
2019/02/06
ウェルドン・アーヴィン必聴のレア・グルーヴ盤 RCAレコード時代の3作品を聴こう♪
ピアニストの1974年から1976年にメジャー・レーベルのRCAレコードでリリースした3作品をご紹介します。
レア・グルーヴ盤としても人気の高い3作品♪
今回ご紹介するのは、ジャズ・ピアニストのウェルドン・アーヴィンが1974年から1976年にメジャー・レーベルのRCAレコードでリリースした『Cosmic Vortex』、『Spirit Man』、『Sinbad』の3作品です。
どれもレア・グルーヴとしてだけでなくヒップホップのサンプリング・ネタやジャズ・ファンクとしても人気の高い作品です♪
実はギタリスト的にも聴きどころの多い作品でもあるんです!
コーネル・デュプリーも参加した名作群!
なぜかというと、3作品のうち2作品に名セッション・ギタリストのコーネル・デュプリーが参加しています!
そのうちの1作品『Cosmic Vortex』では1曲のみの参加ですが、もう1作品の『Sinbad』ではガッツリ全曲で参加しています。
しかも『Sinbad』には、同じく名セッション・ギタリストであるエリック・ゲイルと、ベーシストのゴードン・エドワーズも参加しています。
更にリチャード・ティーも2曲でエレピを弾いており、更にドラムにはクリス・パーカーとスティーヴ・ガッドの2人が交代で参加しています。
なので、Stuffのメンバーが参加した形になります。
それだけでなく、コーネル・デュプリーが参加していない『Spirit Man』や『Cosmic Vortex』の他の曲でも、クリストファー・ウィリアムズやバーナード・ライトの作品でギターを弾いていたヘンリー・グレイトJr.が参加しています。
目立つギタリストではないのですが、ファンキーなバッキングやフェイザー混じりのフュージョン系のギターソロはなかなかのものです!
ギター好きの僕は、むしろこの3作品は彼ら3人の「ギターを聴くため」に聴いています。
それではリリースされた年代順にご紹介していきます。
Weldon Irvine – 『Cosmic Vortex』
01.Love Your Brother
02.Walk That Walk; Talk That Talk
03.Love Jones
04.I’ll Name It Tomorrow
05.Cosmic Vortex (Justice Divine)
06.Quiet (In Memory Of DukeEllington)
07.Let Yourself Be Free
08.Love Your Brother (Sanctified Version)
メジャー・レーベルのRCA・レコードに移籍してからの1974年にリリースされた第一弾アルバム『Cosmic Vortex』です。
黄金のネフェルティティ(かな?)と宇宙をあしらった凝ったデザインのジャケットからも気迫を感じますね!
1曲目”Love Your Brother”は、ナロという女性ボーカリストが歌う軽快な歌もの曲です。ボンゴやパーカッションのリズムにウェズリー・ワトソンの裏拍でシンコペートする粘っこいドラムが最高です♪
リーダーのウェルドン・アーヴィンは、エレピでリズムカルなソロを弾きます。
その次にヘンリー・グレイトのフェイザー混じりのギターソロが始まります。
ダウンチョーキングのタメを利かせたサウンドが少しブルージーです。
その後、フルートソロと続き再び歌に戻ります。
わかりやすい歌もの曲の次はお待ちかね!我らがコーネル・デュプリーのご登場です!
2曲目”Walk That Walk; Talk That Talk”でワウギターを弾くのはコーネル・デュプリーです。
ワウギターとウェルドンのクラヴィネットがファンキーに絡み合うジャズ・ファンク系のインスト・ナンバーです。
ギターソロが始まると、1フレーズ目こそワウで弾いていますが、すぐさまワウペダルをOFFにしていつものコーネル・デュプリーのテレキャス・サウンドに戻ります。
僕のようなソウルフルなギター好きだと、短いこのギターソロだけでも満足しそうなぐらいです。
相変わらず楽曲の良さを損なわないような的確なギターソロです!
コーネル・デュプリーのファンの方は必聴ですよ!
コーネルのギターソロ後は、なんとウェルドン自らソプラノ・サックスでソロを吹きます。
ピアニストなのにソプラノ・サックスを吹くなんて、まるでキース・ジャレットですね!
コーラスが華やかな3曲目”Love Jones”と、愉快なテーマを持つミドルテンポのファンク曲4曲目”I’ll Name It Tomorrow”は、それぞれヘンリー・グレイトのファンキーなギターが聴ける曲です。
そして5曲目”Cosmic Vortex (Justice Divine)”のみジョー・カロがギターを弾いています。
最近ではブルース系のギター演奏をしているジョー・カロですが、この曲ではテクニカルなフュージョン系のギターソロを弾いています。
かなりの腕前です!
曲の方も、さすがアルバム・タイトルにしているだけあって、やたらかっこいいインストのジャズ・ファンク曲です!
コーネルは参加していませんが、この曲が本作の一番の聴きどころですね♪
デューク・エリントンに捧げられたメロウなピアノ曲の6曲目”Quiet (In Memory Of DukeEllington)”から、ラテンのリズムがダンサンブルな7曲目の”Let Yourself Be Free”、イナタいドラムのビートがクセになりそうな8曲目の”Love Your Brother (Sanctified Version)”の最後の3曲にはギタリストが参加していません。
しかしこれらの曲のクォリティーも高く、知る人ぞ知るレア・グルーヴ系の作品として扱うにはもったいないな~と感じてしまう作品です!
コーネル・デュプリーの参加は1曲のみですが、捨て曲が1曲もないパーフェクトなアルバムですので、ジャズ・ファンク系の音楽好きの方にはぜひともおすすめしたい名盤です♪
Weldon Irvine – 『Spirit Man』
01.We Gettin’ Down
02.Softly (Pt. 1)
03.Pogo Stick
04.Blast Off
05.Jungle Juice
06.Yasmin
07.The Power and the Glory
08.Softly (Pt. 2)
『Cosmic Vortex』リリース後に、黒人ミュージックのためのインディ・レーベルだったストラタ・イーストで制作した『In Harmony』を挟み、1975年に再びメジャーのRCAから第二弾作品としてリリースされた『Spirit Man』です。
このアルバムには、コーネル・デュプリーの参加はなく、ギターは全てヘンリー・グレイトによるものです。
しかし、『Cosmic Vortex』よりも更に収録曲のクォリティーが上がっています!
まるでハービー・ハンコックの”Cameleon”が始まりそうなファンキーなクラヴィネットの音から始まる1曲目”We Gettin’ Down”は、後発のミュージシャンに多大なる影響を与えた楽曲でもあります。
まず一番有名なのが、Qティップ擁するヒップホップ・バンドのア・トライブ・コールド・クエストが1993年にリリースした『Midnight Marauders』の3曲目に収録されていた名曲”Award Tour”のサンプリング・ソースとして扱われていました。
また初期のジャミロクワイが、ライヴでこの”We Gettin’ Down”を取り上げていたのは、ファンの間では有名なお話です。
ちなみに1994年の2ndアルバム『The Return of the Space Cowboy(スペース・カウボーイの逆襲)』のCD2枚組デビュー20周年記念エディションのディスク2の最後にジャミロクワイ・バージョンの”We Gettin’ Down”が収録されていますので要チェックです!
さて、ウェルドン・アーヴィンの『Spirit Man』に戻りましょう。
2曲目”Softly (Pt. 1)”は、40秒程度の短いシンセサイザーの幻想的な曲です。
その後3曲目の”Pogo Stick”に繋がります。
転がるような軽快なピアノのイントロから、ホーン隊が華やかなミドルテンポの楽し気なジャズ・ファンク曲が始まります♪
ヘンリー・グレイトのファンキーなギターもグルーヴ感たっぷりです♪
ピアノ→トランペットとソロがあり、その後ドラムのブレイクを挟みシンセサイザーのソロもあります。
シンセサイザーのメカニカルな電子音から激しいドラム・ビートで始まる4曲目”Blast Off”は勢いのあるジャズ・ファンク曲です!
激しいドラムの上で吹くサックスのソロがかっこいい曲です♪
5曲目”Jungle Juice”は、本作の一番の聴きどころ!です。
アフロ・アフリカン・ビートに乗せてウェルドンのシンセサイザーのキャッチーなリフが始まります!
バックの演奏陣のグルーヴがヤバイくらいです!
ヘンリー・グレイトのフェイザー混じりのファンキーなギターが特に最高です♪
個人的にはこの曲がベスト・トラックですね♪
6曲目”Yasmin”は、一転して壮大なストリングスの音で始まり、ウェルドンが美しいピアノを奏でるバラード曲です。
そしてトランペットの溌溂としたテーマがかっこいい7曲目”The Power and the Glory”で、再度勢いを盛り返します!
トランペットソロの後にアルトサックスを吹いているのは、マイルス・デイヴィスのバンドにも参加していたソニー・フォーチュンです。
こういったジャズ・ファンクの曲でサックスを吹かせると天下一品ですね!
文句なしに素晴らしいサックスソロです♪
最後の8曲目”Softly (Pt. 2)”は、2曲目”Softly (Pt. 1)”の別バージョンで、シンセサイザーのスペーシーな音が幻想的だったパート1とは打って変わって、こちらの方はウェルドンの美しいピアノ演奏が聴けます。
革新的なジャズ・ファンク曲だけでなく、やはり元はジャズ・ピアニストなので、こういった美しい曲もお手の物ですね♪
Weldon Irvine – 『Sinbad』
01.Sinbad
02.Don’t You Worry ‘Bout A Thing
03.What’s Goin’ On?
04.I Love You
05.Do Something For Yourself
06.Music Is The Key
07.Here’s Where I Came In
08.Gospel Feeling
RCAでの前2作は、全てウェルドン自身の曲が収録されていましたが、1976年のRCA第三弾となるこの『Sinbad』ではカヴァー曲や提供曲が数曲で見られます。
まず1曲目の”Sinbad”は、ウェルドンの自作曲です。
ゴードン・エドワーズの「ブゥン!」というベースのグリッサンド音から始まります。
最初にソロを弾くのはエリック・ゲイルです。
フェイザー混じりでいつもの如くブルージーなのにオシャレなギターソロを弾いています。
コーネル・デュプリーのギターソロはありませんが、単音やコードのカッティングで存在感を出しています。
2曲目の”Don’t You Worry ‘Bout A Thing”は、ご存じスティーヴィー・ワンダーの人曲です。
この曲のスティーヴ・ガッドがドラムを叩いています。
他の曲はクリス・パーカーがドラムを叩いています。
ウェルドンのエレピに混じって、女性コーラス隊とホーン隊が華やかに曲のテーマを奏でています。
右チャンネルから聴こえてくるキレッキレのギターカッティングの音がコーネル・デュプリーです。
ギターソロはありません。
3曲目”What’s Goin’ On?”は、もちろんマーヴィン・ゲイの超有名曲です。
マーヴィンの歌メロ部分は、ウェルドンがキーボードで弾いています。
左チャンネルで高音中心の軽やかなカッティングを弾いているのがエリック・ゲイルで、右チャンネルで低音中心でリフ混じりにリズムギターを弾いているのがコーネル・デュプリーです。
バックでアコースティック・ピアノを弾いているのがリチャード・ティーです。
4分3秒辺りで「ジャンジャンジャンジャ~ん♪」と音を上がっていく弾き方は、リチャード・ティーの定番のフレーズですね♪
コーネルのちょっとした短めのギターソロもあります。
しかし的確な音使いはさすがです!
ちなみにコーネル・デュプリーはダニー・ハサウェイやバーナード・パーディのなどの作品でも”What’s Goin’ On?”をやっています。
ダニー・ハサウェイの『Live!』のオリジナル盤でギターを弾くのはフィルタ・アップチャーチですが、後にボックス・セットでコーネルがギターを弾く”What’s Goin’ On?”もリリースされています。
2013年にリリースされたCD4枚組ボックス・セット『Never My Love: the Anthology』のディスク3の1曲目がコーネル・バージョンの”What’s Goin’ On?”です。
4曲目の”I Love You”は、ドン・ブラックマンのペンによる歌もの曲です。
まるでジョニー・ブリストル⁉なオシャレなR&B曲です。
歌が主役ですので、楽器陣はバック演奏に徹しています。
5曲目”Do Something For Yourself”は、女性コーラス隊とホーン隊が絡み合う歌ものファンク曲です。
ギターはソロはなくカッティングでリズムをキープしています。
6曲目”Music Is The Key”は、「進むべき道は自ずとわかるもの。答えは自分の中にある。誰もが勝者になれる。」という力強い歌詞を持つメッセージ・ソングです。
コーネル・デュプリーの珍しいオクターヴ奏法も聴けるラテン調の楽曲です。
終盤にコーネル・デュプリーがギターソロを弾いています。
本作では、コーネル・デュプリーの長めのギターソロはこの曲のみです。
7曲目”Here’s Where I Came In”は、ウェルドンが自身のルーツに戻ったように美しい音色でピアノを弾くインスト・ナンバーです。
この曲のみファンクの曲ではありませんが、ピアノソロはさすがの腕前です!
アルバム最後の8曲目”Gospel Feeling”は、再びリチャード・ティーのピアノも登場する軽快で楽しい曲です♪
リチャード・ティーがこうも活躍しだすと、まるでStuffの曲みたいです。
素晴らしい曲なのですが、リチャード・ティーの個性が強すぎてウェルドンの影が薄くなってしまいますね。
前2作よりも更にキャッチーな歌もの曲が増えた聴きやすいアルバムです♪
以上、【ウェルドン・アーヴィン必聴のレア・グルーヴ盤 RCAレコード時代の3作品を聴こう♪】でした。
3作品とも、ジャズ・ファンク好きはもちろん、レア・グルーヴ好きは必須アイテムです!
コーネル・デュプリーのファンの人もぜひとも聴いて欲しいところです。
またジャミロクワイやア・トライブ・コールド・クエストのファンの人も、元ネタの”We Gettin’ Down”をぜひ聴いてみてください♪
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