2024/09/12
ザ・ニュー・マスターサウンズが原点回帰した!?本格的ソウル・ジャズ作品!14作目のスタジオ・アルバム『Old School』を聴こう♪
ザ・ニュー・マスターサウンズの作品を1枚ずつご紹介するシリーズ
2024年にリリースされた14作目のスタジオ・アルバム『Old School』についてご紹介します。
今回は、先日国内盤がリリースされたばかりのザ・ニュー・マスターサウンズ(以降:ニューマスター)の最新作『Old School』についてご紹介します。
前回ニューマスターの13作目のスタジオ・アルバム『The Deplar Effect』をご紹介したのが9月6日だったので今回はすぐとなりますが、『ザ・ニュー・マスターサウンズの作品を1枚ずつご紹介するシリーズ』の続きとなります。
『The Deplar Effect』に関してのブログ記事はぜひ下記リンク先よりご覧になって下さい。
ザ・ニュー・マスターサウンズの13作目のスタジオ・アルバム『The Deplar Effect』を聴こう♪
The New Mastersounds – 『Old School』
01.Down On The Farm
02.Boogaloo Is Dead
03..Breakfast T
04.Smoothie
05.Two Fat Ladies (88)
06.Do The Sausage Roll
07.In Da Club
08.Buggin’
09.Scrappy Doo
10.Till The Cows Come Home
– Japanese Bonus Track –
11.Breakfast T (Live In Bridgeport)
12.Till The Cows Come Home (Live In Denver)
Personnel:
Eddie Roberts – Guitar & Tambourine
Simon Allen – Drums
Pete Shand – Bass
Joe Tatton – Organ & Piano
Released : 2024
アルバムについて
本作『Old School』は、ニューマスターのスタジオ・アルバムとしては14作目のアルバムとなります。
公式にリリースされたライブ盤2作品(1作は日本限定発売)とスタジオ・セッション2作品を合せると通算18作目のアルバムになります。
本作のリリースは、先に輸入盤のLPとデジタル音源で3月29日には販売が開始されていました。
海外のライブでは3月後半から本作収録の新曲が演奏されていました。
それから国内盤CDがリリースされたのは約5ヶ月後の8月28日になってようやくリリースされています。
10年近く前にまだまだディープ・ファンクが日本でも流行っていた時代は、ニューマスターのアルバムは日本先行発売とかされていたのですが…残念ながら近年はニューマスターの国内盤CDの発売は、輸入盤から数ヶ月経った後になっていますね。
さて、アルバム・タイトルの”old school”とは、もともとは「母校」や「出身校」の意味ですが、音楽関係でよく使われる意味合いは「古典的」や「古き良き」という意味になります。
アルバムのジャケットは「母校」の方の意味に合せた学校で授業を受けている生徒達の写真が使われていますね。
ところでこのブログ記事のタイトルに「ザ・ニュー・マスターサウンズが原点回帰した!?」と書きましたが、厳密にはニューマスターの原点回帰というよりもアルバム・タイトル通りの「古き良き」時代のソウル・ジャズ風の曲を集めた作品といった方が良さそうな内容です。
本作の国内盤リリース時に書いたブログ記事でも僕は「原点回帰作?」みたいに書いていたのですが…
「原点回帰」だと本来のニューマスターの始まりは、「ミーターズ+ジェームス・ブラウン系のファンクにグラント・グリーン風のギターが乗っかったバンド」なので本作の内容とは少し違っていましたね。
後に本作を入手してからじっくりと聴いてみたのですが…1曲目こそミーターズ風の曲でしたが、それだけでなく本作の音楽性は1960年代にブルー・ノート・レコードやプレスティッジ・レコード等でオルガン奏者が数多く残したソウル・ジャズやジャズ・ファンク風の作風の影響も大きく感じられました。
しかも今回のアルバムにはボーカル曲がなく、ゲストのボーカル参加もなく、ホーン隊の参加すらありませんでした。
これは一見してマイナスに感じられそうな内容に感じられますが…しかしニューマスターの4人のメンバーだけで全ての楽曲を演奏しているので、このバンドの本来の姿はこのアルバムにこそあるんだと思えます。
意外なことにこれまでゲストなしのアルバムは1枚もなかったので、実は14作目にしてメンバー4人だけで制作したアルバムはこの作品が初めてなんですね。
また本作の収録曲には、カヴァー曲や他のミュージシャンとの共作曲もなく、ニューマスターの4人のメンバー全員で作曲したオリジナル曲で固められています。
ニューマスターの4人のメンバーが皆でジャムって作った楽曲を、4人のメンバーだけで全て演奏する…これこそまさにニューマスターの本来の姿であり、僕たちファンが聴きたかったアルバムだと言えます。
それではアルバムの収録曲についてご紹介します。
アルバムの内容
ニューマスターのアルバムの1曲目は、ミーターズ風のファンク曲で始まるのが一種の「お約束」になっています。(例外もあります。)
そのお約束に従って、1曲目”Down On The Farm”はミーターズ風のシンコペーションしたゆる~いリズムが特徴のファンク曲です。
それだけでなくこの曲のオルガンの音を聴いて「なんとなくブラザー・ジャック・マクダフのソウル・ジャズ作品に収録されていそうな曲調だな~♪」とも感じました。
エディー・ロバーツが弾くゆる~いワウギターのリフに、サイモン・アレンが叩くタイトなドラム、ブラザー・ジャック・マクダフ風のソウルフルなオルガンを奏でるジョー・タットンに、ステディなビートをキープするピート・シャンドのベース…ミーターズ風なだけでなく60年代風ソウル・ジャズの要素も感じられます。
ニューマスターの始まりにDJケブ・ダージが結成間もないこのバンドの1stアルバムを制作する際に「新しい古い音」を要求したのですが、そのコンセプトは今も引き継がれているようです。
また本作にはボーカル曲はないものの、この1曲目には”What you say, what you do!”というメンバー全員のバックコーラスが入っています。
コーラスが入っているのはこの曲のみですが、これがアルバムの幕開けを告げるようで悪くないです。
1曲目に収録されていることが多いミーターズ風の曲ではエディーのギター・ソロがないことがいつものパターンなのですが、今回の”Down On The Farm”にもギター・ソロはありませんでした。
次の2曲目”Boogaloo Is Dead”は、エディーが過去に自身のリーダー作でも”Booga Lou”といった曲を作っていたのですが、それと同じようなブーガルー調のソウル・ジャズ曲です。
今度はオルガン奏者のビッグ・ジョン・パットンが演奏していそうな曲調で、ここでようやく登場するエディーのギター・ソロはまさに敬愛するグラント・グリーン風です。
ジョン・パットンの相棒といえば、グラント・グリーンですからね!
まさにあの時代のブルー・ノート・レコードのソウル・ジャズを現代に蘇らせたかのような素晴らしい曲です。
3曲目”Breakfast T”は、どうやら曲名にある”T”はブッカー・T・ジョーンズのことのようで、ブッカー・T&ザ・MG’sをオマージュしたような曲調です。
本作の国内盤CDには、ボーナス・トラックでこの曲のライブ音源が収録されているのですが、まさにライブ映えする曲です。
いつになくステディなビートをキープしているサイモンのドラムが余計に印象に残ります。
いつもは1つの曲の中で結構オカズを入れてバカスカ叩いたりするのですが、本作ではまるでループするかのようなステディ(決まった)なビートがずっと続きます。
マディ・ウォーターズの”I’m Your Hoochie Coochie Man”やハウリン・ウルフの”Smokestack Lightning”は、同じ繰り返しによってヴードゥー教の儀式のような聴く者にある種の陶酔感を与えるのですが…まさに本作の楽曲も同じようなリズムの繰り返しが聴く者を夢中にさせています。
いつだったか『ジョジョの奇妙な冒険』の作者の荒木飛呂彦先生がコミックの作者コメントで「人は繰り返しに感動する」みたいなことを仰っていたかとぼんやりと記憶しているのですが、まさにこのループするリズムこそがその言葉通りに感じられます。
ニューマスターのライブでは海外だけでなく日本でもフロアで踊る人が多くいますが、こういった繰り返しのリズムはライブで踊りたい人に打って付けですからね。
今年の年末に行われる予定の来日公演でこの曲を演奏してくれたら盛り上がりそうな気がします。
4曲目”Smoothie”は、今年の3月15日にアルバムからの第2弾シングルとしてリリースされた曲です。
エディー・ロバーツお得意のキレのあるファンキーなギター・カッティングに、どことなくジミー・マクグリフっぽいサウンドのオルガンでテーマを弾くジョー、そしてタイトなビートをキープし続けるリズム隊2人がバックを支えます。
曲のテーマはジョーがオルガンで弾いているのですが、1分9秒から登場するエディーのオクターブ奏法の連続フレーズがかっこいい曲です。
ギター・カッティング時は右チャンネルにギターの音が振り分けられているのですが、このオクターブ奏法のフレーズは別録りで左チャンネルから聞こえてきます。
深めにリバーブが掛けられており、そのサウンドがフェンダー・アンプ内蔵のスプリング・リバーブ全盛期だった60年代を思い起こさせます。
個人的にはこの曲がアルバムのベスト・トラックです。
本作の中では一番好きな曲なので、年末の来日公演で演奏してくれることを期待しています。
5曲目”Two Fat Ladies (88)”は、これまたニューマスターのアルバムではお馴染みのスロー・テンポでサイケデリックな曲です。
前作の『The Deplar Effect』には”Northern Lights”というサイケデリックな曲が収録されていましたが、それと同じ系統の曲です。
他にも2012年のアルバム『Out On The Faultline』に収録されていた”Summercamp”や、2006年のアルバム『102%』収録されていた”Colorado Sun (Jesse’s Backyard)”なんかも同系統の曲です。
今回の”Two Fat Ladies (88)”ではエディーのギター・ソロはなく、ワウギターでバッキングを弾いているのみです。
その代わりにジョーが弾くジャジーなピアノの音色がうっとりするように美しい曲です。
今のところこの曲がライブで演奏されているのを確認できていないのですが、来日公演では新作に収録されているサイケデリックな曲を演奏してくれることは多いので、年末のライブでは演奏してくれるかもしれませんね!?
2023年のライブでは中間に”Northern Lights”が演奏されており、いい感じの箸休めになっていました。
6曲目”Do The Sausage Roll”は、アルバムのいリリースに先行して2月16日にシングル・リリースされた曲です。
この曲が本作のリード・トラックになります。
基本はジョーがオルガンでテーマを弾いていますが、サビ部分はエディーのオクターブ奏法で弾いています。
まずはオルガン・ソロから始まり、次にギター・ソロへと繋がります。
実は僕はこの曲のシングル・リリースをニューマスターの各種SNSで知り、リアルタイムで聴きました。
その時に「ラマー・ウィリアムズ Jr.が歌うボーカル曲じゃない!」と思ったのと、「僕の好きなジャズ・ファンク系の曲調だな~。これは新作に期待できるかも!」と感じました。
予想は大当たりでした!
この”Do The Sausage Roll”を聴いて期待した通りのニューマスターらしいソウル・ジャズやジャズ・ファンクが収録された新作となりました。
そういったわけでこの”Do The Sausage Roll”も年末の来日公演で聴きたい曲です。
7曲目”In Da Club”の曲名を見ると、ヒップホップ好きなら50セントの大ヒット曲を思い浮かべますね。
過去にエディー・ロバーツは、自身のリーダー作『Roughneck』にてエミネムのカヴァー”Lose Yourself”をジャズ風にアレンジして演奏していました。
そのことがあったため本作の収録曲を目にした時は、「今回は50セントの曲をカヴァーしたのか!?」と驚きましたが…違っていました。
ニューマスターのオリジナルのジャズ・ファンク曲でした。
そのため逆さまに吊るされることなさそうです…。
ただどことなくフィンランドのディープ・ファンク・バンドのソウル・インベスティゲーターズ(The Soul Investigators)が演奏していそうな曲に聞こえます。
まるで彼らの2002年のアルバム『Home Cooking』に収録されていそうな曲調です。
8曲目”Buggin'”は、ニューマスターのアルバムやライブで時たま登場するレゲエ調の曲です。
ニューマスターは英国出身のバンドなので、やはり70年代から始まった英国のレゲエ・ブームに少なからず影響を受けているのでしょう。
過去にも2015年のアルバム『Made For Pleasure』でイギー・アゼリアのヒット曲”Fancy”を大胆にレゲエ・アレンジでカヴァーしていたこともありました。
それだけでなくライブで”One Note Brown”を演奏する際に、イントロはレゲエ・アレンジで始めたりもしています。
また公式には音源がリリースされてはいませんが、ライブで度々デイヴ・アンド・アンセル・コリンズ(Dave & Ansell Collins)の1970年のシングル曲”Double Barrel”もカヴァーしていました。
更にはベースのピートがニューマスター以外のバンド「パパダブ( Papadub)」でレゲエ曲を演奏していたこともあります。
このようにニューマスターのメンバーはレゲエもお好きなようで、本作ではついにオリジナルのレゲエ曲”Buggin'”が出来上がりました。
スタジオ盤ではギターのバッキングの上にメロディー・ラインを弾くギターが重ねられた多重録音を用いていますが、ライブではエディーがメロディーを弾いた後に上手い具合にリズム・ギターに戻る形で演奏されていました。
9曲目”Scrappy Doo”は、なんとなくオーティス・レディンの名曲”I Can’t Turn You Loose”を彷彿させるギター・リフで始まる曲です。
ギター・リフやベース・パターンが似てはいますが、曲が始まってしまえばニューマスターらしいジャズ・ファンク曲になります。
本作収録曲はエディー・ロバーツのギター・ソロがあまりフィーチャーされていないものが多いのですが、この曲ではギター・ソロを弾きまくっています!
しかし先の”Breakfast T”のブッカー・T&ザ・MG’sのオマージュといい、本作のエディーはスティーヴ・クロッパーにも敬意を表しているかのようですね。
アルバム最後の10曲目”Till The Cows Come Home”は、これまた60年代ソウル・ジャズ風の曲です。
ギター・ソロはなく、エディーがテーマとなるギター・リフを繰り返しています。
この曲ではメインのテーマもソロもジョーがオルガンで弾いています。
本編はここで終了なのですが、国内盤のCDには11曲目に”Breakfast T”のライブ音源が、12曲目に”Till The Cows Come Home”のライブ音源がボーナス・トラックとして収録されています。
“Breakfast T”の方は2024年4月14日に米国メイン州ポートランドにある「ポート・シティ・ミュージック・ホール」にて録音された音源です。
“Till The Cows Come Home”の方は2024年3月29日に米国コロラド州デンバーセルバンテス・マスターピース・ボールルーム」にて録音された音源です。
どちらもエディーのギター・ソロがない曲ですが、ライブ映えする曲調ですね♪
出来ればこの2曲をアルバムの最後にボーナス・トラックで収録するのではなく、2019年の『Shake It』の時のように初回限定盤のみ別CDに収録するオマケの形で欲しかったところです。
せっかく統一感のある10曲が揃っているので、アルバムのイメージは守って欲しかったところです。
以上、【ザ・ニュー・マスターサウンズが原点回帰した!?本格的ソウル・ジャズ作品!14作目のスタジオ・アルバム『Old School』を聴こう♪】でした。
僕は以前から「いつかニューマスターの4人のメンバーだけでシンプルなジャズ・ファンクのアルバムを作って欲しいな~。」と思っていました。
それがここに来てようやく実現しました!
本作『Old School』は、全曲ニューマスターのオリジナル曲で揃えられており、演奏しているのもメンバーの4人だけです。
ゲストが参加している過去のアルバムも素晴らしいものばかりでしたが、本作のシンプルな編成でのアルバム作りを僕は気に入っています。
出来ることなら今後もこの路線でアルバムを制作して欲しいと思うぐらい本作『Old School』を気に入りました。
『Old School』の国内盤を購入してからは毎日のように繰り返し聴いています。
年末の来日公演も観に行く予定です。
それまでにぜひこのブログ記事を読んでくださった方も、本作『Old School』を聴いてニューマスターにハマって欲しいと思います。
これまでニューマスターのファンだった人はもちろん、当分ニューマスターを聴いてなかったという方にもまた思い出して聴いて欲しいです。
そして今回初めてニューマスターのことを知ったという方にも、このブログ記事を書いている時点では最新作となるアルバム『Old School』を聴いてニューマスターを好きになってもらえれば幸いです。
良いアルバムなので、ぜひ聴いてみて下さい!
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