2018/07/19
最古のブルースマンのひとり – ヘンリー・トーマスの”Fishin’ Blues”を聴いてブルースの歴史を学ぼう!
記録の残っている中で最古のブルースマンのひとり
最古のテキサスブルースマン!?
今回は記録の残っている中で最古のブルースマンのひとりと言えるヘンリー・トーマスの名曲”Fishin’ Blues”についてご紹介しています。
更にヘンリー・トーマスについてのご紹介だけでなくブルースの歴史についても少し触れています。
どのような経緯でアメリカ黒人たちがブルースという音楽を生み出したのか?その秘密にも迫ります。
ヘンリー・トーマスは、1874年にテキサス州ビッグ・サンデイで生まれたとても古い時代のブルースマンです。
僕の好きなデルタブルースの伝説的人物である 1891年生まれのチャーリー・パットンよりも年上です。
更にはジャグ・バンドで最も有名な人物『キャノンズ・ストンパーズ』のガス・キャノンよりも9つも年上なんです!
そんなヘンリー・トーマスの録音が残っていることは、ブルースの歴史を知る上で非常に重要なことだと感じます。
一応、ブルースの曲が初めて録音された1903年から数えて100年の2003年に『ブルース誕生100周年!』と盛り上がったのは、まだ記憶に新しいと思います。
僕も当時はまだ20代前半だったので、いろいろとこの時期にブルースを学びました。
ちょうど2005年からブルースバンドでギターを弾く様になったのですが、その2年前にこの企画があったことは、自分にとって重要な出来事でした。
もちろん『ブルース誕生100周年!』を記念したCDやDVDのボックスセットも購入しました。
オムニバスCD4枚組ボックスセットの『マーティン・スコセッシのブルース:ある音楽の旅』と…
マーティン・スコセッシが中心となって制作されたブルース映画7作品を収めたDVD8枚組の 『ブルース ムーヴィー・プロジェクトDVD-BOX』です。
DVD8枚の内の1枚はオマケDVDです。
しかし1903年というのは、「ブルースが初めて《録音》された年」であって「ブルースが《誕生》した年」ではありません。
それ以前から、アメリカ黒人たちの間ではブルースが歌われていました。
当時は酷い人種差別の対象であったアメリカ黒人たちが中心のブルースが録音されるようになるまでに、亡くなっていったブルースマンも多くいたはずです。
その中でも先に挙げたガス・キャノンやチャーリー・パットン、ブラインド・ブレイクにブラインド・レモン・ジェファーソンにブラインド・ウィリー・ジョンソン、タンパ・レッドにレッド・ベリー、マ・レイニーにルシール・ボーガン……そしてこのヘンリー・トーマスなんかは運も良かったと思います。
1903年よりも29年も前に生まれていたヘンリー・トーマスですが、1874年生まれの彼の初レコーディングは1927年になります。
すでに53歳の頃です。
1930年に56歳で他界するまでの約2年少しの間にヘンリー・トーマスの歌は全24曲分が録音されました。
ということから、1903年の時点で既に29歳だったヘンリーが、もっと若い頃からブルースを歌っていたであろうことは間違いないでしょう。
まさか初録音をする50代になるまで、ブルースを歌ったことがなかった…なんてことはないはずです。
こう言ったことから、先にも書きましたが1903年は、「ブルースが初めて《録音》された年」であって「ブルースが《誕生》した年」ではありません。
ブルースの歴史を知る上で、このヘンリー・トーマスにガス・キャノンやチャーリー・パットンなんかを知ることはとても重要だと感じます。
さて、そんなヘンリー・トーマスで僕が一番好きな曲は”Fishin’ Blues”です。
いきなりテンポが変わってリズムが不安定なんですが、この時代の弾き語りブルースマンは、そんなもんなんです。
気にしてはいけません。
ブラインド・ブレイクが正確すぎるだけなんです。
さてこの”Fishin’ Blues”は、後にタジ・マハールが歌ったことでも有名になった曲です。
魚釣りのブルースなんですが、ヘンリー・トーマスは当時のアメリカ黒人たちの身の回りの生活を歌うのを得意としていました。
今でこそ、「朝起きたら嫁が出ていってた!この浮気女!」とか「俺は毎日ブルースを歌うよ~!」なんて歌ってますが、もとはブルースも生活を歌ったりした身近な存在だったのかもしれませんね。
ゴスペルが神への賛美を歌った《聖》なら、ブルースは人間の営みを歌った《俗》なのでしょう。
またこの当時のブルースは、もちろんエレキギターなんてなかったのでアコースティックギターでの弾き語りが中心です。
ラグタイムなんかと似たような曲調もあり、今現在僕らが「ブルース」と聴いて想像するようなモダン・ブルースとは全く異なる音楽です。
歌唱法もヨーデルに似たアフリカを起源とするフーピング唱法と呼ばれるものです。
トミー・ジョンソンなんかもこういったヨーデル調の歌い方をしていますね。
この様な歌唱法が、ロバート・ジョンソンにも影響を与えたはずです。
そして現代のR&Bなんかにみられるようなファルセットやヴィブラートに発展していったのではないでしょうか?
しかし音楽性が異なっていると言えども、今の時代に「ブルース」と呼ばれるバンド主体のモダン・ブルース系もこの時代のカントリー・ブルースやフォーク・ブルースから始まっているのは間違いありません!
むしろモダン・ブルースの歴史は、たかだか70年程です。
ヘンリー・トーマスたちが歌った生活を元にしたこういったカントリー・ブルースの方が歴史はあります。
科学の技術が追い付かず録音が残っていないだけで、それ以前から何百年も前から奴隷としてアメリカに連れてこられた黒人たちによって、こういったブルースは歌われてきたはずです。
歴史をひも解くと…古くはインドから西に移動していったジプシー(ロマ族)の子孫たち…彼らの音楽とアフリカの伝統音楽とアイリッシュのトラッド・フォークなどが複雑に混ざり合って出来たのがブルースだとも言われています。
そもそもブルースは、アメリカ黒人たちがある日突然歌いだしたものではありません。
遥か古の時代の色んな国の様々な人種の音楽が、長い時を超えて調合した音楽なのです。
そうした音楽を、当時綿花の厳しい労働環境下で働いていたアメリカ黒人たちが少しでも仕事の辛さを忘れるために労働歌として歌った音楽でもあるのです。
ブルースは、ハイブリッドな音楽ジャンルで合って決して全ての《元》になる音楽というわけでもないんですね。
そう考えると…全ての始まりは《インド》なのか!?って考えちゃいますよね。
まぁ今となっては、神のみぞ知ることですね。
なんだか途中から《ブルースの歴史》みたいな話になっていますが、ヘンリー・トーマスの”Fishin’ Blues”を聴いて休日は魚釣りにでも出かけましょう♪(笑)
この曲や他の曲でも聴ける笛の音は、パンパイプというクウィルやキャリゾなんかの茎で作った笛の音です。
ミシシッピ辺りの古いブルースで聴かれるファイフのような感じの笛の音色ですね。
軽快な曲調の”Fishin’ Blues”を聴いていると、晩ご飯に魚料理を食べたくなりますね♪
ちなみに、この”Fishin’ Blues”が1曲目から聴ける便利なCDは『Texas Worried Blues』です。
現存する最古のブルースを聴いて、ブルースという音楽の深い歴史を感じ取って下さい。
以上、ヘンリー・トーマスの”Fishin’ Blues”のご紹介でした。
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