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カテゴリー:Music

2024/09/11

エディー・ロバーツがギターを弾きまくったジャズ・ファンク作品『It’s About Time』を聴こう♪

ザ・ニュー・マスターサウンズのギタリストでリーダーのエディー・ロバーツが2012年にEddie Roberts' West Coast Sounds名義でリリースしたアルバム『It's About Time』についてご紹介したブログ記事のタイトル画像です。

ザ・ニュー・マスターサウンズのリーダー、エディー・ロバーツのソロ名義作品のご紹介!

エディー・ロバーツが”Eddie Roberts’ West Coast Sounds”名義でリリースしたアルバム『It’s About Time』

今回は、ザ・ニュー・マスターサウンズ(以降:ニューマスター)のギタリストにしてリーダーのエディー・ロバーツが2012年に「エディー・ロバーツ・ウェスト・コースト・サウンズ」名義でリリースしたアルバム『It’s About Time』についてご紹介します。

 

Eddie Roberts’ West Coast Sounds – 『It’s About Time』

01.The Long Drive Home
02.Bouncin’ Around
03.Good Things
04.Break The Fast
05.Fast’in
06.A Day, A Week, A Month, A Year
07.Aguacate
08.All The Time
09.Now Is The Time
10.Pack Of Lies
11.Black Bag
12.Somebody I Used To Know

 

Personnel:
Eddie Roberts – Guitar, Tambourine & Percussion
Wil Blades – Hammond Organ & Clavinet
Jermal Watson – Drums
Joe Cohen – Tenor Sax
Mike Olmos – Trumpet
Daniel Caseras – Tenor Sax on “Bouncin’ Around” & “Aguacate”

 

Released : 2012

エディー・ロバーツがギター・ソロを弾きまくったジャズ・ファンクの傑作!

本作リリース当時、エディー・ロバーツは出身国のイギリスからアメリカの西海岸に移住しています。

 

その際に知り合ったメンバーを集めて「エディー・ロバーツ・ウェスト・コースト・サウンズ」名義で制作されたのがこの『It’s About Time』というアルバムです。

 

エディー以外のメンバーは、スタントン・ムーアのバンドでキーボードを弾いていたウィル・ブレイズに、ダーティー・ダズン・ブラス・バンドのドラマーのジャマル・ワトソンをバックに従え、ジャズ・マフィア・ホーンズのサックス奏者ジョー・コーエンとトランペット奏者マイク・オルモスのホーン隊が参加しています。

 

“Bouncin’ Around”と”Aguacate”の2曲のみダニエル・カセラスがテナー・サックスで参加しています。

 

エディー・ロバーツ&ザ・ファイア・イーターズ名義でリリースされた前作『Burn!』と違って本作にはベーシストは参加していません。

 

代わりにオルガンがフットペダルでベースを担当しています。

 

そのためハードバップ風だった前作よりもオルガン・ジャズ色が濃くなっています。

 

ちなみにこの時期のエディー・ロバーツは1年毎に名義を変えてリーダー作をリリースしていました。

 

女性シンガーのリアーナ・ケニーのボーカルをフィーチャーした『Move』のリリースが2010年で、次の『Burn!』が2011年…そして本作のリリースが2012年と3年連続でリーダー作を出しています。

 

ただこの後はエディー・ロバーツ名義でのリーダー作のリリースは今のところ出ていないため、本作がエディー・ロバーツ最後のリーダー作にはなってしまっています。

 

今後、新たなリーダー作がリリースされる可能性はありますが、今のところは本作で止まっています。

 

それではアルバムの中身についても簡単にご紹介します。

 

アルバムの内容

1曲目の”The Long Drive Home”は、アルバムの幕開けにぴったりのファスト・チューンです。

 

本作のエディー・ロバーツは、いつもよりも少し歪ませたドライなトーンでギターのサウンドをセッティングしているのですが、ジャマルのファットなドラムと合わさって力強さも感じられるファンク・チューンに仕上がっています。

 

ニューマスターのライブでも似たようなファスト・チューン”Carrot Juice”でギター・ソロを弾きまくることがあるのですが、この曲はエディーのこれまでのキャリアにおいても特にギター・ソロを弾きまくった曲です。

 

その様子は”MoBoogie”の公式YouTubeチャンネルにアップされたライブ動画でも観ることが出来ます。

エディー・ロバーツは、グラント・グリーンだけでなくアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズからも大きな影響を受けているのですが、このスピード感はグラントよりもブーガルー・ジョーに近い暴れっぷりです。

 

この1曲だけでも本作が勢いのあるアルバムだとわかりますが、次の2曲目”Bouncin’ Around”もハードにドライブするブラス・ファンクです。

 

ゲストで参加したダニエル・カセラスがテナー・サックスがブ厚いサウンド作りに貢献しています。

 

ジャマルのタイトなドラムに、エディーのスピード感あるカッティングに…ギター・ソロこそないものの最後まで勢いを失わない曲です。

 

冒頭2曲はエディーのオリジナル曲でしたが、ここでマニアックなカヴァー曲を挟みます。

 

3曲目”Good Things”は、女性シンガーのパル・ドゥエルが1970年に歌ったファンク曲のカヴァーです。

 

“It’s All Over”のB面としてリリースされた曲で、レア・グルーヴ系のコンピレーションにも取り上げられることがあるマニアックな1曲です。

 

コンピレーションとしては『Good Things – The Story Of Saadia Records』がおすすめです。

 

過去にこのブログでも何度か書きましたが、エディー・ロバーツはかなりのレア・グルーヴ系のマニアで、日本公演ではあまりやらないのですが、実はニューマスターの海外公演やソロでのライオブ等では、そこらのなんちゃってDJが裸足で逃げ出すような超マニアックなレア・グルーヴ曲のカヴァーを演奏していたりします。

 

その選曲のマニアックさには僕も驚かされていますが、単なるプレイヤーではなく「ちゃんとした音楽マニア」なのがエディー・ロバーツというミュージシャンの魅力でもあります。

 

やはり色んな音楽を聴いているミュージシャンの方が、その演奏にも説得力があります。

 

演奏技術の向上ばかりに目を取られたミュージシャンは、ふとした時にそのバックグラウンドの薄っぺらさが感じられて、長い目で見ると魅力を保つことが出来ていないと思います。

 

こういったマニアックな曲を、当たり前のように取り上げられるエディー・ロバーツの音楽知識の豊富さは尊敬に値します。

 

“Good Things”のオリジナルは、ファンキーなワウギターをバックにパールが力強く歌うシスター・ファンクな曲でしたが、本作ではエディーのワウギターをバックにオルガンが歌メロを弾いています。

 

この曲でもエディーがギター・ソロを弾きまくっており、オリジナル・バージョンではフェードアウトで終わっていたのをしっかりとドラムのエンディングを付けたして綺麗に終わっています。

 

こういたアレンジ力の高さもエディー・ロバーツというミュージシャンの素晴らしさの1つですね。

 

ゴージャスなホーンのイントロで始まる4曲目”Break The Fast”は、エディーがジョー・コーエンとマイク・オルモスと共作したブラス・ファンクです。

 

ここでのエディーはミュート・カッティングに徹しており、リードをジャズ・マフィア・ホーンズの2人に任せています。

 

ジャマルのキレのあるドラミングで始まる5曲目”Fast’in”は、エディーのオリジナル曲です。

 

ホーン隊と絡んだエディーが弾くテーマが終わると、オルガンのソロが始まり、その後エディーの勢いあるギター・ソロに繋がります。

 

1曲目の”The Long Drive Home”と並んでエディーの凄まじい勢いのギター・ソロを堪能できる曲です。

 

ところどころで目立つジャマルのドラミングもポイントです。

 

6曲目”A Day, A Week, A Month, A Year”と7曲目”Aguacate”は、” Break The Fast”と同じくジャズ・マフィア・ホーンズの2人と共作した曲です。

 

こちらの2曲の方がより実験的で、ちょうどアルバムの中間部分で箸休めにもなっています。

 

“A Day, A Week, A Month, A Year”は、まるで『Sextant』時代のハービー・ハンコックの曲のようで、ジョー・コーエンの不気味に鳴り響くサックスがベニー・モウピンを彷彿させます。

 

“Aguacate”は、ニューマスターでも時折見せるサイケデリックな曲です。

 

どちらの曲もホーン隊が主役で、エディーはバッキングに徹しています。

 

“A Day, A Week, A Month, A Year”の方では、ニューマスターでは聴くことが出来ないようなブリッジ・ミュートを用いたヘヴィーなワウギターのリフが珍しい曲です。

 

8曲目”All The Time”は、フロリダ発の初期ファンカーボビー・ウィリアムス・アンド・ヒズ・マーキングが1968年にリリースした”Darling, Here Is My Heart”というシングル盤のB面に収録されていたマニアックな曲です。

 

これまたレア・グルーヴ系のマニアックな曲なのですが、この曲はレア・グルーヴ系のコンピレーション・アルバムの『Florida Funk: 1968-1975』に収録されていたので知っている人も多少なりともいるかと思われます。

 

アメリカの地域毎にレア・グルーヴ曲をまとめたこのシリーズのコンピレーション・アルバムは、2000年代中頃に数多くの種類がリリースされてレア・グルーヴ・コレクターの間では必須アイテムのようになっていましたからね。

 

僕も当時はこのシリーズを集めるのが楽しかった思い出です。

 

“All The Time”のオリジナルはボーカル曲なのですが、本作では先の”Good Things”と同じようにオルガンが歌メロを弾いています。

 

9曲目”Now Is The Time”は、チャーリー・パーカーの”Now’s The Time”ではなくって…カーティス・メイフィールド作の”Give Me Your Love”のカヴァーで知られる女性グループのシスターズ・ラブが1970年にリリースした曲です。

 

オリジナル音源はアルバム未収録で、2006年にリリースされたコンピレーション・アルバム『Give Me Your Love』で聴くことが出来ます。

 

4人の女性ボーカルが絡むブ厚いコーラスが魅力の曲ですが、本作ではエディーがウェス・モンゴメリーばりにオクターブ奏法で歌メロ部分を弾いています。

 

オリジナル曲の良さもあり、この曲が本作の中でも一番のメロディアスな曲に仕上がっています。

 

10曲目”Pack Of Lies”は、ここで登場!あのグラント・グリーンがカヴァーして有名になった”Jan Jan”のオリジネイターで知られるファビュラス・カウンツの曲です。

 

正確にはファビュラス・カウンツのファビュラスが抜けて、シンプルに「ザ・カウンツ(The Counts)」にグループ名を変えた1971年のアルバム『What’s Up Front That-Counts』に収録されていたインスト曲です。

 

エディーはどうやらこのグループの曲が好きなようで、”jan Jan”と並んでこの”Pack Of Lies”もニューマスターのライブやソロでのライブで度々取り上げています。

 

そういう僕も同じグラント・グリーン好きとしてこの2曲は大好きなんですがね♪

 

ニューマスターの初の公式ライブ盤『Live at La Cova』の輸入盤に”Jan Jan”は収録されていたのですが、”Pack Of Lies”がCD音源として登場したのはこれが初です。

 

そういった意味でも本作はエディー・ロバーツのファンならマスト・アイテムと言える作品です。

 

ちなみに過去に何度かこのブログでも書きましたが、再度書かせていただきます。

 

グラント・グリーンのバージョンの”Jan Jan”が収録された名ライブ盤『Live At The Lighthouse』の日本盤のライナーノーツには、”Jan Jan”の作曲者がマイルス・デイヴィスみたいに書かれています。

 

「さすがマイルスの曲はかっこいい!」みたいに記載されていますが、マイルスが”Jan Jan”を演奏した事なんてないです。

 

これは『Live At The Lighthouse』の輸入盤に”Jan Jan”の作曲者クレジットが、「M.Davis」と書かれていることから勝手に日本のレコード会社のライナー担当者が勘違いしているだけで、これはファビュラス・カウンツのリーダーでオルガン奏者のモセ・デイビス(Mose Davis)のことです。

 

なんていうか…ファビュラス・カウンツのことだでなくマイルス・デイヴィスのこともちゃんと聴いていない人がライナーを書いたんだな…と残念に感じます。

 

マイルスがこういった曲は書かないでしょう…。

 

それはさておき、エディー・ロバーツが演奏するファビュラス・カウンツ系の曲は最高にファビュラス(fabulous=「信じがたいほど素晴らしい」という意味)です♪

 

11曲目”Black Bag”は、カール・シャーロック・ホームズの1974年のアルバム『Investigation No.1』に収録されていた曲のカヴァーです。

 

どことなくピンク・パンサーのテーマ曲を彷彿させるギター・リフを持ったギター・インスト曲です。

 

本作ではエディーがいつになく歪み気味のギターで演奏しています。

 

オリジナルと同じくソロはサックスに任せていますが、本作ではオリジナルにはなかったドラムのブレイクが付け足されています。

 

最後の12曲目”Somebody I Used To Know”は、ベルギー生まれでオーストラリアを拠点に活動するのシンガーソングライターのゴティエ(Gotye)が2011年にリリースしたヒット今日のカヴァーです。

 

3作目のアルバム『Making Mirrors』に収録されていた曲です。

 

本作リリース当時としては最新のヒット曲でした。

 

エディー・ロバーツは、ニュ-マスターでも2015年のアルバム『Made For Pleasure』でオーストラリアのラッパー、イギー・アゼリアの”Fancy”を大胆なレゲエ・アレンジでカヴァーしていましたが、あの曲はエディーの娘さんからのすすめでカヴァーしたとのことでした。

 

もしかしたらこのゴティエの曲も娘さんからのアドバイスだったのかも知れませんね!?

 

エディーの娘さんはオーストラリアのミュージシャンがお好きなのかな?

 

さて、本作ではアップ・テンポなアフロ・グルーヴにアレンジしてエディーのオクターブ奏法が歌メロを弾いています。

 

ゴティエのオリジナルにはなかった終盤のホーン隊の盛り上がりも本作ならではです。

 

本作には日本盤のボーナス・トラックは収録されていないのでこの12曲が全ての楽曲になります。

 

以上、【エディー・ロバーツがギターを弾きまくったジャズ・ファンク作品『It’s About Time』を聴こう♪】でした。

結局のところ「エディー・ロバーツ・ウェスト・コースト・サウンズ」名義での活動は本作のみで止まってしまいましたが、エディー・ロバーツのギター・ソロがお好きな方にはおすすめのアルバムとなっております。

 

先にも書きましたが、2010年から2012年の3年間は毎年のようにエディー・ロバーツのリーダー作が名義を変えて連続でリリースされていました。

 

フレックルズにザ・ファイア・イーターズにウェスト・コースト・サウンズに…。

 

しかしこれ以降は、WRDというバンドは組んでいるもののエディー・ロバーツの名を冠したリーダー作はリリースされていません。

 

今後またエディー・ロバーツのリーダー作がリリースされることを願って、本作『It’s About Time』も改めて聴いてもらいたいと思いこちらでご紹介しました。

 

ザ・ニュー・マスターサウンズのファンはもちろん、エディー・ロバーツのファンにの方も、更にはレア・グルーヴやジャズ・ファンクがお好きな方におすすめのアルバムです♪

 

 

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