2019/09/18
ハープでジャズ・ファンク?ドロシー・アシュビーの『Afro-Harping』を聴こう♪
女性ジャズハープ奏者ドロシー・アシュビーのジャズ・ファンク作品『Afro-Harping』をご紹介します。
ハープが主役の珍しいジャズ・ファンク・アルバム
今回ご紹介するのは、女性ジャズハープ奏者ドロシー・アシュビーのジャズ・ファンク作品『Afro-Harping』です。
ジャズ・ファンクというジャンルにおいて、ハープが登場することは珍しいことだと思うのですが、こういった作品もあるんだよってことで……。
ジャズ界で女性ハープ奏者と言えば、ジョン・コルトレーンの奥さんだったアリス・コルトレーンもいます。
アリス・コルトレーンは、もともとピアノ奏者なのですが夫のジョン・コルトレーンにすすめられてハープも演奏するようになりました。
そのアリス・コルトレーンと並ぶジャズ系ハープ奏者がこのドロシー・アシュビーです。
本作のタイトルにある『Afro-Harping』の「アフロ」という文字を見てしまうと、どうしてもアリス・コルトレーンのようなスピリチュアル・ジャズを思い起こしてしまいそうですが、本作は「アフロ・アメリカン」のエスニック要素が強いアルバムではありません。
呪文のように繰り返されるチャントや幾重にも重なったポリリズムを表現するような楽曲はなくって、それよりもむしろカル・ジェイダーのラテン・ジャズ・ヴァイブ作品のような楽曲が並ぶアルバムです。
それでは今回はドロシー・アシュビーのジャズ・ファンク作品『Afro-Harping』をご紹介していきたいと思います。
Dorothy Ashby – 『Afro-Harping』
01.Soul Vibrations
02.Games
03.Action Line
04.Lonely Girl
05.Life Has Its Trials
06.Afro-Harping
07.Little Sunflower
08.Theme from Valley of the Dolls
09.Come Live With Me
10.The Look of Love
アルバムの内容
1曲目”Soul Vibrations”は、ジャズ・ベーシストのリチャード・デイヴィスが書いた楽曲です。
重いドラムのビートに乗せてドロシーの弾くハープの美しい音色がマイナー調のソロを奏でるインスト曲です。
バックにはストリングスも入り、壮大な雰囲気を醸し出しています。
しかしハープという一風変わった楽器こそ使ってはいますが、正直言うとジャズ・ピアノと変わらないフレージングでもあります。
ピアノやヴィブラフォンに似たサウンドとも感じますし、エフェクターが発達した近年のエレキギターであれば反響を表現するディレイと音の重なりを表現するオクターヴァーを使えば似たようなサウンドを作り出せそうです。
それに必ずしもハープでなければ弾けないようなフレーズばかりが登場するわけでもないので、同じメロディーをピアノやギターで弾いても違和感なく弾けるとも感じます。
なので、ハープでジャズ・ファンク?と考えるよりも、たまたまハープ奏者だったのでハープを使って演奏しているんだな~と気楽に聴きたいところです。
2曲目Games”と3曲目”Action Line”、そして5曲目”Life Has Its Trials”の計3曲がドロシーが1人で書いた楽曲です。
面白いことにどの曲もまるでカル・ジェイダーの作品に収録されていそうなラテン風の楽曲です。
5曲目ではヴィブラフォンやフルートのソロも出てきたりします。
当時のドロシーはこういった楽曲を演奏した方のでしょうが、それこそピアノやヴィブラフォンでも良かったような楽曲を敢えてハープで演奏している点が大変興味深いですね。
4曲目”Lonely Girl”は、ジャズ・トランペット奏者のニール・ヘフティが1965年に演奏した曲で作曲家のジェイ・リビングストンと共作しています。
原曲と同じくここでもラテンのリズムで演奏されています。
原曲ではゴージャスなストリングスやホーンが挿入されていますが、本作では少ない編成でドロシーの幻想的なハープの音色を中心にアレンジを施しカヴァーしています。
タイトル曲の6曲目”Afro-Harping”は、なんとドロシーとセッション系ギタリストでお馴染みのフィル・アップチャーチの共作曲です。
フルートとフィル・アップチャーチによるギターのユニゾンによるテーマが終わると、ハープソロ→エレピソロ→フルートソロと続きます。
7曲目”Little Sunflower”は、この時代のジャズ・ファンク系の他の作品でも良くカヴァーされていたフレディ・ハバードの名曲”Little Sunflower”です。
ジャズ・ドラマーのザ・ルイス・ヘイズ・グループの『Variety is the Spice』でも取り上げられていましたね。
あの作品では、スピリチュアル・ジャズ系シンガーのレオン・トーマスが歌も披露していましたが、本作では完全にドロシーのハープを中心としたインストでカヴァーしています。
8曲目”Theme from Valley of the Dolls”は、1967年のロマンス系ドラマ『哀愁の花びら(Valley of the Dolls)』のテーマ曲です。
おそらくドロシーが好きなドラマだったんでしょう。
いわゆる日本でいうところの昼ドラ=ソープ・オペラみたいなもんだと思います。
どうしても男の僕にはこういったロマンス系のドラマの魅力はあまりわからないのですが……しかし楽曲の良さは聴けばすぐにわかります。
ドロシーが本曲を取り上げたのも頷けます。
これは癖になるテーマメロディーです。
ドラマのロマンチック具合はラヴ・ロマンス系においてセンスのない僕には理解不能ですが……この楽曲の持つドラマチックなテーマメロディーの美しさは理解できます。
ちょっとポップなジャズ・ファンク系としても十分イケます。
そもそもジャズ・ファンク系の作品でも、当時の流行りの映画ソングやドラマの主題歌に、ジャクソン5やキャロル・キングのようなポップな楽曲を取り上げることは多々ありますからね。
全てが全てイナタい楽曲ばかりではないのもジャズ・ファンクというジャンルの持つ幅広さだと思います。(あいまいさの要因でもありますが……。)
9曲目”Come Live With Me”は、歌手のラス・カーライルが1950年に歌った古い楽曲のカヴァーです。
10曲目は、映画『007 カジノロワイヤル』の主題歌でバート・バカラックの1967年の楽曲”The Look of Love”のカヴァーです。
以上、【ハープでジャズ・ファンク?ドロシー・アシュビーの『Afro-Harping』を聴こう♪】でした。
ハープが主役という一風変わったジャズ・ファンク・アルバムでした。
またそれだけでなくカヴァー曲の独特の目線からチョイスされているようにも感じます。
そういったカヴァー曲のアレンジが素晴らしかったりもする作品です。
アルバム名の『Afro-Harping』からどうしてもスピリチュアル・ジャズ系の作品と思ってしまいそうですが、どちらかっていうとカル・ジェイダーのようなラテン・ジャズ作品がお好きな人におすすめです♪
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