2017/09/15
ジミー・スミスの熱いライヴ名盤『Groovin’ at Small’s Paradise』を聴こう!
ジミー・スミスが残した熱いオルガンジャズの名ライヴ盤!
[Disc One]
01.Imagination
02.Walkin’
03.My Funny Valentine
04.It’s Only a Paper Moon
05.I Can’t Give You Anything But Love
06.Laura
BN:1585
[Disc Two]
01.(Back Home Again in) Indiana
02.Body and Soul
03.The Champ
04.Lover Man
05.Slightly Monkish
06.After Hours
07.Just Friends
BN:1586
Recorded at Small’s Paradise in New York City on November 15, 1957
Personel:
Jimmy Smith – organ
Eddie McFadden – guitar
Donald Bailey – drums
もともとは2枚のアルバム
今回ご紹介するアルバムは、ジミー・スミスの歴史に残る名盤ライヴ・アルバムです。
もともとはLP盤では1枚ずつの2種類で販売されていました。
CDでも2枚別々で販売している場合もあります。
僕が持っているのは輸入盤の2枚組です。
同じ日のライヴ盤ですので2枚組で買って一気に聴いた方が良いと思います。
アルバムの収録日時と場所
このアルバムが録音された日付は、1957年の11月15日です。
場所はNYCのハーレムにある名門高級ジャズ・クラブの『スモールズ・パラダイス』です。
この『スモールズ・パラダイス』というところは、ハーレムにある伝統のクラブの中では唯一、黒人経営者によって運営されていました。
そのため入場客の黒人たちに対する人種差別も緩く、当時の黒人ジャズ・ミュージシャンにとっても、お客さんにとってもリラックスできるライヴ・ハウスだったようです。
ジミー・スミス自身も1950年代半ばにこのクラブでオルガン奏者としてのデビューを飾っています。(それまではピアノも弾いていたようです。)
純粋なトリオ編成
この日は、リーダーのジミー・スミスと、当時のジミー・スミス・バンドによく参加していたお馴染みのドラムのドナルド・ベイリーと(オルガンとの相性抜群のドラマーです!)ギタリストのエディ・マクファーデンの3人組のオルガン・トリオです。(ベースはオルガンのフットペダル)
それまでのジミー・スミス・バンドに参加していたギタリストのソーネル・シュワルツではなく、この頃からエディ・マクファーデンが参加しています。
エディ・マクファーデンがジミー・スミス・バンドに参加しだしたのは、ちょうどこのライヴよりも9カ月前に録音された1957年2月の『A Date With Jimmy Smith』のアルバムからですね。
オルガン・ジャズは、トリオでのシンプルな編成が一番熱いです!
アルバムの内容は?
まずは[Disc One]から。
#1の“Imagination”は、ジミー・スミスによるイントロから始まります。
ホーリーで穏やかなオルガンのロングトーンが印象的です。
このリラックスした雰囲気のアルバムの幕開けにふさわしいです。
ゆったりとしたテンポでジミー・スミスがテーマメロディを弾き、バックでブラシを叩くドナルド・ベイリーに優しくコードコンピングを重ねるエディ・マクファーデン…まるで教会音楽のような穏やかさです。
エディ・マクファーデンのギターソロもツボを押さえた甘い演奏で最高です♪
続く#2の“Walkin'”は、マイルス・デイヴィスが取り上げていたことで有名な曲です。
穏やかだった前曲とは打って変わってジミー・スミスの弾くベースラインがファンキーになります!
程よくファンキーでいて、でもファンクそのものではなくって、ジャズの中でのファンキーさで…ファンキー・ジャズな曲です。(ジャズ・ファンクともまた別物です。)
ノリが良くって好きな曲です♪
まず最初にソロを取るエディ・マクファーデンのギターソロがどこか楽し気で、それに続くジミー・スミスもお得意のファンキーさで弾きまくります!
11分42秒と長めの演奏ですが、2人の素晴らしいソロが聴きごたえ十分の名演ですね!
そして#3は、ジャズ・バラードの大定番の人類史に永久に残るであろう大名曲“My Funny Valentine“です。
この曲もやはりマイルスの名演が思い浮かびますが、ジミー・スミスももちろん負けていません!
この哀し気で儚くも美しすぎるテーマメロディを、教会の讃美歌の如くホーリーな響きで奏でています。
オルガンのロングトーンってなんでこんなにも心に響くのでしょうか。
この曲のテーマを弾くジミー・スミスのロングトーンに張り合えるとしたらもはや、卵の殻の上を歩くマイルスのミュート・トランペットぐらいでしょうか。
テーマメロディが美しすぎる曲ですね。
さて次の#4と#5は、一転してまたファンキーな演奏に変わります!
バラードの次はファンキーでノリの良いジャズですね♪
バランスが良いです。
やはりこういう曲でのジミー・スミスのグルーヴ感ってすごいんですよね!
#6の“Laura“は、また哀し気なバラードの曲です。
この曲も名演です!
ジミー・スミスの感情が昂るような演奏が素晴らしいです!
エンディングのカデンツァっぽくなるところが最高潮に盛り上がります!
泣けます。
ただ終わりは意外にあっさり。
それまでの濃厚なカデンツァは何だったのって感じでカットアウトして”Ha ha ha ha”って笑い声が聞こえてきます。
でもこういったリラックスした感じがこのライヴ盤の好きなところでもあります。
演奏者もお客さんもリラックスして心の底から素晴らしい音楽を楽しんでいる感じが最高なんです!
それでは後半の[Disc Two]にいきましょう。
#1の“Indiana“は、15分あるかなり長い演奏ですが、エディ・マクファーデンの長いギターソロが存分に味わえます。
ジャズギター好きには最高です。
ウェス・モンゴメリーやジム・ホールなんかのレジェンドと比べると物足りない演奏なのは言うまでもないことなんですが、良い意味でリラックスして聴けるわかりやすいフレージングが良いですね。
うますぎる人たちの演奏は、たまに聴いていて疲れてしまうこともあります。
エディ・マクファーデンぐらいの腕前がちょうど良い時もあります。
しかしその後に続くジミー・スミスのエディよりは短めの、しかし完結なソロに全部持って行かれちゃうんですが。
続く#2の“Body And Soul“は、ジャズ・スタンダードのド定番!
テーマをギュワンギュワンとアグレッシブに弾いちゃうジミー・スミス。
でも左手で弾くベースラインはゆったりとスウィング♪
ドナルド・ベイリーのブラッシングがどこまでも優しく鳴っています。
さてお次の#3は、ディジー・ガレスピーの名曲“The Champ“でファンキーに行きましょう♪
このグルーヴ感、たった3つの楽器と3人のミュージシャンだけで十分なぐらいです!
楽器や人数は多ければよいってもんではないんです!
少ない人数だからこそ、よりグルーヴ感が増します♪
本アルバムの一番の聴きどころではないでしょうか?
続く#4の“Lover Man“でゆったりとして#5の“Slightly Monkish“も楽しいノリの曲です。
上手い具合にバラードとノリの良い曲が順番で来るようになっています。
#6の“After Hours“はピアニストのエイブリー・パリッシュ作の有名な曲です。
ピアニストにぴったりのダウンホームなブギウギ曲でしょうか?
どこかブルージーで。
ロイ・ヘインズのアルバムでピアニストのフィニアス・ニューボーンなんかがやっていたのも印象に残る名曲です。
ちなみにジミー・スミスは、後年ジャズファンクの大名盤『Root Down』でもこの曲を取り上げていましたね。
ここでの演奏は、このアルバム全体の雰囲気と同じく、まさにアフターアワーな感じの肩の力の抜けたリラックスした名演ですね。
心地良く音楽に身を任せましょう♪
そして最後を飾るのは、これまたジャズスタンダードのド定番の#7“Just Friends“です。
あの素晴らしいテーマメロディをジミー・スミスのオルガンではなく、最後を締める曲でテーマを弾くのはエディ・マクファーデンです。
アルバムを締めくくるのにぴったりの曲ですね♪
この場にいる演者もお客さんも、このアルバムをこうやって今の時代に聴く僕らもみんな「友達」としてリラックスして音楽を楽しいましょう♪
終わりに…
CD2枚組で全13曲(しかも1曲1曲がアドリヴソロ長めの曲ばかり)と大ボリュームですが、終始リラックスした心地良い雰囲気が漂っています。
ジミー・スミスもエディ・マクファーデンも長いソロを弾きまくっていてドナルド・ベイリーもファンキーな曲ではドカドカと叩きまくってはいるのですが、激しくうるさいだけの演奏にはならず、聴きやすい曲ばかりになっています。
穏やかなバラード曲に…ファンキーなノリの良い曲に…
でも全ての曲で肩の力の抜けたリラックスした雰囲気があり…
何度聴いても好きなアルバムです♪
お勧めです!
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