2024/08/25
初期のレイ・チャールズのレコーディングで活躍したサックス奏者デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンが50~70年代にリリースしたおすすめのアルバム10選
ソウルフルなサックス奏者デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンのおすすめアルバム10選
レイ・チャールズの初期のアルバムに参加していたサックス奏者デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンの簡単なバイオグラフィー
誕生と音楽的影響
デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマン(以降:ニューマン)は、かの有名なR&Bシンガーのレイ・チャールズの初期のレコーディングに参加していたサックス奏者です。
1933年に米国テキサス州コーシカーナ生まれのミュージシャンです。
その後テキサス州ダラスで育ち、最初はピアノを学び、次にサックスを学んでいます。
ニューマンの名前の間に付けられた”ファットヘッド”とは、学生時代に音楽教師に言われた蔑称から付けられたあだ名が元になっています。
音楽に目覚めた際は、まず初めにルイ・ジョーダンに憧れています。
中学生になると、カウント・ベイシー楽団のサックス奏者バスター・スミスから指導を受けてアルト・サックスを学んでいます。
ニューマンの凄いところは、テナー・サックスやアルト・サックスだけでなく、フルートやバリトン・サックスまでも演奏できることです。
後に「テキサス・テナー」と呼ばれるソウルフルにサックスを演奏するスタイルの人物でもあります。
レイ・チャールズとの出会い
アルト・サックスを修得したニューマンは、教えを受けたバスター・スミスやピアニストのロイド・グレンのレコーディングに参加したり、ブルースマンのローウェル・フルソンにTボーン・ウォーカー等、数多くのミュージシャンのレコーディングに参加するようになります。
1951年になるとローウェル・フルソンのバンドでピアノを弾いていたレイ・チャールズと知り合うことになります。
1954年になると、レイ・チャールズ楽団でバリトン・サックスを演奏するようになります。
ちょうどその時期にテナー・サックス奏者のドン・ウィルカーソンが楽団を脱退したことで、ニューマンはテナー・サックスに転向することとなります。
1957年にリリースされたレイ・チャールズの2作目のスタジオ・アルバム『The Great Ray Charles』から1964年のコンセプト・アルバム『Sweet & Sour Tears 』までの9作品のレコーディングにも参加しています。
リーダーとして
リーダーとしては、レイ・チャールズの力を借りて1958年に初のリーダー作『Fathead: Ray Charles Presents David ‘Fathead’ Newman』を制作しています。(リリースは1960年)
この初リーダー作には、レイ・チャールズがピアノで参加しています。
その後は、2009年に75歳で亡くなるまでに30枚以上のリーダー作を制作しています。
奇しくも前回ご紹介していた同じくレイ・チャールズ楽団の盟友だったハンク・クロフォードも2009年に亡くなっているのは、運命だったのでしょうか!?
今回は数多くあるデヴィッド・ニューマンのリーダー作の中から、50年代のデビュー作から70年代までに渋り10作品をご紹介します。
前回のハンク・クロフォードは、ちょうど60年代に10枚のリーダー作をリリースしていたので都合良かったのですが…ニューマンの方は60年代に6枚(内1枚はオルガン奏者のジャック・マクダフとの双頭リーダー作)しかなかったので、50年代のデビュー作と70年代のいくつかの名作を含んで10枚としました。
ご紹介する順番はリリースされた年代順になります。
それではどうぞ。
50~70年代にリリースされたデヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンのアルバム10選
01.David “Fathead” Newman – 『Fathead: Ray Charles Presents David ‘Fathead’ Newman』
『Fathead: Ray Charles Presents David ‘Fathead’ Newman』は、1960年にリリースされたニューマンのデビュー作です。
リリースこそ1960年なのですが、レコーディングは1958年に行われています。
レコーディングにはレイ・チャールズがピアノで参加しており、アルバムの副題「レイ・チャールズ・プレゼンツ・デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマン」とあるようにレイ・チャールズのお膳立てありきのアルバムとなっています。
自身のニックネームを冠した”Fathead”のみニューマンのオリジナル曲です。
それ以外は、ジャズ・スタンダード曲の”Willow Weep for Me” も含めて、全てレイ・チャールズが歌ったことのある曲ばかりです。
ほぼ「レイ・チャールズ作品集」なのですが、そんな中にあってオリジナル曲の”Fathead”が良い感じで「ジャズ」しており、歌だけでなくピアノ・ソロもいけるレイ・チャールズの腕前を聴く分にも素晴らしい曲です。
当時のブルー・ノート・レコードの作品に収録されていそうなハード・バップ曲なのですが、この曲以外のレイ・チャールズが歌った曲もジャズ・アレンジで演奏しており、R&Bファン以外にもおすすめの作品です。
当時のブルー・ノート・レコードやプレスティッジ・レコードのハード・バップ作品がお好きな方にもおすすめのアルバムです。
02.David “Fathead” Newman – 『Straight Ahead』
『Straight Ahead』は、1961年にリリースされたアルバムです。
本作の録音には参加していませんが、先ほどご紹介していたデビュー作の『Fathead: Ray Charles Presents David ‘Fathead’ Newman』にトランペットで参加していたマーカス・ベルグレイヴが書いた”Batista’s Groove”から始まります。
他にも”Skylark”やガーシュイン作”Summertime”といったジャズ・スタンダード曲も収録されています。
“Summertime”ではフルートも披露しています。
残りの3曲は、全てニューマンの自作曲です。
アルバム・タイトル通りにストレート・アヘッドなジャズを演奏しており、ニューマンの1管のみなので「テキサス・テナー」の実力を集中して聴ける作品です。
バックを支えるメンバーも、今回はレイ・チャールズではなく人気のジャズ・ピアニストのウィントン・ケリーに、ベーシストのポール・チェンバース、そしてドラムにチャーリー・パーシップと、ガチのジャズマンで固めています。
前回ご紹介していたハンク・クロフォードのリーダー作はここまでガチなジャズ作品はなかったのですが、ニューマンの本作はブルー・ノート・レコードやプレスティッジ・レコードのカタログに並んでいても違和感ない本格的なジャズ作品です。
03.David “Fathead” Newman – 『Fathead Comes On』
『Fathead Comes On』は、1962年にリリースされたアルバムです。
ニューマンがお得意のフルートでカヴァーしたレイ・チャールズの”Unchain My Heart”で始まります。
“Cellar Groove”と”Lady Day”の2曲の提供曲を含み、それ以外の4曲がニューマンの自作曲です。
どの曲もブルージーなニューマンの演奏が楽しめます。
時代的に言うと、新主流派と呼ばれるモード・ジャズ組が台頭していた頃なので、こういったスタンダードなジャズがもはや古いスタイルだったのですが、それでも自身が得意とするソウルフル&ブルージーなプレイを前面に出した名演ばかり収録されたアルバムです。
ブルージーなジャズがお好きな方におすすめのアルバムです。
04.David “Fathead” Newman – 『House of David』
『House of David』は、1967年にリリースされたアルバムです。
かなり渋い”I Wish You Love”のカヴァーで始まるアルバムなのですが、本作にはそれまでなかったオルガン・ジャズの編成で録音されています。
ベースはオルガンのフットペダルが担当するので、代わりにギターが参加しているのも特徴です。
ニューマン以外は、オルガンのコシ・ガードナー、ギターのテッド・ダンバー、ドラムのミルト・ターナーというカルテットで録音されています。
1曲目から渋いバラードなのですが、この”I Wish You Love”が素晴らしく、オルガンのロングトーンとジャジーなギターのコンピングをバックにニューマンがまるでレイ・チャールズが乗り移ったかのように魂を込めてテナー・サックスで歌いあげます。
またボブ・ディランの”Just Like a Woman”や、ジャズ・ピアニストのシダー・ウォルトン作”The Holy Land”等も取り上げています。
3曲収録されたオリジナル曲は、どれも軽快なジャズ・ブルース曲で、特に自身の名を冠した”House of David”は、まるでビッグ・ジョン・パットンなんかが演奏していそうなソウル・ジャズに仕上がっています。
オルガンとギターが参加しているため、ソウルフルな楽曲が多く、そういったオルガン・ジャズがお好きな方におすすめしたいアルバムです。
05.David “Fathead” Newman – 『Bigger & Better』
『Bigger & Better』は、1968年にリリースされたアルバムです。
1968年ということを考えれば、もう既にビートルズは解散へ向かっていた時期なのですが…本作では”Yesterday”と”And I Love Her”の2曲を取り上げています。
どちらもポール・マッカートニーが書いた名曲です。
そもそもこの2曲はよっぽどヘタな演奏をしない限り、悪くなるはずはないのですが、本作でも「そりゃ上手いに決まってるでしょ!」と当たり前のように名演を披露しています。
特に1曲目に収録された”Yesterday”は素晴らしく、ニューマンのテナー・サックスはポールになったかのように歌っています。
こおの2曲以外にも、サム・クックの”Ain’t That Good News”と”A Change Is Gonna Come”の2曲を取り上げています。
ウィリアム・S・フィッシャーの”For Sylvia”もフルート演奏で取り上げており、ニューマンのオリジナル曲は”The Thirteenth Floor”のみになります。
オリジナル曲の”The Thirteenth Floor”は、壮大なスピリチュアル・ジャズ風で、まるでユセフ・ラティーフを彷彿させる楽曲です。
カヴァー曲の選曲も悪くないのですが、このオリジナルの出来が素晴らしいだけに、全てこの路線で固めたオリジナルで構成されたスピリチュアル・ジャズ作品として制作しても良かったのかな?とは思います。
06.David “Fathead” Newman – 『Captain Buckles』
ここからは70年代の作品になります。
『Captain Buckles』は、1971年にリリースされたデヴィッド・ニューマンを代表する名盤です。
作風的にはクロスオーバー系のジャズ・ロックが流行っていた時代なので、その路線で制作されています。
ビートルズ時代のジョージ・ハリスンの代表曲”Something”やジャズ・トランぺッターのブルー・ミッチェル作”Blue Caper”にベビー・ゴルソンの演奏で有名なスタンダード曲”I Didn’t Know What Time It Was”の3曲以外はニューマンのオリジナル曲になります。
ブルー・ミッチェルは、本人がこの録音にもトランペットで参加しています。
本作に関してはそのオリジナル曲の出来がよく、カヴァー曲はあくまでオリジナル曲が足りなかったので取り上げたといった感じです。
もちろんこの時代の数多くのジャズ・ファンク作品で取り上げっれていた人気曲の”Something”の演奏は他を凌駕するほど素晴らしいのですが…本作に関してはニューマンのオリジナル曲がメインのアルバムです。
1曲目のタイトル曲”Captain Buckles”と”The Clincher”の2曲が特に素晴らしく、どちらもかっこいいジャズ・ロック曲です。
またフルートで演奏した”Joel’s Domain”もこの時代に活躍したボビー・ハンフリーを彷彿させる内容です。
アルバム最後の”Negus”も軽快なジャズ・ファンク曲でギターで参加したエリック・ゲイルが珍しくコーラス・エフェクター(アンプ内蔵のものかな?)を使ってバッキングを弾いています。
ちなみに本作にはこういったジャズ・ロック/ジャズ・ファンク系が得意なバーナード・パーディがドラムで参加しています。
個人的にはこの『Captain Buckles』がデヴィッド・ニューマンの最高傑作だと思っています。
ジャズ・ファンクがお好きな方におすすめの名作です♪
07.David “Fathead” Newman – 『Lonely Avenue』
1964年にレイ・チャールズの元を離れたニューマンでしたが、1970~1971年には短期間ですがレイ・チャールズの元に復帰しています。
そこで思い出したかのようにレイ・チャールズが歌った『Lonely Avenue』をアルバム・タイトルに掲げて、その曲もインスト・カヴァーしています。
『Lonely Avenue』は、1972年にリリースされたアルバムで、前作『Captain Buckles』以上にジャズ・ファンクなアルバムとなりました。
ジャズ・ファンクの申し子とでも言うべきロイ・エアーズがヴィブラフォン及びピアノ/オルガンで参加しており、コーネル・デュプリーがギターで参加しているというこの面子だけでも想像できそうなジャズ・ファンク作品です。
そのロイ・エアーズが書いた激ファンク曲”Fuzz”では、この時代だからこそ聴けるコーネル・デュプリーのワウギターが「チャカポコ♪」鳴った曲です。
80年代以降はワウペダルを使用しなくなっていますからね…。
この曲ではバッキングのみですが、レイ・チャールズのカヴァー”Lonely Avenue”ではワウを使ったギター・ソロも弾いています。
コーネル・デュプリーのファンにもおすすめしたいアルバムです♪
ニューマンのオリジナル曲は、壮大な”Symphonette”のみで、残りはカヴァー曲や提供曲にゴスペル・トラディショナルの”Precious Lord”がアルバムを締めています。
前作『Captain Buckles』と並んで、ジャズ・ファンク好きな方におすすめのアルバムです。
08.David “Fathead” Newman – 『The Weapon』
前作『Lonely Avenue』に引き続き1973年にリリースされた本作『The Weapon』は、コーネル・デュプリーが参加したアルバムで、こちらにはスタッフでお馴染みのリチャード・ティーや、コーネルの盟友チャック・レイニーにバーナード・パーディまでもが参加した本格的ジャズ・ファンク作品です。
コーネル以外にも同じくテレキャスター使いのデヴィッド・スピノザも参加しており、これだけの腕利きの面子が集まって悪い作品になるわけがありません!
楽器陣が増えたことで、過去2作品よりも更にブ厚いサウンドになっており、ニューマンのオリジナル曲”Missy”からそのサウンドの圧に押される勢いです。
ローリング・ストーンズの名バラード曲”You Can’t Always Get What You Want”のカヴァーも目を引きますが、それよりも”Yes We Can Can”と”Happy Times”に”Freedom for the Stallion”といったアラン・トゥーサンの曲を3曲も取り上げているのが印象的です。
特に”Happy Times”にはDr.ジョンが参加しており、ホンキートンクなピアノを披露してくれています。
ジャズ・ファンク好きはもちろん、アラン・トゥーサンやミーターズ等のニュー・オーリンズ・ファンク好きにもおすすめしたいアルバムです。
09.David “Fathead” Newman – 『Newmanism』
かっこいいジャズ・ファンクなアルバムが3作品続いた後となる1974年にリリースされた本作『Newmanis』は、少しファンク度は抑えられたバラード中心のアルバムになります。
前3作品と違いギタリストが参加していないためか、ファンキーなカッティングはなく、ロイ・エアーズのヴィブラフォンも美しい音色を奏でる方に集中しています。
ニューマンのオリジナル曲は、渋いバラード曲の”Baby Rae”と、重厚なスピリチュアル・ジャズ”Newmanism”に”Brandy”の3曲のみです。
前3作品と比べると地味な印象を受けるアルバムです…。
10.David “Fathead” Newman – 『Front Money』
来るディスコブーム時代に、トラディショナルな”Amazing Grace”を1曲目に持ってきた原点回帰ジャズ作品『Front Money』は、1977年にリリースされました。
“Amazing Grace”と”So Fine – So Fine”には、アーノルド・ブレアがコーラスで参加しており、ニューマンのアルバムには珍しく「人間の声」が聞こえてくる作品です。
流石にソウルフルな演奏を得意とするニューマンだけあって”Amazing Grace”のようなトラディショナルはお得意なようです。
オリジナル曲は、”Sneakin’ In”と”Still Hard”のみですが、どちらも悪くない出来です。
アルバム最後に収録されたロジャー・ボイキン作の”Suki Duki”は、ボイキン自らがオートワウを使ったギター・ソロを披露するジャズ・ファンク曲です。
以上、【初期のレイ・チャールズのレコーディングで活躍したサックス奏者デヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンが50~70年代にリリースしたおすすめのアルバム10選】でした。
今回初めてデヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンを知ったという方も、これからデヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンを聴いてみたかったという人も、ぜひこのブログ記事を参考に各アルバムを聴いてみて下さい。
ソウルフルなジャズがお好きな方や、ソウルフルなジャズがお好きな方に特におすすめです♪
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