
2019/08/04
ドナルド・バードをゲストに迎えたソニー・ロリンズ1978年のライヴ盤 『Don’t Stop The Carnival』を聴こう♪
ドナルド・バードをゲストに迎えたソニー・ロリンズ1978年のライヴ盤 『Don’t Stop The Carnival』をご紹介します。
トニー・ウィリアムスの参加も魅力的な白熱のライヴ盤!
今回は、このブログでもお馴染みの僕の好きなサックス奏者のソニー・ロリンズのライヴ盤のご紹介です。
ロリンズのライヴ盤といえば、今年6月に1973年『東京中野サンプラザ』にて行った来日公演の様子を収録したコンプリートCD盤『Complete Sonny Rollins In Japan』をご紹介していました。
ソニー・ロリンズが1973年に『東京中野サンプラザ』にて行った来日公演のコンプリートCD盤を聴こう♪
今回はそれから5年後の1978年にサンフランシスコのグレイト・アメリカン・ミュージック・ホールにて行ったライヴ盤 『Don’t Stop The Carnival』をご紹介したいと思います。
Sonny Rollins – 『Don’t Stop The Carnival』
01.Don’t Stop The Carnival
02.Silver City
03.Autumn Nocturne
04.Camel
05.Introducing The Performers
06.Nobody Else But Me
07.Non-Cents
08.A Child’s Prayer
09.President Hayes
10.Sais
Personnel:
Sonny Rollins – Tenor Saxophone
Mark Soskin – Electric Piano, Piano
Aurell Ray – Twelve-String Guitar
Jerry Harris – Electric Bass
Tony Williams – Drums
[Guest Musician]
Donald Byrd – Trumpet, Flugelhorn on Tracks 06 to 10
Recorded in performance at the Great American Music Hall, San Francisco on April 13, 14 and 15, 1978.
アルバムの内容
本作の基本編成は、元マイルス・デイヴィス・バンドに在籍していたドラムの名手トニー・ウィリアムスを含むワンホーン+ピアノ+ギター+ベースのクインテットになります。
ドナルド・バード6曲目からゲストで登場しています。
もちろん全ての演奏曲のテーマメロディーを吹くのは、リーダーのソニー・ロリンズになります。
1曲目”Don’t Stop The Carnival”は、ジム・ホールが参加したソニーロリンズの60年代の名作『What’s New?』に収録されていたカリプソ・ナンバーです。
ロリンズの作曲によるこの楽し気なカーニバル曲は、彼の十八番とも言える得意曲です。
もうひとつの代表曲である”St. Thomas”と同じ様にライヴの定番曲でもあります。
『Complete Sonny Rollins In Japan』の方には”St. Thomas”が収録されていたので、本作には”Don’t Stop The Carnival”を収録したという感じでしょうか⁉
ロリンズのお馴染みのイントロから始まって、オーレル・レイの弾く弾むようなリズムギターと70年代後半らしいフュージョン風のエレピの音色がバックを支えます。
しかし何と言っても本作の一番の魅力は、ドラムのトニー・ウィリアムスです!
ロリンズと比べて、目立たないイマイチなピアノ、ギター、ベースがいる中、バックの演奏陣ではやはりトニー・ウィリアムスの腕前が飛びぬけています!
このバンドの中で唯一、ロリンズと同レベルで演奏できるのはさすがといったところですね。(トニー・ウィリアムスからしてみれば、それぐらいできて当然と言えば当然ですが……)
バンドにおいて、いかにドラムが重要か?特にインプロヴィゼーションを要とするアドリブ音楽にとってドラムの盛り上げ方がいかに楽曲に作用するのか?といったことが感じられます。
フラジオ奏法も含むロリンズのはっちゃけぶりも、トニーのドラミングがあったからこそ!だと思います。
1曲目が終わると、2曲目はロリンズ作の軽快なジャズ曲”Silver City”で、3曲目にはジョセフ・マイローが書いた名バラード曲”Autumn Nocturne”と続きます。
“Autumn Nocturne”は、1964年の作品『The Standard』にも収録されていた曲です。
ここでは約4分間に渡りロリンズの独奏が繰り広げられています。
その後、観客席からの拍手と共にバンドが入ってきて再び盛り上がって終了します。
4曲目”Camel”は、ロリンズ作のジャズ・ロック曲です。
曲調的にギターが活躍する楽曲なのでギター・ソロ聴くことが出来ます。
ここでロリンズによるメンバー紹介を挟んだ後、6曲目の”Nobody Else But Me”からドナルド・バードが参加します。
ロリンズはドナルド・バードのトランペットがお気に入りだったようで、本来であれば代表作となった『Saxophone Colossus』にもバードの参加を希望していたようです。
またドラムにエルヴィン・ジョーンズを迎えて制作されたライヴ盤『A Night At The “Village Vanguard”』の収録も、バードを含むクインテットで録音が行われる予定だったようです。
残念ながらそのどちらもお互いの都合により実現しませんでしたが、もし『Saxophone Colossus』にドナルド・バードのトランペットが入っていたならどう仕上がっていたのだろう?と思いを膨らませてしまいますね。
さて、”Nobody Else But Me”はさっそくそのバードのトランペットによる独奏イントロから始まります。
ジェローム・カーンが作曲したこの名曲を、ロリンズとバードによる贅沢な2管の絡み合いで味わうことが出来ます。
途中、トニー・ウィリアムスによる卓越したドラム・ソロなんかも挟んでいます。
7曲目”Non-Cents”は、バードのバックバンドだったブラックバーズのメンバーでピアニストのケヴィン・トニーが書いたジャズ・ロック曲です。
スカイハイ時代も良いですが……やはりドナルド・バードと言えば、こういったジャズ・ロックが一番だと僕は思います。
リー・モーガンと同じくジャズ・ロックを早い時期から演奏していたミュージシャンですからね!

ソロ回しは、テナーサックス→エレピ→トランペット→ギターの順番です。
どう考えてもストレート・アヘッドなスウィン系ジャズを演奏するようなタイプではないギターのオーレル・レイも、こういったジャズ・ロック曲だとバッキングにソロに……大活躍です。
8曲目”A Child’s Prayer”と9曲目”President Hayes”は、どちらもドナルド・バード作のゆったりとしたバラード調の楽曲です。
といっても、ところどころでトニー・ウィリアムスのドラムが暴れまくっていますが……。(笑)
まぁトニー・ウィリアムスがバラード曲で暴れまわるのは、マイルス・バンド時代のライヴ盤『My Funny Valentine』からのお決まりですからね。
こちらもトニーが暴れまわるのを期待している部分も少しあったりします。(笑)
最後の10曲目”Sais”は、『Complete Sonny Rollins In Japan』でも演奏していたパーカッション奏者のエムトゥーメ作のジャズ・ロック曲です。
時代性などもあってか、本作ではこの曲や”Non-Cents”の出来が素晴らしいと感じられます。
それはドナルド・バードのゲスト参加というよりも、トニー・ウィリアムスやオーレル・レイの2人に拠るものだとも感じられます。
音楽のジャンルって、リズム隊の演奏で決まったりしますからね。
今どきのジャジー・ヒップホップやネオソウルの楽曲であったとしても、バックのリズムがヒップホップ調になっているだけで、メロディーラインにはニューオーリンズの伝統的なディキシーランド・ジャズ時代から連綿と続くミクソリディアン・スケールを使用したフレーズが用いられていたりします。
例えば、ソウルクエリアンズ時代のロイ・ハーグローヴなんかは、ディアンジェロの”Feel Like Makin’ Love”において、まるでサッチモのようなフレーズをオブリガードで吹いているのですが、現代的なリズムに乗せて吹くことでオシャレに仕上がっていたりします。
どうしてもフロントマンのリード演奏が目立つのはバンドにおいて仕方のないことですが、しかしバックを支えるリズム隊の重要さ、特にドラムの重要さがわかるよな作品の一つだと本作も言えると思います。
ゲスト参加のドナルド・バードも魅力的ですが、何だかんだでリーダーのソニー・ロリンズとそのバックを支えるトニー・ウィリアムスとの化学反応を楽しむライヴ盤ですね♪

以上、【ドナルド・バードをゲストに迎えたソニー・ロリンズ1978年のライヴ盤 『Don’t Stop The Carnival』を聴こう♪】でした。
僕が個人的にトニー・ウィリアムスのドラミングが好きなために、「トニー推し」な内容とはなりましたが……(笑)
しかしやはりトニー・ウィリアムスのドラミングはズバ抜けているので、本作はトニーのドラム目当てで聴いても悪くはないと思います。
もちろんソニー・ロリンズとドナルド・バードの豪華な2管によるジャズ・ロック曲も楽しめますので、おすすめのライヴ盤です♪
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