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カテゴリー:Music

2024/09/07

エディー・ロバーツがアシッドジャズに挑戦した!?女性ボーカルを前面に出したアルバム『Move』を聴こう♪

ザ・ニュー・マスターサウンズのギタリストでリーダーのエディー・ロバーツが2010年に女性シンガーのリアーナ・ケニーのボーカルを前面に出して"Eddie Roberts & Freckles"名義でリリースしたアルバム『Move』についてご紹介したブログ記事のタイトル画像です。

ザ・ニュー・マスターサウンズのリーダー、エディー・ロバーツのソロ名義作品のご紹介!

エディー・ロバーツが”Eddie Roberts & Freckles”名義でリリースしたアルバム『Move』

今回は、ザ・ニュー・マスターサウンズ(以降:ニューマスター)のギタリストにしてリーダーのエディー・ロバーツが2010年にソロ名義の3作目として(ライブ盤を含むと通算4作目)リリースしたアルバム『Move』についてご紹介します。

 

Eddie Roberts & Freckles – 『Move』

01.I Can’t Stand You
02.Fearless
03.Got Too Much
04.There’s No Change
05.How Long
06.Roses
07.Nomad
08.Never Come Back To Me
09.Can’t Forget You Now

 

Personnel:
Eddie Roberts – Guitar & Programing
Freckles a.k.a. Rhianna Kenny – Vocals
Bill Laurance – Piano
Neil Innes – Bass
Gordon Kilroy – Live Drums
Malcom Strachan – Trumpet
Bob Lavers – Tenor Sax

 

Released : 2010

 

女性シンガーを前面に出したアシッドジャズ風の作品

本作は、通称フレックルズ(Freckles)こと女性シンガーのリアーナ・ケニーのボーカルを前面に出した「歌もの」アルバムです。

 

エディー・ロバーツは2002年にリアーナのデビュー・シングル”Oh Baby”にてギターを弾いており、その頃からの付き合いになります。

 

“Oh Baby”は、リアーナ・ケニーのアルバム『Get On』に収録されています。

 

 

本作『Move』制作のきっかけとなったのは、当時新たなソロ・アルバムを考えていたエディーが、古くからの知り合いのリアーナに自身の書いたインスト曲にボーカルを乗せて欲しいと頼んだことでした。

 

これに答えたリアーナは、ある日ロンドンからの帰りの電車の中でそのインスト曲にあった歌詞をあっという間に書き上げました。

 

そうして出来たのが本作に収録されている”How Long”として完成しました。

 

この曲を気に入ったエディーは、友人達に聴かせたところ…「いいね!もう1曲作ってみたらどうだい?」と好意的な反応ばかりだったようです。

 

その調子で再びリアーナともう1曲…更にもう1曲…と制作していく内にアルバム1枚分のマテリアルが揃いました。

 

そして本作『Move』は、エディー・ロバーツと女性シンガーのフレックルズとの共同名義にて2010年にリリースされることとなります。

 

アルバム制作に辺り、ニューマスターやそれ以前のエディーのソロ・アルバムのようなジャズ・ファンク風の作品ではなく、今回は1980年代にイギリス のクラブシーンから派生した新たなるジャズのジャンル“Acid Jazz”(アシッドジャズ)風の作品として制作されています。

 

全体的にダンスミュージックの“House”(ハウス)風のダンサンブルなリズムが採用されており、ニューマスターのファンクとはまた違った音楽性です。

 

そもそもニューマスターのデビュー曲”One Note Brown”も「ジャズで踊ろう」というモットーを掲げたイギリスのアシッドジャズ・シーンのクラブで脚光を浴びたのがきっかけで話題となり、その後のデビュー・アルバムの制作に繋がっていました。

 

エディー・ロバーツの音楽的ルーツの1つとしてアシッドジャズの要素があるということは、そこまで驚くようなことでもありません。

 

そのため本作のリズム・トラックのプログラミングはエディー本人が手がけています。

 

制作メンバー記載欄にゴードン・キルロイのパートに”Live Drum”と書いているのは、「生ドラム」のことです。

 

本作のバック・トラックは、はデジタル・ビートが主体ではなく、ちゃんと生楽器が主体となっています。

 

もちろんエディーも、リアーナのボーカルをフロントに立てながらも、いつも通りにグラント・グリーン風のギターを弾いています。

 

基本的に全ての曲がボーカルが主役なので、エディーのギターは、ギター・ソロと、歌の合間に付け加えるオブリガードに留まっています。

 

ニューマスターのアルバムのように、メインでメロディー・ラインを弾くことはありません。

 

グラント・グリーンも過去には、ディジー・ガレスピー楽団のシンガーだったジョー・キャロルのリーダー作にサイドマンとして参加していたことがあるのですが、エディーもそういったグラント・グリーンの「歌伴」を参考にして本作のレコーディングに挑んだのかもしれませんね。

 

ちなみにグラント・グリーンが参加していたアルバムは、1962年にリリースされた『Man With A Happy Sound』になります。

 

また本作にはピアニストが参加しており、基本的にはエディーのコード弾きよりも、ファンキーなピアノのコンピングが目立つ曲が多いです。

 

これはあまりコード・バッキングを弾くことがなかったグラント・グリーンへのオマージュとかだけでなく、単純にアシッドジャズという音楽ジャンルにはピアノのコンピングが映えるからそうしたのでしょう。

 

ちなみにリアーナ・ケニーは、フレックルズと呼ばれているのですが、もしかしたらニューマスターのファンの方なら気付いた人がいるかもしれませんので、こちらでもご紹介しておきます。

 

本作リリース後にニューマスターがリリースした2011年のアルバム『Breaks from the Border』にそのものズバリ”Freckles”という曲が収録されています。

 

アルバム収録バージョンはインスト曲なのですが、日本盤のボーナス・トラックとしてリアーナがボーカルを乗せた”Freckles Featuring Freckles”が収録されています。

 

「フレックルズ・フィーチャリング・フレックルズ?」とよくわからない曲名なのですが、リアーナに付いて書いた曲”Freckles”に、ご本人がボーカルを乗せたためこういう曲名になっています。

 

それではアルバムの中身についても簡単にご紹介します。

 

アルバムの内容

ダンサンブルなドラムのイントロで始まる1曲目”I Can’t Stand You”は、浮気者のボーイフレンドについて「あなたには耐えられない!」と歌った曲です。

 

リアーナによるとこの歌詞は「架空の人物」についてのことですが、その真偽はいかに!?

 

ちなみにこの場合の”stand”は、「立つ」ではなく「我慢する」の意味です。

 

“can’t”と共に洋楽の歌詞に登場する場合の”stand”は、ほぼ「もう耐えられない!」の意味になります。

 

これは洋楽を聴いているとよく出てくる頻出フレーズですね。

 

さて、ファンキーなピアノのリフを主体にした曲で、ハウス・ミュージック風のドラミングに呪術的な繰り返しを弾くウッド・ベース、最初にソロを吹くのはトランペットで…エディーのリーダー作なのにギターが聞こえない!状態が続きます。

 

実はトランペット・ソロのバックで静かにギターが鳴っているのですが、本格的に登場するのは1回目のサビが終わって曲が2番に入ってからです。

 

ここからグラント・グリーン風の単音フレーズを主体としたギターのオブリガードが登場します。

 

3分34秒になりようやくグラント・グリーン風シーケンス・フレーズからのピアノとのユニゾンのリフに繋がり、曲は終わりを迎えます。

 

1曲目では目立ったギター・ソロもないのですが、しかし「エディー・ロバーツの存在を感じる」のは、どこかニコラ・コンテのアルバム作りに通じるところがあるように感じられます。

 

2曲目”Fearless”では、お得意のグラント・グリーン風のギター・ソロも弾いており、ようやくここで「エディー・ロバーツのリーダー作」らしくなってきます。

 

次の3曲目”Got Too Much”や4曲目”There’s No Change”も同じようにエディーのギター・ソロが印象に残る曲です。

 

“There’s No Change”の曲調はどことなくグレイトフル・デッド風のジャム・バンドのような曲で、エディーのギター・ソロもジェリー・ガルシアを思い起こさせます。

 

5曲目の”How Long”は、先ほどもご紹介していたように本作の制作に辺り一番最初に書かれた曲でした。

 

エディーが友人に聴かせたところ、好意的な意見ばかりだったと語っていますが、確かにこの曲は本作においてベストな1曲です。

 

実はこの曲にはギター・ソロもなく、目立ったオブリガードも弾いておらず、ちょっとしたコード弾きが登城するだけでギターが目立っていないのですが…しかしリアーナのソフトな歌声を活かした良い曲であることは間違いありません。

 

次の6曲目”Roses”は、イントロのホーンの音にダブ(Dub)の効果を加えた過激なダンス・ナンバーです。

 

それこそクラブで人気が出そうな曲で、大胆なウッド・ベースのリズムについつい腰を動かしたくなるダンス・ミュージックに仕上がっています。

 

こういった曲調にもエディーが弾くグラント・グリーン風のギターが合うのは、なんとも不思議な気分です。

 

グラント・グリーンが1963年にリリースした代表作の1つ『Idle Moments』にも”Nomad”という曲がありましたが、本作7曲目の”Nomad”とは別の曲です。

 

本作収録の”Nomad”は、ここにきてやっとエディーのファンキーなギター・カッティングがイントロから登場するダンサンブルな曲です。

 

ここでもグラント・グリーン直系のギター・ソロを思う存分弾いています!

 

8曲目”Never Come Back To Me”は、「もう私のもとに決して帰ってこないで。」と歌う悲しい歌詞を持ったバラード曲です。

 

パートナーとの悲しい別れを表現した曲で、エディーのギターもアタック音を最小限にしたマイルドなサウンドです。

 

しかしアルバムは悲しいバラード曲で終わるのではなく、「今、あなたのことを忘れられない!」と過去に思いを馳せる9曲目”Can’t Forget You Now”で幕を引きます。

 

アルバム終盤の2曲こそ大人しめの曲が並びますが、やはり本作を聴いて印象に残るのは”I Can’t Stand You”や”Fearless”に”Roses”といった過激なビートがクセになるアシッドジャズ曲でしょうか。

 

「歌もの曲」としてのベスト・トラックは、”How Long”になります。

 

以上、【エディー・ロバーツがアシッドジャズに挑戦した!?女性ボーカルを前面に出したアルバム『Move』を聴こう♪】でした。

 

エディー・ロバーツが、いつものザ・ニュー・マスターサウンズでやっているジャズ・ファンクのサウンドから離れて、女性シンガーをフロントに立てて制作した異色作のご紹介でした。

 

しかしエディーが弾くグラント・グリーン風のギターは、こういったアシッドジャズ系のダンサンブルな曲調にも合っており、本作の続編が今のところ制作されていないことは少しもったいない気がします。

 

個人的には本作『Move』は、エディー・ロバーツのリーダー作の中でも1、2を争うぐらい好きでよく聴くアルバムなので、本作リリースから10年以上経った今だからこそ続編を作ってくれないだろうか?と期待したいです。

 

さすがにニューマスターでこういったアシッドジャズ系のアルバムを制作するのは止めて欲しいので、エディーのリーダー作でお願いします。

 

ザ・ニュー・マスターサウンズがお好きな方にも、エディー・ロバーツというギタリストがお好きな方にも、更にはアシッドジャズがお好きな方にもおすすめのアルバムです♪

 

ちなみに本作ではエディー・ロバーツはお得意のワウペダルを一切使用していません。

 

ニューマスターでジャズ・ファンクを演奏する際はワウペダルをよく使っていますが、こういったアシッドジャズ系の音楽には合わないとの判断でしょうか?

 

その代わりギブソンES-330のクリーンなトーンによるギターのサウンドを堪能できるアルバムでもあります。

 

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