
2019/10/14
ブラック・ジャズのハウス・ギタリスト カルヴィン・キーズの2作目『Proceed With Caution』を聴こう♪
カルヴィン・キーズがデビュー作より3年ぶりに制作した2作目『Proceed With Caution』をご紹介します。
スピリアル・ジャズ風の曲に正統派ジャズファンク等カルヴィンの良さを活かした名作!
このところ続いているジャズファンク・ギタリストのご紹介シリーズです。
ジョージ・フリーマンから始まり、メルヴィン・スパークス、グラント・グリーン、オドナル・リーヴィーと続いてきた5回目の本日は、こちらもお久しぶりにこのブログに再登場となるカルヴィン・キーズです。
前回は今年の1月25日にデビュー作『Shawn-Neeq』をご紹介していたのですが……
ブラック・ジャズのハウス・ギタリストだったカルヴィン・キーズのデビュー作『Shawn-Neeq』を聴こう♪
今回はそのデビュー作から3年ぶりとなる1974年に制作された2ndアルバムの『Proceed With Caution』をご紹介したいと思います。
カルヴィン・キーズというギタリスト!
前回もご紹介していたのですが、ジャズ・ピアニストのジーン・ラッセルが1971年頃に主宰者として設立したレーベル『ブラック・ジャズ』においてハウスギタリストを務めていたカルヴィン・キーズは、1943年2月6日に米国ネブラスカ州オマハに生まれています。
ネブラスカ州は西部開拓の先駆けとなった「牛肉の州」と言われていて、カルヴィンの生まれたオマハは世界をまたにかける高級ブランド「オマハ牛」が名産です。
そんなオマハ生まれのカルヴィン・キーズは、2019年現在も現役で演奏活動は続けているようです。
今回ご紹介する『Proceed With Caution』とデビュー作の『Shawn-Neeq』をリリースした後は、色々なレーベルで少ない数ではありますが幾つかのリーダー作を残しています。
特に80~90年代は他のジャズファンク・ギタリストと同じく、こういった音楽ジャンルのブームが去っていたのであまり作品を残していません。
その後、メルヴィン・スパークスなんかと同じように2000年代に入ってからはコンスタンスにアルバムをリリースしていました。
しかし初期の頃のようなジャズファンク・アルバムだけでなく、ストレート・アヘッドなジャズを演奏したアルバムなんかもリリースするようになっています。
まるで70年代はソウル/ファンク系のリーダー作を制作していたフィル・アップチャーチが、80年代頃からジャズに傾倒していったのと似た感じですね。
さて、今回ご紹介する1974年の2作目となるリーダー作『Proceed With Caution』は、スピリアル・ジャズ風の楽曲に正統派ジャズファンク等が収録されたカルヴィンの良さを活かした名作です。
アルバムタイトルの“Proceed With Caution(プロシード・ウィズ・コーション:要注意)“のように、注意深く聴きましょう♪
Calvin Keys – 『Proceed With Caution』
01.Priceed with Caution
02.Tradewinds
03.Efflugence
04.Aunt Lovey
05.Renaissance
06.Night Cry
Personnel:
Calvin Keys – Guitar
Charles Owens – Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Flute
Cha Che Oscar Brashear – Trumpet, Flugelhorn
Thalmus Kirk Lightsey – Electric Piano
Nyimbo Henry Franklin – Bass
Ndugu Leon Chancelor – Drums
Owen Marshall – Percussion, Bongos
アルバムの内容
全6曲中、半分の3曲がカルヴィン・キーズによる自作曲になります。
アルバムの1曲目は、その自作曲であるタイトルトラックの”Priceed with Caution”から始まります。
12分46秒にも及ぶ壮大な楽曲”Priceed with Caution”は、まるでファラオ・サンダースやビリー・ハーパー、ハンニバル・マーヴィン・ピーターソンなんかが演奏しそうなジョン・コルトレーン直系の正統派スピリアル・ジャズ曲です。
まさに黒人専門レーベルのブラック・ジャズに相応しい曲調です。
開始から約2分近くカルヴィンのテンポ・ルバートによるイントロ演奏が続き、2分4秒からようやくテーマが始まります。
エレピのコンピングにウッドベースとドラムのリズム隊をバックにアヴァンギャルドなメロディーラインを矢継ぎ早に弾き続けます。
アウト感覚を持ち合わせた演奏なのですが、そもそもカルヴィンのギターが少しピッチが不安定で「敢えてズラしているのか?それとも調子が悪くてズレているのか?」判断しにくい部分があります。
他の作品も聴く限りカルヴィン自体はヘタなギタリストではないのですが……どうもこの曲に限ってはピッチが不安定で音をハズしているように聞こえてしまいます。
その後のフルートやエレピのソロは悪くないので、ギターの調子が悪かっただけなのでしょうか?
ちなみにカーク・ライトシーの弾くエレピソロはかなり熱く燃え上がった演奏です!
2曲目”Tradewinds”は、ブラック・ジャズのレーベル・メイトでもあるキーボード奏者のデヴィッド・デュラーの楽曲です。
カルヴィンは、デヴィッド・デュラーの作品にギタリストで参加していたので、そういった関係性から本作ではデュラーのこの曲をチョイスしたのでしょう。
70年代初期のクロスオーバー時代のフレディ・ハバードやスタンリー・タレンタインの作品を思わせるような、サウンドに広がりのあるジャズ・ロック曲です。
続く3曲目”Efflugence”は、トロンボーン奏者のアル・ホールJr.の書いたスピリアル・ジャズ調の曲です。
壮大なホーン隊をバックにカルヴィンのギターが優雅にテーマを弾き始めます。
しかしギターソロに移ると、まるでジョージ・ベンソンかのようにクロマチックの素早いレガートフレーズを連発し始めます。
アルバムにクレジット記載がないのですが、ギターソロの後にトロンボーンソロが登場します。
おそらくアル・ホールJr.本人が吹いていると思われます。
4曲目”Aunt Lovey”は、カルヴィンの自作曲で代表曲の1つでもあります。
後に2000年のアルバム『Detours Into Unconscious Rhythms』の1曲目に”Aunt Lovey ’99″という曲が収録されることになるのですが……しかし別の曲に聴こえるぐらい違っています。
こちらの”Aunt Lovey”の方は、かっこいいエレピのイントロから始まるミドルテンポのジャズファンク曲です。
エレピが目立つアレンジは、まるで同時期のラリー・ウィリスのアルバムに収録されていそうな雰囲気です。
5曲目”Renaissance”もカルヴィンの自作のスピリアル・ジャズ曲です。
壮大なイントロに導かれジョン・コルトレーンが乗り移ったかのように、カルヴィンのギターが火を噴く勢いで休みなくフレーズを連発します。
ギターソロが終わるとトランペットソロに、絶叫するかのようなフラジオ奏法も登場するソプラノ・サックスソロなど熱い展開が続きます。
11分25秒もある長尺曲は、ゴージャスなホーン隊をバックにカルヴィンがギターを弾きまくって幕を閉じます。
6曲目”Night Cry”は、本作にサックス奏者として参加しているチャールズ・オーウェンの楽曲です。
どことなくセロニアス・モンクの”‘Round Midnight”のようなフレーズも登場するバラード曲です。
カルヴィンのギターソロ以外では作曲者のチャールズ・オーウェンによるソプラノ・サックスソロも登場します。
アルバムの最後を締めるのに相応しい楽曲ですね。

以上、【ブラック・ジャズのハウス・ギタリスト カルヴィン・キーズの2作目『Proceed With Caution』を聴こう♪】でした。
デビュー作の『Shawn-Neeq』から3年が経ち、少し重々しい雰囲気のスピリアル・ジャズ曲が増えたアルバムですが、カルヴィン・キーズの代表作とも言える名作『Proceed With Caution』をジャズファンク好きの方にもぜひおすすめしたいと思います♪
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