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カテゴリー:Music

2019/09/03

至福の5時間‼グレイトフル・デッドの1972年イングランド公演を収録したCD4枚組ライヴ盤

伝説のジャム・バンド、グレイトフル・デッドが1972年にイングランドで行ったライヴを収録したCD4枚組『Steppin’ Out with the Grateful Dead: England ’72』をご紹介します。

公式盤『Europe ’72』と同時期のデッド全盛期を収録した貴重な音源!

今回はグレイトフル・デッドのおすすめのライヴ盤をご紹介したいと思います。

 

グレイトフル・デッドは、公式のアルバムだけでも軽く30枚近くは超すと思います。(過去のブートもいつの間にか公式盤になっていく今となっては50枚も軽く超すレベル⁉

 

そこに数多く存在するブートレグなんかを足すと…もはや膨大な数になってしまい、とてもじゃないけれどもこのブログで全てをご紹介するのは不可能に近いです。

 

他の全てのことをやめて、デッドのブログ記事だけをひたすら書くことに専念しても出来るかどうか⁉レベルだと思います。

 

さすがに大変すぎるので、ちょくちょく僕の好きなデッドのアルバムを気楽にご紹介できれば…といった感じです。

 

さて、そんなデッドの特徴として、スタジオ録音盤よりもライヴ盤の方が良いアルバムが多いんです。

 

どうしてもスタジオ盤は型にハマった演奏をしているというか…バンドの良さが発揮できていないものが多くあります。

 

デッドを聴くなら、バンドの勢いが最も反映されているライヴ盤が一番です!(但し当たり外れが多いのもデッドの特徴です…バンドの調子の波があるんです。)

 

というわけで、セッションやバンド活動で出会うデッド好きを公言する人と仲良くなっても好きなアルバムとしてスタジオ盤を挙げる人には「あまり知らないのかな?」と思ってしまったりもします。

 

今でいう「ジャム・バンド」の始祖もこのデッドだと言われています。

 

「ジャム・バンド」とは、ライヴ演奏中に即興的にジャムって長尺アドリヴ・ソロを演奏するバンドのことです。

 

そのためライヴ演奏の際には、1曲1曲がスタジオ録音時の倍以上の尺になることが多々あります。

 

今回僕がご紹介したいCD4枚組のライヴ盤も、1枚当たりの収録時間が約1時間20分と長めです。

 

合計で約5時間もの長さがあります!

 

かなり長い収録時間なのですが……もし長い時間音楽を聴くことができたり、何かの移動時間で暇を持て余したりした時に今回ご紹介するアルバムを聴くと良いかもしれません。

 

今回ご紹介したいそのアルバムとは、『Steppin’ Out with the Grateful Dead: England ’72』という作品です。

 

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Grateful Dead – 『Steppin’ Out with the Grateful Dead: England ’72』

 

1972年の4月7日~5月26日の間に行われたイギリス公演のライヴ音源から出来の良い曲をピックアップしてCD4枚に収録しています。

 

もともとはブートレグなどで出回っていたものを、アリスタ・レコードが公式盤として2002年にリマスターを施してリリースした作品になります。

 

ちょうど先にリリースされていた名作『Europe ’72』と同時期のライヴなので、バンドの演奏は折り紙つきです!

 

アルバムのジャケットのユニオンジャックがデザインされたロンドンバスのイラストもいい感じですよね。

 

ちなみに本作収録時のデッドのメンバーは、下記の通りです。

 

ジェリー・ガルシア – リードボーカル、リードギター
ボブ・ウィアー – リードボーカル、リズムギター
ロン・ピッグペン・マッカーナン – オルガン、ハーモニカ、ボーカル
フィル・レッシュ – ベース、ボーカル
ビル・クレアッツマン- ドラム
キース・ゴッドチョー – ピアノ
ドナ・ジーン・ゴッドチョー – ボーカル

 

ピッグペンが亡くなる前年で、まだデッドに参加していた時期になります。

 

またドラムのミッキー・ハートが一時的にバンドを離れていた時なので、ドラムはビル・クレアッツマン1人です。

 

ミッキー・ハートは1974年に復帰します。

 

そして紅一点のドナがバック・コーラスで華を添えています。

 

収録曲は下記の通りです。

 

 


 

 

[Disc 1]
01.Cold Rain and Snow
02.Greatest Story Ever Told
03.Mr. Charlie
04.Sugaree
05.Mexicali Blues
06.Big Boss Man
07.Deal
08.Jack Straw
09.Big Railroad Blues
10.It Hurts Me Too
11.China Cat Sunflower
12.I Know You Rider/Happy Birthday to You
13.Playing in the Band

 

[Disc 2]
01.Good Lovin’
02.Ramble on Rose
03.Black-Throated Wind
04.Sitting on Top of the World
05.Comes a Time
06.Turn on Your Love Light
07.Goin’ Down the Road Feeling Bad
08.Not Fade Away
09.Hey! Bo Diddley
10.Not Fade Away

 

[Disc 3]
01.Rockin’ Pneumonia and the Boogie Woogie Flu
02.Black Peter
03Chinatown Shuffle
04.Truckin’
05.Drums
06.The Other One
07.El Paso
08.The Other One
09.Wharf Rat
10.One More Saturday Night

 

[Disc 4]
01.Uncle John’s Band
02.The Stranger (Two Souls in Communion)
03.Dark Star
04.Sugar Magnolia
05.Caution (Do Not Stop on Tracks)
06.Brokedown Palace

 

 


 

 

 

[Disc 1]の1曲目”Cold Rain and Snow”は、1967年のデビュー作からの選曲です。

 

もちろんより落ち着いたアレンジが施されていて演奏力は遥かに上がっています。

 

左チャンネルから聞こえてくる中音域のまろやかな音が特徴的なゆったりとしたギターの音がジェリー・ガルシアの方です。

 

基本的にギター・ソロの大半はガルシアが弾いています。

 

逆に右チャンネルから聞こえてくる少しトレブリーな高音が強めのギターの音がボブ・ウィアーの方です。

 

ウィアーは基本的にバッキングを担当するリズムギターを弾いていますが、曲によってはソロを弾くこともあります。

 

面白いのは、このアルバムに付属のライナー写真には当時のライヴの様子が載っていて、ガルシアの方がシングルコイル搭載でトレブリーな音になりやすいストラトキャスターを使っていて、逆にウィアーの方はまろやかな中音域が強調されやすいハムバッキング搭載のセミアコギターES-345を使っています。

 

しかしアンプのセッティングでリードを弾くことが多いガルシアはミドルを強調していて、バッキングでキレのあるカッティングを弾くことの多いウィアーの方は周りの楽器陣の音に埋もれないようにトレブルを強調しているんだと思われます。

 

次のウィアーの歌う自作曲の2曲目”Greatest Story Ever Told”では、ガルシアがワウペダルを使ってリード・ギターを弾いているのですが、この時のサウンドはストラトらしいトレブリーなサウンドになっているのもまた興味深い点です。

 

ちなみにこの”Greatest Story Ever Told”は僕も大好きな曲で、ボブ・ウィアーの1972年のソロ・アルバム『Ace』の1曲目に収録されていた軽快なロック・ソングです。

 

デッドの公式盤では1981年の2枚組ライヴ盤『Dead Set』に収録されていました。

 

でも僕の中では1981年のバージョンよりも本作に収録されている”Greatest Story Ever Told”が一番だと思います!

 

この頃の方がガルシアのギター・ソロが活き活きとしています!

 

[Disc 1]には、他にも定番曲の”Sugaree”や”Mexicali Blues”に、1971年の名作『スカル&ローゼズ』にも収録されていた”Big Railroad Blues”と”Playing in the Band”なんかが収録されています。

 

“Big Railroad Blues”のオリジナルはガスキャノン率いるキャノンズ・ジャグ・ストンパーズの曲で、ハーピストの相棒ノア・ルイスが書いた曲になります。。

 

またブルースがお得意なピッグペンが、歌とハープを担当したジミー・リードの”Big Boss Man”やエルモア・ジェームスの”It Hurts Me Too”が収録されているのもポイントです。

 

“It Hurts Me Too”ではガルシアのスライドギターも聴くことが出来ます。

 

[Disc 2]は、ルディ・クラークが書いたラスカルズの曲のカヴァー”Good Lovin'”で始まります。

 

ピッグペンがリードを歌い、他のメンバー全員でバック・コーラスを歌っています。

 

[Disc 2]でもさっそくガルシアの卓越したギター・ソロが冴えわたります!

 

他にも、ミシシッピ・シークスがオリジナルでハウリン・ウルフなど数多くのブルースマンも取り上げたお馴染みSitting on Top of the World”も演奏しています。

 

デッドは、”Sitting on Top of the World”を1967年のデビュー作から演奏していますが、敢えてブルースではなくビート・バンドのような速いテンポにアレンジして演奏しています。

 

この非ブルース的アレンジがどうなのか…は、疑問に残るところですが、しかし速いテンポを物ともしないガルシアのギター・ソロは一筆です!

 

1969年のライヴ名盤『Live/Dead』でも取り上げていたボビー・”ブルー”・ブランドの楽曲”Turn on Your Love Light”もまだピッグペンがいた時代なので演奏されています。

 

そしてデッドのライヴではお決まりの、カントリーシンガーのクリフ・カーライルが歌ったトラディショナル・ソング”Goin’ Down the Road Feeling Bad”からバディ・ホリーの”Not Fade Away”に繋がるいつもの流れはここでも披露されています。

 

今回はボ・ディドリーの”Hey! Bo Diddley”も途中で挿入されていますが、この流れがないとデッドのライヴではありませんよね!

 

[Disc 3]は、珍しくヒューイ・”ピアノ”・スミスの名曲カヴァー”Rockin’ Pneumonia and the Boogie Woogie Flu”から始まります。

 

エアロスミスもカヴァーしたこの楽しいニューオーリンズ・ソングが聴けるのも本作の良い所です。

 

ピッグペンの書いた”Chinatown Shuffle”も素晴らしい出来です。

 

特にガルシアの流れるような勢いのあるギター・ソロは聴きものです!

 

その後も定番曲の名曲”Truckin'”や、ビル・クレアッツマンのドラム・コーナーが始まり”The Other One”に流れる一連のお決まりコーナーもあります。

 

[Disc 3]の締めはウィアーの歌う”One More Saturday Night”です。

 

この曲や”U.S. Blues”が登場するとデッドのライヴの終盤もしくは最後の曲だと感じてしまいますね。

 

しかし本作には更にすごい[Disc 4]が待ち構えています!

 

[Disc 4]だけ6曲しか収録されていないのですが、曲目に注目してみてください。

 

1970年のフォーク・ロック作品『Workingman’s Dead』に収録されていたフォーク・ソングの”Uncle John’s Band”や、ピッグペンの”The Stranger (Two Souls in Communion)”に、スタジオ盤最高傑作の1970年の『American Beauty』収録の定番曲”Sugar Magnolia” なんかが目につきます。

 

1968年の『Anthem of the Sun』に収録されていた懐かしの”Caution (Do Not Stop on Tracks)”に、本作の最後の締めにこれまた『American Beauty』からゆったりとした”Brokedown Palace”も取り上げられています。

 

でも聴き所はその5曲ではありません!

 

31分28秒にも及ぶ”Dark Star”が待ち構えています!

 

やはりこれです!

 

1969年のライヴ名盤『Live/Dead』で初めて公式リリースされたライヴだけの名曲です!

 

確かスタジオ録音はなかったはず⁉です。

 

ライヴという現場でしか成り立たないジャム・セッション形式の名曲です。

 

この曲を聴くとデッドが「ジャム・バンド」の始祖だと言われるのも納得できます。

 

一応ガルシアの歌う歌パートもありますが、オマケでしかありません。

 

この曲の本当の凄さは、アドリヴで展開していく各楽器のアンサンブルです。

 

ガルシアのリード・ギターを中心にカラフルな万華鏡を覗いているかの如く、各楽器が絡み合って目まぐるしく場面が転換していきます!

 

ウィアーのリズム・ギターも単に同じ演奏をするのではなく、ガルシアのギター・ソロの盛り上がりに合わせて反応していきます。

 

ベーシストのフィル・レッシュに至っては、もはやずっと自由にベース・ソロを弾いているかのようです。

 

ガルシアが隊長だとすると、フィルが副隊長になります。

 

完全にこの2人が作り出す音の世界が、当日の会場をデッドの醸し出すグルーヴによってまるで宇宙の渦の中にいるように包み込んでいたことでしょう!

 

90年代になってもたま~に演奏されていましたが、やはり70年代の全盛期の演奏は勢いが違います!

 

『Live/Dead』の時よりもむしろバンドのアンサンブルが固まった演奏に聞こえます。

 

僕は本作に収録されたこの長すぎるバージョンの”Dark Star”が一番好きです♪

 

そういった理由もあって本作『Steppin’ Out with the Grateful Dead: England ’72』は、僕のフェイバリット・デッドアルバムのひとつになりました。

 

5時間と、あまりにも長すぎる収録時間のアルバムですが……しかし全盛期のデッドの演奏を満遍なく収録した最高のアルバムだと言えます!

 

 

 

 

以上、【至福の5時間‼グレイトフル・デッドの1972年イングランド公演を収録したCD4枚組ライヴ盤】でした。

 

デッド・ヘッズ(グレイトフル・デッドのファンの名称)の人はもちろん、「ジャム・バンド」のライヴ盤が好きな人にはおすすめしたい名作です!

 

デッドの全盛期の音源としても、ピッグペンのいた時代の音源としても貴重なアルバムです。

 

またアルバム・ジャケットのユニオンジャックがデザインされたロンドンバスのキャラクターもコミカルなので、手元に置いておきたくなる作品です♪

 

収録曲のバランスも良く、”Dark Star”の最高峰とも言えそうな素晴らしい演奏も聴けるアルバムです♪

 

それにピッグペンとビッグベンも似ていることですし…⁉

 

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