
2019/11/06
ザ・ニュー・マスターサウンズの10枚目のスタジオ盤『Made For Pleasure』を聴こう♪
ザ・ニュー・マスターサウンズの作品を1枚ずつご紹介するシリーズ
2015年の10枚目のスタジオ盤『Made For Pleasure』をご紹介します。
ザ・ニュー・マスターサウンズ(以下:ニューマスター)のアルバムを1枚ずつ順にご紹介しているブログ記事シリーズです。
前回は9枚目のスタジオ作品『Therapy』をご紹介していました。
ザ・ニュー・マスターサウンズの9枚目のスタジオ盤『Therapy』を聴こう♪
およそ3ヵ月ぶりとなる今回は、10作目のスタジオ作品『Made For Pleasure』をご紹介したいと思います。
本作には原点回帰したようなミーターズ風の”Made For Pleasure”や、女性シンガーのチャーリー・ローリーが歌う曲にイギー・アゼリアの楽曲の意外なアレンジ等、聴きどころ満載の名作です♪
The New Mastersounds – 『Made For Pleasure』
01.Made For Pleasure
02.High & Wide
03.Enough Is Enough
04.Fancy
05.Cigar Time
06.Joy
07.Sitting On My Knees
08.Let’s Do Another
09.Pho Baby
10.Just Gotta Run
11.Tranquilo
– Bonus Track –
12.Cars, Trucks, Buses
アルバムについて
黒を基調とした前作『Therapy』のジャケット・デザインから打って変わって、本作『Made For Pleasure』は全体が赤色のハーフトーン調で統一されています。
相変わらずオシャレなアルバム・ジャケットが素晴らしいですね♪
内ジャケには、ニューマスターのメンバー、ギタリストのエディー・ロバーツにキーボーディストのジョー・タットン、ベーシストのピーター・シャンド、ドラムのサイモン・アレンが揃ってライヴ演奏している写真が使われています。
驚くのがエディー・ロバーツの見た目の変化です。
エディーは初期の頃はイギリス人らしい(?)ビートルズ風のマッシュルーム・ヘアーをしている時期がありました。
それまでのライヴにおいては、着古したジーンズにネルシャツという僕ら日本人がよく見かける「外国の若者」の格好をしていました。
それがこの時期から、髭を整え髪形もジェルで固めてスーツを着用するようになりました。
本作の日本盤のライナーノーツには、「彼はお洒落で、バシッと格好をきめることでも知られ、その様はまさに英国人という所感を見る者に与えるだろう。」などと書かれていて、まるでエディーがデビュー当時からこの格好でライヴしていたかのような印象を受けますが、違います!
エディーがスーツ姿でライヴを行うようになったのは、2014年辺りからです。
それまでのデビューから10数年間は、日本のフジロック出演時とか特別な時以外はネルシャツにジーンズというラフな出で立ちでライヴをしていました。
2014年辺りからは、現在に至るまでスーツ姿でライヴをするようになりました。
エディーも年を取ったのでこういったスーツ姿でステージに立つようになったのでしょうね。
ただ、他の3人のメンバーは相変わらずラフな格好のままですが…。
ちなみに本作リリース時点で、エディーには20歳になる娘さんがいるみたいでした。
その娘さんにエディーが「ニューアルバム用にカヴァー曲を収録したいんだけど、何か好きな曲とかある?」と聞いた際に、娘さんがオーストラリアの女性シンガー、イギー・アゼリアの全米No.1ヒットソング”Fancy”を挙げたようです。
そのことがきっかけで、本作には”Fancy”が収録されています。
ただ驚くのが、前作の『Therapy』に収録されていたブルーノ・マーズの”Treasure”みたいにそのままインストで演奏したのではなく、全く別のレゲェ調にアレンジしているのは必聴です!
それではアルバムの中身を見ていきましょう。
アルバムの内容
本作にもいくつかのカヴァー曲が収録されていますが、基本はニューマスターのオリジナル曲で構成されています。
1曲目の”Made For Pleasure”は、まさにニューマスターらしい「ミーターズ風」のオリジナル曲です。
エディーの急降下するトレモロ・ピッキングのイントロを合図に、ミーターズの楽曲のようなファンキーなギターリフ、アート・ネヴィル風のオルガンのロングトーン、そして緩い曲調なのにグルーヴはしっかりとしている鉄壁のリズム隊!…と、まさに僕のようなニューマスター・ファンが求める楽曲です♪
発売当時にまずはこの曲を聴いて「よかった~いつものニューマスターだ!」と嬉しくなったのを思い出します。
またいつものニューマスターのパターンなのですが、過去のミーターズ風の名曲”Hole In The Bag”や”You Mess Me Up”と同じく、こういった楽曲ではエディーのギターソロはありません。
エディーはカッティングで楽曲を引っ張っていくことに専念しています。
次の2曲目”High & Wide”は、ミーターズだけでなくニューマスターが影響を受けているもおうひとつのファンク・バンド、ザ・JBズのようなブラス・ファンク曲です。
ゲストにジョー・コーヘンのサックスとマイク・オルモスのトランペットが参加して、楽曲を盛り上げてくれています。
エディーはワウギターでバッキングに徹していて、ソロを弾くのはジョー・タットンのオルガンと2人のホーン奏者です。
しかしこの曲がかっこよく、まさに70年代のファンク全盛期を思い起こさせる名曲でもあります♪
ただし、ライヴではホーン隊がいないと演奏できないのが難点ですね。
3曲目”Enough Is Enough”は、先ほどのホーン隊だけでなく女性シンガーのチャーリー・ローリーが歌う怪しげな雰囲気のファンク曲です。
これがなかなか良い曲で、本作の怪しげなアルバム・ジャケットのデザインのイメージにもあった楽曲です。
いつの間にか、自分たちで歌うことをやめたニューマスターなのですが、正解だと思います。
やはり「ちゃんと歌える」専属のボーカリストをゲストで起用した方が歌が上手いので安心して聴くことが出来ます。
4曲目”Fancy”が上記でもご紹介していたイギー・アゼリアのカヴァー曲です。
エディーの娘さんによる選曲のようですが、原曲のメロディーラインを残しつつも全く別のアレンジでカヴァーしています。
なんと、スペルバインダーというMCを起用してレゲェ風にアレンジしています。
ベーシストのピート・シャンドが別でレゲェ・バンドをやっていたり、他にもニューマスターのライヴではジャマイカのボーカル・グループのデイヴ&アンセル・コリンズ の1971年の曲”Double Barrel”をカヴァーしていたりと、ニューマスターは何かとレゲェには挑戦していたりします。
残念ながら日本のライヴではやってくれることがないのですが、海外のライヴでは最後に”One Note Brown”を演奏する際に、最初はレゲェ調に演奏して、その後スピードアップしてファンクに戻って終わるのが定番だったりします。
ニューマスターとレゲェ、実はこの曲のアレンジが初めてではなく昔から関係があったりするんですよね。
5曲目”Cigar Time”は、最近でもライヴでちょくちょく演奏されているエディー・ロバーツのギターが活躍するジャズファンク風の楽曲です。
ここまでの4曲はエディーのギターソロがなかったので、ようやくソロを聴くとこが出来ます。
もちろんいつもの如く、後期グラント・グリーン+アイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズからの影響を感じさせるジャズファンク・マナーに沿ったギターソロです。
6曲目”Joy”は、再びチャーリー・ローリーが歌うファンク曲です。
こちらの方は先ほどの”Enough Is Enough”よりもキャッチーなメロディーラインを持った軽快なテンポの楽曲です。
まるでレア・グルーヴ界で人気の女性シンガー、アリス・クラークが歌いそうな楽曲なのですが……
実は2015年のニューマスターのライヴではチャーリー・ローリーをゲスト・ボーカリストに迎えアリス・クラークの”Never Did I Stop Loving You”をカヴァーしていたりもします。
ミーターズやザ・JBズにグラント・グリーンにレゲェだけでなく、ニューマスターはレア・グルーヴ系からも影響を受けています。
ニューマスターは海外のライヴではコアなレア・グルーヴ曲を数多くカヴァーしています。
なぜか日本ではあまり披露することはないのですが、レア・グルーヴ好きなら「おぉ!これはマニアックな選曲!」と驚くような楽曲を引っ張り出してくるので嬉しかったりします。
僕がライヴ・バンドとしてのニューマスターが好きな理由のひとつでもあります♪
7曲目”Sitting On My Knees”は、英国のヴィブラフォン奏者デイヴ・パイクが「デイヴ・パイク・セット」名義で1969年に発表した楽曲です。
原曲にはドイツ出身のフォルカー クリーゲルがギタリストで参加していたのですが、どうやらエディー・ロバーツは彼からもかなり影響を受けているように思われます。
本作でエディーが弾くギターソロは、まるでフォルカー クリーゲルが弾いているのとリズムの取り方まで似ていたりします。
グラント・グリーンやアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズだけでなく、こういったレアなギタリストからも影響を受けているんですね。
ちなみにこの曲も”Cigar Time”と同じく、最近のライヴでもよく演奏しています。
原曲ではヴィブラフォンが主体なのですが、本作ではエディー・ロバーツのギターが中心となっていて、本作でも一番熱く長いギターソロを聴ける楽曲です。
特にソロの盛り上がり部分でダブルストップを半音スライドさせて高速トレモロ・ピッキングで何度も弾くお決まりのフレージングは、相変わらずの熱さですね!
続く8曲目”Let’s Do Another”は、ニューマスターのオリジナル曲で、マイク・ディロンというヴィブラフォン奏者がゲストで参加しています。
面白いことに先ほどの”Sitting On My Knees”ではなく、なぜかこちらの方にヴィブラフォンが入っているんですよね。
ちなみにマイク・ディロンは、ヴィブラフォンだけでなく、インドの打楽器タブラも演奏しています。
そこに2管も交えて、ジャムセッションのような雰囲気で演奏された楽曲です。
ギターソロはなく、代わりにジョー・タットンがフェンダー・ローズらしきエレピでソロを弾いています。
9曲目”Pho Baby”もニューマスターのオリジナル曲で、過去のアルバムでもちょくちょく見られたスローテンポのサイケデリックな楽曲です。
中盤からエディーのギターソロも登場して徐々に盛り上がっていきます。
10曲目”Just Gotta Run”は、女性シンガーのチャーリー・ローリーが三度目の登場です。
この曲もアリス・クラーク風の楽曲で、60年代ソウルを思わせる演奏です。
エディーのリズムギターも、ブッカー・T&ザ・MG’sのギタリスト、スティーブクロッパーやコーネル・デュプリーが弾いていそうなR&Bマナーに沿ったフレージングです。
11曲目”Tranquilo”も2管のホーン隊が登場する楽曲です。
“High & Wide”と”Let’s Do Another”とこの曲は、ニューマスターのメンバーとジョー・コーヘンとマイク・オルモスが共作した楽曲です。
リー・ホーガンズやエティエンヌ・チャールスが演奏していそうな、今風のヒップなジャズ曲といったところでしょうか。
LP盤だとここまででアルバムは終わるのですが、CDにはボーナストラックとしてジャムバンドフィッシュのカヴァー曲”Cars, Trucks, Buses”がオマケで収録されています。
ニューマスターにもジャムバンド的要素があるので、なかなか相性の良いカヴァー曲です♪
ミーターズ風のオルガンのメロディーも原曲に忠実に再現されています。
エディーのワウペダルを使った弾きまくりギターソロも聴けるので、ボーナストラック扱いでも収録してくれて良かったな~といった良い出来です♪
以上、【ザ・ニュー・マスターサウンズの10枚目のスタジオ盤『Made For Pleasure』を聴こう♪】でした。
このサイトをブログ化して以来、ずっと続けてきたニューマスターのアルバムを個別にご紹介するこのシリーズも、いよいよ10作目のスタジオ作をご紹介するに至りました!
やっと現行のニューアルバムに追いつきそう⁉と、思っていた矢先に先日、最新作となる『Shake It』がリリースされちゃって…完結までまた1作増えましたが…
今後もニューマスターの作品ご紹介は続きますので、ぜひまたこのブログを読みに来てください。
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