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カテゴリー:Music

2019/09/26

エディー・ロバーツ初のソロアルバム『Roughneck』を聴こう♪

ザ・ニュー・マスターサウンズのギタリストのエディー・ロバーツの初のソロアルバム『Roughneck』をご紹介します。

ザ・ニュー・マスターサウンズとは違ったクラブ・ジャズよりのサウンド!

今回は僕の好きなバンドのザ・ニュー・マスターサウンズ(以降:ニューマスター)のリーダーでギタリストのエディー・ロバーツが2004年に満を持して発表した初のソロアルバム『Roughneck』をご紹介したいと思います。

 

以前、エディー・ロバーツが90年代に在籍していたオルガン・トリオの『The Three Deuces』をご紹介したことがありました。

 

60年代風ソウル・ジャズが現代に甦る⁉ザ・ニュー・マスターサウンズのエディー・ロバーツが在籍していたオルガントリオ『The Three Deuces』を聴こう♪

しかしザ・スリー・デューセズはエディーだけが目立つリーダー作と言ったわけではなく、あくまでもオルガン・トリオ編成のバンドという形でした。

 

しかもその当時はまだニューマスター結成前でしたから、ザ・スリー・デューセズはエディーにとってのメインのバンドでもあったと思います。

 

でも今回ご紹介する『Roughneck』がリリースされたのは、すでにニューマスターとしてデビューしている2004年になります。

 

ちょうど2005年の3rdアルバムの『This Is What We Do』をリリースする前になります。

 

2003年に2ndアルバム『Be Yourself』をリリース後、3rdアルバムのリリース前の合間を使ってソロアルバムを制作したということでしょう。

 

この頃からすでにニューマスターがメインのバンドになっていたのですが、そのニューマスターのバンド・イメージには合わないような「(他にもある)自分のやりたいこと」をソロ活動で表現したという印象です。

 

エディーは大学生時代に英国のジャズ・ドラム奏者のトミー・チェイスから、ジャズ・ギタリストとしてバンドに参加して欲しいと誘いを受けています。

 

普通だったら大学生がこのような大御所ジャズ・ドラマーのバンドに抜擢されるなんて願ってもないことなのでしょうが、エディーは「自分には別のアイデアがある」といって誘いを断っています。

 

おそらくエディーはこの頃から、トミー・チェイスのバンドで旧来のハード・バップ・スタイルのジャズをやるのではなく、新世代の音楽をやりたかったのでしょう。

 

その後のキャリアを見ても、敬愛するグラント・グリーンのようなサウンドを表現した60年代風ソウル・ジャズ・バンドのザ・スリー・デューセズを経て、次はミーターズを基にした新時代のファンク・バンドのニューマスターを結成するなど、やはりトミー・チェイスのバンドとは違った方向性の音楽をクリエイトしていっています。

 

そして2004年に満を持して制作された初のソロアルバムでは、自分の名義でリリースしたリーダー作なので「好きなこと」を思う存分詰め込んでみた!といったアルバムに仕上がっています。

 

それは、ザ・スリー・デューセズのようなオルガン主体のソウル・ジャズでもなければニューマスターのようなミーターズ風のファンク・サウンドでもありません。

 

『Roughneck』に収録された楽曲は、1980年代にイギリス のクラブシーンから派生した「ジャズで踊ろう」をモットーとしたようなアシッド・ジャズ/クラブ・ジャズよりのサウンドで構成されています。

 

従来のハード・バップとはまた違った、よりファンキーなグルーヴを取り入れたダンサンブルなリズムが新しさを感じさせる楽曲が多く含まれています。

 

もしかしたらこのソロアルバムに収録されたサウンドこそが「エディー・ロバーツの本当にやりたいこと」なのかもしれません⁉

 

それでは今回はエディー・ロバーツの初ソロアルバム『Roughneck』をご紹介したいと思います。

 

 

Eddie Roberts – 『Roughneck』

01.Roughneck
02.Sugar (Featuring – Iain Mackenzie)
03.Diggin’ Around
04.Every Goodbye
05.Lose Yourself
06.Eazin’ Down
07.Diggin’ Deeper
08.Szabo
09.New Life
10.Costa Del Soul
11.Mr. E
12.Roughneck Dub
– Bonus Track Japan Only –
13. Friday Workout

 

アルバムの内容

本作収録曲は2曲を除いて全てエディー・ロバーツの書いた楽曲で構成されています。

 

その2曲のカヴァーの選曲が面白いのですが、まず1曲目はスタンリー・タレンタインの”Sugar”です。

 

それともう1曲のカヴァー曲がまさかのエミネムの”Lose Yourself”というのが興味深いところです。

 

旧世代のジャズマンとかだとこういったヒップホップの曲をカヴァーするなんてことは思いもよらないことでしょうからね。

 

でもよく考えると、60年代後半にソウルジャズやジャズファンクが制作されていた時期にルー・ドナルドソンのようなハード・バップ世代のジャズマンがアルバムの売り上げを理由に時代に沿ったR&Bやファンクの楽曲をカヴァーしていたので、今の世代のジャズマンが流行りのヒップホップを取り上げるのも可笑しいことではないんですよね。

 

だから2002年に流行ったエミネム主演の映画『8 Mile』の主題歌である”Lose Yourself”をエディーが取り上げるのも自然な流れなんだと感じます。

 

さて、まずは1曲目から見ていきましょう。

 

アルバムのタイトルにも選ばれた1曲目”Roughneck”は、とっても不思議なベースラインのイントロから始まる楽曲です。

 

イントロが終わるとエディーの弾くこれまたミステリアスな音色のテーマメロディーが始まります。

 

これは確かにニューマスターのアルバムに収録されていたら「なんかバンドのイメージと違う…」となりそうです。

 

もちろん悪い曲などではなく、むしろとてもかっこいいクラブ・ジャズ・サウンドなのですが、ニューマスターというよりもニコラ・コンテのアルバムに収録されていそうな曲調です。

 

エディー自身はこういったオシャレなサウンドも好きなのでしょうが、やはりニューマスターには合わないのでこうしてソロアルバムで発表するに至ったのでしょう。

もちろんギターソロはグラント・グリーン風のシングルノート中心のフレーズで弾き倒しています!
この1曲目を聴くと、ソロアルバムの方向性はアシッド・ジャズ/クラブ・ジャズ風なんだな!とわかります。

 

2曲目のスタンリー・タレンタインの曲”Sugar”にはイエイン・マッケンジーがボーカルで参加しています。

 

タレンタインのオリジナル録音とはまた違ったクラブ・ジャズ・サウンドにアレンジされています。

 

原曲ではエディーの敬愛するジョージ・ベンソンがギターを弾いていましたが、エディーもベンソン風のダブルストップをスライドさせて繰り返す奏法を含めてギターソロを披露しています。

 

3曲目”Diggin’ Around”は、フィリー・ジョー・ジョーンズ風の派手なドラミングにホーン隊とユンゾンで弾くテーマメロディーが、ブルー・ノート・レコード4000番台のハード・バップ作品のどれかに収録されていても遜色ないような楽曲です。

 

どことなくジョー・ヘンダーソンの楽曲のようにも感じますが、確かエディー自身もジョーヘンの影響を受けていたはずです⁉

 

4曲目”Every Goodbye”は、エレピの美しいリフレインにうっとりするようなバラード曲です。

 

グラント・グリーンの1969年の作品『Carryin’ On』に収録されていたニール・クリーキーの曲”’Cease The Bombing”を彷彿させます。

 

なんとエディーのギターソロは登場しないまま、エレピが主役で終わる楽曲です。

 

ソロもボブ・バーチのエレピが全て弾いています。

 

ちなみに本作で全てのピアノパートを演奏しているボブ・バーチは、ニューマスターの初代オルガン奏者です。

 

今はジョン・タットンに交代しています。

 

エディー本人が登場しないこういった楽曲を収録する姿勢もどことなくニコラ・コンテのようですね。

 

5曲目”Lose Yourself”が、ある意味問題作?それとも必然?のどっちだろうって感じですが、先述したようにエミネム主演の映画『8 Mile』の主題歌です。

 

もちろんエミネムのバージョンのようにラップはありません。

 

インストにしてジャズ・アレンジが施されています。

 

しかも生ピアノにウッドベースです!

 

ヒップホップの楽曲をハード・バップ風のジャズにアレンジして演奏する見本のような演奏ですね。

 

なので「え?エミネムの曲やってんの?ヒップホップ苦手だな~…」といったニューマスター・ファンやクラブ・ジャズ好きの人も安心して聴けます。

 

むしろエミネムを知らない人が聴いたら「エディー・ロバーツの新曲?それとも何かのジャズ曲のカヴァー?」といった風に思うかもしれません。

 

エミネム色はほぼゼロです。

 

さて、次に収録されている6曲目”Eazin’ Down”が本作収録曲の中では最も重要な楽曲です。

 

この曲のみエディー単独ではなく、当時のニューマスターのメンバー全員で作曲されています。

 

またこの曲には、ニューマスターのベースのピート・シャンドとドラムのサイモン・アレンがゲストで参加しています。

 

もちろんエレピを弾いているのは当時のニューマスターのメンバーだったボブ・バーチです。

 

おそらくニューマスターのアルバム用の楽曲だったのでしょうね。

 

確かにクラブ・ジャズ風ではありますが、ニューマスターのアルバムに収録されていてもおかしくないような楽曲です。

 

実はこの曲はニューマスターのライヴでもよく演奏される定番曲のひとつです。

 

オルガン奏者がジョン・タットンに代わってからもしょっちゅう演奏されています。

 

なので、ニューマスター・ファンの人はこの『Roughneck』を聴いておかなければ「毎回ライヴでだけやる謎の曲」と感じてしまうことでしょう。

 

“Eazin’ Down”は、エディーの初ソロアルバムに収録されていた楽曲です。

 

ただこのスタジオ盤はあっさりした演奏なので、ライヴ演奏で聴いた方がかっこいい曲でもあります。

 

7曲目”Diggin’ Deeper”は、5曲目の”Diggin’ Around”のリミックス・バージョンです。

 

8曲目”Szabo”は、ハンガリーのジャズ・ギタリスト、ガボール・ザボに捧げられたラテン・ソウルな楽曲です。

 

エディーは後にラテン・アルバムをリリースするのですが(そのアルバムについてもいずれこのブログでも取り上げますのでお楽しみに♪)クラブ・ジャズと同じくエディーのやりたいことリストにはラテン・ソウルも入っているようです。

 

次の9曲目”New Life”では再びサイモン・アレンがゲストでドラムを叩いています。

 

10曲目”Costa Del Soul”は再びラテン風のジャズ曲です。

 

曲名にある「コスタ・デル・ソル」とは、太陽海岸という意味も持ったスペイン南部アンダルシア州の地中海に面する海岸地域のことです。

 

ジミー・コリーの吹くサックスソロも聴きどころです。

 

11曲目”Mr E”もブルー・ノート・レコード4000番台を感じさせるハード・バップ系の楽曲です。

 

しかしテーマメロディーなんかは旧来のハード・バップ風なのですが、よりダンサンブルになったリズムの取り方などが世代の違いを感じさせます。

 

12曲目”Roughneck Dub”は、1曲目の”Roughneck”をダブ・ミックスしたリミックス曲です。

 

特に収録する必要はなかったのでは?と感じなくもないのですが、エディーがこのミックスを気に入ったのでしょうか⁉

 

13曲目は日本盤のみのボーナストラック曲”Friday Workout”です。

 

ダブ・ミックスを省いてこの曲で終わってたっ方が良かったんじゃないの?と感じます。

 

日本の企画者さんが最後にこの未発表曲を選んでくれてよかったといったところでしょうか。

 

曲調としてはやはりブルー・ノート・レコード4000番台を感じさせるハード・バップ系の曲になります。

 

しかしダブ・ミックスで終わるよりはアルバムの締めに適している曲調だと思います。

 

 

以上、【エディー・ロバーツ初のソロアルバム『Roughneck』を聴こう♪】でした。

 

エディーがニューマスターでは出来なかった「自分のやりたいこと」を思う存分発揮したアルバムだと思います。

 

またヒップホップの曲を上手くジャズ・アレンジした”Lose Yourself”や、意外とエディーのギター演奏と合うラテン風味の”Szabo”や”Costa Del Soul”なんかもニューマスター・ファンの人にも聴いてもらいたいと思う楽曲です。

 

それにニューマスターのライヴでは定番のようにしょっちゅう演奏されている名曲”Eazin’ Down”のオリジナル録音が収録されているのもポイントです。

 

やはりニューマスター・ファンなら必ず聴いておきたい作品ですね!

 

もちろんアシッド・ジャズ/クラブ・ジャズ好きの人にもおすすめのアルバムです♪

 

もしかしたらニコラ・コンテやホセ・ジェイムズ好きの人が聴いても気に入るかもしれません。

 

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