2021/03/27
グラント・グリーンも参加したベイビー・フェイス・ウィレットのブルーノート盤2作品
グラント・グリーンも参加したベイビー・フェイス・ウィレットのブルーノート盤2作品をご紹介します。
ソウル・ジャズの名手ベイビー・フェイス・ウィレットを聴こう!
僕の尊敬するジャズ・ギタリストのグラント・グリーンについては、こちらのブログでもよく取り上げているのですが、今回もグラント・グリーン関連のブログ記事になります。
ブルージーやソウルフルなジャズ・ギターを得意とするグラント・グリーンは、オルガン奏者との相性が良く、様々なオルガン奏者を共演をしています。
その中でも、以前このブログでもご紹介していたビッグ・ジョン・パットンとの相性は抜群でした。
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しかしビッグ・ジョン・パットンと共演するよりも前に、グラント・グリーンは自身の初リーダー作『Grant’s First Stand』でベイビー・フェイス・ウィレットというオルガン奏者とアルバムを制作しています。
ベイビー・フェイス・ウィレットは、1933年9月11日に米国ルイジアナ州ニューオーリンズに生まれ、その後は米国アーカンソー州リトル・ロックで育ったバックボーンを持つオルガン奏者です。
1971年に亡くなっているので、ジャズ・ファンク全盛時代に彼の演奏を聴くことが出来ないのですが、ソウル・ジャズの名作をいくつか残しています。
ただ作品数が少ないのが、なんとも残念なことではあります…。
残された録音は、ルー・ドナルドソンの『Here ‘Tis』とグラント・グリーンの『Grant’s First Stand』にサイドマンとして参加した他に、リーダー作を4作品分残しているのみです。
今回は、そんなベイビー・フェイス・ウィレットというオルガン奏者が名門ブルーノート・レコードに残したリーダー作をご紹介します。
その2作品共に、どちらもグラント・グリーンがサイドマンとして参加しているのが目玉となっております。
Baby Face Willette – 『Face to Face』
1961年1月30日に録音されたベイビー・フェイス・ウィレット初のリーダー作『Face to Face』は、その2日前に録音されたグラント・グリーンの初リーダー作『Grant’s First Stand』と対になるようなアルバムです。
どちらのアルバムにも、同じドラム奏者のベン・ディクソンが参加しているのですが、『Face to Face』の方には更にテナー・サックス奏者のフレッド・ジャクソンも参加しています。
全6曲の収録曲は、全てベイビー・フェイス・ウィレット自身のオリジナル曲になります。
曲名通りに小気味良くスウィングする1曲目”Swingin’ At Sugar Ray’s”を聴けば分かるように、本作は明るく楽しいオルガン・ジャズでまとめられた作品となります。
グラント・グリーンはバッキングを弾かない…などと言われたりもするのですが、それは自身をサックス奏者と同等の存在として録音を行ったリーダー作に於いてのイメージだけであって、本作のようにオルガン奏者のサイドマンとして参加した際は、とてもリズミカルなバッキングを弾いているんです。
この演奏を聴いて分かるように、グラント・グリーンのバッキングのリズム感は素晴らしく、半端なくバッキングが上手いんですよね。
もちろんベイビー・フェイス・ウィレットに続くソロイスト2番手として弾くギター・ソロも、つい先日デビューしたばかりの新人ギタリストとは思えぬような堂々とした演奏です。
さっそくレコードの針が壊れたかのような、しつこい繰り返しのシーケンス・フレーズも披露していますね。
この辺は、ブルースに於けラン奏法からの影響でしょう。
グラントの次にはフレッド・ジャクソンのイナタいサックス・ソロが始まります。
ベイビー・フェイス・ウィレットと同じく、参加作品数も多くないフレッド・ジャクソンなのですが、こういったスウィンギーなジャズでソウルフルなソロを吹く腕前はなかなかのものです。
曲の最後には、ベン・ディクソンを除いたメロディー楽器3名による4バースのソロ回しもあります。
このメンバー全員の相性の良さを伺うことが出来る素晴らしい演奏ですね。
2曲目”Goin’ Down”は、ベッシー・スミスの”Tain’t Nobody’s Bizness If I Do”を思わせるスローなブルース曲です。
教会音楽を基礎としたベイビー・フェイス・ウィレットとグラント・グリーンのソロが絶品です♪
次の3曲目”Whatever Lola Wants”は、『Grant’s First Stand』で取り上げられていたジョー・ヤングとバーニス・ペトケレが1932年に書いた”Lullaby Of The Leaves(木の葉の子守唄)“を彷彿させるマイナー調のナンバーです。
フレッド・ジャクソンのどこまでも渋いサックス・ソロを堪能することが出来ます。
そして4曲目”Face To Face”が本作の一番の聴き所となります。
この曲は、ザ・ニュー・マスターサウンズのギタリストであるエディー・ロバーツが過去に在籍していたオルガントリオ『The Three Deuces』で取り上げていた楽曲でもあります。
イントロからテーマ・メロディーまで、まさにソウル・ジャズの名曲と言って良いイナタい楽曲です。
ベイビー・フェイス・ウィレットとグラント・グリーン、どちらもスタッカートを効かせたシングル・トーンを中心としたソウルフルなソロを披露しています。
続く5曲目”Somethin’ Strange”も”Face To Face”と同じように勢いよいイントロで始まる曲ですが、こちらの方は再びマイナー調の渋いナンバーです。
そしてアルバムの最後は、ナット・アダレイ作の”Work Song”に似たようなジャズ・ブルース曲の”High ‘n Low”で締められています。
アルバム全編を通して、ゴスペルから強い影響を受けたソウル・ジャズが展開されるので、参加メンバーの名前を見て想像する音楽性の期待を裏切らない名作に仕上がっています。
ソウル・ジャズがお好きなら絶対に聴いておきたい名作です!
Baby Face Willette – 『Stop and Listen』
前作『Face to Face』から4ヶ月後の1961年5月22日に録音されたベイビー・フェイス・ウィレットのリーダー2作目にしてブルーノート・レコード最終作となった『Stop and Listen』は、いきなりカヴァー曲から始まります。
「柳よ泣いておくれ」の邦題で有名なジャズ・スタンダード曲の”Willow Weep for Me”から始まる本作には、フレッド・ジャクソンは参加しておりません。
ベイビー・フェイス・ウィレットとグラント・グリーンにベン・ディクソンというオルガン・トリオによるシンプルな演奏が続きます。
小気味良いスウィング曲で勢いよく始まった初リーダー作と違って、幾分落ち着いた曲から始まるせいか地味な印象を受けるアルバムでもあります。
その他にも、マック・ゴードン&ハリー・ウォーレン作の”At Last”やナット・アダレイの”Work Song”のカヴァーも収録されています。
それ以外の4曲は全てベイビー・フェイス・ウィレットのオリジナル曲となるのですが、6曲目の”Soul Walk”なんかはアート・ブレイキー&ザ・メッセンジャーズが取り上げたベビー・ゴルソン作の”Blues March”と酷似しています。
というか、もはやパクリのレベルです…。
他のオリジナル曲にしても、勢いの良い”Jumpin’ Jupiter”なんかは”Face To Face”の焼き直しのような曲調で、どうしても1stリーダー作と比べるとオリジナリティが欠如してしまったように感じられます。
本作録音後のベイビー・フェイス・ウィレットは、ブルーノート・レコードから離れ、シカゴのチェス・レコード傘下にあるジャズ・レーベルのアーゴと契約し、より下世話なソウル・ジャズ作品を2枚残しているのですが、なんとも物足りないままブルーノート・レコードを離れていったのが残念ではあります。
“Jumpin’ Jupiter”にしても、一番の聴き所は恐ろしいほどグルーヴするグラント・グリーンのギター・ソロの方ですからね…。
ジミー・スミスやロニー・スミスなんかと比べると、なんとも物足りないオルガン奏者に感じてしまいますが、しかしソウル一辺倒な男気溢れる熱い演奏を聴くと、もっと作品を残して欲しかったな…と悔やまれます。
以上、【グラント・グリーンも参加したベイビー・フェイス・ウィレットのブルーノート盤2作品】でした。
今回ご紹介した2作品は、ソウル・ジャズ好きならマスト・アイテムですよ!
オルガン・ジャズ好きのみならず、グラント・グリーン好きの人もぜひ!
というか、むしろ初期のグラント・グリーンのギター・ソロを聴くことが出来るというのが目玉のアルバムでもあります。
“Face To Face”や”Jumpin’ Jupiter”のようなアップテンポの曲で鬼のような凄まじいグルーヴ感でギターを弾きまくるグラント・グリーンは、本当に素晴らしいです♪
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