2021/03/12
クラブ・ジャズ・ファンも必聴!グラント・グリーンも参加したドン・ウィルカーソンのブルーノート作品まとめ
グラント・グリーンも参加したドン・ウィルカーソンのブルーノート作品をまとめてご紹介します。
クラブ・ジャズ・ファンにも大人気の曲”Dem Tambourines”は必聴!
前回ご紹介していたジョージ・ブレイスに引き続き、今回は同じくサイドマンにグラント・グリーンが参加したブルーノートの隠れた名作をご紹介したいと思います。
グラント・グリーンも参加したジョージ・ブレイスのおすすめのソウル・ジャズ作品まとめ
今回ご紹介するのは、1932年生に米国ルイジアナ州モロービル生まれのテナー・サックス奏者ドン・ウィルカーソンです。
ドン・ウィルカーソンは、50年代中頃にレイ・チャールズのバンドに参加して、その後キャノンボール・アダレイの目に留まり、リヴァーサイド・レコードで初リーダー作の『The Texas Twister』でデビューを飾っています。
今回は、その後名門ブルーノート・レコードに移籍してから制作した3枚のソウル・ジャズ作品をまとめてご紹介したいともいます。
Don Wilkerson – 『Elder Don』
1962年5月3日に録音された『Elder Don』は、ギターにグラント・グリーン、ピアノにジョン・エイシア、ベースにロイド・トロットマン、ドラムにウィリー・ボボを従えたクィンテット編成で録音されています。
冒頭1曲目”Senorita Eula”は、ウィルカーソンのオリジナル曲で、セニョリータの題名通りにラテン調のジャズ曲です。
どこか間の抜けたテーマ・メロディーをウィルカーソンのサックスとグラントのギターがユニゾンで演奏しています。
パーカッション系の楽器を担当することの多いウィリー・ボボが、本作ではドラムを叩き、ラテンビートを生み出しています。
グラント・グリーンは後に、『The Latin Bit』というラテン・ジャズを扱った名盤をリリースすることになるのですが、本作で既にラテン・ジャズが得意な側面も見せています。
2曲目”San Antonio Rose”は、ボブ・ウィリスのカントリー・ナンバーで、朗らかな原曲を更に脳天気なアレンジで演奏しています。
ギターソロのみならず、グラント・グリーンのバッキングもダンサンブルなリズムを生み出すのに貢献しています。
グラント・グリーンは、自身のリーダー作に於いては、バッキングを弾くことはほとんどないのですが、こうやってサイドマンとして他のミュージシャンのリーダー作に参加した際には、バッキングをしっかりと弾いていることがよくあります。
3曲目”Scrappy”と4曲目”Lone Star Shuffle”、そして5曲目”Drawin’ A Tip”は、どれもドン・ウィルカーソンのオリジナル曲になります。
どれも脳天気なソウル・ジャズ曲なのですが、リズミカルなスタッカート奏法を多用したキレの良いグラント・グリーンのギターソロはどれも聴きものです♪
アルバム最後の”Poor Butterfly”は、1916年のブロードウェイ・ミュージカル『The Big Show』のためにジョン・レイモンド・ハベルが書いた古き良き時代のポピュラー・ソングです。
それこそキャノンボール・アダレイが1959年にリリースしたリヴァーサイド盤の『Cannonball Takes Charge』で取り上げていた曲でもあります。
この艶めかしいテーマ・メロディーをキャノンボール・アダレイ以上にしっとりとサックスで歌い上げるウィルカーソンの腕前は、なかなかのものです。
愉快なメロディーのオリジナル曲が多かった本作の最後を、こういったスタンダードな名曲で締めているのは悪くない選曲です。
まるで楽しかったショウの終わりを告げる、さよならのバラード曲と言ったところでしょうか。
しかし本作を録音した1ヶ月後に録音された次にご紹介する名作に比べると、どうしても印象の薄いアルバムにも感じられます…。

Don Wilkerson – 『Preach Brother!』
ソウル・ミュージクを伝導する宣教師へと扮したドン・ウィルカーソンが、ダンス・ミュージックのリズムに乗せてサックスで説教を始めます。
1962年6月18日に録音された『Preach Brother!』は、後にロンドンのクラブシーンの定番曲となる”Dem Tambourines”と”Camp Meetin'”が収録されたソウル・ジャズの隠れた名盤です!
グラント・グリーンのギターにソニー・クラークのピアノ、ブッチ・ウォーレンのベースにビリー・ヒギンズのドラムをバックにドン・ウィルカーソンが思う存分サックスを吹く、クィンテットで録音されています。
ソニー・クラークと言えば、日本人に大人気の『Cool Struttin’』で有名な、どこか陰りのある演奏をするピアニストです。
ですが、実はクラブ・ジャズ/アシッド・ジャズ・ムーヴメントに於いても、本作に収録されている2大名曲の録音に加わって影響を与えていたりもするんです。
勢いのある1曲目のジャンプ・ブルース”Jeanie-Weenie”から始まり、スローなジャズ・ブルース曲”Homesick Blues”、ダンサンブルな”Dem Tambourines”と”Camp Meetin'”、軽快なシャッフル・ブルース”The Eldorado Shuffle”、間の抜けたテーマを持つ長尺曲”Pigeon Peas”と、6曲全てがドン・ウィルカーソンのオリジナル曲になります。
惜しまれるのは、グラント・グリーンが最も得意とするスロー・ブルースの”Homesick Blues”やダンサンブルな”Dem Tambourines”でギターソロがないことなのですが、しかしそのクラブ・ジャズ人気曲である”Dem Tambourines”の曲調を決めるギターリフを弾いているのはファンとしては喜ばしいことです。
その代わり”Camp Meetin'”では、スタッカートを上手く用いたソロを弾いていたり、”Jeanie-Weenie”ではいつになく執拗なシーケンス・フレーズを繰り返していたりもします。
全ソウル・ジャズ・ファン必聴のアルバムです!
もちろんクラブ・ジャズ/アシッド・ジャズ好きも、ルーツ音楽として本作を聴くべきでしょう!

Don Wilkerson – 『Shoutin’』
1963年7月29日に録音されたこの『Shoutin’』を最後に、ドン・ウィルカーソンのリーダー作は途絶えてしまいます。
というのも、本作録音後に麻薬の不法所持で逮捕され、テキサスの連邦刑務所に収監されることとなったからです。
なんとも、もったいない話ではありますが、最終作となった本作にはソウル・ジャズ作品を制作するに適したメンバーが集まっています。
それは、グラント・グリーンにビッグ・ジョン・パットンにベン・ディクソンという元ルー・ドナルドソン・バンドの面子です。
この3人が揃えば、鬼に金棒!ソウル・ジャズに熱き魂!です。
…と言いたいのですが、逆にリーダーのドン・ウィルカーソンでは役不足かな?とも感じられてしまいます。
バックの3名の個性が濃すぎて、やはりルー・ドナルドソンが必要だな!と強く感じます。
ラルフ・レインジャー/レオ・ロビンによって1937年に書かれたスタンダード・ナンバーの”Easy Living”と、ウィルカーソンの親友エドワード・フランクによって書かれた”Sweet Cake”以外の4曲は全てドン・ウィルカーソンのオリジナル曲になります。
曲も良く、バックの演奏陣も素晴らしいのですが…やはりドン・ウィルカーソンでは物足りない!
ハッキリ言って、リーダーのドン・ウィルカーソンのソロよりも、”Cookin’ With Clarence”や”Happy Johnny”のようなアップ・テンポの曲で凄まじい勢いでソロを弾くグラント・グリーンの方が凄いくらいです!
グラント・グリーンって、ノリに乗ったときは恐ろしいほどのリズム感で他を寄せ付けないようなギターソロを弾いていることがよくあります。
しかも本作のようなサイドマンでの参加の時にもです。
リーダーを完全に食ってしまうような勢いのあるギターソロが、さまに圧巻です!
僕がグラント・グリーンというギタリストを好きな理由も、こういったテンションの高いギターソロを聴くことが出来るからです。
サイドマンでの参加であっても油断できません!
隠れた名作で凄まじいギターソロを弾いていることは、他にもよくあります。
本作『Shoutin’』も、結局はグラント・グリーンを聴くべき作品と言っていいでしょう。

以上、【クラブ・ジャズ・ファンも必聴!グラント・グリーンも参加したドン・ウィルカーソンのブルーノート作品まとめ】でした。
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