2018/05/24
アーシーなテナーサックス奏者のフレッド・ジャクソン唯一のリーダー作『Hootin’ ‘n Tootin’』を聴こう!
B.B.キングとも共演経験のあるフレッド・ジャクソン唯一のリーダー作
ブルーノート・レーベルのオルガンジャズは特別!?
BN(ブルーノート)レーベル以外のオルガンジャズ系はどうもしっくりこないんです……。
その理由はブルース魂が欠けているからだと思います。
BNレーベルの創設者であったアルフレッド・ライオンはジャズと同じくらいにブルースが好きでした。
だから彼の下で作品を制作する際は必ずジャズブルースを1曲は録音しなくてはいけませんでした。(他にも条件があって必ず自作曲を持ってくること。スタンダードのカヴァーだけではダメでした。)
しかしそれこそがBNレーベルの作品の特長であり、どの作品も素晴らしいものに仕上がってる理由だと思います。
例として、サックス奏者フレッド・ジャクソンの1962年の作品『Hootin’ ‘n Tootin’』から”Southern Exposure”という曲です。
イントロのウィリー・ジョーンズのブルージーなギターが咽び泣いています……。
こういったブルースの曲があるからBNレーベルのオルガンジャズ系が好きなんです。
そんなわけで今回は、R&Bからの影響を感じさせながらもブルージーでいて、しっかりとしたジャズフィーリングを持ってソウルフルにサックスを演奏するフレッド・ジャクソンの唯一のリーダー作をご紹介します。
Fred Jackson – 『Hootin’ ‘N Tootin’』
01.Dippin’ in the Bag
02.Southern Exposure
03.Preach Brother
04.Hootin’ ‘n Tootin’
05.Easin’ on Down
06.That’s Where It’s At
07.Way Down Home
BN:4094
Personnel:
Fred Jackson – tenor saxophone
Earl Van Dyke – organ
Willie Jones – guitar
Sam Jones – bass (tracks 8–14)
Wilbert Hogan – drums
Recorded February 5, 1962.
アメリカ南部の地、ジョージア州アトランタ生まれのフレッド・ジャクソンは、1950年代の前半にリトル・リチャードやロイド・プライス等のR&Bからの影響が濃いロックンロール系のバンドで演奏をしていました。
南部出身の黒人サックス奏者だけあってか、力強くホンクするR&Bやブルースに根差したようなプレイスタイルです。
またその後、チャック・ウィリスのバンドで音楽監督を務めたり、あのB.B.キングともセッションを行っています。
そうした経験から彼のアーシーなプレイスタイルは確立していったのでしょう。
BNレーベルで録音するチャンス!
そんな矢先、突如として当時売り出し中だったオルガン奏者のベイビーフェイス・ウィレットの1961年の名作『Face To Face』にグラント・グリーンと共に起用されることとなります。
その時の演奏が認められて、BNレーベルでリーダー作を吹き込むチャンスを得ます。
1962年に吹き込まれたこのフレッド・ジャクソン唯一のリーダー作『Hootin’ ‘N Tootin’』には、この吹込みの直後にモータウン・レーベルの専属ミュージシャンになるアー・ル・ヴァン・ダイクがオルガンで参加しています。
また有名ではないですが、とてもブルージーなギター演奏をするウィリー・ジョーンズの参加もこのアルバムをよりダウン・トゥ・アースなものにしています。
アルバムの内容は?
収録曲の全てがフレッド・ジャクソンの自作曲です。
そのほとんどの曲がマイナー・キーのブルース調の曲ばかりで統一感はあるものの、似たような曲ばかりでマンネリに聴こえてしまう危うさはあります……。
まぁそれがブルースというジャンルの特徴でもあるのですが……。
しかし普段ブルースを中心に聴いていて、ジャズはあまり好きではないな?という方でも、このアルバムからなら聴きやすいのでは?と多少感じさせます。
#1の”Dippin’ In The Bag”は、サックスとギターがユニゾンでイナタく弾くテーマメロディーが印象的です。
フレッド・ジャクソンのテナーソロも、ブルージーで渋くしっかりとバックのオルガンのハーモニーに合った音使いをしています。
続くウィリー・ジョーンズのギターソロは、どこかグラント・グリーンを彷彿させるようなブルースとジャズの間を彷徨う様な演奏です。
ただ少し迫力に欠けるのが難点です……。
グラントとこのウィリー・ジョーンズの大きな違いは、ダイナミクスですかね。
グラントは「ここは聴かせ所!」という部分で迫力のあるフレージングをするのですが、このウィリー・ジョーンズはフレーズこそ間違っていないもののどこか自信なさげに弾いてる感が否めません……。
そういった点が、彼がグラント・グリーンのような偉大なギタリストになれなかった原因だとも思います。
続く#2の”Southern Exposure”は冒頭でもご紹介した通りです。
イントロのブルージーなテーマが堪りません♪
フレッド・ジャクソンのゆったりとしていてダーティーなサックスソロは南部アメリカという土地を思い起こさせます。(行ったことはなくっても……笑)
ソロの途中、3分頃の繰り返しフレーズの後に、3分9秒辺りから3分12秒まで続くリズミカルな連発フレーズは、「スラップ・タンギング」と言われるサックスのテクニックです。
まるでベースのスラップ奏法みたいでもあります。
そして#3の”Preach Brother”は、マイナー・キーながらも勢いのある曲調です。
オルガンのフットベースによるウォーキングがアーシーな雰囲気を盛り上げます。
まるで昔ながらのハードボイルドな刑事ものの映画やドラマに使われそうな曲調ですね。
タイトル曲の#4″Hootin’ ‘N Tootin'”は、アップテンポのノリの良い曲調です。
続く#5の”Easin’ On Down”は、ミディアムテンポの渋いジャズブルース曲です。
フレッド・ジャクソンが一番輝くのはこういったゆったりとしたテンポのマイナーブルースだということがよくわかります。
しかしウィリー・ジョーンズのたどたどしいギターソロがもったいない……。
この曲をもしグラント・グリーンやケニー・バレルが弾いていたならもっと素晴らし演奏だったのにな……と残念に感じます。
さて次の曲#6の”That’s Where It’s At”と最後の曲#7の”Way Down Home”のどちらも似たようなマイナーブルースです。
どちらも良い曲ではあるのですが、こういったジャンルの曲調が好きな人に取っては最高ですが、そうでもない人には同じ曲調ばかりで退屈に聴こえるかもしれません……。
フレッド・ジャクソンのリーダー作がこれ以降、作られることがなかったのはもしかしたら彼の引き出しの少なさ……が原因なのかもしれませんね?
しかしブルージーでダウン・トゥ・アースなジャズブルースをこれでもか!と集中して聴きたい方にはお勧めのアルバムです。
ちなみにこのアルバムを吹き込んだ後、フレッド・ジャクソンは、再びグラント・グリーンと共に今度は別のオルガン奏者ビッグ・ジョン・パットンの『Along Came John』と『The Way I Feel』に参加しています。
「 ベイビーフェイス」の後は「ビッグ」っていうね……。(笑)
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