カテゴリー:Music

2019/10/02

ジム・ホール&ビル・フリゼール珠玉の共演作!デュオとカルテットの2枚組『Hemispheres』を聴こう♪

ジャズギターの伝説ジム・ホールとビル・フリゼールが共演した名作『Hemispheres』をご紹介します。

デュオとカルテットで構成された2枚組の大作!

今回は2008年にリリースされたジム・ホールとビル・フリゼールの初の共演作『Hemispheres』をご紹介します。

 

1950年代からジャズギタリストとそして活動を始めたジム・ホールは、その革新的なプレイスタイルから今を生きるほぼ全てのコンテンポラリー・ジャズギタリストに影響を与えた偉大なる人物です。

 

そのジム・ホールからの影響を受けたビル・フリゼールが、大先輩であるジム・ホールと一緒に制作したのがこの『Hemispheres』という作品です。

 

この作品も以前このブログでご紹介していた『Magic Meeting』と同じくArtistShareレーベルからリリースされた作品になります。

 

元はと言えばオンラインを中心に発売されていたのですが、普通に店舗でも見かけたりします。

 

ジム・ホールとの魔法の会合‼2004年のトリオ・ライヴ盤『Magic Meeting』を聴こう♪

2008年当時の僕は、ArtistShareからのメルマガでこの作品の発売を知ったのですが、たまたまタワレコで見かけたのでそちらで購入しました。

 

今ではAmazonでも購入可能です。

 

それではこの珠玉の共演作をご紹介したいと思います。

 

 

個人的には本作収録曲を自分の持ち曲として演奏していたというのもあり、とても思い入れがある作品でもあります。

 

 

Jim Hall & Bill Frisell – 『Hemispheres』

 

[Disc 1]
01.Throughout
02.All Across the City
03.Bag’s Groove
04.Migration
05.Family
06.Waiting to Dance
07.Bimini
08.Masters of War
09.Beijing Blues
10.Monica Jane

 

[Disc 2]
01.I’ll Remember April
02.Barbaro
03.Chelsea Bridge
04.Owed to Freddie Green
05.Beija Flor
06.Here and Now
07.My Funny Valentine
08.Card Tricks
09.In a Sentimental Mood
10.Sonnymoon for Two

 

Personnel:
Jim Hall – Guitar
Bill Frisell – Guitar
Scott Colley – Bass
Joey Baron – Drums

 

アルバム内容

CD2枚組全10曲が収録された本作は、編成の違う形式でそれぞれのディスクが吹き込まれています。

 

まず[Disc 1]の方は、過去にもビル・エヴァンスやロン・カーターにミシェル・ペトルチアーニやパット・メセニー等とも共演したデュオ名人のジム・ホールが、今回はビル・フリゼールをお相手に全編ギターデュオで演奏されています。

 

まずはこちらの[Disc 1]の方から……

 

1曲目”Throughout”は、ビル・フリゼールの自作曲です。

 

コンテンポラリー・ギターの始祖とその一番ともいえる愛弟子の初デュオ作は予想通り(?)とも言えそうな、なんとも革新的な楽曲で始まります。

 

イントロから聴こえる右チャンネルのディレイを効かせた教会の鐘のようなギターのリフレインは、ビル・フリゼールが弾いています。

 

その音をバックに左チャンネルから聴こえてくるギターがジム・ホールによるものです。

 

ゆっくりとですが、徐々にメロディーが浮かび上がってくるような静謐な演奏に、全ての邪心が浄化され心が洗われるような気持になります。

 

始まりこそ少しアヴァンギャルドではありますが、深いエコーとあまりにも美しいメロディーの楽曲です。

 

まるで歪みエフェクターを使っていないモグワイのような印象を受けます。

 

2曲目”All Across the City”は、ジム・ホールの楽曲で、1989年の同名アルバム『All Across the City』に収録されていた曲です。

 

ジム・ホールはこの曲を晩年も演奏し続けています。

 

デュオ演奏の基本は右チャンネルのビル・フリゼールがディレイ・エフェクターを使ったギターでバッキングを弾き、左チャンネルのジム・ホールがノンエフェクターのフルアコ(おそらくいつものサドウスキーのフルアコギター)でテーマを弾いています。

 

この曲ではジム・ホールの最初のギターソロが終わると、ビル・フリゼールのギターソロもあります。

 

自身のリーダー作ではかなりアヴァンギャルドなギターソロを弾くことが多いビル・フリゼールなのですが、この曲ではとてもメロディアスで聴きやすくオクターヴ奏法も使ってジャズらしいソロを披露しています。

 

フリゼールのソロが終わるとジム・ホールの2回目のギターソロも登場します。

 

冒頭2曲は静かな雰囲気の楽曲が続きますが、3曲目”Bag’s Groove”から勢いが付きます。

 

マイルス・デイヴィスの演奏で有名なミルト・ジャクソン作曲のジャズ・スタンダード曲”Bag’s Groove”は、ギタリストにとっても演奏しやすいブルースの要素を含んだ楽曲です。

 

この曲の原曲キーはF(ファの音)なのですが、こちらのデュオではキーA(ラの音)にアレンジしています。

 

これには理由があって、ギターの一番低い音である6弦開放の音はE(ファの音)になります。

 

その音を半音上げるとFの音になるのですが、それだとギターの一番左端の6弦1フレットがルート音になります。

 

このポジションってギターの構造上、慣れていないと少し弾きづらかったりします。

 

それがAの音だと、6弦5フレットにルートがあるので非常に弾きやすいポジションとなります。

 

ギターにとって特に弾きやすいキーは、E,G,A,C辺りになります。

 

例えばブルースの曲を練習する際は、最初にキーEの曲から覚えて、次にキーAの曲を覚えると難易度も下がり効率よく学ぶことが出来ます。

 

僕自身も最初はE、そしてAの順にブルースギターを覚えました。

 

という風に、ギタリストにとってAのキーで弾くブルースは非常に弾きやすいということになります。

 

もちろんジム・ホールやビル・フリゼール程の名手であれば、どのキーでも弾きこなせるのは当たり前なのですが……敢えてギター2本なので初心に戻ってキーAにアレンジしたんじゃないだろうかな?と思います。

 

本作ではイントロもジム・ホールのオリジナルのアレンジが施されています。

 

まずはジム・ホールの弾くイントロのカッティングから始まり、ビル・フリゼールがテーマを弾きます。

 

ビル・フリゼールにしては珍しく、ほぼ原曲通りに丁寧にテーマを弾いています。

 

そのままギターソロもオーソドックスに弾いています。

 

フリゼールのソロが終わるとにジム・ホールの弾くテーマに移るのですが、さすがに大御所ジム・ホールはテーマを崩してアヴァンギャルドに弾いています。

 

21歳も年下のビル・フリゼールよりも、この時既に78歳だったジム・ホールの方がアヴァンギャルドな演奏をしているというのが恐ろしいくらいです。

 

年老いて衰えるどころか、より革新的な演奏をするようになるんですからね!

 

普段はアヴァンギャルドなビル・フリゼールも、御大の前ではまだまだ遠く及ばず……といったところです。

 

ちなみに……

 

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Ryo
このバージョンの”Bag’s Groove”を僕も持ち曲として
3年間ほど毎回ライヴの1曲目に演奏していました。

 

やはりキーAにアレンジされているので、ギター弾きにとってはアドリヴ演奏しやすいんですよね。

 

とても思い入れのある楽曲です。

 

次の4曲目”Migration”は、2人の共作曲ですが、ここではビル・フリゼールが主役となっています。

 

先ほどのスタンダード曲では、その革新性においてジム・ホールに軍配が上がりましたが、こちらでは愛弟子も負けてはいません!

 

お得意のギターエフェクターを駆使して、まるでコンピュータ音のような不思議な反響音をバックに曲が進んでいきます。

 

そこにジム・ホールの限りなく生音に近いフルアコのギター演奏が乗っかります。

 

この2人でしか作り出すことの出来ない実験的な曲ですね。

 

続いて5曲目”Family”もフリゼールの自作曲です。

 

フリゼールお得意のカントリー調の牧歌的な世界観が広がる美しい曲です。

 

まるでアメリカの広大な景色を眺めているかのような錯覚をしてしまうような雰囲気です。

 

クラシックギターに近いような音色でジム・ホールがフルアコを弾いています。

 

6曲目”Waiting to Dance”と7曲目”Bimini”は、ジム・ホールの楽曲です。

 

“Bimini”の方はミシェル・ペトルチアーニとのデュオでも演奏されていたジム・ホールお気に入りの楽曲です。

 

どちらもジム・ホールを中心に、ビル・フリゼールがバッキングを弾いて演奏されています。

 

8曲目”Masters of War”は、ボブ・ディランの1963年の名曲「戦争の親玉」のカヴァーになります。

 

曲が始まると、1分20秒辺りまでビル・フリゼールがカデンツァのように独奏でギターを弾いています。

 

その後ジム・ホールもギターを弾き始めると、フリゼールはバッキングに回ります。

 

9曲目”Beijing Blues”は、2人の共作曲です。

 

この曲では、基本はジム・ホールがバッキングを弾き、ビル・フリゼールがメインを弾いています。

 

ジム・ホールがデュオ演奏の歳にバッキングを弾くときによく登場する、ギター側のボリュームを極限まで絞ってアコギのような「ジャカジャカ♪」カッティングが登場します。

 

ジム・ホールのギターソロも登場するのですが、バッキングの延長線上にあるかのようなコードソロを披露しています。

 

デュオの最後の10曲目”Monica Jane”は、ビル・フリゼールの自作曲です。

 

この曲もビル・フリゼールがメインを弾き、ジム・ホールがバッキングを弾いています。

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[Disc 1]のおすすめ曲は、#2 #3 #5 #7 #9

このギターデュオによる10曲だけでも十分お腹一杯に満足できる作品なのですが……これだけで終わらないのが本作『Hemispheres』の魅力でもあります。

 

ほとんど自作曲で構成されていた[Disc 1]のデュオと打って変わって、カヴァー曲を多く演奏しているのがカルテット編成による[Disc 2]です。

 

カルテットには、ベーシストのスコット・コリーとドラムのジョーイ・バロンが参加しています。

 

ちなみにジョーイ・バロンとジム・ホールは、後にギター+ドラムという変則的なデュオ作品を残していますが……そちらに関してはまた今後このブログでもご紹介したいと思います。

 

[Disc 2]の1曲目”I’ll Remember April”は、ピアニストのジーン・デ・ポールが1942年に書いたポピュラーソングです。

 

マイルス・デイヴィスにクリフォード・ブラウン、キャノンボール・アダレイやチェット・ベイカー等ジャズマンも好んでカヴァーした名曲です。

 

リズム隊が参加したのをさっそく利用して、ドラムのブラシによるイントロから始まります。

 

次第にウッドベースの高音による「ボンボン」というリフが入ってきて、まずは左チャンネルから聴こえてくるジム・ホールの弾くテーマメロディーが始まります。

 

ビル・フリゼールは右チャンネルでバッキングを弾いていますが、ジム・ホールの弾くテーマが終わると一番最初にソロを弾くことになります。

 

ここでも[Disc 1]のデュオの時と同じように割とオーソドックスなギターソロを披露しています。

 

そのバックでカッティングをしているジム・ホールのグルーヴ感がこれまたすごくって、音だけではとても80歳前のご老人が弾いてるとは想像できないぐらいです!

 

その後、ジム・ホールのソロに移りベースソロを挟み、最後はギター2人が自由にジャムセッションするかのように絡み合い、フリゼールが後テーマを弾いて締めのフレーズをジム・ホールが弾き曲が終わります。

 

2曲目”Barbaro”は、このカルテット4人による共作曲です。

 

というか、スタジオ・セッション中に完成したジャム演奏曲といったところでしょうか。

 

明確なテーマやソロがあるわけではなく、4人が自由にアンサンブルを構築して楽しんでいるといった具合です。

 

3曲目”Chelsea Bridge”は、ビリー・ストレイホーンが書いた曲で1942年にデューク・エリントンが演奏したスタンダード・ナンバーです。

 

ジム・ホールはこの曲を気に入っていたのか?ちょくちょく取り上げています。

 

本作でもジムがメインとなり演奏が進んでいきます。

 

基本はバッキングに徹しているもののフリゼールもソロを弾いています。

 

とはいえ、この曲に関してはジム・ホールの存在感が大きすぎてフリゼールの参加を忘れてしまいそうな程の出来です。

 

4曲目”Owed to Freddie Green”は、その曲名通りにジム・ホールが四つ切りスウィングギター名人のフレディ・グリーンに捧げた楽曲です。

 

そのためメインのテーマ以外ではジム・ホールが、まるでフレディ・グリーンのように「ジャッ♪ジャッ♪ジャカ♪ジャカ♪」と4つ刻みのバッキングを弾いています。

 

といってもフレディー・グリーンとはまた違ったグルーヴが生まれているのは、やはりジム・ホールの才能が成せる業ですね。

 

5曲目”Beija Flor”は、ブラジルのサンビスタ、ネルソン・カヴァキーニョの曲です。

 

この曲もジム・ホールのお気に入りだったのか?1989年の『All Across The City』の1曲目で演奏されていた曲です。

 

若い頃にブラジルに短期間住んでいただけあって、ジム・ホールお得意のサンバのリズムが登場します。

 

それに合わせてギターソロもスパニッシュな雰囲気で弾いています。

 

またベースのスコットも大活躍する、このカルテットでのベストの演奏と言えそうな素晴らしい出来です。

 

6曲目”Here and Now”は、ジム・ホールの自作曲です。

 

1分近く小さめのドラムの音しか聞こえてこないので「これって曲が始まってるの?」とわからなくなってしまいそうです。(笑)

 

するとベースの不気味なアルコ演奏とビル・フリゼールとジム・ホールのギターのハーモニクス音が始まります。

 

そして最後までフリーキーな演奏のまま終わってしまいます……。

 

まるでジュゼッピ・ローガンやトニー・マラビーでも聴いているかのような実験的なフリージャズです。

 

さすがに聴きづらかった曲が終わると……8曲目はスタンダード曲の”My Funny Valentine”で安心させてくれます。(笑)

 

ジム・ホールでこの曲と言えば、どうしてもビル・エヴァンスとの歴史的名演が思い浮かびますが、さすがにあの時ほどの名演ではないにしろ本作のバンド演奏も素晴らしい仕上がりになっています。

 

まずはドラムのチキチキ音をバックにジム・ホールが長めのイントロを弾き、1分を過ぎた頃にベースとフリゼールが参加します。

 

フリゼールが曲のテーマを弾きそのままソロに繋がっていきます。

 

フリゼールのギターソロの後は、ベースソロもあり、中間でビル・エヴァンスとの共演時を思い出したかのようなあのフレーズをジム・ホールが披露してくれています。

 

ジム・ホールによる後テーマの弾き方もまるでビル・エヴァンスとの共演を思い起こさせるようなファン・サービス的な演奏が溜まりません♪

 

8曲目”Card Tricks”は、2曲目の”Barbaro”と同じようにカルテットによる共作曲で、スタジオ・セッションの過程で完成したかのような楽曲です。

 

ダブルストップも交えた重くダークなトーンのウッドベースのソロが聴きどころです。

 

次の8曲目はデューク・エリントンでお馴染みのバラード曲”In a Sentimental Mood”で、最後の9曲目はジム・ホールが何度も共演したソニー・ロリンズの曲”Sonnymoon For Two”とカヴァー曲が続きます。

 

どちらもジム・ホールがよく演奏する楽曲ですね。

 

アルバムの締めは手堅くスタンダード曲で締めくくられています。

 

Ryo@Dixiefunk Lab.の白アイコン
Ryo
[Disc 2]のおすすめ曲は、#1 #3 #5 #7 #9 #10
こちらはカヴァー曲の出来が素晴らしいです♪

 

 

 

以上、【ジム・ホール&ビル・フリゼール珠玉の共演作!デュオとカルテットの2枚組『Hemispheres』を聴こう♪】でした。

 

ジム・ホールから大きな影響を受けたギタリストのひとり、ビル・フリゼールとの珠玉の共演作でした。

 

もちろんカルテットによる[Disc 2]も、ビル・エヴァンスとの名演を彷彿させるようなファン・サービスの”My Funny Valentine”が収録されていたりするのですが……やはり[Disc 1]のギターデュオの方がメインだと思いました。

 

この2人でしか作り出すことが出来ないデュオの世界観を思う存分味わえる名演です!

 

ジム・ホールのファンも、ビル・フリゼールのファンも必聴のアルバムです!

 

 

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