2019/01/17
デイヴィッド・T.・ウォーカーの参加したおすすめの歌物R&Bアルバム3選!
デイヴィッド・T.・ウォーカーの華麗なる歌伴が聴けるおすすめのR&B系の3作品!
今回は僕の好きなギタリストのひとり、デイヴィッド・T.・ウォーカー(以下:デビT)がサイドマンで参加したアルバムを3枚ご紹介します。
後続ギタリストに大きな影響を与えたデイヴィッド・T.・ウォーカーとは?
デビTと言えば、元はと言えばコーネル・デュプリーやフィル・アップチャーチと同じようにスタジオ・セッション・ミュージシャンです。
多くのR&Bやフュージョン系の名盤に名を連ねている名ギタリストでもあります。
参加作品は、もはや本人ですら把握できないほど多岐に渡っているのですが……僕が思うデビTが最も力を発揮するのは、ボーカリストのバッキングを弾いた時だと思います。
特に歌伴奏時の、コードを弾いたときに「ポロピロポロリ~~ン♪」と美しい音色を奏でるハープ奏法や、インパクトのある音を出すチョップ奏法に、R&B系ではお馴染みのダブルストップ奏法を音をスライドさせて弾いたりするのがデビTの特徴です。
こういった奏法を弾いているのを聴くと「あ、デビTだ!」とすぐに気付くぐらいです。
またこういった奏法は、1990年代半ばごろからディアンジェロのギタリストだったスパンキーを中心に、ネオ・ソウル系のギタリストの定番奏法にもなっています。
ゴスペル・チョップなどと呼ばれるこういった奏法の元を辿れば、デビTに行きつきます。
それぐらい後続のR&B系のギタリストに大きな影響を与えたのが、このデイヴィッド・T.・ウォーカーです。
それではそういったデビTの特徴的な奏法が聴ける3枚の歌ものアルバムをご紹介します。
01.Johnny Bristol – 『Bristol’s Creme』
モータウンの専属ソングライター兼プロデューサーとして活躍していたジョニー・ブリストルが1976年にリリースした3枚目のソロ作品『Bristol’s Creme』です。全8曲の収録曲のうちデビTが参加しているのは、6曲になります。デビTが参加していない”I Sho Like Groovin’ With Ya”にはワーワー・ワトソンが参加していたり、多くの曲でレイ・パーカーJr.がギターカッティングを弾いていたり、同時期のマーヴィン・ゲイやハーヴィー・ハンコックの作品に参加したギタリスト達の演奏を聴けるアルバムでもあります。この2人のギタリストも特徴的で、特にレイ・パーカーJr.の単音カッティングは、すぐに彼だってわかるぐらいなのですが……今回はデビTに焦点を合わせたいと思います。まず1曲目”Do It to My Mind”からデビTが参加しています。ジェイムス・ガッドソンのドラムのイントロから、今となっては時代を感じさせるピアノとホーン隊のイントロの「バラバッババッバ~♪」というメロディーが流れた後に、左チャンネルから「チャッララッ♪」というギターの複音が鳴り始めます。これがデビTです。ギターの2音のみを弾いたダブルストップ奏法を用いて音をスライドさせています。逆に右チャンネルから聴こえてくるギターカッティングはレイ・パーカーJr.によるものです。本来であれば、ギタリストがこういったR&B系の曲の歌伴を弾く場合は、レイ・パーカーJr.のようなカッティングを弾くと思います。そうするとメロディー面では派手に鳴るホーン隊やピアノ、ストリングスに負けてしまい、ギターの音は埋もれがちになります。しかしデビTは、もう一方のギターと被らない音階で、更に派手なホーン隊が鳴っていても埋もれないようにこういったダブルストップ奏法を弾くことが多く見られます。コード音をひたすらカッティングしてリズムに徹するのではなく、ギターでしか出せないオブリガードを入れるのがデビTの一番の特徴です。それがこの1曲目”Do It to My Mind”で特に感じることができます。実際この曲では、デビTはヴァース部分でひたすら「チャッララッ♪」と繰り返し弾いているだけです。サビ部分では歌に対応したオブリガード・フレーズも弾いていますが、一番目立つのはこのダブルストップ奏法の部分です。しかしこの繰り返しのフレーズは、主役のジョニー・ブリストルの歌声の次ぐらいに印象に残るフレーズだと思います。この曲を思い出すと、あの「チャッララッ♪」が頭の中で繰り返し鳴り始めるはずです⁉それぐらい印象的なフレーズなのですが、たった2つの音を音程を変えて弾いているだけです!こんなにも簡単なフレーズなのに、他のどの楽器の音にも埋もれないギター独特の音程なんです。次の2曲目”I Love Talkin’ Bout Baby”にもデビTが参加しています。こちらのスロー・バラードでは同じく左チャンネルから聴こえてくるギターの音がデビTなのですが、1曲目程は目立ってはいません。今回はお得意のダウンチョーキングの音色を駆使してボーカルに呼応するかのようなオブリガードに徹しています。このギターの弾き方もデビTの特徴のひとつです。ギターの弦を上にベンドさせてチョーキングをする際に、ピッキングのタイミングをずらして、弦が持ち上がっている時ではなく、弦を元の音程に戻す際にピッキングをします。これによってまるでギターが喋っているかのような音が出せます。ロックやブルース系のギタリストなら弦が持ち上がった瞬間を狙ってピッキングするのですが、デビTのように逆に弦を下げる瞬間にピッキングすると、なんともアンニュイな音が出せるんです。ちなみに3曲目の”I Sho Like Groovin’ With Ya”のイントロでは、同じようなダウンチョーキングの歌うようなフレーズをワーワー・ワトソンが弾いていたりします。デビTを意識したのでしょうか?(笑)次のデビT参加曲は4曲目の”You Turned Me On To Love”です。さっそくイントロからデビTのギターのダブルストップの音で始まります。まるで鳥がさえずるような音色ですね。他にも5曲目”She Came into My Life”や7曲目の”Baby’s So Much Fun to Dream About”に8曲目の”Have Yourself a Good Time Thinkin’ Bout the Good Times”にもデビTが参加しています。でもやはり一番デビTの特徴がわかりやすいのは1曲目の”Do It to My Mind”です。たったあれだけの簡単な繰り返しで個性を出せるなんて当時のギタリストには盲点だったんじゃないでしょうか?(笑)ギターを始めたばかりの人でもすぐに弾けそうな簡単なフレーズなのに、他のどの楽器よりも聴いた人の印象に残るような効果絶大な音色です♪これこそがデビTが歌伴で本領を発揮する一番の武器だと思います。歌伴が苦手なギター弾きの方は、こういったデビTの演奏を参考にすると良いと思います。何も難しいコード理論なんて必要ありませんし、それに同じコード音をひたすらカッティングする必要もありません。またバンド内にギタリストが2人いた場合に、同じコード弾きをしていては音が重なって、非常にかっこ悪いことになるのですが……どちらか一方がこういったデビTのような奏法で弾くことでより楽曲の質を上げることが出来ます!簡単なフレーズなのに、実はひたすらコードカッティングしているギタリストよりも目立ちますし、聴いてくれているお客さんの印象にも残りやすいです!なので、相方のギタリストに抜け駆けしてデビTフレーズを弾いてやりましょう!(笑)もちろん本作は、歌伴が上手くいかないギタリストだけではなく、歌ものR&Bがお好きな方にもおすすめの作品です。大人のR&Bが聴ける艶っぽい作品です♪
02.Leon Ware – 『Musical Massage』
70年代のソウル系のブラック・ミュージックに多く見られるエロジャケでお馴染みのレオン・ウェア1976年の作品『Musical Massage』です。マーヴィン・ゲイのアルバム『I Want You』のプロデューサーとしても有名ですね。もとはと言えば”I Want You”は、レオン・ウェアが自分の曲として録音していたのを、マーヴィンが気に入って自分の作品として録音したという経緯があります。そのマーヴィンの『I Want You』にもデビTは参加しています。……が、こちらのレオン・ウェアの『Musical Massage』の方がよりデビTのギターが目立っているので、こちらを選びました。ちなみにどちらのアルバムにもレイ・パーカーJr.が参加しています。さて、本作の1曲目”Learning How to Love You”のイントロからさっそくデビTのギターカッティングが登場します!この曲では終始粘っこいカッティングに徹しています。次の2曲目”Instant Love”ではミニー・リパートンが登場します。レオン・ウェアはミニーの作品もプロデューサーしています。この曲の左チャンネルから聴こえるギターがデビTです。基本はコードカッティングを弾いていますが、ところどころでプル奏法やダブルストップのスライド音で存在感をアピールしています。この作品では全ての曲にデビTがギターで参加していますが、一番目立つのは3曲目の”Body Heat”です。最初の歌メロ部分からデビTの歌うようなギターのフレーズが聴けます。レオン・ウェアのボーカルと呼応するかのようなギターリフが印象的です。またサビ部分ではお馴染みのダブルストップでスライドしていくギターの音が聴けます。なんといってもこの曲の歌伴が本作の聴きどころです!単なるコード弾きをするのではなくって、ボーカルのメロディの邪魔にならないようにしつつも自分の存在感をアピールするような歌伴ですね。まさにバッキング名人です!ギターバッキングのお手本として、ぜひこの”Body Heat”を参考にしてみると良いと思います。ちなみにベースにチャック・レイニー、ドラムにジェイムス・ガッドソンといったデビTにはお馴染みの面子が参加したアルバムでもあります。このリズム隊2人とデビTの相性は抜群です♪
03.Marlena Shaw – 『Who Is This Bitch, Anyway?』
途中でキーが転調する名アレンジが光る”Feel Like Makin’ Love”で有名なマリーナ・ショウの1975年のアルバム『Who Is This Bitch, Anyway?』です。デビTは4曲に参加しています。そのうち3曲にはラリー・カールトンも参加しています。もちろんデビTが参加した4曲が本作の聴きどころで、また名曲ばかりになります。まずはヴァースとサビでリズムが転調する”Street Walkin’ Woman”です。この曲では左チャンネルから聴こえてくる粘っこい高速カッティングを弾いているのがデビTです。まるでマシンガンのような高速ビートのファンク・カッティングが印象的です。次のバラード曲”You Taught Me How to Speak in Love”ではヴァース部分の歌メロではプル奏法、サビ部分ではお馴染みダブルストップで下降するスライド・フレーズが登場します。右チャンネルから聴こえてくるギターの音はデニース・ブディミールによるものです。そして何と言っても一番の聴きどころが5曲目の”Feel Like Makin’ Love”です。イントロの幻想的なエレピの後ろでさっそくデビTがダブルストップで下降するフレーズで入ってきて、チョップ音を合図にマリーナの歌が始まります。左チャンネルのギターの音がデビTで、右チャンネルのギターの音はラリー・カールトンです。この曲で聴ける「ジャララララ~♪」と、複音の音色をトレモロ・ピッキングして半音ずつ上がっていく奏法もデビTお得意のフレージングです。マリーナのボーカルの次に、いやそれ以上にデビTのギターの音が印象に残る名演ですね♪そしてもう1曲、マリーナの代表曲ともいえる9曲目の”Loving You Was Like a Party”にもラリー・カールトンと一緒にギターで参加しています。この4曲がデビTだけでなく本作の聴きどころです♪
以上、【デイヴィッド・T.・ウォーカーの参加したおすすめの歌物アルバム3選!】のご紹介でした。
数多くの歌ものセッションに参加しているデビTなのですが、まずはこの3作品からデヴィTの卓越した歌伴を聴いてみてはいかがでしょうか?
デビTは単なるバッキングの名人というだけでなく、特徴的なハープ奏法やダブルストップのフージングなど、他の楽器陣とは被ることのないギターでしか出せない音を奏でる名人でもあります。
それでいて主役のボーカルの邪魔にはならないように歌のない「隙間」部分で効果的な音を鳴らす空気の読めるギタリストですね。
後のネオ・ソウル系のギタリストに大きな影響を与えたのも納得の名ギタリストです!
デビTのリーダー作以外にもこういったお手本のような歌伴が聴けるサイドワークもおすすめです♪