリンズのサックス♪

今回は、このブログでも何度か登場したサックス奏者のソニー・ロリンズとジャズ・ギタリストのジム・ホールの共演作をご紹介したいと思います。

 

ソニー・ロリンズは、自身のバンドにピアニストよりもギタリストを起用することが多々あります。

 

もしくはピアノレスのワンホーンで演奏したり…と、本来ジャズのバッキングに必要なはずのピアノをあえて起用しない編成で演奏することがちょくちょくあります。

 

どうやらピアノのコンピングの決められたハーモニーによって、アドリヴ演奏の幅が制限されるからのようです。

 

同じことは、マイルス・デイヴスの俗にいう「喧嘩セッション」やジョン・コルトレーンの伝説のヴィレッジ・ヴァンガードのライヴでの”Chasin’ The Trane”でも聴くことが出来ると思います。

 

マイルスの方は、スタジオ・セッションで自由にアドリヴ・ソロを吹く際に、どうしてもセロニアス・モンクの弾くピアノが邪魔になるからと自分のバックではピアノを弾かないように言ったことです。

 

「喧嘩セッション」とは単なる例えで、実際に「殴り合いの喧嘩」とか仲たがいしたわけではありません。

 

またコルトレーンの方は、毎晩キーとテンポだけ決めてアドリヴ演奏をする際に、どうしてもピアノのマッコイ・タイナーが合わせることが出来ずに不参加だったことです。

 

上記のような内容から、もしかしたらロリンズもピアノよりもギターのコンピングを選んだのかもしれません。

 

さて、ロリンズのバンドに参加したギタリストは、数多くいます。

 

バーニー・ケッセルにケニー・バレル、そして日本人ギタリストの増尾好秋さん、最近ではボビー・ブルームなど。

 

他にも、以前このブログでもご紹介していた1977年の作品『Easy Living』に参加していたチャールス・”イカルス”・ジョンソンなんかもいます。

 

スティーヴィー・ワンダーの名曲“Isn’t She Lovely”を含むソニー・ロリンズの名作『Easy Living』を聴こう♪

そんな数多くのジャズ・ギタリストの中でも、特にロリンズのサックス・プレイと相性が良かったのが、ジム・ホールだと思います。

 

ジム・ホールは、アドリヴ・ソロ演奏だけでなくバッキングの達人でもありました。

 

その様子は、ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスやジャズ・ベーシストのロン・カーターとのデュオ作品でも聴くことが出来ます。

 

さて、そんなソニーロリンズとジム・ホールはどちらも僕が尊敬するミュージシャンなんです。

 

そのためこのブログにも“Sonny Rollins”“Jim Hall”それぞれの検索用タグを設置しています。

 

もちろんこれからもこの2人の作品を続々とご紹介していきたいと思います。

 

それでは今回は、この2人が共演したアルバムを3作品ご紹介したいと思います。

 

 

ジム・ホールが参加したソニーロリンズの60年代の3作品♪

今回ご紹介したいソニー・ロリンズの3作品は、1962年の『The Bridge』、同じく1962年のラテン風味の『What’s New?』とスタンダード曲を取り上げた1964年のアルバム『The Standard』の3作品です。

 

どれもジム・ホールがギターで参加しています。

 

『The Bridge』には全曲フルでジム・ホールがギターを弾いていますが、他の2作については参加していない楽曲も含まれています。

 

なので、出来れば最初に『The Bridge』から聴き始めることをおすすめします♪

 

それでは各アルバムの中でジム・ホールがギターで参加している曲を中心にご紹介します。

 

 

Sonny Rollins – 『The Bridge』

01.Without a Song
02.Where Are You?
03.John S.
04.The Bridge
05.God Bless the Child
06.You Do Something to Me

 

1962年に制作されたこの『The Bridge』の前に、ロリンズは2回目の隠遁生活を送っていました。

 

それまでに1954年、1959年に突如としてジャズ・シーンから雲隠れしたことがありました。

 

一説によると、良き友でもあり良きライバルでもあったジョン・コルトレーンの勢いに「このままでは自分の演奏はダメだ!」と感じ、華やかなジャズ・シーンから離れひたすらサックスの練習をしていたのだとか?

 

その場所が、ニューヨークのマンハッタンとブロンクスを繋ぐウィリアムズバーグ橋の下だったらしいです。

 

そのため2回目の雲隠れから復帰した第一作目のこの作品のタイトルが『The Bridge(橋)』と付けられたという逸話があります。

 

さて、そういった物語もロリンズのストイックな一面が垣間見れて興味深いのですが、それだけでなく本作はロリンズのキャリアの中でも特に素晴らしい名盤に仕上がっています!

 

1曲目”Without A Song”は、ブロードウェイでミュージカルのプロデューサーとしても活動したヴィンセント・ユーマンスの書いた曲です。

 

レイ・チャールズやフランク・シナトラが歌ったことでも有名な曲です。

 

その際の歌詞は、作詞家のエドワード・エリスクが書いています。

 

レイ・チャールズの渋い演奏と比べると、本作のロリンズの演奏は軽快で明るく感じます。

 

ロリンズがテーマう吹く間、バックでジム・ホールが巧みなコンピングを弾いています。

 

ソロもロリンズ→ジム・ホールの順番でこの2人のアドリヴ演奏がフィーチャーされています。

 

名義こそソニー・ロリンズのアルバムですが、ジム・ホールとの双頭リーダー作と言えそうなぐらいギターも活躍しています。

 

ロリンズのライヴでもよく演奏される定番曲のひとつです♪

 

2曲目”Where Are You”は、アメリカの作曲家ジミー・マクヒューが書いたバラード曲です。

 

こちらの方もフランク・シナトラが歌った曲です。

 

ロリンズだけでなく、ジム・ホールのリラックスしたギター・ソロも聴きどころです♪

 

次の3曲目”John S.”とタイトル・トラックの4曲目”The Bridge”は、共にロリンズのオリジナル曲です。

 

本作の聴きどころは何と言ってもこの2曲です!

 

“John S.”は、どことなく教会の鐘を彷彿させるようなイントロの後、急にスピード・アップしてドラムが激しくビートを刻みます!

 

“The Bridge”の方は、ロリンズのサックスとジム・ホールのギターがユニゾンで難解なテーマを奏でる楽曲です。

 

特にジム・ホールの蛇が獲物に絡みつくかのような奇抜なフレーズを弾くギター・ソロは聴きどころです♪

 

そしてアルバムの残りの2曲はカヴァー曲です。

 

5曲目はビリー・ホリディの”God Bless The Child”とで、6曲目はコール・ポーターの”You Do Something To Me”です。

 

“God Bless The Child”の方は、その後ロリンズのライヴ定番曲のひとつになっています。

 

“You Do Something To Me”の方は、早いテンポで演奏される曲で、これまたジム・ホールの奇抜なギター・ソロのフレージングが聴きどころです。

 

ソニー・ロリンズとジム・ホールの共演作は、まずはこの『The Bridge』から聴くことをおすすめします♪

 

Sonny Rollins – 『What’s New?』

01.Don’t Stop The Carnival
02.If Ever I Would Leave You
03.Brown Skin Girl
04.Bluesongo
05.The Night Has A Thousand Eyes
06.Jungoso

 

先ほどの『The Bridge』から約2ヵ月後に吹き込まれた1962年の作品『What’s New?』です。

 

ジム・ホールは、”Bluesongo”と”Jungoso”以外の4曲に参加しています。

 

なので、その4曲についてご紹介したいと思います。

 

1曲目の”Don’t Stop The Carnival”は、ソニー・ロリンズのオリジナル曲です。

 

ロリンズの代表曲”St. Thomas”と同じく、お得意のカリプソのリズムを導入した楽曲です。

 

この曲も、これ以降ライヴでの定番曲のひとつとなりました。

 

本作に収録されている子のバージョンが初演になります。

 

ブラジルの「リオのカーニバル 」を思い起こさせるような、男女のコーラス隊が参加したお祭り気分の楽しい楽曲です♪

 

本作収録前の1960年にジム・ホールは、エラ・フィッツジェラルドのバンド・メンバーの一員として南米を楽旅しています。

 

その経験からか、これ以降このロリンズの作品やポール・デズモンドの作品などでボサノバのグルーヴを弾くようになりました。

 

しかも自身のオリジナル曲にも”Simple Samba”なんていう曲もあるぐらいのハマりようです!

 

そのジム・ホール風南米コンピングの中でも、この”Don’t Stop The Carnival”はトップ・クラスの出来です!

 

先ほどの”The Bridge”と同じく、この2人の共演曲の中でも特に素晴らしい出来ですので、ロリンズ・ファンもジム・ホール・ファンもどちらにも必聴の曲ですよ♪

 

特に曲の中盤での1小節ごとのロリンズとジム・ホールの掛け合いは最高です♪

 

2曲目”If Ever I Would Leave You”は、「もし貴方と別れる時は」の邦題で知られるミュージカル「キャメロット」の挿入歌です。

 

この曲もお得意のボサノバ・アレンジで軽快に演奏しています。

 

聴きどころは、1分13秒から始まるジム・ホールの最初のソロのバックで、ドラムのリム・ショットに合わせてロリンズが小刻みにスタッカートのフレーズを吹く箇所です。

 

通常、こういったギター・ソロのバックでは、サックスは休んでいることが多いんですが、ロリンズはあえて打楽器と合わせて自身もリズム演奏に参加することで、この曲のグルーヴの一角を担っています。

 

この辺のセンスがやはりロリンズがサックス奏者として、常に高いレベルで第一線に立っていられる理由だと感じます。

 

3曲目”Brown Skin Girl”も”Don’t Stop The Carnival”と同じくロリンズのオリジナル曲です。

 

こちらの方はカリブの香りが漂う男女コーラス付きの楽し気なナンバーです♪

 

悪くはない曲ですが、先の”Don’t Stop The Carnival”と比べると少し見劣りのする楽曲です。

 

ジム・ホール不参加の4曲目”Bluesongo”を飛ばして、5曲目”The Night Has A Thousand Eyes”は「夜は千の眼をもつ」の邦題で知られるジェリー・ブレイニンが1948年に書いた映画の挿入歌です。

 

ホレス・シルヴァーやアーマッド・ジャマルのようなジャズ・ピアニストだけでなく、ロリンズの良きライバルでもあったジョン・コルトレーンのカヴァーでも知られるジャズ・ナンバーです。

 

“The Days of Wine and Roses”と同じく映画の挿入歌からジャズ・スタンダード化された曲のひとつですね。

 

「酒とバラの日々」を略して「酒バラ」と呼ぶのと同じく、この「夜は千の眼をもつ」も日本のジャズ・セッションなんかでは「夜千」と略して呼ばれます。

 

さて、この美しいメロディー・ラインを持つ名曲を、これまたボサノバのリズムで演奏しています。

 

ゆったりとしたリズムの上を奔放に駆け巡るようなロリンズの豪快なテナーの音色が聴いていて心地良いです♪

 

本作の中でも一番の聴きどころですね♪

 

 

Sonny Rollins – 『The Standard』

01.Autumn Nocturne
02.Night and Day
03.Love Letters
04.My One and Only Love
05.Three Little Words
06.Trav’lin’ Light
07.I’ll Be Seeing You
08.My Ship
09.It Could Happen to You
10.Long Ago (and Far Away)

 

先ほどご紹介していた『What’s New?』から2年後の1964年に録音された『The Standard』です。

 

この間にも、1963年の『Sonny Meets Hawk!』と1964年の『Now’s the Time』2作品が存在しています。

 

その2作品にはジム・ホールは参加していませんので、本作への参加は久しぶりとなります。

 

オリジナル盤の全10曲の収録曲のうち、4曲のみジム・ホールが参加しています。

 

なので、先に『The Bridge』と『What’s New?』を聴いてから本作を聴くことをおすすめします。

 

それではジム・ホールが参加した4曲についてご紹介したいと思います。

 

まず3曲目のヴィクター・ヤングの書いたバラード曲”Love Letters”に参加しています。

 

この曲は、ジム・ホールのギターによる華麗な序奏で始まります。

 

その後、ロリンズが満を持してアドリヴ・ソロを吹き始めます!

 

ゆったりとしたイントロから一転、溌剌としたサックス・ソロが気分を明るくしてくれています。

 

ビリー・ホリディの愛唱歌であった6曲目”Trav’lin’ Light”にもジム・ホールが参加しています。

 

こちらの曲には、なんとピアノにハービー・ハンコックも参加しています!

 

ジム・ホールのギター・ソロは短めですが、ロリンズの絶好調のサックス・ソロは聴き応えがあります!

 

所々でコンピングで聴かせるハービーの存在感もありますが、出来ればソロも弾いて欲しかったところです。

 

8曲目、クルト・ヴァイルの曲”My Ship”にもジム・ホールが参加しています。

 

ロリンズは以前にもクルト・ヴァイルの曲”Moritat”を取り上げていました。

 

こちらの曲でもイントロは、ジム・ホールのギターで始まります。

 

ロリンズがテーマをサックスで歌い上げる間、ジム・ホールが巧みなコンピングとオブリガートで合いの手を入れます。

 

そして最後の10曲目”Long Ago (and Far Away)”にもジム・ホールが参加しています。

 

オリジナルは、アイラ・ガーシュウィンと(ジョージ・ガーシュウィンではないですよ。)ジェローム・カーンが書いた曲です。

 

2分49秒のうち約半分の1分20秒までジム・ホールがギターによる独奏を弾いています。

 

その後やっとリズム隊とロリンズのテナーが参加します。

 

途中まで完全にジム・ホールがリーダーの楽曲になっています。

 

以上、『The Standard』にはこの4曲にジム・ホールがギターで参加しています。

 

その他の収録曲も、この時期のロリンズは絶好調ですので聴きどころ満載ですよ♪

 

 

 

以上、【ジム・ホールが参加した60年代のソニー・ロリンズの作品3選‼】でした。

 

3作品とも、僕の尊敬する2人のミュージシャンが共演した素晴らしい演奏が聴ける傑作です!

 

特にソニー・ロリンズは、僕にとってはとても思い入れのあるミュージシャンです!

 

高校生の頃にジャズに目覚めるきっかけとなったのが、ジョン・コルトレーンと、このソニー・ロリンズでした!

 

コルトレーンとロリンズは、僕にとってはもはや自分の人生の一部のような大きな大きな影響を受けた偉大な存在です!

 

ぜひともこのブログを読んでくれた方で、ソニー・ロリンズやジム・ホールを「あまり聴いたことがなかった…」とか「初めて知った!」といった方にこの3作品を聴いてもらいたいなと思います。

 

僕のこのブログの目的は、これまで自分が聴いてきた素晴らしい音楽の数々を、「これから音楽(ジャズ)を聴いてみたい」という方々になるべくわかりやすくおすすめすることなんです。

 

特に芸術的な『The Bridge』と楽しい気分になれる『What’s New?』の2作品は、全ジャズ・ファンにおすすめしたい作品です♪

 

ちなみにソニー・ロリンズは、現在88歳で現役です!

 

僕は3回ソニー・ロリンズの来日公演を観に行ったことがあります。

 

ジム・ホールの方は、残念ながら2013年に亡くなりました。

 

当時はこの訃報を聞いてとても悲しくなったことを思い出します。

 

確かその前年かに、僕はジム・ホールの来日公演を観ていたので、更に悲しかったです。

 

「もう一度ジム・ホールの演奏を生で観たい!」と思っていたからです。

 

しかし、一応僕はこの2人の生演奏をこの目で観ることが出来たので、僕の世代の人間としてはとても運が良かった方だと感じています。

 

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