2022/08/30
ソウライヴのエリック・クラズノー他3人の「エリック」が集まったオルガン・トリオ”The E3 Organ Trio”の公式ライヴ盤『Live at Garcia’s』を聴こう♪
ソウライヴのギタリストであるエリック・クラズノーが組んだ新しいオルガン・トリオ『The E3 Organ Trio』
公式ライヴ盤が日本限定でCD化!
もうだいぶ前のことにはなるのですが、2018年にソウライヴのギタリストのエリック・クラズノーが新しく結成したオルガントリオ『The E3 Organ Trio』をご紹介したことがありました。
ソウライヴのギタリスト、エリック・クラズノーが新しく結成したオルガントリオ『The E3 Organ Trio』をご紹介!
実はその時はまだ公式アルバムが何もリリースされていない状態でした。
僕はブートレグの音源やYouTubeに投稿されていた動画を観てこのバンドの演奏を聴いていました。
その後2020年になってようやく本国アメリカではデジタル版でのみ公式ライヴ・アルバムの『Live at Garcia’s』がリリースされました。
それから1年近く経った2021年になってからようやく日本でもリリースされることとなりました。
しかも日本でのみCD盤でのリリースが実現し、更にボーナス・トラックが1曲付け加えられた嬉しい仕様での発売となりました。
しかしいつの間にかひっそりとリリースされたので、多くの人に知られないまま埋もれそうになっている作品でもあります。
いくら世界的人気バンドのソウライヴのメンバーであれども、各々のソロ活動までは聴いているファンは少ないとは思いますので、こういったプロモーションなしのリリース形態は仕方ありませんが、このトリオはエリック・クラズノーを始め腕利きのミュージシャンばかりが集っています。
なのでオルガン系のジャズ・ファンク好きの方には、ぜひとも聴いてもらいたい熱い演奏が詰まったライヴ盤ですので今回改めて僕のこのブログでご紹介したいと思います。
E3 – 『Live at Garcia’s』
01.Fire Eater
02.76
03.Big Brother
04.Jan Jan
05.All About My Girl
06.For Granted
07.Love Is Strong (feat.Mary Corso)
08.Eleanor Rigby (Bonus Track)
3人の「エリック」によるオルガン・トリオ
ソウライヴのギタリスト、エリック・クラズノーによる『The E3 Organ Trio』は、そもそもクラズノーがオルガン奏者のエリック・フィンランドと知り合ったことから始まったプロジェクトです。
クラズノーは自身のソロ活動でドラマーのエリック・カーブを起用していました。
クラズノーがこよなく愛するソウル・ジャズのプレイに根差したフィンランドと知り合ったことで、そこにカーブを加えたオルガン・トリオでのバンド形式が自然な成り立ちで完成しました。
エリック・クラズノーとエリック・フィンランドとエリック・カーブの3人という「エリック」で結成されたトリオだから、それぞれのファースト・ネームの頭文字”E”を取ってそこに数字の3を付け加えたシンプルなバンド名です。
そうして結成された『The E3 Organ Trio』は、元々はライヴ音源をリリースする予定もなく、ただただ単純に楽しむためにライヴ活動を行っていました。
そういったライヴを観に来たお客さんが音源を録音したり録画したものがブートレグやYouTubeに流れていき、いつの間にやら広まっていきました。
どうしても「人気バンドのソウライヴの一員」であるクラズノーが音楽活動を始めるとこうして音源が広まっていくものなのですね。
まぁ僕もそういった音源を聴いてこのバンドのことを知ることが出来たので、あまり否定的な意見を言うことは出来ませんが…。
しかしある日のライヴをクラズノーの友人が録音していたらしく、その音源を聴いたクラズノーが「ミスもあるけれどヴァイヴがよかったので、(公式ライヴ盤を)出してみようとなった。」とインタビューで語っています。
そうして出来上がったのが今回ご紹介する『Live at Garcia’s』というライヴ盤です。
ちなみに僕がこのオルガン・トリオを知った初めの頃は『The E3 Organ Trio』とYouTubeの動画などでトリオ名が付けられていました。
しかし公式ライヴ盤をリリースするにあたってバンド名を簡潔にE3とだけ記載するようになったのですね。
まるで天才マルチ楽器奏者ジャスティン・リー・シュルツが組んだトリオのJ3のようでもありますが、こちらのE3の方が先です。
それではアルバムの内容をご紹介したいと思います。
とにかくファンキーな”Jan Jan”が最高♪
1曲目の”Fire Eater”は、サックス奏者ラスティ・ブライアントの楽曲です。
この曲はジャズ・ファンク系のミュージシャンに人気の曲で数多くのカバー・バージョンが存在しているライヴやジャム・セッションの定番曲でもあります。
例えばジャズ・ファンク系ギタリストの代表格メルヴィン・スパークスのライヴ盤『LIVE AT NECTAR’S 』で熱い演奏を聴くことができます♪
他にもソウライヴと並ぶ現代版ジャズ・ファンク・バンドの代表格ザ・ニュー・マスターサウンズも初の公式ライヴ盤『Live At La Cova』で披露していました。
そんなオルガン系ジャズ・ファンクの代表曲でE3の公式ライヴ盤は幕を開けます!
いきなりテーマ・メロディーから始まるオリジナル・バージョンとは違って、まずはクラズノーのアドリヴ演奏から徐々に演奏が始まていきます。
ドラムがテンポをキープし始めるとオルガンが「ギュ~~ン」と鳴りキメのフレーズを全員で合わせます。
そこから一気にクラズノーがこの曲のテーマをギターで弾き始めます。
シンプルなリフながら力強い演奏です♪
ほとんどジャム・セッション形式で行われたようなライヴのため、ギターとオルガンがそれぞれ順番でソロ回しをしています。
まずはメイン・テーマを弾いたクラズノーからギター・ソロを始めます。
ペンタトニック・スケールを中心としたブルージーでファンキーなソロを即興で組み立てていきます。
アドリヴ演奏が得意なクラズノーからしたらこういった1コードのシンプルな楽曲でソロを弾くのはお手の物です!
終盤にはグラント・グリーンやメルヴィン・スパークスもよく弾いていたようなマイナー・ペンタトニックを1音ずつ上がったり下がったりしながら一気に駆け上がっていくスリリングなフレーズも登場します。
ギター・ソロが終わるとオルガンも短くソロを弾いています。
オルガンのソロが終わったら再びメイン・テーマに戻って楽曲が終了します。
これを書いている僕自身もギターを弾くのでよくこういった楽曲を演奏するセッションに参加したりするのですが、大体が本作収録のこの”Fire Eater”の演奏のような進め方をします。
打ち合わせをして練りに練ってステージに立ったバンドというよりも、まさに腕試しのジャム・セッションでその場の雰囲気のまま始まったライヴ演奏のようです。
1曲目から生々しいライヴ演奏を聴くことが出来ます♪
2曲目”76″は、クラズノーの1stソロ・アルバム『reminisce』に収録されていたジャズ・ファンク曲です。
“76”という数字は1976年生まれのエリック・クラズノーの生年を現しています。
この曲ではエリック・クラズノーのソロ・ライヴにも参加していたギタリストのダニー・メイヤーがゲストでサイド・ギターを弾いています。
ダニー・メイヤーは自身のバンド「オン・ザ・スポット・トリオ」ではバリバリと長尺ギター・ソロを弾くタイプの人なのですが、この曲ではあくまでもリズム・ギターに専念しています。
Lチャンネルで控えめな音で鳴っているのがダニー・メイヤーのギターです。
中央よりのRチャンネルで大きめの音でテーマからソロまで目立つ演奏をしているのがエリック・クラズノーの方です。
自身で書いた曲のためギター・ソロも気合が入っていますね!
ちなみに本作の日本盤のライナー・ノーツには7曲目の”Love Is Strong”のみダニー・メイヤーが参加していると記載されていますが、この”76″にもリズム・ギターで参加しています。
そして次の3曲目”Big Brother”は、スティーヴィー・ワンダーの1972年作『Talking Book』 に収録されていた曲のカバーです。
本作では歌メロ部分をギターで弾くインスト・バージョンでカバーしています。
この曲もジャズ・ファンク系のセッションでよくあるようにテーマを弾いた後は、ギター→オルガンの順番でソロ回しをする形式で演奏されています。
続く4曲目の”Jan Jasn”が本作の目玉の曲となります。
この曲は1曲目の”Fire Eater”と同じくジャズ・ファンク系のセッションで人気の楽曲です。
一番有名なのはグラント・グリーンが『Live At The Lighthouse』で演奏したグルーヴィーなバージョンでしょう!
この他にも『Live at the Club Mozambique』でもグラント・グリーンは演奏しています。
どちらの演奏もファンキーでかっこいいのですが、なぜかこの曲の作曲者はマイルス・デイヴィスといまだに日本盤のライナー・ノーツに書かれていたりもします…。
正しくはザ・ファビュラス・カウンツのオリジナル曲です。
だいぶ前にこのことについてブログで取り上げてはいたのですが…今一度こちらのブログ記事にも書いておきたいと思います。
ザ・ニュー・マスターサウンズの初の公式ライヴ盤『Live at La Cova』を聴こう!
“Jan Jan”のオリジナルはザ・ファビュラス・カウンツ(The Fabulous Counts)になります。
そのザ・ファビュラス・カウンツのリーダー兼キーボード奏者のモース・デイビスという人物が”Jan Jan”の作曲者です。
しかしそもそもの始まりはグラント・グリーンの『Live At The Lighthouse』の作曲者クレジットに”Mose Davis”と表記さず、間違って”Miles Davis”と記載されたことが原因だと思われます。
そのため”Jan Jan”はマイルス・デイヴィスの曲だと日本盤のライナー・ノーツに書かれていたりしますが、違いますよ。
ザ・ファビュラス・カウンツの楽曲です。
さて、本作での演奏の方なのですがこちらは最高の出来となっております♪
まずはドラムの8小節のイントロから始まり、その後クラズノーのギターが入ってイントロとなるギター・リフを長めに弾き始めます。
グラント・グリーンのバージョンよりも少しテンポを落として、更にグルーヴィーな演奏をしております。
ギター・ソロもかなり長めに弾いています。
グラント・グリーンでお馴染みの繰り返しを連発するシーケンス・フレーズも出てきますが、そこに更にジミヘン風のチョーキングからビブラートで弦を痙攣させるような混ぜこぜの展開に持って行くのがクラズノーの「プラスα」な良さだと感じます。
エリック・クラズノーは、ジャズだけでなくジミヘンやオールマン・ブラザーズ・バンドのようなサザン・ロックからも多大な影響を受けているので、そういったロックな感触も自身のギター・ソロに付け加えて弾いています。
この”Jan Jan”は、本作の最大の聴きどころだと言えるでしょう!
ちなみにですが、”Jan Jan”は日本のジャム・セッションで演奏しても人気です。
さすがにガチガチのジャズやブルースをやるセッションには相応しくない曲ではありますが、例えば”Cissy Strut”や”The Chicken”のようなファンキーな曲を多く取り上げているファンク系のセッションで”Jan Jan”をリクエストすると好評です。
ちょうどこのブログ記事を書いている5日前に実際に僕自身がジャズ・ファンク系のセッションに参加して”Jan Jan”をやりました。
この曲はC7一発ものなので曲を説明するのも簡単だったりします。
セッション慣れしている人であれば「C一発のファンクもので…」と伝えて後はテンポさえ合わせてもらえれば初見でも出来たりします。
先日僕が参加したセッションでも僕以外のギターとベースとドラムの人らは初めて”Jan Jan”をやったみたいなのですが、上手く合わせてくれてました。
そしてセッション終わりに「”Jan Jan”すごく楽しかったよ!またやりたい!」と声を掛けてくれました。
もちろん演奏に参加していない他の参加者からも「あの曲すごくかっこいですね!」と大好評でした!
これ以外でも過去にいくつか他のセッションに参加した際に”Jan Jan”をやったときも同じように大好評でした!
曲構成が単純ですぐに出来るのにかっこいい!これほどセッションに適した曲もないです。
おそらくセッション大定番の”Cissy Strut”に飽きた人たちに同じC一発ものの”Jan Jan”を勧めると喜ばれると思います。
同じC一発ものでも、ゆったりした”Cissy Strut”のテンポよりも速いテンポの”Jan Jan”をやるのは新鮮に感じますからね!
“Jan Jan”はセッションおすすめ曲なので、この記事を読んでる人で「よくセッションに行くよ!」とか「今度初めてのセッションに参加するんだけれども何の曲をやったらいいんだろう?」といった方はぜひこのE3のアルバムを参考に”Jan Jan”を取り上げてみてはいかがでしょうか?
このアルバムでもおそらくエリック・クラズノーが若い頃にセッションで”Jan Jan”をよくやっていた流れからこのトリオでも取り上げることにしたんだと思います。
さて次の5曲目”All About My Girl”は、オルガン奏者ジミー・マクグリフが1962年に書いたソウル・ジャズ曲のカバーです。
アルバム『I’ve Got a Woman』に収録されていました。
オルガン奏者の書いた曲だけあってオルガンが主役の曲のため、エリック・フィンランドがテーマをスウィンギーに弾いて盛り上げます!
アップ・テンポで軽快に演奏された楽しい雰囲気の曲で、オルガンのソロ演奏だけでなくエリック・クラズノーのギターも跳ねまわり、エリック・カーブのドラム・ソロも挟んで大いに盛り上がった演奏です。
かっこいい”Jan Jan”に引き続きお次は軽快なスウィング・ジャズでした♪
6曲目”For Granted”は、ソウライヴの名作『Up Here』に収録されていたクラズノーのオリジナル曲です。
アルバムではホーン隊が絡むブラス・ファンク曲なのですが、本作ではサックス抜きのオルガン・トリオで演奏されていたため初めて聴いた時は何の曲かわかりませんでした。
しかしこういった感じでブラス・ファンク曲をシンプルにギターと鍵盤だけで演奏するのもありですね♪
アルバム最後の”Love Is Strong”は、エリック・クラズノーのソロ活動からチョイスされた曲です。
スタジオ版でも歌っていたメアリー・コルソがボーカルでゲスト参加していますが、この曲に関しては特にE3の特徴が出た演奏ではないのでオマケといった感じですかね…。
他のインスト・ナンバーの方がこのオルガン・トリオの良さが出た演奏です!
日本盤のみの嬉しいボーナス・トラックは、ビートルズの”Eleanor Rigby”のカバー曲です。
ソウライヴが全編ビートルズのインスト・カバーで制作したアルバム『Rubber Soulive』にも収録されていたクラズノーお気に入りのカバー曲です。
今でもソウライヴのライヴでも頻繁に演奏される曲です。
本作収録バージョンでも歌メロをクラズノーがギターで弾いているのですが、感情の込め方が尋常ではない程です!
ギターが鳴くというよりも…泣いています!
ジェントリーにウィープスしています!
そしてギター・ソロでは圧巻の16分カッティングでのオクターブ奏法連発でかなり熱い演奏を繰り広げています!
もはや”Love Is Strong”の方がボーナスが曲で、こちらの”Eleanor Rigby”を本編に収録しといた方が良かったんじゃないの?と言える素晴らしいライヴ演奏です!
日本盤CDだけで聴くことが出来る嬉しいオマケですね♪
以上、【ソウライヴのエリック・クラズノー他3人の「エリック」が集まったオルガン・トリオ”The E3 Organ Trio”の公式ライヴ盤『Live at Garcia’s』を聴こう♪】のご紹介でした。
以前に一度、2018年にこのThe E3 Organ Trioをご紹介指定してはいたのですが、まさかあれから4年が経ち、こうして公式ライヴ盤のご紹介をブログで出来るようにんるとは…。
ブログも長く続けてみるものですね。
こちらのオルガン・トリオに関しては、現段階ではソウライヴの活動の合間に今後もちょくちょく続けていくといったことをエリック・クラズノーが語っていたので、もしかしたらまた4年後にE3についての最新作をこのブログでご紹介することになるかもしれませんね!?
その時を楽しみに、今後もこのブログでソウライヴ関連のご紹介を続けていきたいと思います。
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