
2019/01/23
ソウル・ジャズ系の多くの作品でギターを弾いたジミー・ポンダーの4作目『All Things Beautiful』を聴こう♪
ジミー・ポンダーが1978年にリリースしたソロ4作目となる『All Things Beautiful』をご紹介します。
早熟だったジャズ・ギタリスト、ジミー・ポンダー
今回は、フィラデルフィア州ピッツバーグ生まれのソウルフルなギタリストのジミー・ポンダーです。
幼い頃からドゥー・ワップやモータウンの音楽が好きで、特にスティーヴィー・ワンダーやザ・テンプテーションズのファンだったポンダーがギターを手にしたのは11歳の頃でした。
その後、めきめきとギターの腕を上げていき、13歳の頃にはすでにレギュラーのギグを持つほどに早熟なギタリストだったようです。
そして1963年、ポンダーが17歳の時にたまたまピッツバーグのクラブに演奏を聴きに来たジャズ・オルガン奏者のチャールズ・アーランドに見いだされ、プロ・ミュージシャンとしてデビューすることになります。
ウェス・モンゴメリーやケニー・バレルにジョージ・ベンソンから大きな影響を受けたジャズ・ギタリスト
ジミー・ポンダーのギター演奏を聴くと、歪みのないクリーンな綺麗な音でジャズ系のフレーズを弾いているのがすぐにわかると思います。
チョーキングやダブルスラーなんかのアーティキュレーションを極力控えて、ジャズ風のクロマチックなフレーズを弾いてはいますが、そのトーンは限りなくソウルフルなものです。
ポンダーが頻繁に使うオクターブ奏法は、ウェス・モンゴメリーやジョージ・ベンソンから大きな影響を受けているからです。
またケニー・バレルのようなブルージーなジャズ・ギタリストからも影響を受けているようです。
ポンダーがチャールズ・アーランドのバンドに在籍していた18歳の頃に、別のクラブへ出かけると、そこには憧れのウェス・モンゴメリーが演奏していたようです。
そのライヴにシットインする機会を得たポンダーは、憧れのウェスを前にケニー・バレルの”Chitlins Con Carne”を演奏しました。
その演奏を聴いたウェスは、ポンダーのことをえらく気に入ったようで、ポンダーが演奏しているクラブにやってきては目の前で食い入るようにポンダーの演奏を聴くようになりました。
その当時のことを振り返って、ポンダーは「もう心臓が口から飛び出るほど緊張したさ……。」と。
それから間もなくして、ポンダーはウェスのようにピックを使わないフィンガースタイルでギターを演奏するようになります。
そのお陰で、彼のギター演奏はハートウォーミングなトーンを奏でるようになります。
自身のプレイスタイルを築いた後は、数多くのソウル・ジャズ系のアルバム・セッションに参加しています。
僕の中では、当時のR&Bやレア・グルーヴの多くの作品に参加していたコーネル・デュプリーのソウル・ジャズ版がこのジミー・ポンダーのような気がします。
共に70年代後半辺りからは、クロスオーバー/フュージョン系の作品の多くに参加しいるという共通点もあったりします。
そんなジミー・ポンダーは、コーネル・デュプリーと同じく自身がリーダーの作品も数多くリリースしています。
2013年に亡くなるまでに、19枚のリーダー作品を制作しています。
今回は、絶頂期だった1978年にリリースした『All Things Beautiful』をご紹介したいと思います。
ちょうど年代的にも、ジャズファンクからクロスオーバー/フュージョンに変化していってる時期でもあります。
なので、オルガンではなくエレピが活躍する爽やかな楽曲が主体になります。
少しオシャレになって聴きやすくなったジャズファンク作品としてもおすすめの作品です♪
Jimmy Ponder – 『All Things Beautiful』
01.A Clue
02.Turn
03.Love Will Find A Way
04.Sometimes When We Touch
05.Chasing That Face
06.Love Me Right
07.A Trip To The Stars
Personnel:
Jimmy Ponder – Lead Guitar
Bob Rose, Jeff Mironov, Lance Quinn – Backing Guitar
Pat Rebillot, Rob Mounsey – Keyboards
Neil Jason – Bass
Jimmy Young, Richard Crooks – Drums
Jimmy Maelen – Percussion
David Tofani, Eddie Daniels – Saxophone
Barry Rogers – Trombone
Jon Faddis, Marvin Stamm – Trumpet
Diva Gray, Gordon Grody, Gwen Guthrie, Jocelyn Brown – Backing Vocals on Tracks 01, 02
アルバムの内容
バックのコーラス隊やストリングスの音が華やかな1曲目”A Clue”は、ボズ・スキャッグスの1977年の曲です。
1977年のアルバム『Down Two Then Left』の3曲目に収録されていた爽やかな名曲です。
シングル曲”Hollywood”のB面としてもリリースされていた曲です。
ボズ・スキャッグスのオリジナル版では、レイ・パーカーJr.がリズムギターを担当して、ギターソロはTotoのギタリスト、スティーヴ・ルカサーが弾いています。
そんなクロスオーバー全盛期のAOR系の曲を、ここではジミー・ポンダーのギターによるインストで演奏しています。
感触としては、まるでベンソン風の爽やかで軽いノリのスムース・ジャズ・アレンジで演奏しています。
オクターブ奏法も歌メロ部分やギターソロでふんだんに使用しています。
1分46秒辺りで聴ける、高速3連符で「タラタッタラタッタラタッ!」と音を上がっていくフレーズは、ウェス・モンゴメリーの十八番でした。
元はウェスが頻繁にアドリヴソロの際に弾いていたフレージングです。
その後このフレーズはジョージ・ベンソンを始め、多くのスムース・ジャズ系のギタリストが弾くようになり、今となっては定番フレーズになっています。
1曲目から、ウェスやベンソンから影響を受けたジミー・ポンダーの高度なギター・テクニックが存分に味わえる名演が聴けます♪
次の2曲目”Turn”も女性のバック・コーラスやホーンセクションが華やかなアレンジの曲です。
マイケル・ジャクソンの”Rock With You”でエレピを弾いていたホーク・ウォリンスキーと、ベースで参加していたボビー・ワトソンが書いた曲です。
ポンダーのギターソロは、かなりベンソンを意識したようなプレイになっています。
3曲目の”Love Will Find A Way”以降は、全てこのアルバムのプロデューサーでもあるソニー・レスターお抱えのディレクター陣が書いた曲になります。
ただこれ以降の収録曲は、まるで同時期のコーネル・デュプリーが演奏しそうなフュージョン系の3曲目の”Love Will Find A Way”や5曲目の”Chasing That Face”に、デイヴィッド・T・ウォーカーが弾きそうなバラード曲の4曲目”Sometimes When We Touch”に7曲目の”A Trip To The Stars”など……
どうしてもその2人のセッション・ミュージシャンを思い起こさせるような曲にはなっています。

以上、【ソウル・ジャズ系の多くの作品でギターを弾いたジミー・ポンダーの4作目『All Things Beautiful』】のご紹介でした。
ジミー・ポンダーのギターのテクニック自体は、ジョージ・ベンソンに引けを取らないような上手さはあるのですが、どうしてもコーネル・デュプリーやデイヴィッド・T・ウォーカーと比較してしまいそうになるような曲を多く演奏している気がします。
そうなってくると、モロにウェスやベンソンの影響下でギターを弾いているポンダーよりも、先のコーネル・デュプリーやデイヴィッド・T・ウォーカーの2人の方が個性的なギタリストに聴こえます。
こういった点が、ジミー・ポンダーというギタリストが「地味」~なギタリストで終わってしまった要因なのでは⁉と感じます。(ダジャレ⁉笑)
個人的には、ジミー・ポンダーのギタースタイルやリーダー作はとても好きで集めているのですが……コーネル・デュプリーやデイヴィッド・T・ウォーカーの2人よりも勝っているか?と聞かれると……「う~ん今一つ個性が足りないのかな?」と迷ってしまいます。
上手いギタリストではありますが、個性という点ではコーネル・デュプリーやデイヴィッド・T・ウォーカーの2人の方が強く印象に残ります。
しかしこの「地味」なジミー・ポンダーにも、もっとスポットライトが当たって欲しいな~と考え、今回ブログで取り上げてみることにしました。
ちなみに70年代頃はソウルジャズやジャズファンク、クロスオーバー/フュージョン系の作品に多く参加していましたが、90年代から2000年代に入るとストレート・アヘッドなジャズを演奏するようになります。
年を重ねて原点回帰とでも言いましょうか?よりウェス・モンゴメリー風の演奏をするようになります。
また、ジョー・パスのようなソロ演奏でもスタジオアルバムやライヴアルバムを制作しています。
その辺の作品も僕は好きで、ちょくちょく聴いたりしていますので、また今後こちらのブログでご紹介していきたいと思います。
それでは、またぜひこちらのブログを読みに来てください♪
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