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カテゴリー:Music

2019/10/15

メルヴィン・スパークスの師匠⁉カル・グリーンのジャズファンク作品『Trippin’』を聴こう♪

カル・グリーンが1969年に制作したジャズファンク作品『Trippin’』をご紹介します。

アグレッシヴなテキサス系ブルースギタリストとしても成らしたカル・グリーン!

最近ずっとこのブログでご紹介し続けているジャズファンク・ギタリストのシリーズなのですが、今回はこれまでにご紹介したギタリストとは少し違っています。

 

1937年6月22日にテキサス州デイトンに生まれたカル・グリーンというギタリストです。

 

カル・グリーンの学生時代の友人には、アルバート・コリンズやジョニー・”ギター”・ワトソンにジョニー・コープランド等、テキサスを代表するようなブルースギタリスト達がいました。

 

彼らと親交があっただけにカル・グリーンもT-ボーン・ウォーカーやクラレンス・”ゲイトマウス”・ブラウンなどに憧れるブルースギタリストでした。

 

カル・グリーンは弱冠17歳の頃に1954年にハンク・バラード&ザ・ミッドナイターズにギタリストとして加入しています。

 

キャッチーなR&Bを歌うこのコーラスグループにて、それこそ初期のクラレンス・”ゲイトマウス”・ブラウンやジョニー・”ギター”・ワトソンのような「ギャギャギャギャ~~ン!」と派手に鳴らしたテキサス系ブルースギターを得意としていました。

 

しかしそんなアグレッシヴなブルースギターを弾いていたカル・グリーンが、なぜジャズファンクのアルバムを制作するまでになったのか?

 

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獄中でジャズギターに目覚めたカル・グリーン!

1959年、22歳の頃にカル・グリーンは違法薬物所持の罪で逮捕されてしまいます。

 

有罪となり収監されるのですが、獄中で聴いたケニー・バレルのレコードにほれ込んでジャズに目覚めることになったようです。

 

そういった経緯からアグレッシヴなブルースギタリストから、ジャズ的なクロマチックラインやオクターヴ奏法なんかを使うジャズギタリストへと変化していったようです。

 

ちなみにこのブログでも何度か登場している僕のお気に入りのジャズファンク・ギタリストのメルヴィン・スパークスは20歳の頃にカル・グリーンに師事しています。

 

カル・グリーンがテキサス州ヒューストンのクラブに定期的に出演していた頃、そのクラブの女性経営者に「息子にギターのレッスンをしてもらえませんか?」と頼まれました。

 

その息子というのがメルヴィン・スパークスだったようで、カル・グリーンはメルヴィンの師匠ということになります。

 

言われてみれば、メルヴィンのブルース・フィーリングのようなものを本作のカル・グリーンの演奏から感じられることがあります。

 

それはカル・グリーンがメルヴィンの真似をしたのではなく、むしろメルヴィンに伝授したものだったのですね。

 

それでは今回はそんなカル・グリーンが1969年に制作したジャズファンク作品『Trippin’』をご紹介したいと思います。

 

 

 

Cal Green – 『Trippin’ With Cal Green』

01.Trippin
02.Sweet September
03.Days Of Wine And Roses
04.Sieda
05.My Cherie Amour
06.Mellow In Blue
07.Johnny’s Gone To Vietnam

 

Personnel:
Cal Green – Guitar
Charles Kinard – Piano, Organ
Tracy Wright – Bass
Billy Moore – Drums, Percussion

 

アルバムの内容

全6曲中、4曲がカル・グリーンのオリジナル曲になります。

 

そこにスティーヴィー・ワンダーの人気曲やジャズ・スタンダードのカヴァーを含む多彩な選曲で構成されています。

 

しかし全体の雰囲気が統一されているので違和感なく通して聴くことが出来る作品です。

 

さっそくアルバム・タイトル曲の1曲目”Trippin”からカル・グリーン節が全開です!

 

ウェス・モンゴメリーへのリスペクトが感じられるようなオクターヴ奏法によるテーマ演奏が、それまでのテキサス・ブルース・ギタリストのイメージとは違っています。

 

ただブルースからジャズファンク・ギタリストに転職したからなのでしょうか?少しピッチが不安定に感じたりもします。

 

この辺は以前このブログでもご紹介していたジョージ・フリーマンのようですね。

 

またフレージングのセンスはよく、メロディアスではあるのですが、ギターソロ時にバックの演奏陣と比べるとモタッているように感じられます。

 

リズムの危うさから「ヘタウマ」と感じることでしょう。

 

こういった「ヘタウマ」感は、リズムは抜群なのにフレージングが一辺倒だったアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズとは逆ですね。

 

どうしても元がジャズギタリストだったグラント・グリーンやジョージ・ベンソンと比べると、テクニック的に大きく劣るのは否めません。

 

しかし本作をおすすめしたい理由として、この1曲目の”Trippin”の曲調がとてもかっこいいからなんです!

 

演奏面での不安要素はありますが、しかしいくらテクニカルで完璧な演奏でも楽曲そのものがツマらなければ、何回も聴き返したくはなくなります。

カル・グリーンの本作が魅力的なのは、収録曲のかっこよさですね♪
まさに正統派ジャズファンク!と言いたくなるような楽曲が続きます。

 

2曲目”Sweet September”は、映画作曲家でピアニストのビル・マクガフィーが書いた曲で西海岸のジャズピアニスト、ピート・ジョリーが取り上げた楽曲です。

 

ちなみにジャズギタリストのハワード・ロバーツが1966年のボサノバジャズに変えてカヴァーもしています。

 

洗練されたハワード・ロバーツの演奏とは違い、カル・グリーンのアタック感の強いピッキングによる熱いギターソロを聴くことができます。

 

ギターソロの合間にコードを挟むスタイルはケニー・バレルからの影響でしょうね。

 

しかしこの曲はカル・グリーンのギターソロに続くチャールズ・カイナードのピアノソロも素晴らしいので注目です。

 

チャールズ・カイナードはオルガン奏者として数多くのジャズファンク作品を残していますが、ここで聴けるようにピアノの腕も相当なものです。

 

チャールズ・カイナードの貴重なピアノ演奏を聴ける曲としても重要な作品ですね♪

 

3曲目”Days Of Wine And Roses”は、映画の主題歌として書かれたスタンダード曲「酒とバラの日々」のカヴァーです。

 

ウェスも取り上げていたこの曲を、カル・グリーンも同じようにオルガンをバックにスローテンポで演奏しています。

 

オクターヴ奏法によるテーマ演奏からもウェスへのリスペクトが感じられます。

 

さすがにそのウェス本人や、パット・マルティーノの「酒とバラの日々」には劣りますが、まぁ彼ら2人が特別上手すぎることを考慮すれば、ここでのカル・グリーンのオクターヴ奏法主体のノリの良いギターソロも悪くはないです。

 

ギターソロに釣られてチャールズ・カイナードのオルガンソロもノリよく演奏されています。

 

4曲目”Sieda”は、カル・グリーンの自作曲です。

 

これまた1曲目の”Trippin”同様、かっこいいテーマメロディーを持つ正統派ジャズファンク曲です。

 

ギター演奏は多少他のジャズファンク系ギタリストと比べると劣るものの、こういった作曲能力の高さは『本物』ですね。

 

しかしどこまでもウェスが好きだったようで、オクターヴ奏法によるテーマ演奏や、ギターソロの2分6秒辺りで聴ける高速3連で音が上がっていくフレージングはウェスからの影響大です!

 

6曲目”My Cherie Amour”は、以前このブログでもご紹介していたスティーヴィー・ワンダーの曲をジャズファンク系ミュージシャンがカヴァーした音源を集めたコンピレーション・アルバム『Jazz Funk Plays Stevie Wonder: Wonder Funk』にも収録されていた楽曲です。

 

スティーヴィー・ワンダーの名曲をジャズ・ファンクで聴こう♪

もちろんここでもスティーヴィーが歌ったメロディーラインを、ギターのオクターヴ奏法に置き換えて弾いています。

 

この曲でもチャールズ・カイナードのピアノ演奏を聴くことが出来ます。

 

6曲目”Mellow In Blue”もカル・グリーンの自作曲で、テーマメロディーの作り方がモロにウェス・モンゴメリーから影響を受けているような楽曲です。

 

ギターソロでは、まるでジョージ・ベンソンになったかのような高速クロマチックラインを弾きこなしています。

 

リズムやピッチが不安定ながらも、こういった高速フレーズやスリリングなシーケンスフレーズを弾けたりするので、「完全にヘタ」というわけではないんですよね。

 

アルバム最後の7曲目”Johnny’s Gone To Vietnam”もカル・グリーンの自作曲です。

 

1969年と言えばちょうどベトナム戦争の真っただ中で、反戦運動が一番激しかった頃でしょう。

 

このジャズファンク曲には、1971年に映画にもなった『ジョニーは戦場へ行った』のタイトル”Johnny Got His Gun”と似た曲名が付けられています。

 

映画は本作リリース後に公開されていますが、『ジョニーは戦場へ行った』の元はダルトン・トランボが1939年に発表した反戦小説になります。

 

もしかしたら影響を受けて付けた曲名なのかな?と感じます。

 

ちなみにそういった思想を省いても、他のカル・グリーン自作曲のようにかっこいいジャズファンク曲に仕上がっています。

 

ファンキーな16分音符のカッティングに始まり、ジャニス・ジョプリン辺りが歌いそうなメロディーラインをカル・グリーンがギターで奏でます。

 

この曲のギターソロはウェスというよりもグラント・グリーンに近く、グラントお得意のシーケンスフレーズも登場します。

 

アルバムの最後を飾るに相応しい楽曲ですね。

 

 

以上、【メルヴィン・スパークスの師匠⁉カル・グリーンのジャズファンク作品『Trippin’』を聴こう♪】でした。

 

多少のリズムやピッチの不安定さは感じますが、それを帳消しにするような自作曲のかっこよさは必聴です。

 

カヴァー曲に関してはどうしてもハワード・ロバーツやウェス・モンゴメリー等の名手と比べてしまいますが、しかしここに収録された4曲の自作曲はカル・グリーンならではの演奏を聴くことが出来ます。

 

ジャズファンク好きの人には、本作に収録されているカル・グリーンのオリジナル4曲が特におすすめです。

 

メルヴィン・スパークスの師匠にも当たるカル・グリーンが1969年に制作したジャズファンク作品『Trippin’』をぜひ聴いてみて下さい♪

 

 

 

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