2019/08/26
ブルース・ギタリスト、メル・ブラウンのデビュー作『Chicken Fat』は、インスト・ソウルの名作♪
ブルース・ギタリストのメル・ブラウンが1967年に制作したデビュー作『Chicken Fat 』をご紹介します。
ブルージーなジャズギタリストのハーブ・エリスやR&B系セッション・ギタリストのアーサー・G・ライトがゲスト・ギタリストとして参加したインスト系ブルース・アルバム!
前回ご紹介していたプレストン・ラブのレア・グルーヴ作品『Omaha Bar-B-Q』に似た路線のアルバムをご紹介したいと思います。
ブルージーなギタリスト、シャギー・オーティスをフィーチャーしたプレストン・ラブのレア・グルーヴ作品『Omaha Bar-B-Q』を聴こう♪
今回ご紹介するメル・ブラウンというギタリストは、プレストン・ラブのアルバムに参加していたブルージーなギタリストのシャギー・オーティスと似ているブルージーでイナタいプレイを得意とするギタリストです。
しかし1953年生まれと比較的若い世代のブルースマンだったシャギー・オーティスと違って、今回ご紹介するメル・ブラウンの方は1939年生まれの古い世代のブルース・ギタリストです。
僕の好きなブルース・ギタリストのマジック・サムが1937年生まれなので、その辺のモダン・ブルース・ギタリスト達と同世代ということになります。
シャギー・オーティスと比べると古い世代にはなりますが……しかし更に古い世代のT-ボーン・ウォーカーやギター・スリムなんかと比べると、60年代のR&Bを吸収したような演奏スタイルです。
そのため今流行りの(?)インスト・ソウル好きの人にもおすすめ出来るギタリストでもあります。
僕のこのブログでもよく登場するデイヴィッド・T・ウォーカーやコーネル・デュプリーにフィル・アップチャーチなんかがお好きでしたらこのメル・ブラウンも合うと思います。
ただ彼らよりも更にブルージーな演奏をするギタリストなので、フレディ・ロビンソンやアーサー・アダムスに近い感じだとも言えます。
それでは今回は、そんなメル・ブラウンのインスト・ソウル(ブルースといった方がいいのかな?)作品『Chicken Fat』をご紹介します
Mel Brown – 『Chicken Fat』
01.Chicken Fat
02.Greasy Spoon
03.Home James
04.Slalom
05.Hobo Flats
06.Shanty
07.Sad But True
08.I’m Goin’ to Jackson
09.Blues for Big Bob
Personnel:
Mel Brown – Guitar
Gerald Wiggins – Organ on Tracks: 01, 03 to 09
Ronald Brown – Electric Bass
Paul Humphrey – Drums
– Guest Guitar Player –
Arthur Wright on Tracks: 04 to 06, 09
Herb Ellis on Tracks: 01 to 03 & Twelve-String Acoustic Guitar on Tracks: 07 & 08
アルバム参加メンバー
本作には2人のゲスト・ギタリストが参加しています。
それはブルージーなジャズギタリストのハーブ・エリスとR&B系セッション・ギタリストのアーサー・G・ライトの2人です。
ハーブ・エリスの方は2曲目をメル・ブラウンとドラムのポール・ハンフリーと共作しています。
その他にも7,8曲目はハーブ・エリスの提供曲で、12弦アコースティック・ギターまで弾いていたりもします。
アーサー・ライトの方は、5曲でギターで参加していて6曲目をメル・ブラウンと共作しています。
というわけで、全9曲にどちらかのギタリストが必ず参加しているので、どの楽曲もツイン・ギター編成で演奏されています。
それ以外のバックのメンバーは、セッション・ミュージシャンとしてもお馴染みのドラマーのポール・ハンフリーに、ベースのロナルド・ブラウン、そしてジェラルド・ウィッジンズのオルガンが参加しています。
この辺は、ホーン系のリード楽器がないインスト・ソウルものによくある編成ですね。
アルバムの内容
タイトルトラックから始まる1曲目”Chicken Fat”は、のオリジナル曲です。
どことなくブッカー・T&ザ・MG’sやミーターズを彷彿させるオルガン系ファンキー・ブルース曲です。
この曲にはリズムギターでハーブ・エリスが参加しているようですが、普段のジャズ・ギタリストとしての顔ではなく、ブルース・ギタリストのようなリフを弾いています。
リーダーのメル・ブラウンは、荒っぽい歪みを足したクランチなギターのトーンでリードを弾いています。
マイナー・ペンタトニックを中心にチョーキングも活かした見事なブルース・ギターを披露しています。
この辺がオルガン系ジャズ・ファンクや通常のR&Bぽいインスト・ソウルものとは違っています。
あくまでもメル・ブラウンは、ブルース・ギタリストなのです!
こういったブルース・ギタリスト+オルガン・インストの系譜は、今でもデルヴォン・ラマー・オルガン・トリオなんかに受け継がれている気がします。
彼らもファンキーなオルガンを中心としつつも、ジミー・ジェームスのブルージーな(時にロックな!)ギターが印象的ですからね。
次の2曲目”Greasy Spoon”は、メル・ブラウンとハーブ・エリスとポール・ハンフリーによる共作曲です。
インストのファンキー・ブルースといった感じの楽曲です。
ソロの一番手はメル・ブラウンなのですが、正直言って3分辺りから2番手でソロを弾くハーブ・エリスの方がテクニック的には上手かったりします。(笑)
その辺はやはりジャズ・ギタリストとしての意地でしょうか⁉
残念ながら(僕も含めて)一般的なジャズ/ブルース好きの人らの中でも知名度でいえばメル・ブラウンよりもハーブ・エリスの方が上ですからね。
やはり音楽の歴史上に名前が残るというのは、テクニック的要素も大事なのかもしれません。(僕個人はテクニック至上主義ではないのですが……。)
3曲目”Home James”は、メル・ブラウン作の”Stormy Monday”系のスローブルースです。
まぁ早い話パクry……拝借ものの楽曲ですが、こういったストマン進行の曲をやる時点で、メル・ブラウンは『ブルース・ギタリスト』なんだなぁ~ということが感じられます。
メル・ブラウンのギター・ソロは最高です♪
4曲目”Slalom”は、ジュールズ・チャイキン作の曲です。
そして5曲目は、ジミー・スミスもカヴァーしたオリヴァー・ネルソンの有名曲”Hobo Flats”です。
オリヴァー・ネルソン自身もアレンジャーで参加しています。
ここでメル・ブラウンは、ワウペダルを使ってリード・ギターを弾いています。
ジミヘン風のハードなロック調ではなく、あくまでもアール・フッカーのようなブルース系のワウギターです。
表現力豊かなメル・ブラウンのワウギターは必聴です♪
6曲目”Shanty” は、メル・ブラウンとアーサー・ライトによる共作曲です。
特に驚くことはないけれども、無難で外れのないブルース曲といったところでしょうか。
そして7曲目”Sad But True” と8曲目”I’m Goin’ to Jackson”はハーブ・エリスによる提供曲で、どちらの曲にもエリス自身が12弦アコースティック・ギターで参加しています。
卓越したギター・ソロも披露してくれていて聴き所満載です♪
ただ……主役がから完全にハーブ・エリスに移ってしまっていますが……。(笑)
ところで”Sad But True” という曲名を見ると、どうしてもメタリカの楽曲が思い浮かぶのは、僕だけではないはずです!……よね?(笑)
ちなみにラリー・カールトンの2015年の作品『Session Masters』にも”Sad But True” という曲が収録されていましたが、どの曲も全く関係のない別々の楽曲です。
最後の9曲目”Blues for Big Bob” は、アーサー・ライトのR&B調のギターリフに乗せてメル・ブラウンがブルージーにギターを弾きまくるノリのよい60年代風R&B曲です。
以上、【ブルース・ギタリスト、メル・ブラウンのデビュー作『Chicken Fat 』は、インスト・ソウルの名作♪】でした。
インスト・ソウル好きの人はもちろん、ブルース・ギター好きの人にもおすすめ出来る作品です。
またミーターズ系のレア・グルーヴ作品やディープ・ファンク好きの人にもおすすめです。
それに最近デルヴォン・ラマー・オルガン・トリオにハマっているよ!って人にもぜひ聴いて欲しいイナタいオルガン・インストものアルバムですよ♪
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