2018/12/25
J.B.ルノアの従兄弟でもあるブルースギタリスト、バイザー・スミスの正統派ブルース・アルバム 『All Night Long』を聴こう♪
J.B.ルノアの従兄弟でもあるブルースギタリスト、バイザー・スミス
ミシシッピー州モンテセロ生まれの現役ブルースマン!
今回ご紹介するブルースギタリストのバイザー・スミスは、1932年ミシシッピー州モンテセロ生まれのブルースマンです!
前回ご紹介していたバスター・ベントンと同い年で、その前にご紹介していたロング・ジョン・ハンターの1つ下です。
シチューの中にクモが入ってる⁉バスター・ベントンの『Spider In My Stew』を聴こう♪
豪快なテキサス系ブルースギタリスト!ロング・ジョン・ハンターの『Border Town Legend』を聴こう♪
しかしその2人とは違い86歳になった今でも健在です!
バイザー・スミスというブルースマン!
1932年にミシシッピー州モンテセロで7人兄弟の6番目として生まれたバイザー・スミスは、1950年代半ばにシカゴに移住しています。
当初は小さなジャズ・コンボでベースを担当していたようなのですが、結局オーティス・ラッシュのバンドでリズム・ギターを担当するようになりました。
その後、1960年代の初めに真剣にブルース・ギターに取り組むようになったようです。
その際に従兄弟のJ.B.ルノアやロバート・ロックウッド・Jr.や、僕も好きなハウリン・ウルフの右腕ヒューバート・サムリンから影響を受けたようです。
今回は、そんなバイザー・スミスが1997年にリリースした正統派ブルース・アルバム 『All Night Long』をご紹介します。
Byther Smith – 『All Night Long』
01.Cried Like a Baby Child
02.I’m Your New Lover
03.Walked All Night Long
04.Hey Mr. Dee Jay
05.Look Over Your Shoulder
06.Live on This Man’s Name
07.Something’s Wrong With This Picture
08.What Did I Do?
09.Mother You Say You Don’t Like the Black Colors
10.Daddy’s Gone
11.Daddy, You Got a Son
12.Is He White or Is He Black?
13.Thinking Real Hard
Personnel:
Byther Smith – Vocals, Guitar Sonny Seals – Tenor Saxophone
Malachi Thompson – Trumpet
Steve Berry – Trombone
Pat Hall – Keyboards
Jeff Jozwiak – Rhythm Guitar
Greg McDaniel – Bass
Tino Cortez – Drums
アルバムの内容
1曲目”Cried Like a Baby Child”から正統派のモダン・シカゴ・ブルース調の曲が始まります!
ギターは過去にバイザー・スミスがリズム・ギターを担当していたオーティス・ラッシュや影響を受けていたヒューバート・サムリンに近い感じがしますが、歌い方は叫ばなくなったバディ・ガイ風です。(笑)
声を伸ばす時に少しシャガレ気味になるのがバディ・ガイに近い気がします。
しかしそこまで喉は強くないようで、迫力には欠けます。
と言っても、謎のパワーを持つ超人の多いブルース界だからこそ弱く感じるだけなんですがね。(笑)
音色こそ違いますが、フレージングはヒューバート・サムリンぽかったりします。
2曲目”I’m Your New Lover”は少しファンキーなバックの演奏が楽しげな曲です。
この曲のイントロで長めに弾いているギターフレーズは、メジャー・ペンタトニックを基本にしたモロにB.B.キング風のフレージングです。
歌詞の中にもB.B.キングやマディ・ウォーターズやバディ・ガイなんかが登場します。
ギターソロもフレージングだけでなく音色までB.B.キングを意識した感じです。
3曲目”Walked All Night Long”は、今度はオーティス・ラッシュ風の曲調です!
バックでは華やかなホーン隊の音が鳴り、ギターソロ時にはバックの演奏陣のブレイクも入れたりしています。
4曲目”Hey Mr. Dee Jay”は、キーボードのイントロから軽快なシャッフルで始まる曲です。
なんとなく呑気な歌声が従兄弟のJ.B.ルノアのような……。
5曲目”Look Over Your Shoulder”は、バディ・ガイ風のマイナー・スロー・ブルースです。
ギターソロだけでなくシャウトする歌声もバディ・ガイのように聞こえます。
6曲目”Live on This Man’s Name”は、またしてもB.B.キング風です。
イントロのギターフレーズなんかそのままですね。(笑)
歌詞に至ってはローウェル・フルソン作でB.B.キングの得意曲だった”Every Day I Have The Blues”とそっくりです。
7曲目”Something’s Wrong With This Picture”は、5曲目ほどは濃いくないスロー・ブルースです。
バックを支えるオルガンとホーン隊のユニゾンフレーズが独特のグルーヴ感を醸し出しています。
8曲目”What Did I Do?”は、派手なホーン隊に導かれバイザー・スミスが複音も混ぜたファンキーなカッティングをする曲です。
歌が始まる前のイントロだけで1分近くジャムってます。
まるで映画とかでヒーローが登場する前に流れそうな溜にためたイントロです。(笑)
9曲目”Mother You Say You Don’t Like the Black Colors”は、長い曲名ですが……マリアッチ風のアコーディオンの音色が楽しい曲です。
軽快な曲調はすごく良いのですが、バイザー・スミスのモッチャリした歌声に合ってないような……。(笑)
ギターソロはなくアコーディオンがちょっとしたソロを弾きます。
アルバム中この曲だけが少し浮いて聞こえます。
10曲目”Daddy’s Gone”は、ファンキーなカッティングがバックで鳴るマイナー・ブルースです。
この作品でバッキングを務めるのは、ジェフ・ジョズウィアクというギタリストのようです。
11曲目”Daddy, You Got a Son”は、ピアノが活躍するノリの良いシャッフル曲です。
これまたギターソロはありません。
代わりにピアノがノリの良いソロを弾きます。
12曲目”Is He White or Is He Black?”は、「ライ・クーダー?」と思ってしまいそうなテックスメックス風の曲調です。
この曲ではメジャー・ペンタトニックを中心にしてギターソロを弾いています。
そしてアルバム最後の収録曲13曲目の”Thinking Real Hard”は、これまたイントロで1分間ギターを弾いてから歌が始まるミドルテンポのブルース曲です。
以上、【バイザー・スミスの正統派ブルース・アルバム 『All Night Long』】のご紹介でした。
どうしてもどの曲を聴いても「○○風」と言ってしまいそうになるのですが……それはバイザー・スミスのオリジナリティーの低さからくると感じます。
どうしてもB.B.キングやバディ・ガイにオーティス・ラッシュのような圧倒的な個性には遠く及ばない……と言ったところでしょうか。
しかしこれは何もバイザー・スミスに限ったことではないですからね。
B.B.キングを始祖とする、スクィーズ・ギター系のモダン・ブルースマンは、どうしても強烈な個性を持ったバディ・ガイやオーティス・ラッシュとかフレディ・キングにマジック・サム風になってしまうのは仕方のないことだと思います。
そういうのを考慮しないで聴いてみると、決してヘタなブルースマンではないですし、正統派のモダン・ブルース作品として楽しめるアルバムです♪
1990年代に作られた正統派のモダン・ブルースが聴けるおすすめの作品です!(マリアッチ風やテックスメックス風も隠し味に……)
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