
2024/08/24
ブルージーでソウルフルなジャズ・サックス奏者ハンク・クロフォードが60年代にリリースしたおすすめのアルバム10選
ブルージーでソウルフルなアルト・サックス奏者ハンク・クロフォードのおすすめアルバム10選
今回は僕のお気に入りのサックス奏者の1人、ハンク・クロフォードのおすすめアルバムを10作品ご紹介します。
レイ・チャールズ楽団で活躍したブルージーでソウルフルなアルト・サックス奏者ハンク・クロフォードの簡単なバイオグラフィー
誕生と音楽的影響
ハンク・クロフォードは、かの有名なR&Bシンガーのレイ・チャールズの楽団でアルト・サックス奏者として活躍したミュージシャンです。
1934年に米国テネシー州メンフィス生まれのミュージシャンで、幼い頃はチャーリー・パーカーやルイ・ジョーダンにアール・ボスティック、そしてジョニー・ホッジス等の偉大なるミュージシャンから影響を受けてサックスを始めています。
1952年にメンフィスで行われたB.B.キングのレコーディングに参加したことからミュージシャンとして活動するようになりました。
レイ・チャールズとの出会い
1958年にレイ・チャールズと出会い、当初はバリトン・サックス奏者として雇われることになります。
1959年には本業であるアルト・サックス奏者に転向し、1963年までレイ・チャールズ楽団の音楽監督を務めています。
リーダーとして
そんな才能あふれるハンク・クロフォードは、1961年に初のリーダー作となる『More Soul』をリリースしています。
2009年に74歳で亡くなるまでに40作品近くのリーダー作(ジミー・マクグリフ等との双頭リーダー作も含む)をリリースしており、そのどれもが持ち前のブルージーでソウルフルな演奏で彩っています。
60年代には、レイ・チャールズ楽団の延長のようなR&B調のソウル・ジャズ作品を残しており、70年代に入ると当時の流行りだったジャズ・ファンク作品を作るようになります。
そして80年代辺りからオーソドックスなジャズに回帰し、2000年の最終作『The World of Hank Crawford』までコンスタンスにアルバムをリリースし続けました。
今回は数多くあるハンク・クロフォードのリーダー作の中から、最もソウルフルだった60年代に渋り10作品をご紹介します。
ご紹介する順番はリリースされた年代順になります。
それではどうぞ。
60年代にリリースされたハンク・クロフォードのアルバム10選
01.Hank Crawford – 『More Soul』
『More Soul』は、1961年にリリースされたハンク・クロフォードの初のリーダー作です。
テナー・サックス奏者のジェームス・ムーディ作の小粋なスウィング・ジャズ”Boo’s Tune”から始まるアルバムで、”Angel Eyes”や”Misty”といったスタンダード曲も取り上げたジャズ・アルバムです。
アート・ブレイキーと共にジャズ・メッセンジャーズとして活躍したジャズ・ピアニストのホレス・シルヴァー作の “Sister Sadie”なんかも取り上げています。
同じくレイ・チャールズ楽団にて活動を共にした盟友デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンもテナー・サックスで参加しています。
他にもバリトン・サックスやトランペットにフリューゲルホルンといった管楽器隊も参加したホーン・アレンジも一筆なアルバムです。
しかしながら1961年と言えば、マイルス・デイヴィスが歴史的名盤『Kind of Blue』をリリースしてから既に2年が経っていた時期で、モード・ジャズが新主流派として盛り上がっていた時代だと考えると…この時代でもこういったスウィング・ジャズは既に「古い音楽」だったように思われます。
おそらくハンク・クロフォードは、レイ・チャールズの楽団とは違ってR&Bではなくオーソドックスなジャズをやりたかったのでしょう。
リリースされた時代性を考えなければ、悪くないアルバムです。
気楽に聴けるスウィング・ジャズ作品としてどうぞ♪
02.Hank Crawford – 『The Soul Clinic』
『The Soul Clinic』は、1962年にリリースされた2作目のリーダー作です。
前作に引き続きデヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンも参加しており、ジャズ・スタンダード曲の”Easy Living”や、本作でもホレス・シルヴァー作の”Me and My Baby”も取り上げています。
ホーン隊も前作と同じく参加しており、変わりがないようにも感じられますが、しかし1曲目にパーシー・スレッジ作のバラード曲”Please Send Me Someone to Love” を取り上げていたり、またハンク・クロフォード自身が書いたオリジナル曲が3曲と、1曲のみだった前作よりも増えています。
特に自作曲のジャズ・ブルース”Blue Stone”での演奏が素晴らしく、やはり「ハンク・クロフォードはブルージーな曲が得意なんだな!」と感じられます。
とはいえ、本作のベスト・トラックはジャズ・スタンダード曲の”Easy Living”になります。
ソウルフルな演奏が得意なサックス奏者は、こういったバラード曲を演奏させると抜群に巧いですね!
03.Hank Crawford – 『From the Heart』
『From the Heart』は、1962年にリリースされた3作目のリーダー作です。
本作にも引き続きデヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンも参加しており、ホーン隊がバックを支えているのも同じです。
こちらでもパーシー・スレッジ作の”But on the Other Hand” を取り上げていたりしていますが、ジャズ・スタンダード曲は取り上げていません。
その代わりに、ベッシー・スミスが歌った”Don’t Cry Baby”や、ビリー・ホリデイも歌った”You’ve Changed”といった女性シンガーが歌った「歌もの曲」のインスト・カヴァーが収録されています。
また自作曲も4曲と増えています。
更に本作ではレイ・チャールズの”Baby Let Me Hold Your Hand”も取り上げています。
ただ、まだまだ自作曲の印象は薄く…どうしても偉大なる女性シンガー達が歌った名曲”Don’t Cry Baby”と”You’ve Changed”には及びません。
ベスト・トラックは、”You’ve Changed”です。
こういった「歌ものバラード曲」を演奏させると本領を発揮しますね♪
04.Hank Crawford – 『Soul of the Ballad』
『Soul of the Ballad』は、1963年にリリースされた4作目のリーダー作です。
4作目にしてついにお得意のソウル・バラード曲を取り上げたアルバムをリリースしています。
そういったことから本作のテーマはアルバムのタイトル通りに「ソウル・バラード曲」なので、ハンク・クロフォードのオリジナル曲は収録されていません。
ファッツ・ドミノの”Blueberry Hill”や、トニー・ベネットの”I Left My Heart in San Francisco” にジャズ・スタンダード曲の”Stardust”や “I’m Gettin’ Sentimental Over You”といったバラード・ナンバーが続きます。
オリジナル曲は収録されていないものの、こういったバラード曲を得意とするハンク・クロフォードだからこそ名作に仕上げられたアルバムです。
ジャズ・ギタリストのグラント・グリーンも取り上げていたことがあるラッキー・ミリンダー・オーケストラのカヴァー曲”Sweet Slumber”の出来が特に素晴らしいです!
インストでのソウル・バラードがお好きな方におすすめのアルバムです♪
05.Hank Crawford – 『True Blue』
『True Blue』は、1964年にリリースされた5作目のリーダー作です。
前作『Soul of the Ballad』が、ソウル・バラード曲のカヴァー集だったのに対して、本作ではオリジナル曲が5曲収録されたアルバムになります。
今にもレイ・チャールズが歌い出しそうな”Shake-a-Plenty”や、ハンク・クロフォード自らサックスではなくピアノでリードを弾いた”Mellow Down”に、朗らかにスウィングする”Read ‘Em and Weep”と自作曲が冒頭に3曲立て続けに収録されています。
これまで以上に「ハンク・クロフォード」という1ミュージシャンにスポットライトを当てたような素晴らしい内容です。
カヴァー曲の方も、ジョニー・ムーアズ・スリー・ブレイヤーズの”Merry Christmas Baby” や、ジャンプ系ブルース・ピアニストのバディ・ジョンソンの”Save Your Love for Me”に、パーシー・スレッジの”Two Years of Torture”とドゥーワップ時代のピアニストハワード・ビッグスの”Got You on My Mind”等、バラード曲を中心に取り上げられています。
どうしてもオリジナル曲がまだまだカヴァー曲と比べると弱く感じるので、ベスト・トラックこそ哀愁のバラード曲”Save Your Love for Me”ですが、自らピアノを弾いた”Mellow Down”等のような新しいチャレンジ作は好感持てるアルバムです。
06.Hank Crawford – 『Dig These Blues』
『Dig These Blues』は、1965年にリリースされた6作目のリーダー作です。
ケニー・バレルの”Chitlins Con Carne”風のイントロを持った自作のジャズ・ブルース曲”Dig These Blues”で始まり、デューク・エリントンの”Don’t Get Around Much Anymore”や、ジャズ・ピアニストのフィニアス・ニューボーンが書いた曲”New Blues”に、ベッシー・スミスが歌った”Baby Won’t You Please Come Home” 等のカヴァー曲も含んだアルバムです。
自作曲も6曲と増えており、作曲家としても力を発揮してはいますが…どうも「どこかで聴いたことのあるジャズ・ブルース曲」に感じられるのは残念なところです。
結局いつものように”Don’t Get Around Much Anymore”や”Baby Won’t You Please Come Home” といったバラード曲のカヴァーが一番良かったりするのは、仕方のないことです。
07.Hank Crawford – 『After Hours』
『After Hours』は、1966年にリリースされた7作目のリーダー作です。
伝説のジャズ・ピアニスト、エイブリー・パリッシュが書いたスタンダード中のスタンダード曲”After Hours”をアルバム・タイトルに付け、1曲目にも持ってきています。
ハンク・クロフォードがお得意なダウンホームなイナタいジャズ・ブルース曲ですが、この曲ではサックスは吹かずにピアノで演奏しています。
そこは少し残念なのですが、ギタリストのウィリー・ジョーンズが弾くブルージーなギターソロは悪くないです。
ベニー・ゴルソンの”Junction”や、トニー・ベネットが歌った名バラード曲”Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me)”に、ハンク・クロフォードと同じくブルージーなサックスが得意だったスタンリー・タレンタインの”Soul Shoutin'”等、今回もカヴァー曲が良いのはいつもの通りです。
本作ではアルバム最後のレイ・チャールズっぽい”The Back Slider”のみがハンク・クロフォードのオリジナル曲で、こちらでもサックスではなくピアノで演奏しています。
結局のところ、歌ものバラード曲のカヴァー”Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me)”がベスト・トラックになってしまうのは、仕方のないことですね。
しかしそれにしてもこういったバラード曲を吹かせると本当に巧いサックス奏者です。
08.Hank Crawford – 『Mr. Blues』
『Mr. Blues』は、1967年にリリースされた8作目のリーダー作です。
今回は自作曲ですが、ハンク・クロフォード自らピアノを弾いたジャズ・ブルースの”Mr. Blues”でアルバムは始まります。
サックス・ソロがない代わりに、ソニー・フォリエストがギター・ソロを弾いています。
他にも3曲の自作曲が収録されていますが、どれも軽快なジャンプ系ブルースぽい曲です。
今回は、ナット・キング・コールでお馴染みの定番のブルース・ナンバー”Route 66″や、相変わらずお好きなパーシー・スレッジの”Danger Zone”に、ミュージカル作品『晴れた日に永遠が見える』(1970年に映画化もされています。)のテーマ曲”On a Clear Day (You Can See Forever)”、そしてレイ・チャールズも歌った”Lonely Avenue”等をカヴァーしています。
どうしても”Route 66″や、”Lonely Avenue”といったカヴァー曲の方が自作曲より良いのは仕方ないことですが、全体的に明るい曲が多いので聴きやすいアルバムです。
09.Hank Crawford – 『Double Cross』
『Double Cross』は、1968年にリリースされた9作目のリーダー作です。
ストリングスを交えたバラード曲Double Cross”や”Glue Fingers”に”I Can’t Stand It”、そして”Mud Island Blues”の4曲が自作曲です。
マーサ&ザ・ヴァンデラスの”Jimmy Mack”に、レイ・チャールズが歌った”In the Heat of the Night”、ビング・クロスビーが歌った”The Second Time Around”、そしてジョニー・ホッジスの”Someday (You’ll Want Me to Want You)”がカヴァー曲です。
オリジナル曲とカヴァー曲の数が同数でバランスの良いあるアb無ですが、相変わらず”In the Heat of the Night”や”The Second Time Around”といった歌ものバラード曲の出来が素晴らしいです。
10.Hank Crawford – 『Mr. Blues Plays Lady Soul』
『Double Cross』は、1969年にリリースされた10作目のリーダー作です。
アルバムのタイトル通りにレディー・ソウルことアレサ・フランクリンが歌った曲を中心にカヴァーした名作です。
タイトルにあるミスター・ブルーズとは、もちろんハンク・クロフォード自身のことです。
本作発表の前年にリリースされたアレサの最高傑作『Lady Soul』をオマージュしたような曲名の”Lady Soul”のみハンク・クロフォードの自作曲です。
しかしこの自作曲も他の名曲に引けを取らない素晴らしい出来です!
バックを固めるミュージシャンも、ギターにエリック・ゲイル、ドラムにバーナード・パーディ、ベースは曲によってはロン・カーターも弾いていますが、ジェリー・ジェモットやチャック・レイニー等のR&Bが好きであれば堪らない面子が揃っています。
僕自身も今回ご紹介する10作品の中では、本作『Mr. Blues Plays Lady Soul』が一番好きなアルバムなのですが…結局のところハンク・クロフォードにはジャズ・スタンダード曲をやるよりも、ソウル・ミュージックの方が合っています!
ジャズのみならず、アレサ・フランクリンのファンや、それこそR&Bがお好きな人全てにおすすめしたい名作です!
ギター好きには、エリック・ゲイルのギター・ソロが素晴らしい”Soul Serenade”がおすすめですよ♪
ワウギターでソロを弾いています!
以上、【ブルージーでソウルフルなジャズ・サックス奏者ハンク・クロフォードが60年代にリリースしたおすすめのアルバム10選】でした。
今回初めてハンク・クロフォードを知ったという方も、これからハンク・クロフォードを聴いてみたかったという人も、ぜひこのブログ記事を参考に各アルバムを聴いてみて下さい。
ブルージーなジャズがお好きな方や、ソウルフルなジャズがお好きな方に特におすすめです♪
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