2019/11/01
メルヴィン・スパークス最後のライヴを収録した『Live at Nectar’s』はジャズファンクギター必聴作品‼
メルヴィン・スパークス初の公式ライヴ盤にて生前最期のライヴを収録した『Live at Nectar’s』をご紹介します。
メルヴィンのキャリアを総括するジャズファンク・ギターの教科書のような必聴盤です!
メルヴィン・スパークスは、このブログでもよく登場する僕の好きなジャズファンク系ギタリストです。
これまでにもメルヴィンの90年代の復活作から2007年の最終作までのリーダー作品をおのブログでご紹介していました。
【名ジャズファンク・ギタリスト】メルヴィン・スパークスの最期のアルバム『Groove On Up』を聴こう♪
今回は、2017年に突如リリースされたメルヴィン・スパークス初の公式ライヴ盤にして生前最期のライヴを収録した『Live at Nectar’s』をご紹介します。
本作は、メルヴィンのキャリアを総括するジャズファンク・ギターの教科書のような必聴盤です!
Melvin Sparks – 『Live at Nectar’s』
01.Miss Riverside
02.Ain’t No Woman (Like the One I Got)
03.Fire Eater
04.Cranberry Sunshine
05.Breezin’
06.Whip! Whop!
07.Thank You
08.Hot Dog
09.Band Intro
Personnel:
Melvin Sparks – Guitar
Beau Sasser – Organ
Bill Carbone – Drums
Dave Grippo – Alto Saxophone
Brian McCarthy – Tenor Saxophone
アルバムの概要
60年代半ばからルー・ドナルドソンやリューベン・ウィルソンのブルーノート・レコードにおけるオルガンジャズ作品や、チャールズ・アーランドのプレスティッジ・レコードにおけるオルガンジャズ作品の多くでサイドマンとしてファンキーなジャズギターを弾いていたメルヴィン・スパークスは、70年代に入ってからリーダー作をいくつか発表するようになります。
その後、ジャズファンクのブームが去り、80年代は不遇の時代を過ごしていたようですが……90年代にレア・グルーヴ/アシッド・ジャズの流行に乗って他の多くのジャズファンク・ミュージシャンと同じく復活を果たします。
復活してから2007年までに5枚のリーダー作品を残しています。
残念ながらメルヴィンは2011年3月13日に亡くなってしまうのですが、復活後の1998年から2010年のおよそ12年間は精力的にライヴを行っていました。
僕もその間のライヴ音源を数種類聴いたことがあるのですが、2017年になって突如このアルバムがリリースされました。
本作『Live at Nectar’s』は、メルヴィン・スパークスにとっての初の公式ライヴ盤にして生前最期のライヴを収録した貴重な作品です。
録音は2010年12月30日にアメリカのバーモント州バーリントンにある『ネクターズ』という小さなライヴハウスで行われているようです。
メルヴィンが亡くなる3ヵ月前の演奏ですが、2004~2006年辺りの全盛期のライヴと比べると多少の衰えからくるピッキングミスやミストーンはありますが……体調が悪かったとかが原因ではないと感じられるほど演奏はしっかりとしています。
それにメルヴィンがこれまでに演奏してきた楽曲の中でもベストに近い選曲がされているので、ベスト盤としても聴くことが出来ます。
生前最期のライヴにして、メルヴィンの集大成のような作品で、まさに『ジャズファンク・ギターの教科書』とも言える名ライヴ盤です!
こんな素晴らしい名盤がなぜ急にリリースされたのか?は詳しくはわかりませんが……僕の好きなザ・ニュー・マスターサウンズのメンバーが関わっていそうな気がします。
というのは、本作はザ・ニュー・マスターサウンズのドラム奏者サイモン・アレンがマネージメントを務める『One Note Record』からリリースされています。
本作のジャケットの裏面にも小さい文字ですが、サイモン・アレンの名前がレーベル・マネージメントとして記載されています。
そもそもザ・ニュー・マスターサウンズのメンバーが自身もメルヴィン・スパークスの音楽性から大きな影響を受けており、(特にギタリストのエディー・ロバーツ)過去にはザ・ニュー・マスターサウンズのライヴにメルヴィンがゲストとして登場して共演したりもしています。
また本作がリリースされた2017年には、サイモン・アレンが自身のTwitterでこのアルバムの宣伝をしていました。
ザ・ニュー・マスターサウンズの公式ホームページにも掲載されていたこともありました。
それに2017年5月のザ・ニュー・マスターサウンズのライヴでは、本作のリリースに合わせてメルヴィン・スパークスの追悼コンサートとして数多くのメルヴィンの代表曲をザ・ニュー・マスターサウンズが演奏していたこともあります。
例えば”Whip Whop”や”Who’s Gonna Take The Weight”に”Texas Twister”、更には”Cranberry Sunshine”や”Spark Plug”といった曲です。
なのでこのライヴ盤のリリースにはザ・ニュー・マスターサウンズのメンバーが関わっているんだと思います。
それでは収録曲の方も見ていきましょう。
アルバムの内容
1曲目”Miss Riverside”は、オルガン奏者のレオン・スペンサーの楽曲です。
メルヴィンはレオン・スペンサーの作品にもサイドマンとして起用されていました。
この曲”Miss Riverside”は、復活後のメルヴィンのライヴでも定番のように演奏されていた楽曲です。
曲が始まる前にメルヴィン自身による自己紹介のMCも含まれています。
本作の演奏は、基本はギターとオルガンとドラムのトリオで演奏されています。
そこにアルトとテナーのサックス陣が盛り上げ役として参加しています。
この曲もサックスはバックでオブリガードを入れるのみで、テーマをメインで弾くのはもちろん主役のメルヴィンです。
テーマを弾き終えるとさっそくメルヴィンのギターソロが始まります。
パット・マルティーノやジョージ・ベンソンに憧れていただけあってか、息つく間もないような連続するフレーズでソロを構築していきます!
この辺は同じジャズファンク・ギタリストでも他のグラント・グリーンやブーガルー・ジョーとは違った点ですね。
また面白いことにメルヴィンはギターソロの合間に他のポップソングやジャズスタンダードの曲のフレーズを挟み込むサービスをよくしています。
これはメルヴィンに限ったことではなく、手慣れたミュージシャンならライヴ中にサラッと披露する定番のようなものでもありますね。
1曲目のこの曲でもさっそく2分6秒辺りでミュージカル映画の挿入曲”The Surrey with the Fringe on Top(飾りのついた四輪馬車)“のテーマフレーズを挿入しています。
この曲はソニー・ロリンズが取り上げたのがジャズでは一番有名なのですが、メルヴィンはロリンズが好きだったのか?よくフレーズを拝借しています。
また2分41秒には、アメリカのTVアニメ『原始家族フリントストーン(The Flintstones)』のテーマメロディーまで弾いています。
年代も違えば国も違うので僕にはよくわかりませんが、なぜかアメリカではフリントストーンが人気なのですね⁉
ジャズギタリストでも、バーニー・ケッセルやハーブ・エリスがフリントストーンのテーマソングをジャズアレンジで演奏していましたからね。
ギターソロの後はオルガンソロが続き、後テーマに戻って曲は終わります。
2曲目”Ain’t No Woman (Like the One I Got)”だけは本作だけのレアな楽曲となっております。
アメリカのR&Bコーラス・グループのフォー・トップスが1973年に歌ったヒット曲なのですが、メルヴィンがライヴでカヴァーしているのはこの作品でしか聞いたことがないです。
こういったレアな楽曲が収録されているのも本作の魅力のひとつです。
先ほどの勢いのあるジャズファンク曲からバラード曲に移り、ここではアルト・サックスがメルヴィンに変わってテーマを吹いています。
ソロもそのままサックスだけが吹くので、メルヴィンは終始バッキングに徹しています。
ただメルヴィンのギタリストとしての魅力は、単に矢継ぎ早に繰り出されるギターソロだけでなく、その圧倒的グルーヴ感に裏打ちされたリズムギターだとも言えます。
ここまでファンキーにカッティングでグルーヴさせれるギタリストはなかなかいません!
3曲目”Fire Eater”は、ラスティ・ブライアントのジャズファンクを代表する名曲で、ザ・ニュー・マスターサウンズもライヴでちょくちょく取り上げる定番曲ですね。
復活後のメルヴィンも、毎回のようにこの曲は演奏している得意曲です♪
先ほどの曲ではギターソロはありませんでしたが、この曲ではかなり長めにギターソロを弾いています。
4曲目”Cranberry Sunshine”は、メルヴィンの最後のスタジオ作『Groove On Up』に収録されていた後期の代表曲です。
しかしメルヴィンはテーマを弾くのみで、ソロは全てオルガンが弾いています。
バンドメンバー全員に見せ場を設けていたのかもしれませんね⁉
そして5曲目”Breezin'”は、ご存じジョージ・ベンソンを一躍有名にした大ヒット曲です!
ボビー・ウーマックが書いたこの曲は、フュージョン系のジャズギタリストには必須の楽曲なのですが……実は最初はレゲェ系のギタリストのウィリー・リンドが1974年にギターインストで演奏しています。
もちろんメルヴィンはジョージ・ベンソンに憧れていたので、ベンソンの影響でカヴァーしたのでしょう。
しかし常にこの曲を演奏していたわけでもなく、2010年のライヴから急にセットリストに登場するようになりました。
もしかしたらメルヴィン自身も2010年のライヴを集大成だと考えてのことだったのかもしれませんね⁉
イントロは最初こそフルコードで弾き始めていますが、ベンソンが弾いていたダブルストップのあの鐘の音のようなフレーズも登場します。
そしてあまりにも有名すぎるあのテーマメロディーも、もちろんメルヴィン自身が弾いています。
そしてギターソロでは、ここでも余裕のジャズスタンダードのテーマを挿入しています。
今回は3分16秒にソニー・ロリンズの代表曲”St. Thomas”のテーマを弾いています。
更には4分26秒に再度”The Surrey with the Fringe on Top(飾りのついた四輪馬車)“も弾いています。
さすがにギターソロはピッキングミスが何度かみられるのですが……それでも圧倒的グルーヴ感とアイデアで弾ききっています!
ベンソンの後釜としてブラザー・ジャック・マクダフのバンドに参加したことがメルヴィンにとってのプロとしてのスタートだったようですが、初の公式ライヴ盤にして最期となったこのライヴでもベンソンの代表曲を演奏しているのは何とも感慨深いですね。
6曲目”Whip! Whop!”は、今度はメルヴィン自身の代表曲です。
1973年の名盤『Texas Twister』に収録されていたメルヴィンのオリジナル曲にして、ジャズファンク・ギターを代表するような名曲です!
2管のホーンも参加して勢いよく曲が始まります!
さすがに本家本元は勢いが違います!
しかしここでもメルヴィンのソロはなく、アルト→テナーのサックス陣のみソロを吹いています。
メルヴィンは終始カッティングでグルーヴを維持しています。
なぜか自身の代表曲ではギターソロを弾いていないのですが、もしかしたら若いバンドメンバーにチャンスを与えていたのでしょうか⁉
続く8曲目”Thank You”は、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの名曲カヴァーで、メルヴィンは70年代と00年代に2度に渡ってこの曲をスタジオ録音しています。
今回は直近の2004年のアルバム『It Is What It Is』に収録されていた最新バージョンのアレンジで演奏しています。
テーマを弾くのはもちろんメルヴィンなのですが、ソロはアルトサックスとオルガンのみです。
ここでもメルヴィンはバッキングに徹しています。
最期の8曲目”Hot Dog”は、ルー・ドナルドソンの1969年の作品『Hot Dog』に収録されていた楽曲です。
『Hot Dog』にはメルヴィンがサイドマンとしてギターを弾いています。
ルー・ドナルドソンのソウルジャズ作品『Hot Dog』を聴こう!
この曲も復活後のメルヴィンのライヴでは定番のように演奏されていました。
やはりメルヴィン自身はスタンダードなジャズ曲よりも、こういったソウルジャズ/ジャズファンク系の楽曲が好きなのでしょう。
テナー→アルトとサックスソロが続いた後にメルヴィンの最後のギターソロを聴くことが出来ます。
締めはバンド一丸となって後テーマを演奏して終ります。
そして9曲目になぜか”Band Intro”としてバンドを紹介するMCが収録されています。
実質的には8曲入りのライヴ盤と言うことですね。
ちなみにLP盤では6曲しか収録されていません。
“Thank You”と”Hot Dog”と”Band Intro”は、CD盤のみに収録されています。
以上、【メルヴィン・スパークス最後のライヴを収録した『Live at Nectar’s』はジャズファンクギター必聴作品‼】でした。
ライヴ演奏におけるジャズファンク・ギターのお手本のような演奏を聴くことが出来る作品です。
オルガン系のジャズファンクがお好きな方はもちろん、僕のようにギターを演奏する人にもおすすめ出来る名作です♪
ジャズファンク好きは必聴ですね♪
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