
2018/09/15
ヒューバート・サムリンの1998年のソロアルバム『Wake Up Call』を聴こう♪
ハウリン・ウルフの右腕とも言うべきブルースギタリストのヒューバート・サムリンのソロアルバムをご紹介!
エリック・クラプトンやスティーヴィー・レイ・ヴォーンにも影響を与えたブルースギタリスト!
今回はエリック・クラプトンやスティーヴィー・レイ・ヴォーンにも影響を与えたブルースギタリストのヒューバート・サムリンの1998年のソロアルバム『Wake Up Call』をご紹介します。
ヒューバート・サムリンは元はと言えばハウリン・ウルフのバンドでギターを弾いていました。
ウルフ亡き後はソロでアルバムを数枚リリースしています。その中でもこの作品は特に素晴らしいのでブルースギター好きの方は必聴です!
ではさっそくですが、ご紹介していきます。
Hubert Sumlin – “Wake Up Call”
01. I’m Coming Home
02. Makes Me Think About the One I Had
03. When You’re In Love
04. I’m Your Baby
05. Wake Up Call
06. Gonna Move
07. Let Your Fingers Do The Talkin’
08. I Just Need Your Love
09. Hubert Runs The Hoodoo Down
10. Get This Love Straight
Hubert Sumlin – Lead Guitar, Vocals
Jerry Vivino – Saxophone
Jimmy Vivino – Rhythm Guitar
Scott Healy – Keyboards
Mike Merritt – Acoustic Bass
James Wormworth – Drums
Released : 1998
ヒューバート・サムリンというミュージシャン
全ての曲はヒューバート自身によって書かれているようです。
しかし過去の素晴らしいブルースの名曲からの引用はかなり多いですので、「真新しさ」という点では少しポイントが下がる部分だと感じます。
ただこれまでの作品では、歌ものは別のボーカリストに任せていたのですが、本作では全てヒューバートが一人で歌っています。
…まぁお世辞にも歌が上手いとは言えないのですが、そこは「曲調にあった味のあるボーカル」ってことで。
それを言い出したらジミ・ヘンドリックスやジョン・レノンにルー・リードにニール・ヤングなんかも一般的に言う「歌の上手い歌手」ではありませんからね。
しかし彼らの演奏する音楽が素晴らしいところは、自分で書いた曲調にあった歌を歌えるからなんだと僕は思います。
それと似たような感じで、ヒューバートも一般的に言うと歌唱力のない歌い手ではありますが、本作に収録されている自作曲にあった歌い方は出来ているんじゃないかな~?とは感じます。
そもそもギターの演奏能力自体もテクニックで驚かせるというよりも独特のニュアンスで聴かせる系統ですからね。
でも僕個人としては、テクニックに溺れる系よりもヒューバートのような感情に訴えかけるような熱のこもったギター演奏の方が好きです。
そういったわけで以前書いてました『【#自分を作り上げたギタリスト4選】』の記事にブルース部門からヒューバート・サムリンを選んでいました。
80年代後半からスティーヴィー・レイ・ヴォーンが流行ったこともあって、レイ・ヴォーンに影響を与えたミュージシャンが少しずつ脚光を浴びるようになっていました。
そんな中、レイ・ヴォーンにも大きな影響を与えたヒューバート・サムリンも80年代後半頃から再び自身がリーダーのアルバムを制作するようになってきました。
そして90年代に入ってからも1990年リリースの『Blues Guitar Boss』で健在ぶりを示していました。
「今のシーンで活躍しているエリック・クラプトンやスティーヴィー・レイ・ヴォーンなんかのギタリストに影響を与えたブルースギター界のボスはワシなんじゃ!」って言わんばかりのアルバムタイトルですもんね。
そして90年代も終わりに近づいたころ、満を持して全曲自作曲で、自分で全ての歌を歌ったリーダーアルバムがリリースされました。
それが本作『Wake Up Call』になります。
アルバムの内容
1曲目”I’m Coming Home”はモロにロバート・ジョンソン作でマジック・サムがカヴァーしたバージョンの”Sweet Home Chicago”です。
いきなりパク…いや、模倣曲です。
エルモア・ジェイムスが開発したとも言えそうなあの「ダダダ!ダダダ!ダダダ!ダダ~~ダ♪」の3連フレーズで始まります。
マジック・サムがカヴァーのバージョンの”Sweet Home Chicago”もこの始まり方で有名ですよね。
まさにブルースのイントロとしては、ありきたりですが鉄板です!
曲のタイトルにあるように「これから家に帰るとこだ!」ってのは、ブルースの原点に戻ろうってことなんでしょうか⁉
また”Sweet Home Chicago”のタイトルに被せている感じもしますね。
歌うのはもちろんヒューバートなのですが…歌唱力は、ね……まぁ気にしてはいけません。
2回あるギターソロもヒューバート印で「ペキペキ♪ペチペチ♪」と独特の指弾き&「クイッ♪クイッ♪」という謎のグリッサンドで、いつものヒューバート・サムリンのギターが聴けます。
続く2曲目は、オルガンの音がいなたいミドルテンポのインスト曲の”Makes Me Think About the One I Had”です。
勢いのあった1曲目も悪くはないのですが、いかんせんヒューバートの歌がいまいちなので迫力に欠けます。
しかしインストの曲なら歌はないので気になりません。
サックスも参加した少しファンキーなインストは、ヒューバートの音楽性にぴったりです♪
3曲目”When You’re In Love”はモロにオーティス・ラッシュの”All Your Love (I Miss Loving) “な曲調です。
ギターソロ後の曲展開までそのままです。
しかし歌の上手いオーティス・ラッシュと違ってヒューバートが歌っているのでパワー不足に感じます。
やはりヒューバートはギターを弾いている時が一番ですね!
4曲目”I’m Your Baby”はハウリン・ウルフの名盤『Change My Way』の4曲目に収録されていた名曲”I Walked From Dallas (Single Version)”と同じ曲調です。
ウルフのバージョンの”I Walked From Dallas (Single Version)”は、ウルフの生涯のベスト・パフォーマンスとも言えるような名演ですのでブルースが好きな人は必聴ですよ!
5曲目のタイトルトラックの”Wake Up Call”は、ウルフの名曲”Smokestack Lightnin'”や”Mr. Airplane Man”のようなワンコードの怪しいブルースです。
“Smokestack Lightnin'”は、初期のヒューバート・サムリンの名演でもありますのでこの似たような曲調の”Wake Up Call”を本作のタイトルに使ったのはヒューバートの思い入れがよほど強いってことなんでしょうね。
少しイントロの弾き方などがマディ・ウォーターズの名曲”Still A Fool”を彷彿させます。
ヒューバートは、一時期給料の良さにつられて、ウルフとライバル関係にあったマディのバンドでギタリストを務めていたこともあります。
ヒューバートに裏切られた!とショックを受けたウルフは、後にヒューバートがマディの元を離れて自分のバンドに戻ってきた時も少しネチネチと拗ねたらしいです。
マディに嫉妬するウルフもなんだかかわいらしく思えますね。
ちなみにビートルズとローリング・ストーンズのような、周りが勝手にライバル関係にしているって感じで、ウルフとマディは仲は悪くはないんですよ。
むしろ先に南部からシカゴに移って活躍していたマディに、田舎から大都会シカゴに移り住んだばかりのウルフは、一時期マディの家に身を寄せて大都会での暮らしのアドバイスなんかもしてもらってたようです。
そんなわけでヒューバートが、ウルフだけではなくマディからも影響を受けていてもおかしくはありません。
ヒューバート生前最後のアルバム『About Them Shoes』の3曲目でも、マディの”Still A Fool”を取り上げていたぐらいですからね。
ちなみに『About Them Shoes』収録の”Still A Fool”でボーカルを務めるのはローリング・ストーンズのギタリストのキース・リチャーズです。
残り半分ですね。
6曲目の”Gonna Move”は、”Stormy Monday”風の少し洒落たスローブルースです。
こういった曲ではピアニストが「コロコロコロ~♪」オシャレにコンピングすることが多いのですが、やはりそれが聴き所でもありますね。
7曲目の”Let Your Fingers Do The Talkin'”は、元気なジャンプ系のインストナンバーです!
これは気持ちいい♪
まるでルイ・ジョーダンやクラレンス・”ゲイトマウス”・ブラウンのようです!
歌はだめですが、こういった勢いのある曲調ではヒューバートのギターも絶好調です♪
…と、この勢いを残したまま8曲目の「ザック!ザック!」リズムギターが刻むブルース”I Just Need Your Love”が始まります。
ヒューバートの歌はともかく、こういった基本的なブルースの曲でソロを弾かせると歌メロを崩さずに見事に弾ききっています。
9曲目”Hubert Runs The Hoodoo Down”は、まるでマイルス・デイヴィスの『Bitchs Brew』に収録されていた”Miles Runs the Voodoo Down”みたいな曲名ですが、全く別物のインスト曲です。
勢いのある曲が続いた後で、アルバムの終盤にこういったグルーヴが心地よいミドルテンポのインスト曲が来ると最高です♪
ヒューバートは、「味のある歌い方をする」とかなんとか最初の方で書いていましたが、結局この曲や2曲目と7曲目のようなインストナンバーが一番よかったりもします♪
やはりヒューバートは、ギター弾いてなんぼ!ですね。
最後の10曲目の”Get This Love Straight”は、アルバムを締めくくるのにちょうど良いスローブルースです。
綺麗に締めくくった全10曲収録の作品でした。
歌を聴く…というよりも、エリック・クラプトンやスティーヴィー・レイ・ヴォーンに影響を与えたブルースギタリストとして聴くのが正解なような気がします。
もちろんハウリン・ウルフ好きにもおすすめです♪
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