
2017/12/31
【フリージャズの名盤!】ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンの衝撃!
フリージャズの名盤『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン』
オーネット・コールマンの衝撃!
フリージャズと言えば、僕が真っ先に思いつくのがオーネット・コールマンです。
エリック・ドルフィーやセシル・テイラーにアルバート・アイラーにアーチー・シェップにドン・チェリー……フリージャズが好きなら避けては通れないような有名なフリージャズの名手はたくさんいます。
中にはジュゼッピ・ローガンのようにマニアックなサックス奏者もいたりします。
しかしやはりフリージャズの象徴として「ジャズの革新者」であるオーネット・コールマンが一番印象に残ります。
というのもこの2枚のアルバムの素晴らしさに拠るところが大きいんです。
名盤ゴールデン・サークルまでの経緯
オーネット・コールマンは1950年代頃からロサンジェルスでカルテット編成でジャズバンドをやっていました。
既にその頃から「メロディー」や「リズム」に「ハーモニー」という音楽を構成する最も重要な三大要素に捕らわれないような文字通り「自由」なジャズを演奏していたようです。
しかし一般のジャズリスナーにはその革新的な演奏は受け入れられずにいました。
そんな中、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のピアノ奏者のジョン・ルイスはオーネット・コールマンの才能にいち早く注目していました。
そしてジョン・ルイスの紹介で、オーネット・コールマンはニューヨーク・デビューを果たし、耳の肥えたジャズ評論家たちを衝撃的な演奏で魅了しました。
しかしその成功を利用して金を儲けようと企む連中がオーネットに群がり、そんな音楽よりも利益を優先するような状況を嫌い1962年12月のタウンホール・コンサートを最後に演奏家としての活動休止をします。
この頃からブルーノート・レーベルの創設者であるアルフレッド・ライオンはオーネットに目をつけていたようです。
この1962年12月のタウンホール・コンサートも作品として発表する準備までしていたようで、テスト盤のプレスも行っていたようです。
以下にアルフレッド・ライオンのオーネット・コールマンに対する発言を引用します。
「オーネットのことを凄いと言い始めたのはジャッキー・マクリーンだった。確かにその通りで、それまでに聴いたこともないプレイだった。私も人の真似ではないものを求めていた。そこでオーネットの作品を作ろうとしたんだが、その矢先に彼は音楽をやめてしまった。だからカムバックした時は、すぐにレコーディングしようと思った。」
これほどまでにライオンはオーネットに魅了されていたようです。
引退からカムバック
その後、約3年後の1965年1月のNYのヴィレッジヴァンガードで突如として復活ライヴを行ったのをきっかけに、同年の8月から長期のヨーロッパ・ツアーを行います。
そのツアーの12月スウェーデンのジャズ・クラブで行われた熱いライヴ録音がこの2枚のアルバムになります。
ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン
Ornette Coleman – 『At the Golden Circle Vol.1』
01.Announcement
02.Faces and Places
03.European Echoes
04.Dee Dee
05.Dawn
06.Faces and Places(Alternate take)
07.European Echoes(Alternate take)
08.Doughnuts
BN:4224
Personel:
Ornette Coleman — alto saxophone, violin, trumpet
David Izenzon — double bass
Charles Moffett — drums
Recorded: Live at the Golden Circle (Gyllene Cirkeln) in Stockholm on December 3 & 4, 1965
Ornette Coleman – 『At the Golden Circle Vol.2』
01.Snowflakes and Sunshine
02.Morning Song
03.The Riddle
04.Antiques
05.Morning Song(Alternate take)
06.The Riddle”(Alternate take)
07.Antiques (Alternate take)
BN:4225
Personel:
Ornette Coleman — alto saxophone, violin, trumpet
David Izenzon — double bass
Charles Moffett — drums
Recorded: Live at the Golden Circle (Gyllene Cirkeln) in Stockholm on December 3 & 4, 1965
『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン』主な聴き所
やはりまずは『Vol.1』の最初の曲です。
“Faces And Places”のイントロで、いきなりオーネットのサックスが咆哮します!
ヨレたメロディーなのに勢いがあります。
このイントロで引き込まれた後は、オーネットの奔放なアドリヴソロが始まります。
ピアノやギターなどのコード楽器がない「ハーモニー」が不在のまま、ウッドベースとドラムのリズム隊だけをバックにまるで「喋っている」かのような自由奔放なサックスソロを吹き続けています。
時に西洋音楽からかけ離れたようなエキゾチックなメロディーを挟みつつ勢いを保ったまま吹き続けます。
約11分38秒あるこの曲で途中の軽いドラムブレイク以外はずっとオーネットはアドリヴでソロを吹き続けています。
ちなみにCD盤のボーナストラックの別テイクではベースソロがあります。
しかしオーネットのソロが冴えているのはやはりオリジナルの選曲に入っていた先のバージョンです。
続くワルツっぽいリズムが軽快な”European Echoes”も素晴らしいです。
途切れ途切れにテーマメロディーを吹くオーネットに合わせてウッドベースもアルコ奏法とピチカート奏法をうまく使い分けています。
この曲では良い具合にベースソロが挟まれています。
CD盤のボーナストラックの別バージョンと聴き比べても面白いです。
アドリヴソロだけでなく、テーマメロディの調子までその場のアドリヴで変化していっているかのようです。
こんなに創造性に溢れた演奏を毎夜のように行っていたとは、恐るべきジャズトリオですね!
続く軽快な曲調の”Dee Dee”も、始まりこそ聴きやすいテーマメロディなのですがソロにはいるとまた自由奔放に吹き始めます。
先の2曲に負けないインパクトのある曲です。
次の”Dawn”では曲名の通り「夜明け」を表すかのようにゆったりとした曲調です。
ところどころウッドベースのアルコ奏法が不気味に響きます。
オーネットの「夜明け」はただ事では済まなさそうですね。
そして『Vol.1』のCD盤で最後を飾るボーナストラックの”Doughnuts”も勢いのある素晴らしい演奏です。
特にチャールス・モフェットのドラムが生き生きとしていて個人的にはすごく好きな曲なのですが、最初にレコードで発売された際はこの曲がボツになっていた理由が謎に感じたりもします?
もしかして主役のオーネットよりもドラムの方が目立って聴こえるからかな?
よくわかりませんが、こういった素晴らしい音源をCD化のオマケとして聴くことが出来るのは良いことですね♪
さて、『Vol.2』です。
『Vol.2』はさっそく驚きの曲で始まります。
1曲目の”Snowflakes And Sunshine”でオーネットはサックスではなくヴァイオリンを弾いています!
もちろんクラシック音楽のように美しくメロディーを奏でるのではなく不協和音を奏でた自由過ぎる演奏です。
もはや聴く人によっては不快な騒音です。
ウッドベースのデヴィッド・アイゼンソンもオーネットに負けじとアルコ奏法で「ギコギコ」やっちゃってます。
この不気味な「ギコギコ」対決が聴き所です。
もしかしたら初めてこういったフリー演奏を聴いたら「なんだこれ?これのどこが音楽なんだよ!」って思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これ…まだマシな方です。
まだ初期のフリージャズなので、今聴くとこの演奏なんて聴きやすい方です。
それにもっと過激なフリー演奏に慣れた耳でこの演奏を聴くと…あら、不思議?芸術的なメロディーが聴こえてくるじゃあ~~りませんか!
要は慣れです。
僕も20代の頃に初めて聴いた時は衝撃的でした!
「なんだこれ??下手くそなのか??」って。
若い未熟な感性ではなかなかこういった音楽を聴き入れる心の余裕はありませんでした。
しかしその後、様々なフリー演奏を聴いていくことで慣れていきました。
それにオーネットがこの時代にいかに革新的で新しい音楽を創造してたのか?を考えると驚愕します。
ちなみにこの曲では、ヴァイオリンだけでなくトランペットまで吹いています。
盛りだくさん過ぎますよね!
まさに「雪の結晶に反射する日光」の如く才能が溢れ出ていってるかのようです。
そして2曲目の”Morning Song”は、オーネット流のバラードでしょうか。
優しくテーマメロディーを奏でています。
激しい曲調の多いこのライヴ盤なのですが、”Morning Song”では曲全体的にゆったりとしています。
しかしウッドベース・ソロで不気味なアルコ奏法が登場します。
一筋縄でいかないのがこのトリオです。
さて、ゆったりとして曲の後は出だしから勢い満点の”The Riddle”が始まります。
曲名通りに「不可解な」メロディーにテンポ…
とにかく3人の勢いのある演奏が聴けます。
そして最後に”Antiques”という曲を挟みCD盤の別テイクのボーナストラック3曲が収録されて、この2枚のライヴ盤は終わりを迎えます。
オーネット・コールマンの最高傑作
以上でこの2枚の歴史的名盤を聴き終えました。
ブルーノート・レーベルを代表するフリージャズの名盤であるこの2枚のライヴ盤は、1966年に発売されると同時に大きな評判を得たようです。
かつては、オーネットの自由過ぎるスタイルを拒否した頭の固い識者たちも、この成熟したトリオの演奏を聴いて拍手喝采を送ったようです。
このアルバムは数あるフリージャズのアルバムの中でも最も「フリージャズ」という音楽性を表した作品だと思います。
オーネットの作品群の中でもやはり1番素晴らしい作品だって個人的には思います。
オーネットの最高傑作はこの『ゴールデン・サークル』の2枚のライヴ盤ですね。
ぜひ未聴の方は聴いてみて下さい。
終わりに
さて、2017年度の「Music」のカテゴリー最後の記事はフリージャズでした。
しかもフリージャズというジャンルを代表する歴史的名盤にしました。
それに季節的にもちょうど良い雪景色のジャケットですからね。
このジャケットのデザインがすごく好きです。
このアルバムはまずジャケ買いして中身を聴いて衝撃を受けてから徐々にハマっていきました。
僕はこのオーネット・コールマンの『ゴールデン・サークル』の2枚と、以前ご紹介していたエリック・ドルフィーの『ファイヴ・スポット』の3枚のアルバムがフリージャズでは最も好きです。
この5枚のアルバムを聴いてフリージャズが好きになりました。
10代後半からジャズを聴き初め、20代前半の頃にオーネット・コールマンやエリック・ドルフィーに衝撃を受けました。
まぁその前にコルトレーンで体験はしていたんですけれども。
ジャズに目覚めたきっかけが17歳の頃に初めて映像で観たトレーンだったので、僕の中ではトレーンは神格化してしまっていて…何故か聴き辛さをあまり感じませんでした。
『アセンション』はすんなり聴けたのですが、その後聴いた『ゴールデン・サークル』や『ファイヴ・スポット』にはなぜか衝撃を感じました。
この辺は個人差もあると思うのですが、僕にはオーネットやドルフィーはトレーンよりも衝撃的に聴こえました。
まぁそもそもオーネットとドルフィーの影響でトレーンはフリージャズの方向に向かっていったのですからね。
僕の感覚としてはトレーン→ドルフィー→オーネットの順番で、まだ若く多感な頃に聴いたので後に聴いたものの方がより衝撃的だったのかもしれません?
とにかく2017年度の締めはフリージャズでした。
来年はまた別ジャンルで締めくくれたらな……と思いますので、ぜひ今後ともこのブログを見に来てください。
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