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2021/01/18

オルガン奏者リューベン・ウィルソンのソウルジャズ/ジャズファンク系おすすめアルバムまとめ

オルガン奏者リューベン・ウィルソンのソウルジャズ/ジャズファンク系おすすめアルバムまとめたブログ記事のタイトル画像です。

オルガン奏者リューベン・ウィルソンのおすすめアルバムまとめ

グラント・グリーンやメルヴィン。スパークスとも共演した熱きオルガン奏者リューベン・ウィルソン!

このブログでも何度か登場しているオルガン奏者のリューベン・ウィルソンは、1945年4月9日に米国オクラホマ州マウンズにて誕生しています。

 

同じオルガン奏者の”ビッグ”・ジョン・パットンとは同い年で、ひとつ年下にジミー・マグリフがいます。

 

オルガンを弾き始めたのは27歳の頃と、わりと遅いようにも感じられますが、ジミー・スミスなどと同じように元はピアノを弾いていたようです。

 

リューベン・ウィルソンを取り上げた古い記事によっては、「ピアノ経験なし」のように書かれているものもあるようですが、リューベン本人も過去にピアノを弾いていたことを語っているので事実無根の情報となります。

 

さすがに27歳になって初めての楽器でオルガンを弾き始めて、ここまで熱い演奏を出来るようになったというのは無理がありますからね…。

 

僕自身もギターを弾くので、さすがに20代後半から楽器を始めてここまでうまくなれることは不可能に近いんじゃないだろうか?と思います。

 

さて、そんなリューベン・ウィルソンですが、自身のリーダー作を制作したデビューも遅く、1968年の33歳になってからでした。

 

しかしデビューが遅かったこともあってか、時代に恵まれたというちょっとした幸運もあったのではないか?と思います。

 

それまでストレートなジャズ作品としては注目を浴びていなかった「オルガン」という楽器が、ロックやソウルの台頭によって「重要な楽器のひとつ」と認められていった時代でもありました。

 

ロックバンドとしても、ドアーズの「ハートに火をつけて (”Light My Fire”)」やプロコル・ハルムの「青い影(”A Whiter Shade of Pale”)」が流行ったのが1967年でしたからね。

 

オルガンが大活躍するこの2曲がヒットした次の年にリューベン・ウィルソンは、ブルーノート・レーベルからリーダー作を出してデビューを飾っています。

 

ちょうどハード・バップや新主流派(モードジャズ)が主流だったジャズ界が、他の音楽ジャンルとの融合を始めていった時代でもありますね。

 

ジャズロックやソウルジャズ、そしてオルガンを主役にしたジャズファンク系の作品が数多く制作された時期です。

 

それでは今回は、リューベン・ウィルソンが60年代後半~70年代半ばまでに制作したソウルジャズ/ジャズファンク系のおすすめアルバムをまとめてご紹介したいと思います。

 

中には、ジャズファンク・ギターの名手グラント・グリーンやメルヴィン・スパークスが参加した名盤もありますので要チェックです!

 

 

Reuben Wilson – 『On Broadway』

1968年にブルーノート・レコードからリリースしたリューベン・ウィルソンにとっての初リーダー作がこの『On Broadway』です。

 

ギターにマルコム・リディック、ドラムにトミー・デリックを起用したオルガントリオ編成に、テナーサックス奏者のトレヴァー・ローレンスを加えたカルテットで制作されています。

 

デビュー作の冒頭を飾る”On Broadway”は、後にジョージ・ベンソンの名演でより有名になったR&Bグループのザ・ドリフターズが1963年に発表した全米9位を記録したヒット曲です。

 

もはや単なる「ジャズ」とは呼べないようなキャッチーな歌モノ楽曲から始まるのが時代を象徴していますね。

 

「ジャズ」も他ジャンルと混じり合っていかないと生き残れない時代となったのでした。

 

ビ・バップ時代から活躍していたルー・ドナルドソンのような旧世代のジャズマンは、仕方なくポップスやR&B曲を演奏していたようですが、リューベン・ウィルソンなんかは楽しんでこういった楽曲を演奏していたんじゃないかな?と思われます。

 

というのも、もはや旧世代の「ストレート・アヘッドなおジャズ」の枠を超えて、「良い曲ならなんでもジャズの方程式に当てはめて演奏しちゃうぞ!」といったポジティヴな気持ちがリューベンの熱いオルガン演奏から感じられるからです。

 

何でも良い物をごちゃまぜにする!といった柔軟な考え方を、僕は個人的には好きなので、従来の枠にとらわれない自由な発想はとても良いと思います。

 

1~3曲目まではR&Bのヒット曲のカヴァーが続きます。

 

“On Broadway”に始まり、2曲目”Baby I Love You”はアレサ・フランクリンで、3曲目”Ain’t That Peculiar”は「冷たいあの娘」の邦題で知られるマーヴィン・ゲイのヒット曲です。

 

“ビッグ”・ジョン・パットンも取り上げていたオルガンジャズとの相性の良いR&B曲ですね♪

 

ブーガルー風のビートを取り入れた4曲目”Ronnie’s Bonnie”はリューベンのオリジナル曲です。

 

どこかで聞いたことあるメロディーだな~といった曲調なんですがね。(笑)

 

アルバム最後に収録されている5曲目の”Poinciana”は、ジャズピアノ好きにはアーマッド・ジャマルが取り上げたことで有名な曲ですね。

 

キューバのフォークソングを元にナット・サイモンが1936年に書いた楽曲です。

 

本作の主役はあくまでもリューベン・ウィルソンなので、各収録曲のメインテーマを弾くのはオルガンとなります。

 

そのため「ソウル色」の濃い演奏を全編で聴くことができます。

 

“Ain’t That Peculiar”のみサックスがテーマを吹いています。

 

ほとんどの曲ではテナーサックスは、ソロもしくはちょっとしたオブリガートを吹く程度の脇役に徹しています。

 

そういった意味ではバッキングもこなすギターのマルコム・リディックの方が目立っているかもしれません。

 

といっても、ギターソロは「グラント・グリーン直系の…」といった物真似のようなフレージングばかりで、個性的とは言い難いのですが…。

 

特に”Baby I Love You”で弾いているトレモロピッキングの弾き方や、”Ain’t That Peculiar”や”Ronnie’s Bonnie”で弾いている同じフレーズを繰り返すようなギターソロは、グラント・グリーンそのままですからね。

 

しかしこういったギターソロがオルガンと最も相性が良いと言うことは否定できませんからね。

 

やはり本作で一番の聴くべきパートはソウルフルで熱いオルガンソロです!

 

ギターを聴くなら、次にご紹介する作品を聴きましょう!

 

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おすすめ曲は、1,3,4

Reuben Wilson – 『Love Bug』

リューベンの作品でギターを聴くなら、本作品『Love Bug』にしましょう!

 

なぜなら「オルガン系ジャズファンク」におけるギターの始祖とでもいうべきグラント・グリーンが参加しているからです。

 

むしろ本作は、この時期、薬物中毒及び刑務所での服役から復活してミュージシャンとして絶好調にあったグラント・グリーンを聴くべき作品でもあります。

 

本作にはグラント・グリーンをはじめ、トランペット奏者のリー・モーガンに、マイルス・デイヴィスのバンドにも在籍していたテナーサックス奏者のジョージ・コールマン、そして改名後のアイドリス・ムハマッドの名で知られるレオ・モリスがドラムで参加しています。

 

よくよく考えてみると…当時のブルーノート・レコードに於いても既に人気者の錚々たる面子が、デビューしてからまだ間もない新人オルガン奏者の2作目に参加しているのですからね。

 

そのためもあってか?幾分、先輩方に気を遣ってか控えめなオルガン演奏に感じられなくもないです。

 

まぁ仕方ないですよね…リー・モーガンにグラント・グリーンですよ!

 

今となってはレジェンドの2名がフロントを張っているんですから緊張しない方がおかしいですよね。(笑)

 

というわけで、本作はキレッキレのギターソロを弾きまくるグラント・グリーンを聴きましょう!

 

本当にこの時代のグラント・グリーンは、「ジャズファンクの神様」が乗り移ったかのようなテンションの高いギターソロを弾きまくっているんです!

 

1968年以降のグラント・グリーン作品は、本作のようなサイドマンで参加した作品であっても聞き逃しできません!

 

もはや理解不能なぐらいにどれもキレッキレで素晴らしいギターソロばかり弾いていますからね。

 

手癖で弾いているのに外れのないギターソロは、まさにブルースマンでいうところのB.B.キングのようでもあります。

 

何も素晴らしいギターソロを弾くのに「なんちゃらかんちゃらハーモニーがどうたらこうたらコンビネーションでディミニッシュなスケール!」とかいらないんです。

 

キレッキレのグルーヴや独特のタメさえあれば、メジャー+マイナー・ペンタトニックのミックス・ペンタだけで歴史に残るようなギターソロを弾くことは可能です!

 

その証拠が本作に於けるグラント・グリーンやB.B.キングの諸作品ですね。

 

大先輩達を前に遠慮気味のリューベンや、マイルス・バンド時代から物足りなかったジョージ・コールマンはさておき…この時代絶好調にあったグラント・グリーンと、いつも最高の演奏を聴かせてくれるリー・モーガンを聴きましょう♪

 

ちなみに本作収録の”Hot Rod”と”Love Bug”と”Back Out”の3曲がリューベンのオリジナル曲になります。

 

どれもオルガン系ジャズファンクによくあるパターンの楽曲ですが、キャッチーなテーマメロディーが印象に残ります。

 

そしてそのどれもでグラント・グリーンが、主役のリューベンをほったらかしにしてテンションの高いギターソロを弾きまくっています!

 

心なしかドラムのレオ・モリスもグラントのソロの時にドラムの手数が多くなっているような…。

 

“Love Bug”のギターソロの弾き始めなんかは、グラントの自作曲”Upshot”と似たメロディーを弾いていたりしますからね。

 

もはや自分のリーダー作と勘違いして手癖フレーズを弾いてしまって…「あ、そうだった。これは新人君のリーダー作だった…いっけね!」って感じで瞬間に思い出して、アドリヴギターソロに移ったようにも感じられます。

 

リューベンの自作曲以外の3曲はカヴァー曲になります。

 

2曲目の”I’m Gonna Make You Love Me”はダイアナ・ロス&ザ・シュープリームスとザ・テンプテーションズ共演した1968年当時の最新ヒット曲です。

 

「小さな願い」の邦題で知られる3曲目の”I Say Little Prayer”は、バート・バカラックが書いた曲です。

 

ディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリンが歌った有名曲ですね。

 

そしてザ・ミーターズもカヴァーした5曲目の”Stormy”は、「ソフトサザン・ロック」のサウンドを確立した米国フロリダ州出身のバンド、ザ・クラシックス・フォーの曲です。

 

正直言いますと…このどれもの楽曲をグラント・グリーンのリードギターで聴きたかったかな…と本音を漏らしたくなります。

 

それぐらいこの時期のグラント・グリーンのテンションの高さは異常だと言えます。

 

あくまでも主役はリューベン・ウィルソンなのですが…グラント・グリーンが凄すぎるアルバムでもあります!

 

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おすすめ曲は、1,3,4,6

Reuben Wilson – 『Blue Mode』

こちらも主役がギターなのでは?…と勘違いしてしまいそうになるアルバムの『Blue Mode』です。

 

というのは、グラント・グリーンの次にジャズファンク・ギタリストとして知名度も実力も備えた名手メルヴィン・スパークスが参加しているからです。

 

しかも1曲目は、メルヴィンの自作曲になります。

 

メルヴィン自身も後に2005年のアルバム『This Is It!』でこの曲を再録していたりもします。

メルヴィン・スパークスのジャズファンクギターが冴え渡る!2005年の名作『This Is It!』を聴こう♪

また晩年のメルヴィンのライヴでは、毎回のようにこの曲が演奏されていました。

 

どことなくロニー・スミスの1968年作品『Think』に収録されていた”Son Of Ice Bag”を彷彿させますが、そちらにもメルヴィン・スパークスはギターで参加していましたからね。

 

前作のグラント・グリーンの時ほど遠慮がなくなったように感じられなくもないリューベンの熱いオルガンソロも登場しますが、それにも増してメルヴィンのギターソロが凄まじいです!

 

ていうか、デビュー時以外でメルヴィンのギターソロが凄まじくなかったなんてことは記憶にないほどなのですが…この時代から凄かったんですよね。

 

ジョン・マニングのピッチが不安定なサックスソロや、頑張って弾いているリューベンのことを忘れそうになるぐらいテンションの高いギターソロです!

 

特に連続スウィープ奏法が登場する2分44秒辺りから3分37秒辺りで聴くことが出来る連続ハーモナイズド・チョーキングのたたみ掛けるようなフレーズは「凄い!」の一言です。

 

2曲目”Knock On Wood”は、バディ・ガイのカヴァーでも知られるエディ・フロイドのヒット曲です。

 

とっても普通にテーマを弾くリューベンのバックで、ファンキーなことこの上ないメルヴィンのリズムギターが冴え渡っています。

 

ジョン・マニングのサックスソロは置いといて…リューベンも熱いオルガンソロを披露しているのですが、この曲でもメルヴィンの勢いのあるギターソロに分があります。

 

「これってメルヴィン・スパークスのリーダー作だったっけ?」と思ってしまうのも仕方のないことです。

 

3曲目”Bus Ride”はリューベンのオリジナル曲なのですが、まるでメルヴィン作の1曲目”Bambu”の影響を直に受けて作ったかのような似た曲です。

 

4曲目”Orange Peel”もリューベンのオリジナル曲なのですが、メルヴィンはこの曲を気に入っていたのか?晩年のライヴでも度々取り上げていました。

 

本作でもメルヴィンのファンキーなギターカッティングが印象的です。

 

「オルガン系ジャズファンク曲はかくあるべき!」と言えるようなグルーヴィーな楽曲です♪

 

残念なのはメルヴィンがリズムギターに徹していて、ソロを弾いていないことです。

 

この時にソロを弾かなかったから晩年になって「本当ならこういうソロを弾きまくりたかったんだよ~」ってな感じで取り上げていたのでしょうか!?

 

真意は神のみぞ知るといったところですね。

 

ジョン・マニングの酔っ払いのようなサックスソロはともかく…リューベンのオルガンソロは、タメを活かした素晴らしい演奏です♪

 

5曲目”Twenty-Five Miles”は、エドウィン・スターが1969年にヒットさせた当時の最新曲です。

 

調子外れのサックスがオルガンとユニゾンでテーマを弾いているのですが、「このサックス奏者をなぜ起用したのだろうか?」と疑問に感じてしまいます。

 

シンプルにオルガントリオでよかったでしょうに…。

 

もちろんこの曲でもメルヴィンがギターを弾きまくっています!

 

グラント・グリーンのシーケンスフレーズを更にスピードアップして進化させたたたみ掛けるようなフレージングが楽曲を最高潮に盛り上げてくれています。

 

アルバム最後の6曲目”Blue Mode”はリューベンのオリジナル曲です。

 

2014年にデビューしたディープファンク・バンドのブルー・ムードが本作からバンド名を付けたのかどうかはわかりませんが…影響は受けているんじゃないかな?…と。

ソウライヴやザ・ニュー・マスターサウンズ好き必見!ディープ・ファンクのおすすめアルバム20選‼

しかし、アルバム最後の曲がイマイチなサックスソロで終わってしまって、台無しになっちゃった…そんな感じです。(笑)

 

リューベンとメルヴィンにドラムのトミー・デリックのトリオ編成で制作した方が良かったんじゃないだろうか?…と感じてしまう終わり方ですね。(笑)

 

サックス奏者が余計ですが、その後も何度か共演することになるメルヴィン・スパークスとの相性の良さが窺える素晴らしい作品です♪

 

特にカヴァー曲よりも自作曲の質が向上したことがリューベンのミュージシャンとしての成長を感じさせてくれます。

 

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おすすめ曲は、1,4,6

Reuben Wilson – 『A Groovy Situation』

こちらも名門ブルーノート・レコードから1970年にリリースされた作品『A Groovy Situation』です。

 

本作は1曲目の”While The World Lies Waiting”と2曲目の”Sweet Tooth”以外はカヴァー曲になります。

 

また前2作品のように、グラント・グリーンやメルヴィン・スパークスのようなズバ抜けたギタリストは参加していません。

 

その代わり(?)といってはなんですが、本作には素晴らしいサックス奏者が参加しています。

 

それはリー・アレンやアルヴィン・レッド・タイラーに続くニューオーリンズのR&B系サックス奏者の名手アール・タービントンです。

 

またギターには、”ブラザー”・ジャック・マクダフやフレディー・ローチ等のオルガン奏者との共演歴もあるエディ・ダニエルが参加しています。

 

リューベン曰く「過去に共演して特に楽しい気分を与えてくれたミュージシャンばかりを選んだ」ということです。

 

冒頭を飾るリューベンの自作曲2曲も、これまで以上にハッピーなフィーリングを詰め込んだノリの良い楽曲となっております。

 

3曲目の長い曲名”If You Let Me Make Love To You Then Why Can’t I Touch You?”は、1969年9月からNYで上演された人気ミュージカルの『サルベーション』からの楽曲です。

 

ミュージカルの曲をジャズマンが取り上げるのは常套手段ですからね。

 

4曲目”A Groovy Situation”はジーン・チャンドラーのヒット曲で、5曲目”Happy Together”はロック・バンドのタートルズのヒット曲です。

 

そして6曲目”Signed, Sealed, Delivered, I’m Yours”は、本作収録曲の中でも一番の知名度を誇るスティーヴィー・ワンダーの有名曲のカヴァーです。

 

こういったR&B系の曲を吹かせたら天下一品のアール・タービントンのソウルフルなソロが聴きものです。

 

また”One of the best-kept secrets in Jazz(ジャズ界最高峰の秘宝のひとり)“と称されたエディ・ディールのキレのあるギターカッティングやツボを押さえたギターソロも最高です。

 

最後の”Signed, Sealed, Delivered, I’m Yours”以外はパッとした曲がないのが少し残念ではありますが、その分味わい深い名手が参加した作品なので、素晴らしい演奏を堪能することが出来る隠れた名作です♪

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おすすめ曲は、1,2,4,6

Reuben Wilson – 『Set Us Free』

ブルーノート・レコードでの最終作となった1971年の『Set Us Free』は、それまでの作品の雰囲気と一線を画しています。

 

クロスオーバー時代という時の変化もありますが、何よりも本作にはジーン・ビアンコのハープだったり女性コーラスやコンガなどのパーカッション類など多彩なサウンドが加わっているからです。

 

またギタリストには名セッションマンのデイヴィッド・スピノザが参加しています。

 

良くも悪くも手癖一辺倒なグラント・グリーンやメルヴィン・スパークスとは違いを感じさせます。

 

それに、これまでの作品ではベースパートを全てリューベン自身がオルガンで弾いていたのですが、本作にはエリック・ドルフィーやマイルス・デイヴィスのバンドにも参加していたリチャード・デイヴィスがベースで参加しています。

 

サウンドの幅が広がったためか、楽曲の方も従来のジャズファンクとは違ったオシャレな楽曲が多く感じられます。

 

エディ・ハリス作の1曲目”Set Us Free”からコテコテだった前作までとは違っています。

 

ケニー・バレルとも共演経験のあるサックス奏者のジェローム・リチャードソンが、ソフトで爽やかなソプラノ・サックスを吹いています。

リューベンの自作曲の2曲目”We’re In Love”では、「ウウゥ~♪」といった女性コーラスやジーン・ビアンコのハープが登場しています。

 

もはやジャズファンクというよりも、来るフュージョン時代を感じさせるクロスオーバーな楽曲といったところでしょうか。

 

3曲目”Sho-Nuff Mellow”もリューベンの自作曲ですが、ベースで始まるイントロからしてこれまでの作品とは違っていますね。

 

“sho nuff(ショーナフ)“とは”sure enough”=「案の定」を意味するスラングです。

 

その昔、英語を学んでいた際に、スティーヴィー・ワンダーの歌詞で”sho nuff”という言葉を知った僕は、米国黒人の先生に「ショーナフってどういう意味ですか?」と尋ねたことがありました。

 

懐かしい思い出です。

 

再び女性コーラスが登場する4曲目の”Mr. Big Stuff”は、ニューオリンズ出身の女性歌手のジーン・ナイトが1971年に発表したヒット曲のカヴァーです。

 

KARAが流行る38年も前から「ミスター、ミスター」と歌っていたんですよね。(笑)

 

でもかわいい女の子から「ミスター」と丁寧に呼びかけられるのは嫌な気分はしないですよね。(笑)

 

僕も香港に行った際に予約していた電車のチケットを取り忘れて、かわいらしい女性係員に「Mr.!」と呼び止められたことがあるのですが、悪い気はしませんでした。

 

…と、まぁ話が脱線してしまいましたが、次の5曲目”Right On With This Mess”は、1970年代に活躍した音楽プロデューサー兼アレンジャーであるウェイド・マーカスの書いた曲です。

 

グラント・グリーンの『The Final Come-down』を制作した音楽プロデューサーです。

 

肩の力の抜けたゆる~いこの曲の次には、マーヴィン・ゲイの大ヒット曲”Mercy, Mercy Me (The Ecology)”が続きます。

 

ここでもジーン・ビアンコのハープと女性コーラスが良い味を出しています。

 

ただ、こうなってしまうとリューベン・ウィルソンの持ち味まで消えてしまっていて、単なる伴奏者のひとりになってしまっているのがもったいないですね…。

 

たくさんの演奏者がいると埋もれてしまうところがジミー・スミスのような一流のオルガン奏者との違いのように感じられます。

 

最後の7曲目”Tom’s Thumb”は、リューベンのオリジナル曲です。

 

時代に合わせようとしたオシャレな曲調が、かえって過去の名曲”Love Bug”や”Orange Peel”のような印象に残るジャズファンク曲との違いを感じさせます。

 

本作は、リューベンの持ち味でもあるコテコテなジャズファンクではなく、どちらかというとフュージョン系のファンク・アルバムに感じられます。

 

ここで個性を失いかけたリューベン・ウィルソンが、この後ブルーノート・レコードを離れて、ジャズファンクの名門『グルーヴ・マーチャント』で見事に復活します!

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おすすめ曲は、1,3,6

Reuben Wilson – 『The Sweet Life』

当時、勢いを失っていたブルーノート・レコードからジャズファンクの名門『グルーヴ・マーチャント』に移籍してリリースした1972年の作品『The Sweet Life』は、ジャズファンク好き必聴の名作です!

 

もう1曲目の”Inner City Blues”から最高です♪

 

前作の”Mercy, Mercy Me (The Ecology)”と同じくマーヴィン・ゲイの歴史的名盤『What’s Going On』から取り上げられた”Inner City Blues”のカヴァーが素晴らしいです。

 

そもそもが名曲なので、よっぽど下手な演奏をしない限りは悪くなりようもないのですが…ね。(笑)

 

あの有名なベースのリフはリューベンのオルガンではなく、今回もベーシストが参加してエレキベースで弾いています。

 

ギターを担当するのは、バーナード・パーディやダコタ・ステイトンのアルバムにも参加していたロイド・デイヴィスです。

 

セルダン・パウェルや本作にもサックスで参加しているラモン・モリス等のジャズファンク系のアルバムにもよく登場するファンキーなカッティングの上手いギタリストです。

 

キレのある1曲目の次は、リューベンのオリジナル曲”Creampuff”が続きます。

 

ギターだとプリングを多用して弾いてしまいそうな音階を下降する印象的なリフをオルガンで弾く楽曲です。

 

3曲目”Sugar”は、スタンリー・タレンタインの書いた有名曲です。

 

70年代初期のクロスオーバー時代を象徴するような楽曲ですね。

 

4曲目”I’ll Take You There”は、ステイプル・シンガーズのカヴァー曲で、ゆったりとした曲です。

 

ロイド・デイヴィスのギターが、ソロにテーマリフにカッティングに…と大活躍します。

 

アルバムタイトルトラックの5曲目”The Sweet Life”もリューベンのオリジナル曲です。

 

まるで同年代のジミー・マグリフのジャズファンク作品に収録されていそうなイナタイ楽曲です。

 

アルバム最後を締めくくるのは、デイヴィッド・T・ウォーカーやジャズファンク期のグラント・グリーンを始め、数多くのソウルジャズ/ジャズファンクのアルバムで取り上げられているジャクソン5の名曲”Never Can Say Goodbye”です。

 

“Inner City Blues”と同じく、よっぽど下手な演奏をしない限りは、悪くなりようがない曲ですね。

 

しかしテーマを演奏するのは、本作のリーダーのリューベン・ウィルソンではなく、サイドで参加しているサックス奏者のラモン・モリスになります。

 

アルバム最後でサイドマンに徹するとは…リューベンって控えめな性格なのですかね。

 

アルバムの最初と最後に超有名曲で安パイを配置したようにも感じられる作品ですが、しかし全体を通してもオルガン系ジャズファンクの名作として誇れるような素晴らしい内容に仕上がっています。

 

この次にご紹介するアルバムと共に、今回のまとめの中でも真っ先に聴いて欲しい作品です。

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おすすめ曲は、1,2,5,6

Reuben Wilson – 『The Cisco Kid』

今回ご紹介する作品群の中に於いても1番の名作と言える1973年の『The Cisco Kid』は、ジャズファンク好きには必ず聴いておいてもらいたいアルバムです。

 

ファンクバンドのウォーの代表曲”The Cisco Kid”で始まる本作は、この他にも素晴らしいカヴァー曲で構成されています。

 

僕も自身のバンドでこの”The Cisco Kid”を演奏したことがあるのですが、ソロイストにとってはなんとも演奏のし甲斐がある楽曲です。

 

ついつい僕もいつもよりも長めの3分越えのアドリヴでギターソロを弾いてしまったことがある演奏者の方がノセられてしまう名曲ですね♪

 

本作のギターにはメルヴィン・スパークスが参加しているのですが、なぜかギターソロを弾かずにバッキングに徹しています。

 

ギタリストが特に輝ける楽曲なのにもったいないです…。

 

ほんと、何でなのでしょうかね?

 

メルヴィン・スパークスの弾きまくりギターソロを聴きたかったところです。

 

2曲目”The Last Tango In Paris”は、同時期のブルー・ミッチェルのジャズファンク作品(デビTも参加!)でも取り上げられていたアルゼンチン生まれのサックス奏者ガトー・バルビエリ作のオシャレな曲のカヴァーです。

 

なぜかギターソロを弾かないメルヴィンには不満が残るところですが…リューベンのオルガンがメロディアスに歌いまくっています♪

 

続く3曲目は本作のハイライトです!

 

そうです、カーティス・メイフィールドの名曲”Superfly”のカヴァーです!

 

ギターソロこそないものの、メルヴィンのギターカッティングがいい味を出しています♪

 

ガーネット・ブラウンのトロンボーン以外にクレジットがないのですが、オリジナルに負けないようなホーン隊も登場します。

 

この1曲のために購入してもいいんじゃないだろうか?と言えるジャズファンクの名演ですね♪

 

カーペンターズでお馴染みの4曲目”We’ve Only Just Begun”もカーティス・メイフィールドのカヴァーで有名ですね。

 

この曲もオルガン系ジャズファンクとの相性が良く、クラレンス・ウィーラー&ジ・エンフォーサーズや後期グラント・グリーン等、数多くのミュージシャンが取り上げています。

 

5曲目”Snaps”と6曲目”Groove Grease”は共にリューベン・ウィルソンのオリジナル曲です。

 

ジミー・マグリフの1971年のアルバム及び楽曲にも”Groove Grease”という曲名が存在していますが、全くの別物です。

 

R&B調のマグリフの曲とは違い、こちらのリューンベンの曲は4ビートのジャズ曲です。

 

余談なのですが…僕が2017年に企画していたジャズファンクのイベント名も”Groove Grease”でした。

 

この曲名から付けた、ジャズファンクを中心にしたライヴ&セッションイベントの予定だったのですが、諸々の大人の事情があって、開催できないまま…4年の月日が経とうとしています。

 

今後、この企画を開催することができるのか!?(しかも今はコロナ問題もありますからね…)

 

いつの日にか実現したいイベントのお話でした…。

 

本作最後に収録されている”The Look of Love”もソウルジャズ/ジャズファンク系に人気の画曲ですね。

 

「恋の面影」の邦題で知られるバート・バカラックが書いた曲で、映画『007 カジノロワイヤル』の主題歌として有名です。

 

2曲のオリジナル曲を除いた残りの5曲のカヴァー曲は、こういったソウルジャズ/ジャズファンク系が好きな人だったら必ずどこかで聴いたことがあるんじゃないだろうか?といった曲ばかりです。

 

それぐらいこのジャンルのミュージシャンが演奏するのに適した題材なのでしょう。

 

なぜかメルヴィン・スパークスがギターソロを弾かずに終始バッキングに徹しているアルバムですが、”Superfly”や”The Look of Love”で聴くことが出来るキレの良いギター・カッティングが魅力的です♪

 

ジャズファンク好き必聴の名盤ですので、未聴の方はすぐにでもゲットしましょう!

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おすすめ曲は、1,2,3,6,7

Reuben Wilson – 『Got To Get Your Own』

1曲目”What The People Gon’ Say”と2曲目”In The Booth, In The Back, In The Corner, In The Dark”にサミー・ターナーのボーカルを、そして5曲目の”Stoned Out Of My Mind”でケニー・ウィリアムスのボーカルを取り上げたファンク・アルバムです。

 

もはやオルガンジャズではなく、ディスコ・ファンクな作品ではあるのですが…

 

スティーリー・ダンでのセッション・ギタリストとしても活躍したエリオット・ランドールや、スタッフのキーボード奏者リチャード・ティーも参加しています。

 

オルガン系ジャズファンク好きの方にはあまりおすすめの作品ではないのですが、ファンク・アルバムとしてはなかなかのクォリティーです。

 

今回ご紹介した作品の中では、聴くのは一番最後でいいと思います。

 

しかしジャンルが少し違っているというだけで、アルバムの質は決して低くないので、悪くないファンク・アルバムとして聴いてみて下さい。

 

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Ryo
おすすめ曲は、1,2,5

 

 

以上、【オルガン奏者リューベン・ウィルソンのソウルジャズ/ジャズファンク系おすすめアルバムまとめ】のご紹介でした。

 

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