2024/09/06
ザ・ニュー・マスターサウンズの13作目のスタジオ・アルバム『The Deplar Effect』を聴こう♪
ザ・ニュー・マスターサウンズの作品を1枚ずつご紹介するシリーズ
2022年にリリースされた13作目のスタジオ・アルバム『The Deplar Effect』についてご紹介します。
前回ザ・ニュー・マスターサウンズ(以降:ニューマスター)の12作目のスタジオ・アルバム『Shake It』をご紹介したのが2022年だったので2年振りとなる『ザ・ニュー・マスターサウンズの作品を1枚ずつご紹介するシリーズ』の続きとなります。
『Shake It』に関してのブログ記事はぜひ下記リンク先よりご覧になって下さい。
ラマー・ウィリアムズ Jr.が全面的に参加したザ・ニュー・マスターサウンズのスタジオ盤『Shake It』を聴こう♪
スタジオ・アルバムとしては13作目のアルバム
さて、本作『The Deplar Effect』は、ニューマスターのスタジオ・アルバムとしては13作目のアルバムとなります。
公式にリリースされたライブ盤2作品(1作は日本限定発売)とスタジオ・セッション2作品を合せると通算17作目のアルバムになります。
いつの間にかニューマスターも13作品以上をリリースしたことになります。
90年代のロック・バンドとかだったら13作品もリリースしていたらベテラン中のベテランですからね。
ニューマスターも、もはやベテランの域にあるバンドと言えます。
それではアルバムの中身についてご紹介します。
The New Mastersounds – 『The Deplar Effect』
01.Watchu Want
02.Gonna Get In My Way
03.Hot Tub
04.Let Me In From The Cold
05.Highlining
06.Organism
07.Meet You In The Sunshine
08.High On The Mountain
09.Could’ve Been So Good
10.Hey, It’s Alright
11.Northern Lights
12.Georgie Famous
13.Before
– Japanese Bonus Track –
14.Quarterly
Personnel:
Eddie Roberts – Guitar
Simon Allen – Drums
Pete Shand – Bass
Joe Tatton – Organ & Keyboards
Special Guest:
Lamar Williams Jr. – Vocal
Chad Pike – Cowbell
Sasha Crooks – Vibra Slap
Jeff Franca – Bongos
Sheter Shand – Trumpet & Trombone
Don Julio – Bongos & Congas
Released : 2022
アルバムについて
本作は2020年より世界的に蔓延した新型コロナウィルスがまだまだ猛威を振るっていた時代に制作されたアルバムです。
前作『Shake It』のリリースから約3年が経っており、アルバム・リリースの速度が早いニューマスターにしては珍しく間が空いたアルバムとなりました。
さすがのニューマスターも2020~2021年のこの時期は、ライブ活動をかなり自粛しており、バンド活動も休止状態にありました。
ライブすることによって次回作のインスピレーションを練るニューマスターにしては、なかなかシビアな時期にあったのではないでしょうか!?
2021年には2年振りとなるシングル曲の”A Brighter Day”もリリースされましたが、本作には未収録となりました。
それから多少コロナ禍が落ち着きだした2022年の11月になってようやく本作のレコーディングに着手しています。
本作のレコーディングは、ニューマスターにとって初となるアイスランドで行われました。
前作『Shake It』でも参加していたボーカリストのラマー・ウィリアムズ Jr.も本作のレコーディングに名を連ねています。
ただし前回よりも参加曲数は減り、13曲中7曲の参加に留まっています。(14曲入りの日本盤ではボーナストラックも歌っているので14曲中8曲がボーカル入りです。)
本作でも歌もの曲はいくつかあるものの、「完全に歌が主役のアルバム」ではなくなり、ニューマスターの一番の魅力でもあるインスト曲が復活しているは嬉しい部分です。
なんだかんだ言ってもニューマスターの本領はファンキーなインスト曲ですからね。
ただしアイスランドでの録音といういつもと違った状況が作品作りに反映されたのか?過去作とはどこか違った雰囲気を持った曲が多く感じられます。
良い意味での「異色作」と言えるでしょう。
アルバムのアートワークもいつになくアーティスティックで、アイスランドの寒空を思い起こさせます。
このアートワークは、『ディープ・グルーヴ・デザイン(Deep Groove Designs)』のクリストファー・ボールが手がけています。
それでは引き続きアルバムの収録曲についてご紹介します。
アルバムの内容
1曲目”Watchu Want”は、ボーカルなしのいつものお約束とでも言える「ミーターズ風のファンク曲」になります。
2023年2月に行われた来日公演では東京公演でも大阪公演でも共にライブの1曲目に演奏された曲です。
なんだかんだでニューマスターの一番の魅力と言えばこういったミーターズ風のファンクだでしょう。
ライブでもさっそくこの曲で大盛り上がりしました!
アルバムご紹介の最初にこう言い切ってしまうのもなんですが…この曲が本作のベスト・トラックです。
前回のブログ記事にも書きましたが、こういったミーターズ風のファンク曲を集めたコンピレーション・アルバムをリリースして欲しいものですね。
次の2曲目”Gonna Get In My Way”は、さっそくラマー・ウィリアムズ Jr.が歌う曲です。
この曲はMVも制作されていますので、公式YouTubeチャンネルの動画リンクを貼っておきますので、ぜひご覧になって下さい。
アイスランドの美しい自然の風景や、スタジオ・セッションの雰囲気が伝わってくるような良いMVですね♪
個人的にはニューマスターの歌もの曲はそこまで好きではないのですが、この曲は悪くない曲です。
ちなみに1分44秒辺りでダンスしている黒人女性の方は、エディー・ロバーツの奥様です。
いつだったかニューマスターがビルボード大阪で来日公演を行った際に、たまたま僕が座っていたステージ脇の席の近くに、エディーの奥様が座っていたのを思い出します。
3曲目の”Hot Tub”は、ホーン隊が参加したゆる~いファンク曲です。
これは2曲目と4曲目の繋ぎのような感じですね。
4曲目の”Let Me In From The Cold”もラマー・ウィリアムズ Jr.が歌う曲なのですが、ある意味で本作のハイライトと呼べる曲です。
1960年代より活動している英国のミュージシャン、ジョージィ・フェイムをトリビュートした楽曲です。(ジョージィ・フェイムは今も存命です。)
ジョージィ・フェイムはオルガンを弾きながらR&B調のロックンロールを歌う、いわゆるモッズ系の歌手です。
英国人の多くは、ジョージィ・フェイムやザ・フーにザ・ジャムといったモッズ系の音楽から影響を受けていることでしょう。
それはニューマスターも例外ではなく、エディー本人も「英国人がブラック・ミュージックを演奏すると、それは自動的にモッズ・サウンドになるんだ。」と語っています。
そんなジョージィ・フェイムからの影響が感じられる”Let Me In From The Cold”は、どことなく1970年にリリースされたシングル曲”Somebody Stole My Thunder”のメロディー・ラインを彷彿させます。
ジョージィ・フェイムの”Somebody Stole My Thunder”は、1970年のアルバム『Seventh Son』に収録されていた曲です。
ちなみうにこのラマー・ウィリアムズ Jr.が歌う”Let Me In From The Cold”は、インスト・バージョンも本作に収録されており、その名もズバリ”Georgie Famous”という曲名で収録されています。
インスト・バージョンの”Georgie Famous”は、それこそジョージィ・フェイムの”Somebody Stole My Thunder”を意識したような荒々しいファズ・ギターでエディーがギター・リフを弾いています。
2023年の来日公演ではラマー・ウィリアムズ Jr.が一緒に来日できないため、あ東京公演でも大阪公演でも演奏されていました。
ジョージィ・フェイムのトリビュートが終わった後は、ラマー・ウィリアムズ Jr.が歌う”Highlining”が5曲目に続きます。
こちらはエディー・ロバーツが弾くネチっこいワウギターが特徴のファンク曲です。
6曲目の”Organism”は、来日公演でも披露されたニューマスターらしいインスト・ナンバーです。
エディーのワウギターに絡むファンキーなオルガンが、まさにニューマスターらしくって「これを待っていたんだよ!」と言いたくなるような期待通りのファンク曲です。
この曲に限らず本作全ての曲に言えることなのですが、本作のエディー・ロバーツのギターはいつも以上にリバーブが掛かっており、広がりのあるギター・サウンドに仕上がっています。
おそらく来日公演でも使用していたエレクトロ・ハーモニクス(electro-harmonix)の定番リバーブ・エフェクター 『Holy Grail』を使っているんじゃないかな?と思います。
「使っています!」と断言できないのは、スタジオ録音の際は、小型エフェクターではなくアンプ内蔵型のリバーブや、スタジオ備え付けの卓上のリバーブ・システムを使っているかもしれないからです。
コンパクト・エフェクターは、持ち運びに便利なので「ライブ用」として使っているだけで、レコーディングでは使っていない可能性もありますからね。
それはさておき、アイスランドの雰囲気を感じ取ってのことか?いつになくリバーブが効いたギター・サウンドです。
次の7曲目”Meet You In The Sunshine”と8曲目”High On The Mountain”は、ラマー・ウィリアムズ Jr.が歌う曲で、どちらもニューマスターらしくない曲です。
“High On The Mountain”はどことなくモータウン風のポップなR&B曲のようです。
こういった歌もの2曲は、アイスランドでの録音とは関係なくニューマスターのR&B好きなサイドが垣間見えますね。
9曲目”Could’ve Been So Good”は、ジョー小刻みに弾くオルガンのメロディーが印象的なインスト曲で、前回の来日公演では東京と大阪のどちらでも演奏されていた曲です。
エディー・ロバーツは、ウェス・モンゴメリー風のオクターブ奏法でメインのメロディーをオルガンとハモっています。
そもそもウェス・モンゴメリーがソロ・デビュー前に参加していたバンドが「ザ・マスターサウンズ」でしたからね。
もちろんエディーはウェスから大きな影響を受けており、バンド名もそれにあやかっています。
インスト曲を1曲挟んだ後に始まる、10曲目の”Hey, It’s Alright”もラマー・ウィリアムズ Jr.が歌う曲です。
10分以上の曲で、本作の中では最も長い曲です。
次の11曲目”Northern Lights”は、”Let Me In From The Cold”と並ぶ本作のハイライト曲です。
曲名からしても、この曲こそまさにアイスランドでのレコーディングの一番良い成果だったのではないでしょうか?
“Northern Lights”は、エディーのリバーブが良く効いたギターを中心としたミドル・テンポのインスト曲で、過去の作品にあった『Be Yourself』収録の”Six Underground”や、『Out On The Faultline』収録の”Summercamp”のようなサイケデリックな曲です。
ニューマスターが他のディープ・ファンク・バンドと違うところは、ミーターズ風の曲一辺倒ではなく、こういったミドル・テンポのサイケデリックな名曲を作れることでしょう。
この曲”Northern Lights”は本作の中では明らかに”Watchu Want”の次に良い曲で、前回の来日公演ではちゃんと東京公演でも大阪公演でも演奏されていました。
確かエディーがMCで「お気に入りの曲」と語っていたような曖昧な記憶が…!?
それはさておき、現在ニューマスターは本作の次のアルバムとなる『Old School』リリースに共なうツアーを始めているのですが、この”Northern Lights”と先ほど紹介していた”Could’ve Been So Good”の2曲は今もセットリストに生き残っていました。
果たして今年2024年12月に行われる予定の最新の来日公演では、この2曲をやってくれるのか?
“Northern Lights”がライブの定番曲になれるように期待して待ちましょう!
次は、12曲目”Georgie Famous”は先にご紹介していたので、本編最後の13曲目”Before”についてです。
アルバム最後(日本盤は省く)のこの曲もラマー・ウィリアムズ Jr.が歌う曲です。
スモーキーな渋い歌声で歌ったバラード曲で「重荷を抱えたまま進んでいくのはいやだ!これまで通りにはいかないよ!」という歌詞はまるで世界的に大ダメージとなったコロナ禍の状況を歌っているかのようです。
まぁおそらくほんとの歌詞の意味は、別れたパートナーを乗り越えて前に進む人の気持ちを歌っているんだと思いますが…。
こういった曲ってR.E.M.の”Losing My Religion”とかもそうなのですが、聴き手側は「これはもしかしたらメッセージ・ソングなのかも?」と深読みしがちですが、実際に作詞したアーティストにその真偽を問うと、「あれは単なるラブ・ソングだよ。」と肩透かしを食らうことがよくあります。
もしかしたらアーティスト側が曲に変な解釈をされるのが嫌でインタビューでは「単なるラブ・ソング」と語っていることもあるでしょうが、でもほとんどの場合はラブ・ソングが正解なのでしょう。
デルタ・ブルースの偉人サン・ハウスもこう語っていましたからね。
「ブルースってのはたった1つなんだ。”男と女”…それがブルースだ!」
ブルースを元とする現代のロックやポップスにR&B等の音楽も詰まるところは、”男と女”がテーマなのでしょう。
ここでアルバム本編は終わりますが、日本盤にはボーナス・トラックとして14曲目に”Quarterly”が収録されています。
この曲もラマー・ウィリアムズ Jr.が参加しており、歌う…というかちょっとしたメロディーを口ずさんでいます。
イントロやその後何度か登場するエディーのギター・フレーズが、ジョン・コルトレーンの”Giant Steps”に似ており、もしかしたらそのためにアルバム未収録となったのかもしれません⁉
まぁ日本盤だとこうして聴くことが出来たので、それは良いでしょう。
以上、ザ・ニュー・マスターサウンズの2022年にリリースした13作目のスタジオ・アルバム『The Deplar Effect』に収録された全14曲のご紹介でした。
現在は原点回帰とでも言うべき全編インスト作品の最新アルバム『Old School』がリリースされていますが、『Shake It』に引き続きラマー・ウィリアムズ Jr.のボーカルをフィーチャーした異色作でした。
今後もこういったゲスト・ボーカル入りのアルバムが制作される可能性は大いにありますが、しかし結局のところ本作のベスト・トラックはミーターズ風の”Watchu Want”で、ハイライトもインストの”Northern Lights”となりました。
やはりニューマスターには、AC/DCの如く「いつも通りの」インスト曲でアルバムを制作し続けて欲しいものです。
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