2021/02/02
オルガン奏者チャールズ・アーランド 晩年のおすすめアルバム3選!
オルガン奏者チャールズ・アーランド晩年のおすすめアルバムを3作品ご紹介!
80年代に迷走するも晩年は良質なジャズファンク作品を連発!
1941年に米国フィラデルフィア州ペンシルベニアに生まれたオルガン奏者のチャールズ・アーランドは、1966年に初のリーダー作『Boss Organ』をリリースして以来、1999年に亡くなるまでに30作品以上のリーダー作を残しています。
特に70年代には、このブログでも過去にご紹介していました『Black Talk!』や『Black Drops』のようなオルガン系ジャズファンクの名盤を残していました。
しかし80年代頃から、時代の流れに沿ったようなディスコ・ファンク系のアルバムもいくつか作るようになりました。
何もそういった音楽性が「悪い」わけではないのですが、しかしディスコ・ファンク系の音楽では「熱いオルガンソロ」を聴くことができません。
やはり「熱いオルガンソロ」には、イナタいファンクサウンドが合います。
そんなチャールズ・アーランドも、90年代に入ってレアグルーヴやクラブジャズのブームに乗って70年代風のジャズファンクが見直された時代に、原点回帰ともいうべき名作をいくつか吹き込みました。
特に晩年のアルバムは良質なものが多かったように感じます。
そこで今回は、チャールズ・アーランドが90年代後半に残したアルバムで特に素晴らしいアルバムを3作品に絞ってご紹介したいと思います。
その中の2作品は、アーランドが亡くなる数ヶ月前に吹き込まれた音源を、2000年代になってから彼の死後に発売されたアルバムになります。
アーランドは、1999年12月11日に惜しくも心不全で亡くなったのですが、その数ヶ月前までに数回のスタジオ録音を行っています。
その音源を作品化した2作品もとても素晴らしいアルバムなので、今回は合わせてご紹介したいと思います。
Charles Earland – 『Slammin’ & Jammin’』
1997年5月5日に吹き込まれ、翌年の1998年にリリースされたアルバム『Slammin’ & Jammin’』は、アーランドの晩年最後の「燃え上がり」を聴くことができます。
また本作には、ドラムにバーナード・パーディ、ギタリストにメルヴィン・スパークスといったジャズファンク系の名手が参加している点も見逃せません。
コーネル・デュプリーも得意としたビル・ドゲット&ビリー・バトラーの名作ジャズブルースの”Honky Tonk”でアルバムは幕を開けます。
もちろん本作でビリー・バトラー役を務めるのはメルヴィン・スパークスです。
少しモタつくクセのあるコーネル・デュプリーとは違って、メルヴィンのプレイは、よりビリー・バトラーに近い気がします。
コーネル・デュプリーは知名度も高く、その影響力も計り知れないのですが…僕は個人的に「あの独特のモタり」と、ちょっとしたピッキングのミストーンがずっと気になっていました。
やはりジャズよりもR&Bやブルース色が強いギタリストなので、そういった点ではジャズ色の濃いメルヴィンやグラント・グリーンなんかと比べると「ギターソロがいまいち」に感じます。
バッキングは素晴らしいんですがね…。
ちなみにテナーサックスを吹いているのは、マイルス・デイヴィスやファラオ・サンダースの作品に参加していたこともあるパナマ系ジャズ・サックス奏者のカルロス・ガーネットです。
2曲目”Sugar”は、サックス奏者のスタンリー・タレンタインが1970年に残したクロスオーバー時代の名曲のカヴァーです。
タレンタインのオリジナル録音にはメルヴィンが尊敬するジョージ・ベンソンがギターを弾いていたのですが、ここではメルヴィンがベンソンとはまた違ったグラント・グリーン風のギターソロを披露しています。
…と、メルヴィン・スパークスのことばかり書いてしまっているのですが…ハッキリ言って本作の主役はメルヴィン・スパークスです!(笑)
この当時のメルヴィンは、16年振りとなるリーダー作『I’m A ‘Gittar’ Player』をリリースした時期だったので、ギタープレイは絶好調そのものでした!
この曲でも、2分3秒辺りから登場するベンソンもビックリな高速レガートフレーズや、2分12秒辺りから始まるグラント・グリーン顔負けなユニゾン・チョーキングによるラン奏法から好調ぶりを伺うことができます。
次のキャノン・ボール・アダレイのアルバムで有名なジョー・ザヴィヌル作”Mercy Mercy”も、言うまでもなくメルヴィンのギターが主役です。
テーマからソロまで…「あれ?このアルバムのリーダーって誰だっけ?」と思ってしまうほどの存在感です!
ジミー・スミスもカヴァーした”When Johnny Comes Marching Home”は、パトリック・ギルモアが南北戦争時代に作った古い時代の行進曲です。
「ジョニーが凱旋するとき」の邦題で知られています。
ここに来てアーランドのオルガンが主導権を握ります。
やはりジミー・スミスと同じく、この曲のテーマメロディーにはロングトーンを多用したオルガンの音色が合いますね。
5曲目”Organyk Groove”は、本作にサックスで参加しているカルロス・ガーネットが書いたオリジナル曲です。
そのためテーマを吹いて曲をリードするのもカルロス・ガーネットになります。
…が、しかし一番の聴き所はやはり絶好調のメルヴィン・スパークスのギターソロです!
6曲目”Let The Music Play”は、一転して80年代に逆戻りです!
シャノンが 1983年に発表したダンス・ミュージックのヒット曲です。
なんでまたこの曲?と思わなくもないのですが…アーランドは80年代のダンス音楽が好きなのでしょうか。
しかも10分47秒とやけに演奏時間が長いんです…。
しかし、まるでナイル・ロジャースのようなメルヴィンのギターカッティングが聴けるので良いとしましょう。
7曲目”Blues For Sheila”は、アーランドのオリジナルのジャズブルース曲です。
これこそ70年代に戻ったかのようなアーランドのオルガンプレイが最も映える楽曲です。
まるでキース・ジャレットかのように、オルガンを弾きながら「ア~~ア~~♪ウ~~ウ~~♪」と呻いちゃってます。(笑)
アルバム最後の8曲目”Mr. Magic”は、グローヴァー・ワシントン・ジュニアが1975年にリリースした4thアルバムの表題曲です。
オリジナル音源でギターを弾いていたのは、エリック・ゲイルでした。
本作ではゲイルよりも更にジャズファンク色が強いメルヴィンが最高なギターソロを披露してくれています。
やはりエリック・ゲイルもコーネル・デュプリーと同じく、R&B系のギタリストなので、ソロはそこまで良くはないですからね…。
どちらかっていうとリズムギターが上手いギタリストだと思います。
さて、チャールズ・アーランドの晩年の名作『Slammin’ & Jammin’』をご紹介しましたが…本作の聴き所はメルヴィン・スパークスの絶好調なギターにあります!
ジャズファンク系のギターがお好きな方は必聴です♪
Charles Earland – 『Stomp!』
チャールズ・アーランドの死後になる2000年にリリースされたアルバム『Stomp!』も素晴らしいアルバムです。
録音は1999年3月13日に行われています。
本作にはテナー・サックスに若き頃のエリック・アレキサンダーが参加しているのが目玉です。
また全9曲中6曲がアーランドのオリジナル曲なのも見逃せません。
かなりジャズ色が濃い楽曲ばかりなのですが、その中でもアルバムタイトルにも選ばれた6曲目の”Stomp”が最高です。
ビル・ボリスの弾くどこか間の抜けたファンキーなギターリフに導かれ、アーランドが歌まで披露しちゃいます。
ジャズファンクものはこの1曲だけなのですが、地味ながらも良質なオルガンジャズ作品としては聴きやすいアルバムです。
管楽器隊が吼えるハード・バッピンな8曲目”Transfiguration”は、ブルーノート系のジャズ好きにもおすすめです♪
Charles Earland – 『If Only For One Night』
1曲目からジョン・コルトレーンの愛想曲”My Favorite Things”で始まるチャールズ・アーランドの最終リーダー作です。
録音自体は1999年10月19日に行われていますが、リリースされたのは2002年になってからです。
2ヶ月後に亡くなるアーランド最期の演奏を聴くことができます。
面白いのが1曲目の”My Favorite Things”なのですが、ジョン・コルトレーンとも親交が深かったサックス奏者のウェイン・ショーターの名曲”Footprints”のメロディーをイントロに持ってきています。
同じモードジャズの名演を重ね合わせたアレンジがかっこいいです♪
本作でジョン・コルトレーン役を務めるのは、NY出身のスムーズジャズ系のサックス&フルート奏者ナジーです。
そして本作にもギターにメルヴィン・スパークスが参加しています。
先に挙げたコーネル・デュプリーやエリック・ゲイルとは違って、そもそもがジャズ・ギタリストなので、こういったモードジャズ曲もお手の物です!
2曲目”My Love”は、ポール・マッカートニーのあの曲ではありません。
アーランド作のモードジャズ曲です。
しかしこれがナジーの儚くも美しいソプラノ・サックスの演奏が映える素晴らしい曲です。
アーランドは晩年にもこんないい曲が書けていたなんて…もっと長生きして欲しかったところです。
続く3曲目”My Blues Is Funky”もオリジナル曲で、70年代に戻ったかのようなチキンシャックなジャズブルース曲です。
更にオリジナル曲の4曲目”Keep The Faith”も小気味よくスウィングする曲です。
メルヴィンのシーケンス・フレーズもテンションが高く聞きものです♪
ルーサー・ヴァンドロスのアーバンなバラード曲”If Only For One Night”のカヴァーを挟み、6曲目”Smoke”もまた70年代を彷彿させるアーランドのオリジナル曲です。
イントロからテーマまでメルヴィン・スパークスのギターがファンキーに跳ね回ります♪
もちろんギターソロも、もはや制御不能なぐらいのテンションの高さで弾きまくっています!
本作のハイライトは間違いなくこの曲ですね。
7曲目”All My Tomorrows”は、フランク・シナトラが歌った大人な雰囲気のバラード曲です。
ここでメルヴィンが、初期のグラント・グリーンが乗り移ったかのような味のあるギターソロを弾いています。
1分40秒辺りの、少しタメを効かせたダブルスラーのフレージングなんかは、モロにグラント印ですね。
8曲目”Just For You”もアーランドのペンによるオルガン系ジャズファンク曲です。
ナジーが美しいフルートを吹いてはいるのですが…やはりこの曲も聴き所はメルヴィンのギターソロになります。
本当にこの時期のメルヴィンの凄さは手に負えないほどです!
アルバム最後の9曲目の”Summertime”は、お馴染みジョージ・ガーシュウィンの楽曲です。
元は1935年に制作されたオペラ『ポーギーとベス』の曲なのですが、もはやジャズ・スタンダード曲としての方が有名ですよね。
かくいう僕も過去に何度も演奏したブルージーなメロディーが大好きな楽曲です♪
ナジーはこの曲でもフルートを吹いています。
もちろんメルヴィンのキレッキレのギターソロも登場します。
チャールズ・アーランドの最後のアルバムなのに、フロントの2人の個性が強すぎて埋もれてる気がしなくもないですが…。
しかしアーランドの指揮あってこその作品なので、ナジーとメルヴィンが活躍出来たのもリーダーが良かったということもあるんでしょう。
特にアーランドのオリジナル曲の出来が良いですからね!
亡くなる2ヶ月前に吹き込まれた作品だとは思えないような名作です!
以上、【オルガン奏者チャールズ・アーランド 晩年のおすすめアルバム3選!】のご紹介でした。
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