2019/09/04
スティーヴィー・ワンダーの名曲をジャズ・ファンクで聴こう♪
スティーヴィー・ワンダーの名曲をジャズ・ファンク系のミュージシャン達がカヴァーした『Jazz Funk Plays Stevie Wonder: Wonder Funk』
オルガンとギターが中心となったインスト・カヴァーが多く収録された好企画盤!
今回ご紹介するのはジャズ・ファンク系の企画盤になります。
それもなんとスティーヴィー・ワンダーの書いた楽曲のみで構成されたコンピレーション・アルバムです。
しかも単に歌モノでそのままカヴァーしたものではなく、60年代後半から70年代半ばにオルガンを中心としたジャズ・ファンク系のミュージシャンがインスト・カヴァーしたものばかりを集めた特殊な企画盤になります。
このブログでは僕自身がオルガン系のジャズ・ファンクが好きなため、そういった関連の音楽を多くご紹介しています。
今回ご紹介するスティーヴィー・ワンダーの楽曲をジャズ・ファンク風にカヴァーしたこの『Jazz Funk Plays Stevie Wonder: Wonder Funk』というアルバムも、このブログのテーマにとても合っていると思いました。
もちろん僕も不世出の天才スティーヴィー・ワンダーが書いた数多くの名曲が大好きなので、このコンピレーション・アルバムをプライベートで聴く頻度は高いです。
というわけで自信を持っておすすめしたいアルバムのひとつです。
それでは収録曲やカヴァーしたミュージシャンについてご紹介したいと思います。
Wonder Funk – 『Jazz Funk Plays Stevie Wonder: Wonder Funk』
01.You Are The Sunshine Of My Life [Peter Yellin]
02.Superstition [Charles Kynard ]
03.My Cherie Amour [Cal Green]
04.You’ve Got It Bad Girl [Richard “Groove” Holmes]
05.If You Really Love Me [Julius Brockington]
06.Living For The City [O’Donel Levy]
07.I Love Every Little Thing About You [Odell Brown]
08.Music Talk [Paul Humphrey]
09.Super Woman [O’Donel Levy]
10.All In Love Is Fair [Bubbha Thomas & The Lightmen Plus One]
11.You’ve Got It Bad Girl [Charles Kynard]
12.You Are The Sunshine Of My Life [Tyrone Washington]
アルバムの内容
“Isn’t She Lovely”や”Sir Duke”に”I Wish”のような、今でもセッションで大人気の楽曲が収録されていないのは、それらの楽曲が収録されている『Songs in the Key of Life』が1976年になってからリリースされているためです。
本作に収録されているジャズ・ファンク・カヴァーは、1969年~1975年の間に録音された音源ばかりです。
ちょうどオルガン系のジャズ・ファンクが多く制作されたのもこの年代だったので時代背景的に仕方ない部分もあります。
1976年以降はディスコ/フュージョン系のジャズ・ファンクに変わりつつある時期で、オルガンよりもエレピやシンセサイザーが活躍するようになります。
なので本作の中にその時代の音源を入れてしまうと、企画自体がブレてしまうような気がしますのでこの選曲で妥当だと言えるでしょう。
そのため『Songs in the Key of Life』に収録されているセッション定番曲こそありませんが、しかしバランスの良いまとめられ方はしていると思います。
“You Are The Sunshine Of My Life”や”You’ve Got It Bad Girl”が2つずつ収録されてはいますが、人気の曲なのでこれもありだと思います。
まず1曲目を飾るのは、その人気曲の”You Are The Sunshine Of My Life”です。
アルト・サックス奏者のピート・イエリンがリーダーの1973年の作品『It’s The Right Thing』の1曲目に収録されていました。
ジャズ・ファンク系の作品を多く残したメインストリーム・レコードから発売されたアルバムです。
ギターを弾いているのは同じくメインストリーム・レコードにリーダー作を吹き込んだ経験のあるジャック・ウィルキンズと、ロイ・ヘインズがメインストリームに吹き込んだジャズ・ファンク盤『Senyah』にも参加していたローランド・プリンスの2人です。
エレピを弾いているのはこれまたメインストリーム・レコードにリーダー作を残していたハル・ギャルパーになります。
レーベル・メイトで録音したという感じでしょうか。
オルガンではなくエレピが参加しているためか、どことなくオシャレで洗練された演奏に仕上がっています。
それもピート・イエリンが白人サックス奏者であることにも由来するのかもしれません。
バックの演奏陣はファンクしていますが、リードを吹くピート・イエリンには爽やかさと軽さが同時に感じられます。
しかしアルバムの1曲目としてはこれ以上にないぐらい適した演奏です。
2曲目の”Superstition”は、元はと言えばジェフ・ベックとティム・ボガートとカーマイン・アピスによる無敵のロック・トライアングル『ベック・ボガート & アピス』に提供された楽曲でしたが、後にスティーヴィー自身も『Talking Book』で取り上げた名曲です。
この曲もセッションやバンドでのカヴァーなんかで定番の人気曲ですね。
本作ではオルガン奏者のチャールズ・カイナードが1973年に『Your Mama Don’t Dance』で取り上げた音源がチョイスされています。
メインの歌メロはもちろんカイナードのオルガンが弾いています。
ギターを弾いているのはザ・クルセイダーズでもお馴染みのアーサー・アダムスです。
ギター・ソロではボリューム奏法を使ってバイオイン風に演奏しています。
ロックでいうとレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジがやっていたバイオリン奏法ですね。
その他にもトランペットとトロンボーンがそれぞれ2本ずつ重なって華やかなアレンジが施されています。
ちなみにリズム隊は、ベースにチャック・レイニー、ドラムにポール・ハンフリーという鉄壁の布陣です!
3曲目”My Cherie Amour”は、ヘタウマ(?)系ジャズギタリストのカル・グリーンが1669年のリーダー作『Trippin’』で取り上げていた”My Cherie Amour”のカヴァーです。
こちらにはサイドマンとしてカイナードがオルガンとピアノで参加しています。
なんと、ソロを弾くときはオルガンではなくピアノで弾いていたりもします!
肝心のリーダーのカル・グリーンは、なんともピッチが不安定なオクターヴ奏法でテーマを弾いています。
ウェス・モンゴメリーに憧れていたようなのですが、その腕前は遠く及びません。
ピッキングミスも所々で見られるまさにヘタウマ・ギタリストだと思います。
4曲目”You’ve Got It Bad Girl”は、重量級のオルガン奏者リチャード・”グルーヴ”・ホームズが1973年に名盤『New Groove』で取り上げていたバージョンです。
グルーヴ・ホームズは、左手でモリモリとベースパートを弾くのが得意でした。
そのためニックネームに”グルーヴ”という単語が付いているので、ベーシストいらずだったりします。
この曲でもベーシストは参加していなくって、ベースパートは全てグルーヴ・ホームズのオルガンによるものです。
グルーヴ・ホームズの左手ベースの相方としてドラムを叩いているのは、名手バーナード・”プリティ”・パーディです。
パーディはR&Bやフュージョン作品だけでなく、この時代のジャズ・ファンク系の作品にも数多くに参加していたりします。
ギターは2人参加していて、名手オドネル・リーヴィーとレオン・クックが参加しています。
ギター・ソロを弾いているのはオドネル・リーヴィーの方で、先ほどのカル・グリーンと比べると雲泥の差といえる程に本当に上手いギタリストです!
フレージングの多彩さもさることながら、リズムの切れが全く違います!
音の長さを表す「音価」をしっかりと理解している演奏だと言えます。
長すぎず短すぎない適度な長さでひとつひとつの音を鳴らしているんです。
続いて5曲目”If You Really Love Me”は、1971年のスティーヴィーの作品『Where I’m Coming From(青春の軌跡)』に収録されていた「愛してくれるなら」の邦題で知られる人気のラヴ・ソングです。
ここでカヴァーしているのは、ジュリアス・ブロッキントンというファンキーなオルガン奏者です。
1972年のアルバム『Sophisticated』に収録されていました。
ギター、ベース、ドラム、パーカッションが参加していますがテーマからソロまで全てジュリアスが弾いています。
ジュリアスの魂の籠った熱いオルガン演奏は、本作の中でも特に素晴らしい演奏だと言えます。
6曲目”Living For The City”は、先ほども登場していた名ジャズ・ファンク・ギタリストのオドネル・リーヴィーが1973年のリーダー作『Everything I Do Gonna Be Funky』で取り上げていたカヴァーです。
軽めのファズとフェイザー(もしくはユニヴァイブ系のトレモロ?)を深めに欠けたエフェクティヴなサウンドでギターを弾いています。
まるでバンド・オブ・ジプシーズ時代のジミ・ヘンドリックスを彷彿させるギター・サウンドです。
そのためなのか、普段よりもロックな演奏に仕上がっています。
7曲目”I Love Every Little Thing About You”は、スティーヴィーの1972年の作品『Music My Mind(心の詩)』に収録されていた曲です。
後にマーヴィン・ゲイの名曲”Sexual Healing”を共作することになるオルガン奏者のオーデル・ブラウンが1974年のアルバム『I LOve Every Little Thing』に吹き込んだカヴァーです。
女性コーラスやサックスも参加した心温まるようなソウルフルなカヴァー・バージョンです。
8曲目”Music Talk”は、スティーヴィーの1966年のアルバム『Uptight』に収録されていた楽曲です。
ドラム奏者のポール・ハンフリーが1971年のアルバム『And The Cool … Aid』に吹き込んだカヴァーです。
なんとここでギターを弾いているのはデイヴィッド・T・ウォーカーです!
まだブルース色が強かった頃ですね。
ギター・ソロではお得意のワウギターも弾いています。
9曲目”Super Woman”は、スティーヴィーの1972年の作品『Music My Mind(心の詩)』に収録されていた曲です。
先ほどの7曲目”I Love Every Little Thing About You”は、”Super Woman”のシングル盤のB面曲でした。
本作の”Super Woman”は、オドネル・リーヴィーが再登場です!
オドネルの1973年のアルバム『Dawn Of A New Day』に収録されていました。
今回はエフェクターを使わずにクリーントーンのギターでベンソン顔負けなギター・ソロを弾いています!
この企画盤に登場するギタリストの中では、やはりオドネルが飛びぬけて上手いですね!
10曲目”All In Love Is Fair”は、スティーヴィーの1973年の名作『Innervisions』に収録されていた悲しいメロディーのバラード曲です。
本作ではレア・グルーヴ系でお馴染みのドラム奏者ブッバ・トーマスが1975年のアルバム『Country Fried Chicken』に吹き込んだカヴァーが選ばれています。
パット・ウィリアムズが吹く哀愁漂うトランペットが印象的です。
11曲目は”You’ve Got It Bad Girl”の再登場です。
こちらを演奏するのはこれまた再登場のチャールズ・カイナードになります。
グルーヴ・ホームズが東のパーティを起用するならこちらは西のハンフリーで対抗です!
但しグルーヴ・ホームズとは違って、カイナードの方はベースにチャック・レイニーを起用しています。
またギターはオドネル・リーヴィーではなくアーサー・アダムスが弾いています。
アーサー・アダムスも相当上手いギタリストなのですが、残念ながらこの曲では彼のギター・ソロを聴くことはできません。
最後の12曲目も、本作の冒頭と同じ”You Are The Sunshine Of My Life”で締めくくられています。
このコンピレーションは、「サンシャイン」で始まって「サンシャイン」で終わるんです。
ちなみに最後を飾るのは、これまたレアなミュージシャンのご登場です!
フリーキーな演奏を得意とするサックス奏者タイロン・ワシントンが1973年のアルバム『Roots』に残したファンキーなバージョンです。
1曲目の”You Are The Sunshine Of My Life”がピート・イエリンのキャッチーな演奏だったのに対して、最後のタイロン・ワシントンの演奏は豪快にブロウしていて力強い演奏に仕上がっています。
こういった選曲もバランスが良いと思います。
以上、【スティーヴィー・ワンダーの名曲をジャズ・ファンクで聴こう♪】でした。
スティーヴィー・ワンダー好きの人はもちろん、この時代のジャズ・ファンク系の作品がお好きな人にもすすめのコンピレーション・アルバムです。
またギター好きにとっても、オドネル・リーヴィーやアーサー・アダムスにデイヴィッド・T・ウォーカーの演奏が聴けるのでおすすめの企画盤ですよ♪
コーネル・デュプリーの音源がないのが少し残念ではありますが…。
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